2024.10.10
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出川久美子氏(以下、出川):問いの話が出てきたところで、次の話題に移らせていただきたいと思います。問いへの注目や関心が集まってきていることについてですね。例えば、QWSはちょうど3年前にオープンしているんですけど、問いをコンセプトにしています。「Question with sensibility」の略で、QWSという名前です。
その翌年には、京都に「QUESTION」という、同じく問いを起点とした施設ができています。さらには、安斎先生が申請されたんですが、昨年10月1日が「大切な問いに向き合う日」として、日本記念日協会から認定をいただきました。
世の中的にも、問いに触れ合う機会が増えてきているように、我々も感じているところです。
それに対しての要因や、「問い」が有効に使われているのか? などのご意見をおうかがいしたいと思います。こちらは安斎さんからお願いします。
安斎勇樹氏(以下、安斎):いろいろな考え方があると思うんですけど、何回新しい種を植え替えても、芽が出なかったら「土が悪いんじゃないかな」となるのと一緒で。どんなに考えてもなかなか納得のいく答えが出ないので、きっと、「大元である問題設定が悪い」ところにフォーカスがいくことがあると思います。
あとはさっき、揶揄しながらコロナの話を出しましたけど、とはいえ、どんなにがんばっても、1ヶ月で解が出ない問題だったじゃないですか。(今も)まだ出ていないと思うんです。
今までは一生懸命がんばって急げば、答えを出すまでの時間は短縮できたと思うんです。けれど、世界的に考え続けざるを得ない状況に覆われ続けて、「来月までに絶対答えを出してください」と言われても、不確実性が高すぎてわからないですよね。
だからそういう意味で、答えを出すまでのプロセスにどれだけ質の高い思考とかコミュニケーションとかコラボレーションをするか、否が応でも痛感させられたのが、「問い」にじわじわと注目が集まっている要因なのかなぁと思います。
安斎:最後の、「問いは有効に使われているんでしょうか?」まで答えきれないまま、石川さんにパスしようかなと思います。
出川:石川さん、ぜひお願いできますか?
石川善樹氏(以下、石川):「問いを有効に使うには、どうしたらいいのか?」だと思うんですよね。
さっきのSDGsの話でいくと、1982年に「21世紀の地球環境の未来」が出て、その1つの答えが出るのは5年後の1987年なんですよ。1987年に、「Sustainable Development」という概念が、国連から発表されて、誕生したんです。それには5年間かかっているんですね。
問いを有効に使うために、どうして5年かかったのかなんですけど、プロセスはすごく大事なんですよね。「どういう人たちと議論するのか?」で、さっき言った「アイデアを考える人」と「意思決定する人」と「実行する人たち」。この人たちと一緒に考えないと、問いから出てきた「こうしたらいいんだ」というアイデアが、意思決定もされないし実行もされないんだと思うんですね。
SDGsの場合は5年間かけて、世界各地を回って、一応市民社会と対話を繰り返したんですよね。「問いと議論」というのですかね。だから、どれくらいの規模で実行していきたいのかによって、どういう人を巻き込まなきゃいけないのかが当然変わってきます。
石川:1人で完結するのが、一番手っ取り早いといえば手っ取り早いですよね。自分で問いを立てて答えを出してやっていけばいいので、簡単というか(笑)。
まとめると、僕、しょうもないことを言っていますよね。「問いを有効に使うには、だれと一緒にその問いに取り組むかが大事」という(笑)。なんかもう、当たり前すぎることですかね。
安斎:僕も、主に組織のコンサルティングとか課題解決に関わる上で、それはすごく重要だなと感じています。
「問いが重要だ」という合意はもう形成されていると思うんです。けれど、その問いの目利きではないですけど、この問いは1週間かけるべき問いなのか、3ヶ月かけるべき問いなのか(を考える)。
5人で話すべきなのか、全社員で話すべきなのか。経営陣で話すべきなのか、現場マネージャーに落とすべきなのか。むしろ全員で話さないといけないのか......という。
処方が立っていないというか、薬も、即効性のある「バファリン」みたいなものと、毎日飲み続けて習慣化しないといけない、遅効性の「漢方」みたいなものがあると思うんですけど。
スコープと時間とサイズと……みたいなことがうまく使い分けられているかというと、たぶんそれはこれからなんだろうなという気はしますね。
石川:昔の日本の「寄合」とかは、問いがあった時に、3つのプレーヤーがいて。1つは村人たち、今生きている人たちですよね。2つ目のプレーヤーが死者なんですよ。死者役の人がいて、「ご先祖様はどう考えるだろうか?」という(笑)。
3つ目が、自然と神様なんですよね。八百万の神様です。「山神様は、なんとおっしゃるだろうか?」みたいな(笑)。
生者と死者と神様、この3者で問いに対して取り組むのが、縄文時代以来、ずっと続いてきている日本の伝統社会における問いへの取り組み方です。
だから僕自身、だいぶ立場が変わってきたのもあると思うんですけど、最近は、「その問いに対して、だれを連れてきたらいいんだろうか?」という発想に、すごくなっているような気がします。
出川:ありがとうございます。「問い」と一言で言っても、5年かかって少しずつかたちにしていく問いもあったり、本当にたくさん種類があるなと(思いました)。そういう意味では、有効に使うのはこれからということだと思うんですけど。
あとは、「仲間探し」じゃないですけど、「問いに一緒に向き合う仲間作り」も、やっぱり大事なんですかね?
