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【手放すTALK LIVE#29】「奇跡の経営」その先へ ゲスト:岩元貴久さん(奇跡の経営翻訳者)(全5記事)

米国で日本企業が弱まる中、「大谷翔平」という個が目立つワケ 世界における「プレゼンス」の高低を決めるものとは?

管理しない組織や上司がいない会社、給料を自分たちで決める会社など、ユニークな進化型組織を調査する「手放す経営ラボラトリー」。同ラボが主催するイベント「手放すTALK LIVE」に、リカルド・セムラー著『奇跡の経営』の翻訳者・岩元貴久氏がゲスト出演。社会活動家の武井浩三氏やラボ所長の坂東孝浩氏を相手に、経営に行き詰まった際にコンサルに相談する前にすべきことや、世界における日本の「プレゼンス低下」の要因などを語りました。

経営コンサルに相談する前にすべきこと

坂東孝浩氏(以下、坂東):手放す経営とかDXOで、自律分散型組織をやっていく時に、経営者自身のパラダイムシフトというか、アップデートが必要なんですけど。アップデートは、「アップデートしたい」と思ってもなれなくて、すべてのことを味わう必要があると。それが今、本当に岩元さんがおっしゃっていたことだなと思って。

今までやっていたことを変えるのは怖いし、周りの反発もすごいから、ずっとネガティブなことに蓋をしていたんですよ。会社でも、家族にも、「こっちだ」「言うこと聞け」みたいな。逃げていたんですよね。だけどそれと向き合い、味わうことで自分の変化を少しずつ感じるというか。その時はニュートラルになっているんだなと、私は今、理解しました。

岩元貴久氏(以下、岩元):そうですね。僕がコンサルタントとかコーチとして企業に携わる時に一番大事にしているのは、コンサルタントを呼んだりコーチに相談するというのは、彼らが今の現状を否定している状態なんですよ。

坂東:はいはいはい。

岩元:変わらなければいけないと。

坂東:なるほど。

岩元:ぜんぜん悪くないんですよ。変えようという気持ちを起こしているからね。それはいいんですけど、まず僕がやるのは「今の経営状態に感謝する」ところから入るんです。

坂東:なるほど!

岩元:感謝すると次元が変わるんです。経営や考え方が変わるので、自然と会社が変わるんですよ。「時代がこういうことを言っているから、僕らは変わらなきゃいけないね。合わせなきゃいけないね」じゃないんです。

もちろん「変わろう」と言うということは、ネガティブな面が見えているのでしょう。でもちゃんとポジティブな面もあって、それ見て行こうよと。「今のままでもぜんぜん良かった。社員も今までのやり方も、僕たちはやるべきことをやっていた。ありがたいな」という思いです。

そこから、「さて、これからどうしたい?」「もっと何かやりたいです」となる。悪いから変えるんじゃないんです。そうなりたいからなる。

坂東:そうなんですよね。なりたいものがあるから今とのギャップが出てくるわけですよね。

岩元:そうです。

坂東:本当、本当。

岩元:感謝からやらないと、感謝の花は咲かないですからね。

武井浩三氏(以下、武井):感謝の種を蒔いて、感謝の木を育てて。

多くの人がしている、感謝という名の「取引」

岩元:真実は常に丸なんです。僕らはいつも半月で見ているけど、盲点の部分を見ると丸になります。真実って赤ちゃんと同じで「愛」なんですよ。感謝なんです。「生まれてきてありがとう」という思いになったでしょ? あれなんですよ。

武井:赤ちゃんに生産性とかコスパとか考えないですからね(笑)。

岩元:考えないです。

武井:存在自体がただただ愛ですね。

岩元:そうなんです。

坂東:判断もジャッジもないですね。

岩元:そうですね。僕らがちょっと気を付けないといけないのは、感謝という言葉はふだんから使っているけど、僕らがふだんやっている感謝って取引なんですよ。

坂東:ああ!

岩元:価値観に合ったことをしてくれた人には「ありがとう」。価値観に反することをした人には「何を!?」と言って怒るんです。これは取引です。例えば神社に行って「大学受かりますように」とお願いして、受かったらお礼参りする。これ、神さまとの取引ですよね。

坂東:そうですね。

岩元:神社って生かされていることや存在に対するありがたさを表現するところじゃないですか。取引しちゃいけないんですよ。

ありのままをそのまま知ることができたら、その状態が感謝ですから。受け入れる必要もないんです。「受け入れる」とかそういう言葉でもなくて、真実の姿はそのまま感謝になりますよ。物事を偏った見方で判断すると、絶対に賢明な判断にならないですからね。

坂東:本当ですね。でも、私もできるだけ自分の偏りや偏見を減らしたいという気持ちはあるんですけど、なかなか難しい。

岩元:そうですよね。だからディマティーニ・メソッドみたいなのを使って体験したらいいですよ。

坂東:私は今、組織作りを体験していますが、ディマティーニ・メソッドも読ませていただいて、ものすごく納得感がありました。メソッドと書いてあるけど、「愛」ですよね。今まで愛がよくわからなかったんですけど、今は自分なりにはしっくり来ているところがあります。自分の中ですごくつながっている感じがしますね。

ブラック企業も政治家も「批判」では変わらない

坂東:あっという間に終了時間が近づいているんですけど。すごい早かった。

武井:俺のとっておきというのがわかるでしょう?

