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池原真佐子『女性部下や後輩を持つ人のための1on1の教科書』ピョートル・フェリクス・グジバチ『心理的安全性 最強の教科書』 刊行記念イベント(全4記事)

フィードバックは「人に優しく、結果に厳しく」 チームの生産性を高める「対話」の要素

TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHIにて行われた、『女性部下や後輩を持つ人のための1on1の教科書』著者の池原真佐子氏、『心理的安全性 最強の教科書』著者のピョートル・フェリクス・グジバチ氏の対談の模様をお届けします。チームのパフォーマンスを上げる信頼関係の築き方や良好なコミュニケーションの取り方について語られた本セッション。本記事では、それぞれの書籍の紹介と、「生産性の高いチームの会話・対話」について語られました。

働く女性には「メンター」がいないことが多い

司会者:お時間になりましたので、さっそくお二人をお呼びしたいと思います。池原真佐子さん、ピョートル・フェリクス・グジバチさんの入場です。会場のみなさま、どうぞ拍手でお迎えください。

(会場拍手)

まず、お二人はイベントでは、イベントもかなりお二人ではけっこう登壇されている仲良しさんなんですよね?

ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(以下、ピョートル):どうでしょうか(笑)?

池原真佐子氏(以下、池原):あれ?(笑)。もともと友人で、イベントでの正式な対談はたぶん初めてです。

ピョートル:そうですよね。

司会者:距離がありそうですが、大丈夫ですか?

ピョートル:いや、ちょっとどうなんだろう?

池原:ピョートルさん!

司会者:でも、ふだんは意見交換とかをよくされていらっしゃると、先ほどうかがいました。どんなことをふだんは会話しているんですか? そんな照れないでください(笑)。

池原:秘密です(笑)。

ピョートル:みなさんに言うとつまらなく聞こえると思うんですけど、先ほど利益率の話を。

司会者:おお。

ピョートル:ビジネス、起業の話です。

司会者:はい、ゴリゴリのビジネスのお話をされたりも、ふだんしていらっしゃるお二人ですが、今日はお二人の新しく出された本について、まつわることで、会場のみなさま、そしてオンラインのみなさまに、いろいろお話を届けていただけたらと思います。

ではまず、お二人の本を少しそれぞれご紹介いただけたらと思うんですが、いかがでしょうか。では、池原さんから『1on1の教科書』について簡単にご説明ください。

池原:みなさん、あらためてこんにちは。株式会社Mentor For、そして一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会という団体の代表を兼ねております、池原と申します。この本の紹介をするに当たって、簡単に私がどんなビジネスをしているかというお話をします。

みなさんには「メンター」といわれる存在はいるでしょうか? 人生の師であったり、何か迷った時に導いてくれる人。そういった人がたまたま身近にいる場合はすごくハッピーなんですが、特に働く女性には身近にいないこと(が多いです)。

そういう人たちのために社外メンターといわれる方を育成して、BtoBで企業にマッチングするといったビジネスをやっております。

キャリアの話をどこまで踏み込んですればいいかをまとめた1冊

池原:この書籍は、私たちがビジネスでやっているキャリアに関するメンタリング、キャリア1on1のノウハウというところを、どなたでも実践できるようなかたちでまとめています。

『女性部下や後輩をもつ人のための1on1の教科書』

なので、例えば正式なメンターとして人に向き合うだけではなくて、部下とか後輩とか、ちょっと誰かのキャリアの相談に乗りたい時に、どんなふうに向き合って、どんな対話をして、どういうふうに助言までするか。そして、例えば女性に向き合う際に、キャリアのお話をどこまで踏み込んですればいいかとか、そういったことを具体的にまとめている書籍になります。

なので、初めて部下を持ったとか、あるいは後輩の何かキャリアの相談に乗ることが多いとか、あるいはご自身も何かキャリアにもやもやしている、そんな時に役に立つ実用的な書籍になっております。

今日もスクールの方もいらっしゃいますけれども、プロのキャリアメンターのスクールでのナレッジと、それを企業にマッチングしているというところ。特に企業のマッチングの場合、メンタリングを受ける方の9割近くが女性社員なんですけれども、その経験を活かし女性のキャリアに向き合う際のポイントなどをここにまとめています。

また、「コーチングとメンタリングの違い」で言うと、メンタリングは、キャリアの助言までする、アドバイスのスキルというところも含まれています。そういった本になっています。すみません、ちょっと長くなりました。以上です。