QWSだと、「3人以上のチームでプロジェクトを組んで、その問いに向き合う」といっているんです。3人くらいいないと、なかなか1つの問いに向かっていけないのではないかというところもあって、そういうふうに設定をさせていただいています。そのあたりとかどう思われるかも、お聞ききしてもいいですかね?
安斎:僕はずっとコラボレーションの研究をしてきたので、「三人寄れば文殊の知恵」をどうやったら起こせるのかが、僕の博論の「隠れ問い」というか、「メタ的な問い」だったんです。そういう観点で、仲間がいるのは重要だなと思うんですよね。
仲間ってけっこうのようなところが難しくて。かつ「多様性を活かす」みたいなのも、「言うは易しNo.1」みたいなスローガンじゃないですか(笑)。博論でもずっといろいろ考えていて思ったのが、仲間は重要だと思うんですけど、「共通性と差異性が、どれだけ同居した仲間であるか?」がけっこう重要です。
みんなバラバラで、その問いに共感していなくてもダメだし、すごく共感しすぎてしまっていて、同質性が高すぎてもダメだし。
最近読んだ論文でおもしろかったのが、多様性を活かすのは、ヨットみたいな帆がある船(帆船)を漕いでいくタッキングが重要だという話でした。
タッキングって、風がブワーっと吹いてきている時に、(手を顔の前に出して)帆をこっちで風を当てていたのを、どこかでこっち(帆の反対の面)に切り替えて、そうやって切り替えながら船は進んでいくらしいんですよ。船を操縦したことがないからわからないんですけど、そのタイミングがすごく重要らしいです。
このタッキング、チームの同質性に注目するモードと、差異性に注目するモードの切り替えで船は進むんだ、みたいな話が書いてあって、「なるほどなぁ」と思ったんです。
「そういう問いを共有しながらも、違う眼差しで眺めて、でもある時、同じもので共感して」みたいなことを、行ったり来たりできる仲間をいかに探せるかが重要なのかなぁと、個人的には思いましたけどね。
石川:出口次第ではないですかね。問いを入口とした時に、出口が例えば「法律改正」みたいな話だったら、3人ではぜんぜん足りないというか、もっと多くの人を巻き込まないといけない。その日限りの思いつきでアイデアを考えるんだったら、別に1人でも2人でも3人でも、何人でもいい気はします。
出口を何にしたいかだと思うんですよね。アイデアを考えたいのか、意思決定まで持ち込みたいのか、オペレーションまで落とし込みたいのかという、出口戦略次第な気がします。
出川:確かに、「3人ではどうにもならないものもあれば……」もあると思うんです。けれど、今お話を聞いていてすごく思ったのが、3人とも同じような方だと、バイアスがかかってしまって進まないところがあると思うので。多様性は難しいんですけど、やっぱり重要なんだなと思います。ありがとうございます。
安斎:今、お話をうかがっていて思ったんですけど、自分の会社の成長を振り返って、最初に掲げた問いに集まってきた10人とかでやっていた時から、気づくと20人になっていたりするわけじゃないですか。そうすると、できることが変わるので、往復的に問い側を変えていくのがけっこう重要だなって、振り返ると思います。
今(社員数が)60人になってみて、10人の頃とできることがぜんぜん違うので、自然と浮かぶ問いが変わってきたりします。出口戦略にあわせて仲間設計するのも大事ですけど、増えてしまった仲間に対して、出口を変えるじゃないですけど、そこを相互作用的にやっていけるとよさそうだなと(思います)。QWSのプロジェクトとかも、そういうことが起こるんじゃないかなぁと。
出川:問いから問いがまた新たに生まれたり、問いが変わったり、進化していったりしているのは、QWSを運営していてすごく思うので、そういったこともきっと起こり得るんだなとすごく感じます。ありがとうございます。
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