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HRテクノロジーを活用した人材育成方針とその実践 ーセプテーニグループが定義する「人材育成方程式」とは?ー(全3記事)

「評判」が高い社員は低い人と比較して業績4倍、離職率は半分 10数年分のデータに基づく、活躍しやすい人材の採用・育成法

「人的資本経営」の推進が求められ、人材の価値を最大限に引き出すための取り組みにも注目が集まる中、株式会社SmartHRが主催した人事・経営者向けのセミナーに、セプテーニグループ 株式会社人的資産研究所の平岩力氏が登壇。「HRテクノロジーを活用した人材育成方針とその実践」をテーマに、データ検証でわかった「評判」の高い従業員の特徴や、入社1年目の「初期適応」の重要性などが語られました。

データを活用した人事戦略

薮田孝仁氏(以下、薮田):あらためまして、SmartHRで人事執行役員をしています、薮田と申します。今日は、セプテーニグループの人的資産研究所の、平岩さんにお越しいただいています。ここからは、平岩さんにお渡ししたいと思います。よろしくお願いします。

平岩力氏(以下、平岩):はい、よろしくお願いします。セプテーニグループ、人的資産研究所の平岩と申します。

今日は、『HRテクノロジーを活用した人材育成方針とその実践』と題して、セプテーニグループでこれまで十数年取り組んできた、人事データを活用した取り組みをご紹介できればと思います。まず簡単に会社の概要をご紹介させていただきます。

(スライドの)左側に、セプテーニグループとあります。従業員数が約2,000人で、インターネットの広告領域や、主にはIT領域の事業をやっている会社です。比較的若い人材が活躍しながら、成長してきた企業というところが1つの特徴かと思います。

その中で、(スライド)右側の、人的資産研究所。もともとは「“人が育つ”を科学する」というテーマで、人事内の一研究チームのようなかたちでしたが、2016年からセプテーニグループ内の一組織として、従業員に対してデータを活用したHRテクノロジーの開発や人事ソリューションの提供などを行ってきました。

その後2021年1月に事業会社化して、今は外部の企業さまのご支援をさせていただいています。

また、長年さまざまな実証研究にも取り組んでおり、大学の研究室やスタートアップ企業とも連携しながら、採用、配置や育成、研修といった領域での研究レポートや、一部学会での発表も行ってきました。

ここまでが前段で、ここからは今日のアジェンダに移っていければと思います。今日は、セプテーニグループの「人事戦略と人材育成方針」と「具体的にデータを活用した人事戦略の具体例」についてお話させていただきます。

適時、薮田さんからご質問等を挟んでいただきながら進めていければと思います。

まずはセプテーニグループの人事戦略と人材育成方針についてお話しします。(スライドに)「人材育成方程式」という、ちょっと聞き慣れない概念を記載していますが、このへんの成り立ちや背景などを含め、まずセプテーニグループの事業環境から、人事戦略につながるようなお話をできればと思います。

野球のセイバーメトリクスに着想を得た「人材育成方程式」

平岩:我々は、基本的にはインターネット関連の、いわゆる新興市場の発展とともに事業成長してきました。

新興市場ですので、実務経験者が圧倒的に少ないマーケットになり、採用環境も熾烈です。直近の中途全体の求人倍率を見ても、全体の倍率が2.09倍に対して、いわゆるIT・通信領域は6倍近い状況です。IT/通信業と広いカテゴリですが、いわるゆ売り手市場な状態がずっと続いていますので、我々も経験者の人材供給に長年苦戦し続けてきました。

そのため、いかに多くの新卒を採用し、早期に活躍させるかを重要なテーマとして考えてきました。流動性の高いマーケットの中で、定着させ、かつ自社の中でパフォーマンスをあげてもらうことが、人事戦略上とても重要なテーマになってきたと思います。

この「データベースに基づく科学的な人材育成構造」を作っていく話になりますが、自社で活躍しやすく辞めにくい人材を、狙って採用して、早く育つ環境をつくっていく。ROIの高い安定的な人材の調達。この実現のために、人材育成方程式という概念の下に、採用や配置、育成の各施策を進めてきました。

この人材育成方程式を「HR版マネーボール」と記載させていただいています。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、『マネーボール』は、メジャーリーグのオークランド・アスレチックスという資金力が乏しいチームが、ヤンキースなどの資金力のあるチームに勝って、優勝するストーリーを書いた実話です。

実際にアスレチックスで行われたセイバーメトリクスという、データや理論を活用して選手を獲得したり起用する手法があります。アスレチックスならではの活躍しやすい選手を獲得して、よりチームに合った起用法をするイメージですね。これに着想を得て考えたものが、人材育成方程式の概念です。

人の成長は、「個性 × 環境」。環境とは、一緒に働くチームの方との人間関係や仕事内容というイメージです。誰とどんな仕事をするのかという部分をできるだけ個性にフィットさせ、現場で人が育ちやすい構造を作る考え方です。

この方程式に沿って、個々人の成長をデータで可視化し検証しながら、人材育成の再現性と効率化を実現していくのが、この概念です。

薮田:この(スライドの)E(環境)がT(チーム)とW(仕事)ってことで合ってますか?

