2024.10.10
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原田将嗣氏(以下、原田):続いて、心理的安全性のこわしかたもお伝えしてみたいなと思っています。
みなさんはすでに心理的安全な場を経験しているのに「なんでこわしかたを聞かなければいけないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。けれども、実際に心理的安全性の低い状態、心理的非安全な職場やチームのことを考えていくと、心理的安全性を下げる方法も見えてくるなと思っています。
心理的非安全な職場チームを一言で言うと、罰とか不安、それも日常的に行われる小さな罰や小さな不安が、チームの中で与え続けられている、そんな状態を、心理的安全性の低い状態と呼んでいます。ほとんどの罰とか不安は、コミュニケーションによって与えられると思っています。コミュニケーションとは、言葉とか態度ですよね。
なので実際に不安とか罰になる、心理的安全性を下げる要素とは、言葉とか態度の中にあると思っていただいていいと思っています。今日は特に言葉についてのお話しをしたいと思っています。こんな言葉を使っていませんかという「NG言葉」を、みなさんと一緒に見ていきましょう。
原田:例えばチームの相手、メンバーとか後輩が約束を守らなかった時とか、あとは結果がうまくいかなかった時に、ついついリーダーとかマネージャーである私たちはこういう言葉を使ってしまうと思うんですね。「なんでできなかったの?」とか「なんでこうなったの?」という「Why?」の質問ですよね。
理由を聞くのはけっこうシンプルだし、「なんで起きたんだろう」と疑問に思って、それをすぐに口に出す。当然そんなことは自然と起こることのように思われるんですけれども、実はこの「なんで」という聞き方は、非常に強力な、心理的安全性を下げるワードだと思っています。
というのも、この「なんで」を問われると、2つのモードに相手を陥らせることができるからです。「なんで」を問われると「スミマセン スパイラル」に相手を陥らせる、あるいは「イイワケ モード」に相手を陥らせることができる。
そんなマジックワードが「なんで」だと思っています。「スミマセン スパイラル」とはどういうことかというと、「なんでできなかったの?」とか聞かれるとついつい、自分は咎められていると感じてしまうんですよね。それで勝手に自分の非を探し始めます。「どこかいけないところがあったんじゃないかな」、それでそれを認めて謝罪するモードですね。
なので「すいません、僕が……できなかったので、本当に迷惑かけてしまって……」みたいな感じで、もう理由を探すよりも「すみません」と許してもらうためのモードに入ってしまう。そんな状態が「スミマセン スパイラル」でしょうか。
原田:もう1つの「イイワケ モード」は、自分の問題を直視しないで他責の思考が回りだす、そんな状況ですよね。
「いや、違うんですよ」と。「これは実はその、こういう事情がありまして」とかね。「今月は特にこういうトラブルが立て続けにありまして」と言ってしまうのも、「イイワケ モード」としては典型的な例です。「なんで」と聞いた側からすると、ふと疑問が湧くんですよ。
「あれ? 私がしたいことって、相手を『スミマセン スパイラル』とか『イイワケ モード』に追い詰めることだっけ?」と思い返すんですよね。「こういうことをやっていて仕事は前に進むんだっけな?」。果たしてそういうことはないわけです。仕事がもっと前に進むように、例え悪い結果が起きていたとしても、「なんでなの?」という聞き方を言い換えていくことは効果的だと思っています。
進捗が滞っている時にもおすすめの言葉としてご紹介もさせていただいているんですけれども、「なんで終わっていないの?」と言うぐらいであれば、ぜひ「止まっていることは何ですか?」とかね。「どこで困った?」とかね。そういうWhyからWhatとかWhereに置き換えるのは、1つおすすめだったりします。
なので、とっさに出てきてしまう「なんで」という言葉が頭をよぎった時に、「Whyではなくて別の聞き方をしてみよう」と留まることができると、この「スミマセン スパイラル」に陥らせることを回避できると思っています。
原田:他にもNGの言葉を何個か上げていきたいと思います。一度教えたことをまた聞かれたら、つい「前にも言ったよね」と言ってしまうんですよね。
この「前にも言ったね」と言われて続けていると、これも言葉としての罰とか不安になっていきます。後は目に余るメンバーに対しても、「こんなこと言いたくないんだけどさ」とかね。これは僕も言われたことがたくさんあるんですよね。「本当にすいません」と思いますよね(笑)。
