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ディスカッション/Q&A(全3記事)

仕事でピボットや試行錯誤できる人が持つ、「できそう」な感覚 自律性を求める時代こそ高まる、「自己効力感」の重要性

組織課題解決のプロ、識者、実践者をゲストに迎え、予測不可能な時代を生き抜く組織のあり方を共に考え、実践のヒントを伝える「Uniposウェビナー」。そのウェビナーに、リクルート人事部ゼネラルマネジャー/ライフネット生命総務部長/オープンハウス組織開発本部長など多様な企業の人事・採用部門の責任者を務め、現在は人事コンサルタントとして活躍する曽和利光氏が登壇。本記事では、Unipos株式会社執行役員の斉藤知明氏と共に、人材が流動化する時代に組織マネジメントに求められる能力や、「自己効力感」と「自己肯定感」の理想のバランスなどが語られました。

人材が流動化する時代に、組織マネジメントに必要な能力

斉藤知明氏(以下、斉藤):みんなすごく現場で考えながら進んでくれているので、ぜんぜん気づかない観点を持ってくれているんですよね。なので、そういうところから(マネジメント観を)引き出す。

かつステップ2の「行動でマネジメント」は、もしかすると勝ちパターンをマネージャーが作って決めるだけではなくて、「現場でやっていて一番成果の高いところを統合して規範化する行為」と捉え直すと、少し視点が変わって見られますね。

自分自身が「これが勝つから作るんだ」「勝つからこれをマニュアル化するんだ」ではなくて、そのマニュアルがアップデートされていくように整備しながら、そのマニュアルを基に個人の行動で良いところや成果につながるところを吸い上げていく。そういうプロセスだと捉え直していくと、形式知化する上でのポイントになるのかなと感じました。ちょっと違いますかね?

曽和利光氏(以下、曽和):最初からそれは難しいと思うんですけど、理想ですね。おそらく自律性ができてから、ステップ3になるとステップ2もある程度包含していく感じになると思うんですよね。なので、ステップ3で自律性を持った人たちがステップ4にいくと結局はその行動マネジメントができている状況になる気がするんです。

斉藤:それはステップ4に当たるんですね。計画を作れるようになってきている、計画を自律的に作れるようになっているということか。なるほどなぁ。

曽和:計画的にというのは、自由にやっているんだけどもどうやっているかは形式知化しているということですよね。

斉藤:ステップ2を飛ばすとステップ4も飛ばしがちとおっしゃっていたのはそういうことかもしれないですね。

曽和:ステップ2とステップ4で使う能力は近いんですよね。だから無意識でやっているものを結局は形式知化して、暗黙知を形式知化する能力みたいなものが2と4には必要になってきます。3はやればいいみたいな感じです(笑)。自分が何をやっているのか理解ができていなくても、やって結果を出せばいいので。

だからステップ2、4の能力が「意識していないことを意識化する」「暗黙知を形式知化する」。「言語化したり顕在化していく」「見える化する」ということになります。このへんは全部が同じことだと思うんですけど。

斉藤:これから人材の流動化が進んだ時にステップ2、4をおざなりにしているとめちゃくちゃ怖いですね。

曽和:そうですね。

斉藤:属人化している状況になっていると思うので、危機感が増しました。ありがとうございます。

「自己効力感」の高さが仕事にもたらすメリット

斉藤:もう少し気になる質問を取り上げさせていただきます。「自己効力感がない人に対して自己効力感を上げるように働きかけるのは大事だと思いますが、勘違いの自己効力感がある人がいるようなんです」。

曽和:なるほど(笑)。

斉藤:そもそも自己効力感は勘違いし得るものですかね?

