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なんとなく指導から脱却! 教えるべきか、任せるべきかの分かれ道(全4記事)

若手も管理職も、育成の決め手は「フィードバック」にある 指導における“3つの重要ポイント”と、効果的な打ち手

人材育成で悩んでいる人事担当者、部下指導を「なんとなく」で行っている管理職が、感覚的な指導から脱却し、部下の活躍を促すために有効な打ち手について、株式会社PDCAの学校 代表取締役の浅井隆志氏が解説します。本記事では、社員への教育・指導における3つのポイントを明かします。

管理職のフィードバックにおけるポイント

浅井隆志氏:そろそろまとめていきたいと思います。一番大事なことは、管理職が部下の行動をしっかり理解すること。細かく「何時何分に何をやっているの?」というのは別に要らないですが、おおよそ月曜は何をやっていて、火曜は何をやっているかを把握しておく。

例えば日報において、「今日は何を積み残して、明日はどうするのか」「今日の業務を通じて学べたことや気づけたこと、自分で成長できそうなこと」を日報で上げてもらって、上司がそれに対してコメントを付けて、ちゃんとフィードバックをしてあげる。

ここからさらに重要なことをお伝えしますね。管理職、例えば課長が部下に対するフィードバックを、さらに上役の人間がフィードバックをしていかない限りは、課長のフィードバック能力は高まりません。

管理職としての仕事のOJTって、ほぼなされないんですね。過去に僕が携わった企業さまで、「管理職のOJTをやっています」という企業さまは1社しかお会いしたことがありません。

ちなみにその会社さんは何をやっているのかと言うと、まさに僕もコンサルでやっているんですが、課長と一般社員の面談で、上司はさらに上役の人が同席をして、面談が終わった後に「課長、あの言い方は良くなかったね」「あの言い方は良かったよ」と、指導にフィードバックをするんですね。

「ある程度、これは合格点だな」といったら免許皆伝という感じで、今後は面談が要らなくなる。そういう制度を持っている会社さんがございました。なのでみなさんの会社においても、おそらく管理職のOJTは課題になってくるんじゃないかなと思っております。

部下への教育・マニュアル作成の肝は「可視化」

キリがいいのでコメントを読み上げます。「アドバイスありがとうございます。浅井さまのお考えの通り、この1週間の課題・問題に対して、まずはすべての事象に対して書面を残すように指示しておりますので、来週はその内容を共有し、具体的な事象に対する本来の対応の仕方をフォローしていく予定です」。すばらしいですね。すでにやっていると。

「これまでの対応について、何か残しているものがあるかを確認しましたが、まったくない状況でしたのでありがとうございます」。過去は残してなかったということですよね。ちなみに僕は、この「可視化」はすごく大事だと思っております。

例えば部下と仕事をしていて、「ここはこうしてね」「ああしてね」というのは、必ず業務フローを部下に任せて、その業務フローに部下に追記させる。自分も教えたことは業務フローに追記する。

このガッチャンコを定期的にやっていきますと、業務フローの精度が高まっていって、新しい人が入ってきたら「これを見てやってね」というものが完成できます。マニュアルや教育ってどうすればいいのか? というのは、言語化や可視化が一番最初の入り口かなと思っております。

仕事の手を止めて、「じゃあマニュアルを作ろう」「業務フローをイチから全部整備しよう」というとなかなか難しいので、走りながら・業務をしながら作っていくのが好ましいかなと思います。

部下を持たせない「1人課長制度」

「優秀なプレイヤーが管理職に昇格してマネジメントをできるようになる人材と、いくら管理職になっても本人はそのままプレイヤーを続ける管理職もいるのが実態だと感じます。いくら意識付けやマネジメントスキルを教えてもらっても、本人自身がマネジメントという仕事ができない管理職がいたら、どこかの時点でどう判断する必要があるかも考えております」。

「その管理職の部下に優秀な人材がいた場合には、その人材を抜擢していかなくてはならないとも感じております。難しい課題なので、粘り強くフォローしながらも、もう少し考えていきます。この点について、何かアドバイスがありましたらよろしくお願いいたします」。

ご質問ありがとうございます。「プレイヤーとして優秀だから昇給・昇格はさせてあげる。だけれども、部下は持たなくていいよ」という1人課長制度は、ぜんぜんアリだなと思っています。

(管理職に)部下を持たせる時に、部下を持って人を動かしていく管理職として、やる気があるのか・ないのかを明確に判断してもらったほうがいいと思うんですよね。

管理職の適性によっては「部下なし課長」もアリ

もちろん、(管理職の)お試し期間があってもいいと思います。やってみて「メンタルがしんどいです」とか言うんだったら、ポジションはそのままにしておいて、部下は全部外してしまう。

課長というポジションはそのままですが、部下の面倒を見ないわけだから、その代わりに給与にひも付いている等級は下げさせてもらう。もちろん、仕事が変わるんだから給料は変わるのは当然なので、ちゃんと話し合いをしながらの調整はあって然るべきだなと思っております。

実際にこのアドバイスをさせていただいた、僕がコンサルをしている企業さまでは、課長なんだけれども部下を全部外して、今はすごく意気揚々と以前よりも成果を出している「部下なし課長」が実態としてあります。

もちろん、一回上げたものを下げにくいというのはあると思いますが、話し合いのもとに、「ストレスがあるんだったらやめておこうか?」というのは本当に相手のためにもなると思います。1人課長制度は話し合いで考えていただきたいなと思ってます。

達成する意味を答えられない数字目標の問題点

これも毎度お伝えさせていただいておりますが重要な部分です。給与・待遇ではなく、働きがいをどうやって認識させていくのかは永遠のテーマになってくるかなと思っております。

