2024.10.01
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コーチング型マネジャーが最高のチームを作る(全1記事)
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ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(以下、ピョートル):今日はコーチングとフィードバックについて、ワークショップ形式で議論をしていきたいと思います。
僕の講演を聞いたことがある方はわかると思うんですけど、いつも同じようなお願いで始めます。みなさんにひたすら好奇心を持っていただきたいということです。とある研究によると、日本人は好奇心が一番低い民族だと言われています。20歳の日本人が65歳のスウェーデン人と同じレベルの好奇心しかないんです。
そして、もう1つお願いしたいのは、ひたすら集中していただきたいです。おそらく日本人は一番仕事に集中している民族だと思います。みなさん鬼のように集中なさっているんですけど、何に集中しているかというと、パソコンとかメモですよね。
周りを見て、人に好奇心を持って、人に集中していただかないとマネジメントという仕事はできません。マネジメントの役割は、「演じる」しかない(笑)。役割のパラメータがあります。よく考えると、彼女、彼氏、妻、夫、お母さんというのも役割でパラメータが決まっています。
例えば、いきなりお母さんが泣き出して「もう育児は無理」と子どもに言えないですよね。あるいは、彼氏が「今日はデートではなく、1人でゲームがしたい」と言ったら、大変なことになってしまう。我々はどの役割も演じなくてはならないんですけれど、今日は、そもそも役割の前に「その人を人として見ましょう」とお伝えしたいと思います。
好奇心を持って集中しようというお願いと、もう1つ重要なのが、落ち着いて参加して、みなさんのパフォーマンスを引き出すことです。夢中になると、フロー状態やゾーンなどハイパフォーマンスな状態になり、生産性の高い仕事ができます。
後ほど、祝子さんがどう思われるか、聞きたいのですが、僕はチームメンバーがゾーン、ハイパフォーマンス状態、夢中になる状態を作ってあげるのが、マネジメントの仕事だと思うんですよね。
僕自身もモルガン・スタンレーとGoogleで長く働いて、経営層までいっていろいろとマネジメントをしてきました。リーマンショックの時は残酷な組織の状態も見たし、Googleのようなとても働き甲斐のある会社や、自分の作った会社や関わった会社でマネジメントを経験しました。
誰もが自己実現できる世界を作るのが僕の夢です。今回のイベントではみなさんもマネジメントの役割を持ち、自分にしかできないことを始める、何らかのきっかけを見つけていただければ幸いです。
ピョートル:ここで本日のゲスト、祝子さんから自己紹介をお願いします。
ヴィランティ牧野祝子氏(以下、牧野):ありがとうございます。こんにちは、牧野祝子です。私は親も兄も英語をしゃべれないんですけれども、そんな家族の中で1人だけblack sheep(黒い羊)みたいに言われていました。
ずっと海外に行きたいなと思っていたところ、ご縁をいただいて10ヶ国くらいで仕事をさせていただきまして、すごく楽しかったですね。気がついたらまったく予定していなかったイタリア人と結婚をしていました。
もともとはフランス語をやっていたので、フランス人との結婚はあるかなと思っていたんですけど、イタリアは想定外でした。当初はローマにいたんですが、本当に嫌で(役割を)破棄したんですね。ローマ脱出作戦を行いまして、上海に逃げました。上海に逃げてみたら楽しくて、そこに10年いました。
その後もいろんな会社に勤めましたが、数年前にイタリアのミラノに住み始めました。ミラノって大きい町に聞こえるんですけど、私のイメージでは渋谷区くらいしかない小さな町で、何もやることがないから「どうしようかな」と思って、オンラインでコーチングをスタートしました。
そうしたらそれがすごく楽しくなりまして、今は個人のお客さまと法人のクライアントさんにコーチングをさせていただいています。
子どもは3人おります。1人は障害があって、14歳ですけど、話せないし、まだおむつをしています。本当に自分では何もできないんですけど、彼女を通じて、人って存在しているだけでこんなに素晴らしいんだと。学校からもそう言われて、そういう存在もあるんだなと思いました。
先ほど、自己実現の場を作るとピョートルさんがおっしゃったんですけど、私のミッションは、人の可能性の蓋を開けることだと思っています。ちょうどこのスタジオにも私の大好きなル・クルーゼ(フランスのホーロー鍋のブランド。重いことで知られる)が飾ってありますけど、あんな感じで特に日本人の方の蓋は重いのかなと思っています。
子どものころに「何がやりたいの?」と聞くと、「これをやりたい、あれをやりたい」と言いますが、中学生くらいになるとだんだん大人になってきて、高校、大学に行くとだんだん見えるところが狭くなって、重い蓋をしてしまうんです。
私はそれを開けて、「いろんな世界があるよ」と見せてあげたいなと思っております。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
ピョートル:ありがとうございます。では、参加者の皆さんに伺いますが、今日は何のためにこのイベントに来たんでしょうか?