司会者:ありがとうございます。プロのキャリアのメンター育成や企業とのマッチングもされているということで、今日はどんどんうかがっていきたいと思っております。では続いて、ピョートルさんもよろしくお願いいたします。

ピョートル:はい、ありがとうございます。真佐子さんにほとんど言われてしまいましたが、観点が視点が違う点もあるんですが、目指している方向性は真佐子さんとかなり似ています。

チームの「成果を生み出す」ための必要不可欠な土台

ピョートル:僕はこれまでいろいろやってきましたが、メンタリング、コーチング、カウンセリングなどの勉強を通じて、人を見る仕事をしています。例えばテクノロジーを使ったり、コーチングをしたり、あるいは社外取締役をやったり、個人、チーム、組織、社会という流れが好きなんです。

その中で一番成果を出せるのは個人ではなくチームですね。だから、自分が管理職、マネジメントの立場に立っているかどうかは別として、何らかのかたちで、チームメンバーや、チームを見たり、自分のチームを作ったりしなければならない。

例えば家族というのもチームであって、明確な目標・目的がありますね。すごくドライな言い方なんですけど、今日の『心理的安全性 最強の教科書』は目的ではないんですね。心理的安全性はただの手法であり、土台であるんですよね。

『心理的安全性 最強の教科書』

目的は、成果を生み出すということですよね。その成果は何でしょう。アートを作るというのも成果ですし、子どもを育てるというのも成果だと思いますし、仕事であれば、職場というのは成果を出す場であるという前提で、仲良しクラブを作るとか、みんなに毎日優しくするという場ではないんですね。

だから、「心理的安全性」という言葉がよく間違えられる。みんなに優しく、楽しく、ワクワクしていればいいと。

すべて全部笑顔で全部ワクワクということではなく、人として自分らしくいられる状態を作っていくというのが、成果を出すために必要不可欠な土台ですよね。それは仕事のチームでも家族というチームでも一緒だと思います。

今日は職場の話が多いと思うんですけど、仕事やチームを家族に置き換えていただければファミリーセラピーにもなるので、ご自宅に戻って旦那さん、奥さん、子どもにもこの本を渡してみてください。ありがとうございます。

「働きがい」が行動の質を高める

司会者:すてきな解説、ありがとうございました。今日はお二人と共に進めていきたいと思っております。では、いくつかこちらのほうでトピックを用意しましたので、それぞれについてお話しいただきたいと思います。

まずはこの質問からいきましょう。「生産性の高いチームの会話・対話」ですね。ビジネスにおいて、ピョートルさんもおっしゃっていましたが、やはり大きなゴールの1つは成果を上げること。そして、その成果を上げるために生産性の高いチームを作りたい。でも、なかなか難しいという悩みを持っている方は多いと思います。

お二人はどういうふうに、コーチングでもないんですが、そういった方たちにアドバイスされているのかをぜひうかがいたいと思っています。では、池原さんからお願いできますか?

池原:はい、ありがとうございます。今のピョートルさんの話を聞いていて、やはり特に職場だと、やはり成果を出すというのは本当に大事なことだと思っています。

私たちのキャリア1on1というところも、「キャリアの話を聞いてワクワクするね」とか、「本来のありたい自分をありのまま何か見つけてさまよう」とか、そういったところがゴールではではなくて、自分のやりたいことであるとかWillというところを明確にしつつ、それを抽象化して、さらに今いる組織・チームのWillというところとの重なりを見つけるというところが大事だと思っています。

例えば製薬会社に勤めていたとして、「じゃあ夢は何なの?」と言った時に「パン屋さん」と言われたら、「じゃあ辞めてパン屋さんになるの?」というと、そういうことでもないと思うんですね。

「じゃあなぜパン屋なのか」「なぜそう思うのか」「そこに何を望んでいるのか」というところを掘り下げていくと、もしかしたら会社の大きなミッション、ビジョン、チームの達成すべきことというところの重なりを見つけてあげる。それがキャリアの1on1の対話だなと思っています。

そういったところで、「働きやすさ」だけではなくて、「働きがい」を持てる。この「働きがい」を持つことで、自発的に何か学ぼうとしたり、自発的な動きがあったりというところで、行動の質も高まっていくのかなというふうに思っています。

生産性が高くなるチームの「対話」

池原:あと、もう1つ大事だなと思うのが、「自己認識」という軸ですね。私たちが自分を何者だと思っているか。これを「自己認識」といいます。よくキャリアの1on1というと「内的自己認識」といって、自分が自分をどう思っているか。つまり「私の夢って何だろう?」「私のワクワクって何だろう?」。そういったところを掘り下げるといったようなイメージがすごく強いと思うんですけれども。