曽和:自己効力感というのは先ほどのものを見ていただければと思うのですが、似たようなことがいっぱいあります。

例えば自己肯定感です。たぶん自己肯定感は「I am OK」「これでいいのだ」というものじゃないですか。「今のままでぜんぜん大丈夫」ということですね。自己効力感はそれじゃないんです。

だから「I think I can」「できそうな気がする」という、どちらかというとモチベーションに関わるものです。今のやり方でいいと言っているわけじゃなくて、「いろいろやったら最後はできそうな気がする」とか「やり方はわからないけれども試行錯誤をしていけば、あるいは今のやり方はダメかもしれないけどそのうちに何か良い方法が見つかってできるかもしれない」ということですね。

「自分を変えない」ということにはつながらないので、たぶんこの方がおっしゃられている勘違いした自己効力感というのは、自己肯定感だったり、その上に書いてある自尊心ですよね。プライドとかセルフエスティームと言ったりしますけど、自尊心は自分を尊ぶ心なので「自分は偉い」みたいなことじゃないかなと思います。

だからこれと違うんだというのは……ややこしいんですけどね(笑)。言葉の定義は別にそんなに重要なことじゃないですけど、自己効力感、自己肯定感、自信、自尊心みたいなものというのは分別して考えたほうがいいような気がするんです。

斉藤:じゃあ「俺は間違ってない」とか「このやり方が正しいに決まっている」というのは?

曽和:自己肯定感とか自尊心に近いものですよね。自己効力感とは違うと思います。

斉藤:「この仕事は難しいけど、なんとかなるでしょ」が自己効力感に近い。

曽和:「いろいろ力を合わせたり試行錯誤をしていけば、なんとかなるでしょ! じゃあがんばろう!」というものが自己効力感なので。

もちろんあまりにも、絶対ダメなことに対して自己効力感を持っちゃうと、落とし穴に落ちることはあるでしょうから(笑)、自己効力感が高いことに対して問題がないとは言わないです。

でも、自己肯定感じゃなくて自己効力感が高い人にはマネージャーが「そっちの方向じゃないよ」と言ったら、「あっそうでしたか!」と変える、方向転換の能力もあると思うんです。

「自己効力感」と「自己肯定感」の理想のバランス

斉藤:なるほど。客観的に見て、できそうにないことを「できそうな気がする」と言うのが自己効力感だけが高くなりすぎている状態と言えるのかもなと思ったんですけど、「こういう状況だとそっちの方向じゃなくてこっちのほうがいいんじゃない?」と示唆すると理解は早くなるということですかね?

曽和:現実認識ができてない人で自己効力感が高い場合ということなので、現実認識をきちっとファクトベースで応対してあげることだけだと思いますね。ややこしいのが、自己効力感が高い人はもちろん自己肯定感も相関して高い可能性がありますよね。

斉藤:なるほど。成功体験もあるし。

曽和:なので独立したものだと思うんですけど、もちろん自己効力感がないと「これでいいのだ」と思うかもしれないので、そこが問題の人かもしれないですね。本来ならば自己肯定感は別にそんな高くなくて、つまり「今のままでいい」なんて思っていなくて、でも自己効力感が高いと。これが最高かもしれないですね。

斉藤:なるほど。ありがとうございます。だからこそ挑戦がし続けられる、自律的行動が生まれやすいということなのかなと思いました。

曽和:あんまり強い自己肯定感を持ち過ぎたら「これでいいのだ」と思っておそらく改善も成長もしないですからね。

斉藤:ありがとうございます。お時間になってまいりました。全部お答えすることができなかったんですけれども、こちらでQ&Aは以上とさせていただきます。最後に曽和さん、一言いただいてもよろしいでしょうか?

曽和:今日きれいな理論をご紹介するつもりでいろいろ言ったんですけども(笑)。いろんなご質問や実際にやっているご意見をいただいたように、本当に現実に当てはめる時にはこんなに簡単ではないということがあらためてわかったなと思います。

なので、今日お話ししたものは1つの考える物差しというか、ヒントくらいに思っていただいて、あとはそれをどのように自社で適用していくのかを考えるお役に立てればと思いました。本当にみなさん、ありがとうございました。

斉藤:では駆け足でまいりましたが、本日のセッションはこちらで以上とさせていただければと思います。曽和さん、ありがとうございました。

曽和:ありがとうございました。

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