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【手放すTALK LIVE#37】「無敗の営業チームづくりと自律分散型経営は共存 できるのか?」 ゲスト: TORiX株式会社 代表取締役 高橋浩一さん(全6記事)

上が「こんな簡単なことがなぜできない」と言い始めた組織は危険 『無敗営業』著者が語る、営業組織にありがちな構図と課題

管理しない組織や上司がいない会社、給料を自分たちで決める会社など、ユニークな進化型組織を調査する「手放す経営ラボラトリー」。同ラボが主催するイベント「手放すTALK LIVE」に、『無敗営業』『無敗営業 チーム戦略』の著者で、TORiX株式会社代表の高橋浩一氏がゲスト出演。社会活動家の武井浩三氏を相手に、コロナ禍で企業の営業担当役員と対話をして気づいたことや、自ら「属人の極み」という若き日の高橋氏の営業スタイルなどを語りました。

「常識や固定観念を手放す」をテーマとしたトークイベント

坂東孝浩氏(以下、坂東):みなさん、こんばんは。『手放すTALK LIVE』ということで、これから9時半までのスケジュールでお送りしていきます。よろしくお願いします。

高橋浩一氏(以下、高橋):はい。よろしくお願いします。

坂東:まず私から、簡単にこのトークライブと「手放す経営ラボ」について説明をさせてもらい、その後で本編を進めていきたいと思います。

『手放すTALK LIVE』は、「常識や固定観念を手放す」をテーマにゲストを招いてお送りするトークライブで、定期的にさまざまなスピーカーの方をお招きして行っています。

私たち「手放す経営ラボラトリー」は、2018年に立ち上げた、新しい組織や経営スタイルを研究するラボで、進化型組織をリサーチしています。おそらく進化型組織のリサーチ数は日本一ではないかと思います。

今は2,000人のコミュニティと200名のラボ研究員のメンバーによる、コミュニティカンパニーという立て付けで運営しています。

コミュニティカンパニーとは、コミュニティの中で事業活動する、いわゆる会社組織です。境目が曖昧だったり、出入りが自由だったりしますが、こういう会社がこれから増えるのではないかということで、私たち自らが実験しながら運営しています。私たちは、世の中に、そういったご機嫌な人や会社組織が増えるといいなということで活動しています。

ちなみに進化型組織は、ティール組織がぽんと流行りましたけど、ホラクラシー(上下関係が存在しない組織)とか、自然経営(自然のように変化を続ける経営)とかDAO(管理者がいなくても事業を進められる、分散型自立組織)。DAOは最近のキーワードですが、こういったものをまとめて進化型組織と呼んでいます。

活動として、メインは(スライドの)左上のDXO。

DXとオーガニゼーションをくっつけて、DXOと書いてディクソーと呼びます。これは経営をアップデートするプログラムですが、武井さんと一緒に作って、テキストは無料公開していますので、誰でもゲットできます。

テキストの中にワークショップの内容が書いてあります。ワークショップを進めていくと、会社が最新バージョンにアップデートされる内容になっています。これをどんどん世の中に広めていくことが、私たちの軸になっています。

『無敗営業』の著者で、TORiX代表の高橋浩一氏が登壇

坂東:それから、日本一経営塾らしくない経営塾という、経営者のための経営塾もやっています。これは、今日のスピーカーのたけちゃん(武井浩三氏)がナビゲーターとなって、月1回のマンスリーフォーラムをやりながら、さまざまなコンテンツを行っています。たけちゃん、今週は淡路島にリトリートキャンプに行きますね。

武井浩三氏(以下、武井):はい。

坂東:大丈夫? 聞いてる?(笑)。

武井:聞いてる! 