実際にこれを言われながら育っていると、年の離れた後輩とかに「もうそんなこと言わせないでよ」とか、つい枕詞のように使ってしまいます。これも実は言う必要のない言葉だったりするので、こういう無駄なNG言葉は、言わないようにするのは大事かなと思っています。
あとそもそも「今の仕事は何のためにやっているんですかね」という素朴な疑問がきた時に、チームワークを乱さないために「仕事なんだからそんなこと考えないでやるんだよ」みたいに伝えてしまうのも、実は素朴な疑問が言いづらくなるNG言葉だったりします。
なので、(NG言葉を)ついつい使ってしまっていることがあれば、NG言葉を使わないようにすることで心理的安全性をこわすことをを避けていかれるといいのではと思っています。実際に周囲の言葉とか態度で、罰とか不安が与えられることをご紹介してきました。
なのでチームで使われる言葉は、罰と不安の言葉に変えるだけで、あなたのチームの心理的安全性は簡単にこわすことができます。これは断言できます。
原田:ということで「心理的安全性のこわしかた」というテーマでここまでお話しをさせていただきました。最後に「心理的安全性をつくる言葉」というパートのお話しをしていきたいんですけれども、先ほどお話ししたように心理的安全性をこわす、こわしかたも言葉によってできるというお話しをしました。
ということは、チームで使われる言葉がチームの出力を変えていきますので、罰とか不安の言葉から、心理的安全性をつくる言葉に変えていくのが1つの良い方法になりそうだということで、後半パートを進めさせていただきます。
この言葉をご紹介していく時に1つ押さえておきたい、この「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」もご紹介させていただきたいと思っています。チームの中には、心理的安全性を向上させる望ましい行動が増えることが大事ですよね。
なのでチームの中でも心理的安全性を高く感じるということは、やっぱりそれを感じさせるみなさんの行動とか態度・反応があって、その行動が増えていることで、心理的安全性が高いと感じるわけですよね。どうやって行動が増えるのか。これを言葉に置き換えると、「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」で整理をしていけるのではないかと思っています。
きっかけ言葉とは、いわゆる行動を促すための言葉なので、ある言葉をかけて「やってみます」といった、相手が動き出すような言葉が「きっかけ言葉」でしょうか。「おかえし言葉」というと、実際に行動した後、行動が起きた後にそれをどうやって受け止めるのか、その時に使っていくのが「おかえし言葉」ということで整理をさせていただいています。
原田:よくビジネスの中であるのは、多くのリーダーは「きっかけ」は与えるけども「おかえし」はけっこう少ない。みなさんも経験したことがあるのではないでしょうか?
「これ、資料の見直しをやっておいて」とか言われて、もちろん見直して、誤字も見つけて、文体も整えて資料も作り直したら「あぁ、ありがとう。サンキュー」ぐらいの話で、「ナイス。よく期日どおりにやってくれた」みたいなお返しよりは、当たり前に「そこに置いておいて」みたいな感じで終わってしまうみたいなケースでしょうか。
このようなケースでは、「きっかけ言葉」は、「これをやっておいて」と言えばいいのでビジネスの中だと業務の指示とか命令でしやすいですよね。やったことに対する「おかえし言葉」は、やはり少ないのが現状ではないかと思います。
挑戦が増えないのも「おかえし」が少ないせい、という例を1つご紹介したいんですけれども、きっかけしか与えない上司がいると、挑戦は増えていかないんですよね。
このイラストだと「挑戦しろ」と言っているこの人が上司だとして、それを聞いたメンバーは、「が、がんばります!」「じゃあ挑戦」みたいな感じでやるんですけど、やっぱり「失敗したくないな」とか、そういう思いが多くなってしまい、結局きっかけだけだとなかなか挑戦は増えていかない。
そういうとき、こんな「おかえし言葉」で挑戦を後押しできるのではないかと思います。例えば挑戦をしたら、成功とか失敗とか結果が出る前に、「〇〇さんの挑戦をシェアしたいと思うんですけど」とチームの中で発表するんです。
それだけでも、実はそれを聞いているメンバーからすると「だったら僕もこういうことをやってみようかな」と思う気持ちが増えてきたりとか。あるいは「こういうことだったら手伝えそうだな」と、それこそ助け合いがチームの中で生まれてきたりする。こういった挑戦を増やすためにも、この「おかえし言葉」は有効ではないかと思います。つまり「きっかけ言葉」で行動を促して、「おかえし言葉」で受け止める。