一方で「外的自己認識」といわれる、「他者から自分はどう見えているか」。例えば「チームメンバーから見て、自分はどんなリーダーであるか」「どういったところを伸ばすべきか」「どういったところを改善すべきか」といったような、そういった外的自己認識もキャリア1on1の中で触れていく。

それがまさに、もしかしたら改善点のフィードバックかもしれないと思うんですけれども、そういった会話をチームの中で安全性を持って率直にできるといったところが、まさに生産性が高くなるチームであり対話かなと思っています。

あと、フィードバックというと、なんか改善点の指摘とかネガティブな人格否定というふうに捉える方もいらっしゃると思うんですけれども、フィードバックってもともと軍事用語で、「目的地からどれくらいずれているかというのを知らせる」という意味があると思っています。

なので、人格否定ではなく、「目標はここだよね。でも今これぐらいずれてるよ」とか、「あなたのキャリアってここだよね。でも今こういうふうな状態だよ」というのを通知する。そういった対話を率直にしていくことができると、チームの生産性というところも高まるのかなというふうに思っています。ピョーさんはいかがですか?

ピョートル:いや、その通り(笑)。「あと何が追加できるのかな?」とちょっと迷っちゃったんですけれども。生産性の高いチームはやはり社会的、あるいは会社に何らかのインパクトをもたらしています。

人に優しく、結果に厳しく

ピョートル:まず意義、意味を感じているという認識。要はギブアンドテイクで、自分がやっている仕事が誰かの人生を良くしているか、何らかのリソースを増やしているかは別として、意味を感じているか。そして、その意味が自分にとってもあること。例えば自分に必要不可欠なリソースを得られているか。お金でもいいんですけれども、その両方の納得が必要です。

あと、ストラクチャーが明瞭であることもちろん相互信頼も重要です。お互いに約束したものをちゃんと実施しているか。最後は心理的安全性ですよね。要はリスクが取れるということ。対人関係において自分がバカにされたりとかダメ出しされたりすることはないので、建設的な意見の対立が推奨される状態ということですね。

先ほど「自己認識」っておっしゃったんですけれど、僕もすごく「自己認識」という言葉が好きで、自己認識、自己開示、自己表現、自己実現と、要は自分がもたらしたい成果、影響をもたらしているという状態です。

「人に優しく、結果に厳しく」ということをよく言っているんですけど、目標・成果には厳しく。そして優しさというのは、英語で「kind」と「nice」という言葉があるんですけれども、「nice」ではなく「kind」なんですね。

言わなきゃならないことを率直にフィードバック、フィードフォワード、アドバイスとして伝えられるとぜんぜん環境が違ってくるんです。それは家族においてもチームにおいても同じです。

何らかの挑戦をしていく、チャレンジしていくというのは人間の成長のもとになるので、それももちろん自分の成果・結果に厳しく、相手の結果に厳しく、基準を保っていくというのは大事ですよね。

サボる時に、ひたすらみんなでサボってふざけていいと思います。食事もあるし、その他のエンターテイメントもあるし、休まなきゃならないんですけれども、ただ、ひたすらベクトルを決めて一緒にやっていくというのは大事です。

だから「会話」と「対話」が重要。個人的に「対話」というのは建設的な対話で、要は何かを作ろうとしているという会話は対話です。ただ話しているんじゃなくて、話の中から生み出せるものを必死に探って、問いをしたり考えながらしゃべったりというのは対話。チームとして決めた目的・ベクトルに行けばいいということですね。

イノベーションを生みやすい、組織内の健全な「衝突」

池原:今のピョーさんのお話を聞いて思い出したのが、ビジネスにおけるコンフリクト(衝突)って何種類かあると言われていて、1つが人間関係のコンフリクト。あの人が好きとか嫌いとか。もう1つが役割のコンフリクト。「ここは自分の役割じゃない」とか。

ただ、この2つはビジネスにおいて悪影響があるというふうに言われているんですけれども、今ピョーさんが言った、何かの1つの物事に対するものの見方のコンフリクト。例えば「私はAと思うけど」「いや、私はCだよ」「いやいや、私はBだと思う」という。これを健全にコンフリクトできる組織・チームというのは、実はイノベーションを生みやすいというふうに言われているんですね。

でもその前提って、言ったら嫌われないかとかバカにされないか。誰かが言ったら「いいねそれ。でも私はこう」と言える雰囲気があるか。それが対話であり、生産性の高いチームの建設的なコンフリクトじゃないかなというふうに、今感じました。

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