例えば、ここに来て、自分のモヤモヤを吐き出して変わりたいとか。仕事の問題を解決したいとか。マネジメントを学びたいというのもあるし、友だちを作りたいというのもあるかもしれませんね。ぜひ目的を持って参加してください。
では、本題に入っていきましょう。僕は「よきマネジャーは、よきコーチである」と考えていますが、社会に良いインパクトを生み出すためにマネジャーにはどんな役割があるのでしょうか。
マネジメントで一番の問題は、「カモメ・マネジメント」です。seagull managementという英語があるんですね。カモメ=上司が飛んできて部下の頭の上にフン=問題を落として、飛び去る。だいたいこんなマネジメントが多いんです。
現場のことをわからない、部下のことをわからないままで、「おーい、お前ら何しているんだ」「あーダメだ」と問題を起こして去ってしまうマネージャーで、マネジメントの仕事をしない。要は、人を見ない。目標を設定しない。1on1をやっていない。コーチングをやっていない。フィードバックをしていない。ポジティブもネガティブもしていない。
牧野:1on1をしても自分1人でしゃべっている。
ピョートル:そう! 最後にビックリするような予想だにしない評価をつけるという問題もある。でも、管理職が悪くて、現場ばかりがかわいそうかと思いきやそうでもありません。現場にも実際にいろいろな問題があり、ずるい人もいます。例えばやる気がなく、評論家のように論理思考でごまかす人。アウトプットを出していないんですけどブツブツ言う人。
あるいは、なんでも従うYESマン。考えずに「これやってください」「はい、わかりました」。でも、「間違えた」という時に、「言われたことをやったから僕のせいではございません」と責任を負わない人。
理想は前向きなフォロワーを作っていくことですけど、そうでもないチームメンバーの方もいます。考えてみればマネージャーも、良くも悪くもかわいそうな部分がありますよね。
ピョートル:僕はマネージャーの役割とは、メンバーの好き嫌いや性格に、感情やバイアスを抱くことなく、常に彼らが最高のパフォーマンスを発揮できる状態を提供することだと思います。祝子さんはどう思われますか?
牧野:そうだと思います。「好き嫌い」というところがおもしろいなと思います。
「好き」でなくていいんですが、相手を1人の人間としてリスペクトすることが大切だと思っています。無理に好きになろうとすると、好きになれない人もいるんだけれども、相手を知ろうとリスペクトすることが大切だなと。
ピョートル:ありがとうございます。今日のテーマのコーチングについてはフィードバックも1つのキーですね。フィードバックをすればコーチングができるし、コーチングしながらフィードバックもできる。僕は勝手にコーチングは「創造的な会話」だと思っています。
何らかの新しいものを生み出していく会話ですよね。ICF(International Coaching Federation=国際コーチング連盟)では、いろんな考え方があって、コーチは意見を言わないという考え方もありますが、僕は個人的には、強い意見を言ってもいいと考えています。
その意見が本当に何らかのアウトプット、アウトカム、創造につながるのであれば言うべきだし、人のためにならないのであれば、黙って聞いてあげたほうがいいと思うんですよね。
dialogue=対話とは、成果、変化、行動の変容を促す、創造的な会話だと思っているんですけど、祝子さんはどう思います? コーチングをなさっている中で、自分の軸、定義は、どんなものですか?