この「きっかけ言葉」と「おかえし言葉」を効果的に使うことで、心理的安全性をつくることができると思います。
原田:ではここから、心理的安全性をつくる言葉をご紹介したいと思います。みなさんはリーダーとかマネージャークラスの立場ですと、後輩と1on1をする方も多いと思います。
この1on1の時の心理的安全性をつくる言葉も、ぜひ1つご紹介したいなと思っていて。そもそも「『1on1』は誰のため?」というところですけれども、よく言われる上司・リーダーの時間ではないですよね。目的として、1on1は部下とかメンバー、特に目下の人がふだん言えないようなこと、しっかりとした思いを伝える、そんな場として設けることが多いと思っています。
じゃあ「良い『1on1』とは何だろう?」と考えた時に、2つあるかなと思っていて。1つは相手に「気づき」が生まれること。もう1つは、相手の行動のレパートリーが増える。それが大事な1on1の要素ではないかなと思っています。1on1の場になって、いきなり顔を柔和にして急に優しい態度を取り始めて、その時に相手が心理的安全性を感じることは数少ないです。
もちろんどんな言葉を使うにしても、大事なのは前提となる信頼関係ではあるんですけれども、まずは相手との信頼関係をつくるためにも必要なことは何か? 「ここで、この人に話していいんだ」、そんな実感を持ってもらう場にすることは1つ、目的として置いていきたいと思っています。
なので、そのためにも1on1の場は、まず「話しやすさ」を意識して行っていくのが大事です。
原田:ついつい1on1で陥りがちな罠、誘惑を1つご紹介したいと思います。特に先輩とかマネージャー、リーダー側の立場の方にやってくる誘惑ですけれども、1on1をしていると「アドバイスの誘惑」がやってくるんですよね。話を聞いていると、もちろん先輩やリーダーの方が経験も多いし知識も多いですよね。
人脈も多いかもしれない。そんな中で、ついつい良いアドバイスが浮かんでしまうんですよね。相手がまだ話している途中でも、「それはさ、こうすればいいんじゃない?」みたいな感じで、良かれと思ってアドバイスし始めてしまいます。この「アドバイスの誘惑」に負けずに、良いアドバイスが浮かんだ時にぐっとこらえていただきたいなと僕は思っていて。
ではどうすればいいか。「それはさ」といきなりアドバイスをするわけではなくて、ぜひ「ちょっと今思ったことがあるんだけど、言ってみてもいいですか?」と、確認を1つ挟んで欲しいです。なぜかというと、1on1は相手の時間、相手に話してもらう時間です。ということは、相手は話すモード、話したいモードに入っています。
話したいモードの時にいきなり聞く体制にしようと思うと、相手の思考がパッと止まってしまうんです。なので、相手にちゃんと聞くモードになってもらうためにも、ワンクッションを挟んで、承諾や許可を取ってから(発言)していくのは、とても大事な一言になっています。
そうすると相手も「それであれば聞いてみたいです」と返事をした上で、アドバイスを聞くことになりますので、有効なアドバイスにもなります。それで「今、私も考えているので待ってもらっていいですか?」と言えると、なかなか心理的安全性は高いですよね。
そこまで言ってもらえる関係性になったら最高ですし、「これを言ってあげたほうが絶対良い」と思ったのは実はあなただけだったりするかもしれません。
なので1on1の場を有効にしていくためにも、良いアドバイスをそのタイミングで言うかどうか、ぜひ相手に確認を取ってからやってみることをおすすめしたいと思います。おわりに、まとめていきたいと思うんですけれども、言葉のお話しを少しさせていただきました。(具体的な「きっかけ言葉」「おかえし言葉」の)言葉をご紹介すると、「さっそくやってみます」みたいなお声をいただくことは、確かに多いんですね。
原田:ただ、ここにいるみなさんもご存知のとおり、言葉はただ言えばいいとか、使えばいいというものではありませんよね。その言葉で何をしたいのかとか、どんな変化を起こしたいのかというあなたの思い、目的があって初めて言葉に命が宿ると思っています。
「心理的安全なチームを作りたい」とか「変化に強いチームを作るんだ」、あるいは「人が進化するチームにしていくんだ」、こういった思いをしっかり言葉に宿す。そして「いいチーム」をみなさんでつくっていければと思っています。ということで、私からは以上の発表とさせていただきます。ありがとうございました。
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