坂東:そんなこともやったりしています。(スライドの)右上が『手放すじぶんラボラトリー』とも連動しているんですけれども、『武井浩三の経営問答』というYouTubeコンテンツもやっています。経営に関する質問に、答えるか答えないかはわからないよというスタンスの、ちょっと変わった動画コンテンツです。

右の真ん中ですね。『社長! 今日も斬らせていただきます』という番組。これは由佐美加子さんという方と一緒にやっています。経営者の内面をその場でひもといていき、30分ぐらいで丸裸にされちゃう。丸裸になって泣いちゃう人もいるような、比較的ギリギリなラインをついている番組でけっこう評判です。

なぜこういうことをやってるかっていうと、組織を進化させていく時に、経営者自身がアップデートしたり変容することが、場合によっては必要になります。そういったことをしたい人にサポートしたいという思いで、こういった塾やセッションをやっています。

ということで、ペラペラしゃべっているのは私、「手放す経営ラボラトリー」の坂東です。あらためてよろしくお願いします。

それから、(画面では)たけちゃんという名前になっていますが、社会システムデザイナーの武井浩三さん。そして、今日のメインはTORiX株式会社の代表の高橋浩一さんです。

「手放す経営」と対極にある、営業組織の世間的なイメージ

坂東:高橋さんのプロフィールはこちら(スライド)に書いていて、本とかも載せたりしています。

高橋さん、良かったら自己紹介をお願いしてもいいでしょうか。

高橋:あらためましてみなさん、こんばんは。TORiX株式会社という、営業の研修やコンサルティングの会社をやっています高橋浩一と申します。

僕は新卒で、コンサルティングの会社で2年半ぐらい働いてから、社会人3年目の時に、人材教育のベンチャー企業を3人のメンバーで創業しました。僕は会社の全体の事業や組織を見るいわゆるナンバー2の立場で、6年ぐらい役員をやっていました。そのあと少し経ってから今の会社を作って、ふだんは営業の方々をご支援させていただいています。

ちなみに、20年前なのでたぶんご本人は覚えていないと思うんですけど、リクルート時代に、さっきの由佐美加子さんに、1回営業しに行ったことがあります。

坂東:へー、そうなんですね。何の営業をしたんですか? 

高橋:研修の……。

坂東:その当時はリクルートにいたんじゃないですか? 

高橋:そうです。本当に1回商談しただけなので、その当時のことはたぶん覚えてらっしゃないと思います。自分自身も組織をやって、やっぱり今日のテーマの「手放す経営」というコンセプトは個人的にすごく興味がありました。

坂東:そうなのですね。

高橋:はい。今から数年前には、天外伺朗さんがやっていらっしゃる天外塾にも通っていました。人と組織を扱う業界にずっといますので、どうやったら人と組織がすごく気持ちよく働けるかには、すごく関心が強いです。

営業組織って、世間的なイメージは(「手放す経営」のコンセプトと)対極みたいな感じがするじゃないですか。なので、今日はそのへんをお話しできたらなと思いますので、よろしくお願いします。

コロナ禍で、企業の営業担当役員と対話をして気づいたこと

坂東:ありがとうございます。ちなみに、この『無敗営業 チーム戦略』という本ですが、2020年の10月に出ています。でもこれ、内容は、コロナ禍が始まってからのことじゃないですか。

高橋:そうですね。もともとコロナ禍になる前から原稿は書き始めていたんですけど、その最中にコロナ禍が始まり、コロナ禍寄りの内容もけっこう書きました。

坂東:あ、そうなんですね。コロナ禍が始まってからこれを書いたのは、すごいスピード感だなと思っていたんです。

高橋:いえ(笑)。

坂東:準備は進んではいたんだね。

高橋:そうですね。でも、ちょうどまさに書いている現在進行形の時にコロナ禍になって……。

坂東:仕事のキャンセルがめちゃくちゃ相次いだ。

高橋:対面で人と会えないので、ものすごい勢いで仕事が吹っ飛んで暇になったんです。

坂東:研修関係も飛びますよね。

高橋:そうですね。それで営業担当役員の人たちに、「今だったら無料でご相談にのります」みたいな話をしていったら、なんかみんな「会社の人たちには言えないけど、ぶっちゃけどうしたらいいかぜんぜんわかりません」みたいなことを言われた。