坂東:わかるわー。あらためてですが、リーダーや経営者はこれからどうあるべきなのか。「べき」とかじゃないんですけど、岩元さんのお考えをあらためて聞かせてもらえますか。

岩元:自分らしくあったらいいと思います。

坂東:自分らしくですね(笑)。ちなみに質問で、「日本の経営者と外国の経営者の違いってありますか?」という。

岩元:日本の経営者と海外の経営者の違いはありません。日本の一人ひとりの経営者が全員違い、海外の経営者も一人ひとり全員違うということです。

坂東:なるほど、なるほど。

岩元:だから日本とか海外とかっていうふうに、あまり括らなくてもいいと思います。違いが美しいんですよ。

坂東:美しい!(笑)。

岩元:この世界は美です。

坂東:なるほどね。

岩元:だから、いろんな会社があっていい。これからの社会、僕は例えブラック企業でも「いいね」と言えるのがいいんじゃないかと思います。

坂東:それだと偏りがないわ。

岩元:ブラック企業だと批判していたら絶対に変わらないですよ。でも「いいね」と言ったらもっと良くなろうとします。政治家も同じです。政治家に対して批判するんじゃなくて、政治家と会ったら握手して「いつも日本のために命を懸けてくれてありがとうございます」と言ったら、そういうふうにしようと思うんですよ。

「こいつは金に汚いんじゃないか」「利権なんじゃないか」とかそんな見方をしていると、ますます意固地になって自分の価値観の合う人たちと付き合うようになるから、そうじゃなく、こっち側に引き寄せる。

自分がニュートラルになって愛にあると、政治家もそうなっていくんですよ。政治家を変えるのは僕たち国民の意識です。やっぱり愛と感謝ですよね。

坂東:愛と感謝ね。

岩元:きれいごとに聞こえるかもしれないけどね。

坂東:いやいや、私は最近そういう沼に浸かっているので、とてもよくわかります。2年前はそうは……。

武井:(笑)。

岩元:私もそうですよ。こんなことを言って妻と和気あいあいかと言うと、ぜんぜんそんなことないですよ。

武井:(笑)。

岩元:でもそれでいいんですよ。

坂東:そうですね。

世界における日本の「プレゼンス低下」の要因

坂東:あえてお聞きするんですけれども、もうアメリカの生活が長くて25年? 

岩元:28年です。

坂東:28年。最近、世界で日本の話題が出てこないという……。

岩元:ああ、はいはいはい。これは僕の知り合いとかによく言うことですけど、日本のプレゼンスが世界からどんどん消えているんですよ。なんでそうなったかというと、日本がアメリカの真似をし過ぎました。

坂東:なるほど。今日の話とつながる。

岩元:自由主義とかああいったことをどんどん取り入れて、会社も株主のものというスタイルに変えて、日本らしさがどんどん消えましたよね。結局人って、誰かの真似をするとプレゼンスが落ちるんですよ。だから自分を信じて、自分の信念、自分の文化に基づいて健全な進化をしていけばいいだけなんです。

真似をするから国力が下がるし、日本らしい創造性がなくなる。アメリカで日本企業の名前なんて、未だにホンダとかトヨタという名前しか出てこない。日本では新しい会社が出ていますが、アメリカではぜんぜんその名前は出て来ないし、サービスの名前も出てこない。商品の名前も出てこない。しかも、名前が出るホンダやトヨタは、こっちでも古いという概念の中で見ている。

坂東:『奇跡の経営』のセムラーさんが2017年に日本に来て話を聞いた時、「なんかこの人、話している内容がお坊さんみたいだな」と思ったんですよ。完全なイメージですけど、経営哲学が仏教っぽいというのかな。セムラーさんの話を聞いているうちに、今まで自分が信じていたのは、管理型、ヒエラルキー型の比較的西洋スタイルだったんだなと思って。

タケちゃんからそういう話も聞いていたし、セムラーさんの話がしっくり来て、私にはこっちのほうがいいなと思って移行しました。つまりスタイルを変えるというやり方ではなく、ベースの哲学が変わることで。『奇跡の経営』もそうですけど、私たちの自律分散型組織というのも、日本に合っていると思うんですよね。私たちらしさを活かせるというか、日本人に合った経営スタイル、組織の在り方だと思っています。

米国で「大谷翔平」が目立つワケ

岩元:1つ言い忘れました。企業ではなく個人なら今アメリカで目立っている日本人はけっこういますよ。

武井:へえ。

岩元:大谷さん。

武井:大谷翔平!