平岩:そうですね。この環境(E)の中身としてT(チーム)とW(仕事)の要素があるという理解で問題ありません。

データ検証でわかった「評判」の高い従業員の特徴

平岩:基本的にはこの方程式に沿って、人的資産研究所として、HRテクノロジーの開発やソリューションを提供してきたのがこれまでの流れです。

具体的なところでお伝えすると、(スライド)左側のG(成長)を僕らはレピュテーション(評判)という概念で表現をしています。よく「評判の良い社員」などと言われますが、周囲の方からの評判を可視化していくイメージが、左のGです。

右側のPとEは個性と環境ですね。個性と相性の良い環境を作っていくために、株式会社ヒューマンロジック研究所の提供する、相性・関係性を科学するFFS理論を活用しています。これは人の個性にあった関わり方などを科学する理論です。

セプテーニグループでは、半年に1回、全従業員同士でレビューをし合う仕組みを運用していて、その結果から「G」を取得しています。

このデータをもとに、評判のデータの高低と、実際の業績や離職との相関などを見る。「評判のデータが高いほうが業績が高いよね」とか、「高いほうがちょっと辞めにくいよね」みたいな検証を長年行ってきました。

イメージとしては、評判の高い社員の方は、やはり良い仕事がもらえたり、良い支援を受けられたりすることが現場の中であるかなと思うんです。こういった感覚的な「評判」を可視化して、データ活用するイメージですかね。

薮田:なるほど。なぜ「評判」だったのかを聞いても良いでしょうか? いろんな仕事が落ちてきやすかったりとか、そういったところが見えてきたんですか?

平岩:この左側の要素は、セプテーニグループでもう20年ぐらい運用してきたものです。人事評価の1つに「360度マルチサーベイ」という仕組みがありまして、客観的な能力評価として周りの方からスコアで評判を取ることをずっとしていたんですね。

そのデータがけっこうありましたので、高い評判を得る従業員はどういった個性なのかとか、どのくらい業績をあげているのか、また離職との相関はどうなのかといったデータ検証をし続けてきた結果として、「評判」が高いほど業績や定着とのプラスの相関が見えてきたため、「評判」という要素を重視していくような考え方になってきたかたちです。

(スライドの)右側。これは個性と関係性を定量化して科学するところですね。株式会社ヒューマンロジック研究所が提供しているFFS診断を、我々セプテーニグループでもユーザーとして十数年使っています。

入社1年目の「初期適応」の重要性

薮田:視聴者のみなさまから質問が届いたので紹介させてください。「360度評価みたいなもので実施していますか?」とか、「何名くらいの人が回答していますか?」といった質問です。

平岩:セプテーニグループの人事評価のシステムは、業務上関わりのある人同士がお互いを自由に評価できるような、360度マルチサーベイというシステムを活用しています。被評価者の立場からすると、一緒に仕事をした周りの人から任意で評価を受けるようなかたちです。

グループ平均で1人当たり15~20人ぐらいから評価を得ます。人の感覚知を「評判」という集合知としてスコア化して可視化するイメージですね。

薮田:「成長=評判の高さ」のところをもう少しおうかがいできればと思います。

平岩:長年取得したレピュテーションのデータを調べると、スコアの高い人は低い人に比べて業績相関が4倍ぐらい強いとか、退職率もスコアの低い人の半分ぐらいといったことがわかります。

あくまで我々のグループの環境だと、レピュテーションのスコアが高いほうが業績が高い可能性が高い。そして辞めにくい。つまり、「レピュテーションの高い従業員が増える=活躍し辞めにくい従業員が増える」という構造が作れるというイメージです。

薮田:よく理解できました。過去のデータから、評判が良ければ成果も上がるし、離職もしづらい。そういったところがポイントですね。

平岩:そうですね。特に1年目とか若いタイミングで評判が良ければ良いほど、その効果が持続するところがあって、やはり1年目の初期適応はすごく重要だという捉え方をしています。それが3年後、5年後に影響するイメージですね。

薮田:非常に理解が深まりました。ありがとうございます。

平岩:伸びているマーケットで、人が定常的に足りず、なかなか採れない中で、科学的な育成の構造を作り、活躍しやすい人材を狙って採用するというのが、ここまでのまとめになるかと思います。

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