そういうことってあんまり言わないんだなって思ったんです。当時は営業組織って、やっぱりすごくトップダウン的なカルチャーの会社が多かったので。

坂東:そうでしょう。

高橋:コロナの最中でも、みんな何か方針が下りてくるのをずーっと待っているんですよ。

坂東:おもしろい。

高橋:役員の人もどうしたらいいかわからない。だって、営業に行こうと思っても行けないし。リアル対面の仕事もできないし。大混乱じゃないですか。

坂東:そうですね。

高橋:でも、社長からは「目標達成せよ」みたいなことを言われている。

当時、2020年ぐらいに、僕が一番聞いたセリフは、役員の人たちの、「コロナを言い訳にするな」みたいな言葉が多かったわけですよね。でも、どうしたらいいかはよくわからない。けど、現場の人たちにはそういうことは言えないから、現場は現場でなんとかしてくれみたいな。

「進化型営業」を考える

坂東:なるほど。おもしろいっすね。さっき事前に、天外伺朗さんの天外塾を受けていたっていう話をされましたが、たけちゃんよりも早く受けていたんですね。

高橋:早いか遅いかにそんなに意味があるかはわからないですけど。でも、ちょうどその時に自分がすごく必要としているなという感覚はありましたよね。

武井:僕が2014年で、高橋さんが2013年とおっしゃっていました。

高橋:たぶん自分が行った後に武井さんが通った。武井さんが参加されて、その後に武井さんご自身の講座も始められたじゃないですか。だから、ちょうど入れ替わりみたいな。

坂東:なるほど。

武井:僕は天外伺朗と出会って、けっこう人生がごろっと変わったなぁという感覚があります。彼がひたすら言っているのは、「判断しない」。天外塾でも、ジャッジしないとしか言わないんですよね。

でも、それがすごく「手放す」とつながる気がしていて。今までの経営手法とか営業もそうだと思うんですけど、何でもかんでも自分の思うようにコントロールしたい欲求が人間はあるし。それを強化するようなメソッドや知識が多かったと思うんです。

坂東:うん。

武井:でも、コロナでZoomやオンラインでつながることのほうがむしろデファクトになってきた時代に、テレビからインターネットになったみたいに、発信する側よりも受け取る側が選ぶ要素が強くなった気がして。このへんの進化型組織ではなくて、「進化型営業」ってどんなだろうというのを探りながらお話を聞けたらなと僕は思っています。

営業組織にありがちな構図と課題点

坂東:コロナ後の営業のやり方は、こちらの本でも、「変わってきているよ」と書いてありました。この本は2020年のものなので、今(2023年)は、進化型営業はどんな感じですか。

高橋:進化型営業。そうですね。一足飛びに進化型から始めずに、まず「営業組織ってこうなりやすい」みたいな構造があるので、それをお話ししたいと思います。

坂東:ありがとうございます。

高橋:今まで、僕の会社で4万人以上の営業の方々をご支援してきた中で、似た構造があります。営業組織って、だいたい成績を上げた人が上にいくわけですよね。

坂東:当然そうですよね。

高橋:そうすると、売れる人がマネージャーになる。さっきの「判断するな」という武井さんの話がありましたが、まずできる人が上にいて、いろんなことを決めたり仕切るわけですね。だいたいトップの人は、けっこう営業ができる人なので、「こんな簡単なことがなぜできないんだ」といつも思っている。

坂東:常に思っていますよね。

高橋:ちなみに、営業組織のトップの人が「なんでこんな簡単なことができないんだ」と言い出すと、だいたい、それから1年以内に組織が危なくなる。

坂東:そうですか(笑)! すごい。

高橋:そういう傾向があります。逆に「やっぱり営業って難しいよね」という人が上にいると、けっこう健全に回るんです。「なんでこんな簡単なことができないんだ」は指示型で、「これをやればいいんだ」とたくさんの指示を出して、回らないみたいな。これは本当によく起こるんですよね。