坂東:オオタニー。

武井:あと、こんまり。

岩元:こんまりさんもNetflixとかでありましたけど、でも市民権を得ているのは大谷さんでしょうね。

坂東:なるほどね。

岩元:僕らから見て、体のサイズはもう日本人じゃないですけどね(笑)。

武井:そうですね。

岩元:でも人間性は、日本人の僕らが見て共感するものがすごくあるでしょ?

坂東:確かに。

岩元:それは世界にも通用するということです。

坂東:なるほど!

岩元:大谷が認められているのは、もちろんプレーもそうですよ。でも人間性もものすごく愛されている。やっぱりニュートラルですよね。いいも悪いも認められるところにあるんじゃないかな。一番大事なのは、彼は自分の天命というか最高価値の中に生きているじゃないですか。それが人にインパクトを与えていると思いますね。

自分の価値観は何か。けっこう自分で気付いていない、知らないことってありますからね。

坂東:いっぱいある!

岩元:大きい家に住むとか、高級車に乗るとか、そういう世間一般のイメージを「成功」と思ったりするじゃないですか。でも本当の自分の成功は、自分の心が満たされるということですから。

坂東:本当ですね。

岩元:心は価値観でしか満たされないですから、まず自分の価値観を、己を知るということがすごく大事です。

坂東:自分が大切にしていることを、一番大切にしていることは何かを知るということですよね。ありのままの自分を知り、それを表現していくという。私もチャレンジ中です。

新たに始めるのではなく、「思い出して戻る」

坂東:10時半になったので、クロージングしたいと思います。密度の濃い素晴らしい時間を過ごして、チャットもすごく盛り上がっていたんですけれども、全部の質問に回答できなくてすみませんでした。ぜひスピーカーへのメッセージをお願いしたいと思います。

それから寄付もありがたくいただいていますので、eumo、PayPalでよかったらお願いします。ちなみに来月のトークライブは、仲山進也さんに出演いただける予定です。今日もこれからの経営者の在り方とか、そういう話が出てきましたが、『奇跡の経営』や自律分散型組織に興味があるとか、チャレンジしたいという方は、DXOというテキストを無料で配っています。

セミナーもやっていますし、具体的に相談に乗ってほしいということがあれば、無料相談も受け付けているので、よかったらご連絡をいただきたいと思います。ということで、あっという間の90分でした。

武井:ありがとうございました。

岩元:こちらこそありがとうございます。

坂東:タケちゃん、最後にひと言何かチェックアウトあれば。

武井:いやぁ、ただただ愛を感じる1時間半だったなと。

坂東:そうだなぁ。

武井:なんだろう。これ、人にうまく説明できないな。

坂東:そう! たぶん私が今日の話を人に話しても情報は伝わると思うんだけど、愛の感じが違うから(笑)。

武井:エネルギーですよね。

坂東:エネルギーですね。

武井:僕は、本当に今日は勝手に神回だったと思っています。「ニュートラル」という言葉だったり、そこに取り掛かるコツや引き戻してくれるヒントを、すごくたくさんいただいたと思っていて、ただただ感無量ですね。ありがとうございました。

坂東:岩元さん、今日は本当にありがとうございました。

岩元:1つだけ言っていいですか?

坂東:はいはい。

岩元先ほど赤ちゃんが生まれた、完璧だなと思ったやつ。実は僕たちが生まれた時も親は、完全な愛の存在として僕たちのことを見てくれていたんですよ。そこをただ思い出して戻るだけ、ということです。

武井:これ以上聞いちゃうと泣いちゃいそうだから(笑)。

坂東:もう言うことないというか、何を言っても陳腐になっちゃう気がするから(笑)。

武井:僕らは今、愛をやり取りしていますよね。

坂東:そうだわ。本当に愛のエネルギーの交換をしているという感じがする。これだけ距離が離れていてもそうだし、YouTubeライブ配信でたくさんの方が見てくれているけど、伝わっている気がするもん。チャットでもそういうコメントがたくさんあるし。本当にありがとうございました。

岩元:こちらこそありがとうございました。視聴者のみなさん、ありがとうございます。

坂東:みなさん、ありがとうございました。

武井:ありがとうございました。

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