牧野:「創造的」はすごくいい言葉だと思います。性善説、性悪説がありますが、私は土台として、みなさん性善説だとと思っているんですよ。
人間は放っておけばもともとやる気があるのですが、何らかの理由で潰されてしまったり、さっきのカモメみたいな上司が来られると、やる気がなくなってしまったりして、自分に蓋をしてしまうんです。
その人のいいところは何かな、何を考えているのかなと聞いてあげるのがコーチングだと考えているので、1on1では上司がしゃべるのは2割くらい。あとは質問をしてしゃべらせてあげればいいんです。それがよく逆になってしまうのが、もったいないなと思います。
ピョートル:僕は個人的に、「人に優しく」と「結果に厳しく」のバランスがコーチングの基本だと思っています。
例えばメンバーのペットが病気になった、彼氏に振られた、子どもが病気になったということが毎日のように起きている場合、いかにそれを理解してあげて、人として見てあげるかがまず大前提。それをしっかりすれば結果も出る。
みなさんも僕も一緒で、精神的、物理的な痛みを避けようとするし、喜びを得ようとしますよね。否定されたいわけではなく承認されたいですよね。恐れがほしいわけではなく希望がほしい。マネージャーとして、友人として、親として、関係性がある中でいかにお互いにポジティブな部分を増やしていくかが「人に優しく」という前提だと思うんですよね。
なぜ心理的安全性が必要かがよく議論されますけど、「残酷なほどの率直さが生まれるようにするため」です。「ちょっと待って。このスープ、味付けが良くないよね」とか、「この味噌汁、ちょっと薄いよね」とか、「このシャツは合わないよね」という会話が自然にできれば、多くの家族が幸せになれるし、会社も一緒ですよね。
牧野:この前主人に、結婚してもう20年くらいになるんですけど、「この食べ物好きじゃない」って言われたんですよ。
ピョートル:おお! 20年もがんばって作っていたのに。
牧野:そうです。言ってくれればよかったのに。言わなかったわけではなくて、単にポロっと出ただけですけど新たな発見でした。
ピョートル:なるほど。そういう時にいただいた意見を「否定しない」ことが大事だと思います。出た意見をどう受け入れるかですね。根本的にコーチングもマネジメントもこれを前提として考えていただければいいと思います。否定をせずに、まず褒めるとか。
牧野:すみません、一点追加すると、「ポジティブフィードバック」は、褒めることとイコールではありません。
褒めることもありますけど、それだけではなくて、例えば目を見て話をすると、私に興味を持ってくれているんだなと思いますよね。挨拶をすることもそう。
昔、私の上司でいたんですけど、会社に来て鞄をドンと置いて、コンピューターを出して、誰にも何も言わないでジャーっと仕事をするタイプの人。皆さんの近くにもいませんか? そういうタイプの人と、ピョートルさんみたいに「みんな、おはよう」と言う人との違いは、存在承認をしているか、していないか、だと思います。
ポジティブなフィードバックは褒めることだけではないと一言付け加えさせてください。
ピョートル:すてきです。
始めに話した通り、メンバーが最高のパフォーマンスを発揮できる場を提供するのがマネジメントの役割です。みなさん知っていると思うんですけれども、3人のレンガ職人の話があります。
あなたがやっている仕事は、ただの作業(インプット)か、作業の結果(アウトプット)か、作業を通じた社会的インパクトなのか。
どこに目を向けるかで、出世するか、キャリアの土台になるか、幸せに働けるかが変わる。みなさんがアウトカム(成果)とインパクト(影響)にどう自分の意味づけをするかがとても大事です。我々が目指そうとするものが、仕事に成果や影響をもたらすのです。
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