坂東:なるほど。

高橋:上のほうにいく人を、壁を乗り越え続けた超人とよく呼ぶんですけど、商材やビジネスモデルで差別化できないと、最初にここでつまずく人がけっこう多いわけですね。でも、超人はそれも乗り越えちゃう。だいたい営業組織は、戦略がきちんとあるケースがけっこう少ないです。

坂東:気合いと根性みたいな。

高橋:それでも、誰も教えてくれないけど、売っちゃう。最初はなかなか結果が出ないけどへこたれないみたいな人が上にいるんですよね。だから、すごく抑圧されたものが溜まっている。

坂東:なるほど。というか、高橋さんはそうじゃなかったんですか? 

高橋:僕も、実際最初はそうだったんですよ。『無敗営業 チーム戦略』の冒頭にも書きましたけど、今の会社の前は、毎年2倍のスピードで大きくしていこうというベンチャーの営業担当役員をやっていましたので。それこそ……。

坂東:ゴリッゴリですよね。

高橋:ちょっと、普通ではない精神状態で、いつも仕事をしているわけですよね。

坂東:(苦笑)。

成功した「自分の真似」をさせる上司

高橋:だから最初に創業した時は、何も商品も実績もないけど、気合いで売らなくちゃいけないから、お客さんのオフィスに行き、トイレに入って、鏡を見て精神集中して電話を取るみたいな。

坂東:わかる~(笑)。

高橋:毎日100件ぐらい電話して、ようやく取れたアポイントですから。この1件を絶対無駄にしてはいけないみたいな、そういう必死の思いでなんとかやっているわけなので、属人の極みですよね。

坂東:極みですね。

高橋:だけど、創業当時の僕は25歳だったので、マネジメントとは何ぞやとかもぜんぜんわからないですから。最初は自分の真似をみんなにさせようとしたんですよね。

だから、若手の人に「高橋さん、営業ってどうやったらいいんですか」と聞かれたら、「まずはトイレに行く」と答える。「まずトイレに行って精神集中するところからスタートするんだ」みたいな、自分がやっていることをそのまま教えるってそういうことなので。

坂東:必殺のルーティーンですね。

高橋:当然ながら、そんなことだとやっぱり売れない。でも、最初はすごく自分の真似をさせようとしたんですよね。

武井:高橋さんの真似。

坂東:私も営業ゴリッゴリの、いわゆるベンチャー企業にいて、リクルート系を卒業した人が代表している会社でした。当時の私の上司は、逆にトイレに行かないんです。

高橋:(笑)。

坂東:私が「ちょっとトイレ行ってきていいですか」と言うと「お前、そんな状態で営業に行こうと思ってんのか。集中が足りん!」という感じです(笑)。だから、「あ、トイレとかに行って気を散らせてはいけないんだ」という教わり方をしていましたね。だから、高橋さんの逆ですね。まさに、いわゆる属人的ですよね。

高橋:僕はよくn=1と呼んでいるんですけど、「自分はこれでうまくいった。だから、これをやりなさい」となりやすいんですよね。例えば僕の場合だったら「トイレに行け」だし、坂東さんの上司の場合は「トイレに行くな」となる。

大事なのはそこではないんだけど、よくわからないけど売れてしまっているから、そうなるんですよね。

坂東:そっか。よくわからない……。

高橋:やっぱりよくわからないままにやったんです。ツボがわからないというか。自分のしゃべっている内容をビデオに撮って、そのビデオの内容をみんなに見せて、「この通りにやりなさい」みたいな。

坂東:あぁ~。あるな。

高橋:当然うまくいかない。だから最初からぜんぜんだめでした。

坂東:なるほど。

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