ちょっと余談でお話をさせていただきますと、先日、僕のコンサルの訪問先でちょうど年度を跨いだんですね。そうすると、新しい事業計画が社長から下りてきたんです。

部長・課長陣と僕が面談して話をした時に、課長の1人が「前期の予算は5億円、今期は7億円です」という話だったので、僕は「なんで7億円なんですか?」と課長に聞いたんですよ。

そうしたら、「昨年の期の積み残し、いわゆる未達の部分があったので、今期は7億円になります」と。「その事情はわかりますが、なんで7億円を達成しなければいけないんですか?」という質問をしたら、課長は答えられなかったです。

僕は部長に「課長が5億円から7億円の意義について、『前期の積み残しがあるから7億円だ』と言っていますけど、そもそもなんで7億円を達成しなければいけないんですか? どうしてですか?」と聞いたんです。そうしたら部長は「わかりません」と(笑)。

それで社長に「なんでですか?」聞いたんですが、「それぐらい必要だと思いまして」と(笑)。これで、仕事の意味や意義を社員に説明できますかね?

数字にメッセージ性がないと、真の働きがいは提供できない

最低限、会社として目指すビジョンを掲げる。別にこれは約束できなくていいと思いますよ。「3年から5年かけてこういう会社を作っていきたい」と。簡略的な話でいきますと、例えば「週休3日を実現したい」とかね。

「社員のキャリアアップを促進できるような、そういう組織にしていきたい。だからみんなが自己啓発して、自分の取りたい資格とかを全額会社で負担できるような会社にしていきたんだ。そのために、今期はこの数字を達成したい」。

わかりますか? これは意味や意義があるわけだから、達成していかなければいけないんです。「なんでこれをやらなければいけないんですか?」「それは会社の目標だからです」というのは、正直言って元も子もない。

例えばうちの会社はオーナー企業なので、僕は100パーセント株主です。僕が「よし、今期の目標は10億円だ。みんな10億円を作れ!」と言った時に、「社長、なんで10億円なんですか?」と言われて、(そこに意味や意義がなかったら)どんな言い訳をしたって、「うーん、俺が10億円欲しいからかな」と聞こえちゃいますよ。

なんでそれを達成するのか、どういう会社を作っていて、それを作り上げるメンバーになってほしいんだというメッセージ性がないと、本当の意味の働きがいは提供できないんじゃないかなと思っております。

こういう話をすると、「そうですよね。ただ、僕は社長じゃないので、うちの社長にそういう話をしてもムリです」と言われます。

約束できなかったとしても、みなさんがトップ・長になっていただいて、「せめてうちのチームはこういうことを目指していこうよ。こういう仕事をしていこうよ」と、意気に感じるようなメッセージ性を管理職発信で作っていただきたいなと思っています。

社員が悩みを相談できる環境整備の重要性

(指導で重要な3つのポイントの)2番目は、「仕事での成長を実感させる」。これは重要なのでお伝えします。「会社を辞めようかな」と思っても、相談できる人がいると踏みとどまる傾向が明白にあります。

逆に言うと、会社で愚痴が言えないとか、「しょうがないよね。わかるわかる」と共感してくれる人がいないと会社を辞めますので、会社の制度として相談できる窓口を作るのも1つ。

あとはコミュニケーション。ただ、あまり「コミュニケーション」という言葉で片したくはないので、「相談できる環境整備」。

会社さんによっては、メンター・メンティ制度で他部署の先輩が相談に乗るとか、人事部主導でメンタルケアの面談の機会があるとか、これもルールや制度でなんとかなるんじゃないかなと思っております。

どの企業さまもすぐ導入できることとしては、定期面談をやっていただくのが一番いいかなと思っています。定期面談は週に一回がいいなと思っていまして、週に一回と聞くと「うわ、多いな」と思われるかもしれませんが、10分ぐらいでいいと思いますよ。

「先週はどうでした?」「どんな気づきがありました?」「今週はどんなことをやります?」「そのスケジュールにムリはありません?」「どこか支援・サポートがあるところはあります?」。こんな会話で、10分だけでいいかなと思っています。

定期面談、PDCAの共有会が効果的

上下間のコミュニケーションで、「ピラミッド型組織で、コミュニケーションなんかあんまり要らないんだ。とにかく報告だけ上げさせておけばいい」という考え方も一部にはあります。そういうことを訴えている人材系の会社もありますが、実はこれって、IT企業とかだとぜんぜんマッチしないんですね。

IT企業の場合はどちらかというと、生きたノウハウを積極的に、横軸で経験・体験を情報共有することによって生産性が上がるというお仕事なわけですよね。

開発系の方がいらっしゃれば、いわゆるアジャイル。目的は大まかに決めておいて、現場で試行錯誤しながら積み上げていく。設計図があって仕事をするんじゃなくて、現場で積み上げながらやっていくのは、情報交換・ナレッジの共有がものすごく大事になってきます。

ちなみに、うちの会社は定期面談はそんなにやっていなくて、どちらかというと後者の「PDCAの共有会」。週に1回の会議はそれぞれのPDCAを発表して、お互いにフィードバックをする時間にしております。

どちらが会社にマッチするのか? というのはあると思いますが、両方あってもいいんじゃないかなと思っております。お金はかかりませんし、やっていただいたら効果はすごく高いです。

定期面談をやっていただくのか、「こんなことをやりました。これはうまくいきました」「すごいですね」「これをやったら失敗しました」「私たちも気をつけます」という、横軸の情報の共有会のいずれかをやっていただくのが、一番コスパがいいんじゃないかなと思っております。

それでは本日は以上でございます。みなさま、どうもありがとうございました。

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