
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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ーー今、組織の中で対話、特に上司と部下の対話が求められるようになっています。
世古詞一氏(以下、世古):組織におけるコミュニケーションは2つに分かれます。1つは、業務で目先の成果を出すために必要なコミュニケーションで、私はこれを「情報交換のコミュニケーション」と呼んでいます。もう1つが、個人に焦点を当てた対話。「人間の対話」ですね。その人がどんなことを考えたり、感じているかを話す場です。最近はこの「人間の対話」がとにかく減っています。
10〜15年前くらいから飲みニケーションみたいなものが少なくなり、「働き方改革」の下で残業が減って、残業中になんとなく「どうよ」みたいな話もなくなった。喫煙室の会話みたいなものもどんどんなくなっています。
社会の流れで効率化や生産性が第一になってきた時に、目先の業務をいかに効率的にこなしていくかを目的とした情報交換のコミュニケーションしか残らなかった。さらにコロナ禍で一層それが加速化し、リモートで目先の業務の確認だけがされています。
ーー「人間の対話」が減ると、どういった変化が起こるのでしょうか。
世古:会社とのつながりを持ちづらくなって、モチベーションやエンゲージメントが低下したり、定量的に示すことが難しいですが、余白のコミュニケーション、いわゆる遊び部分がなくなり、新しいものやクリエイティブなものを考えたり、作ったりすることがしづらくなっています。
定型業務は情報交換のコミュニケーションでまかなえる側面は強いですが、非定型なもの、新しいものを考えたり作ったり、いわゆる改善やイノベーションをするためには、人間の対話の場が必要ですが、その素地になるところが減っているわけです。
一方で、世の中の情報量が増えてインプットも増えています。でも、それを社内で共有したり叩いたりする場が少なく、すごくもったいないと思うんですね。私は最近YouTubeをよく見ますが、「ここ、おもしろくないですか?」「なんでおもしろいんだろう?」という視点や疑問がビジネスのヒントになることは多々あると思っていて。でも、そんな話をする場や時間が減っている。
SNSで社外に発信したり、社外の人とつながりを持つ機会はけっこう増えましたが、社内に還元されないことにもったいなさを感じています。プライベートでやるTwitterはフォロワーが増え認められているのに、社内で評価されているという実感が薄いとモチベーションやエンゲージメントの低下につながるかもしれません。
「ツイートやってるんだ」とか、その人のライフワークや仕事以外の部分を知ることで、それをどう本業に活かせるようにしていくかを考えることも上司の役割だと思うんですよね。
ーー組織内の対話を増やす施策として1on1ミーティングを始める企業が増えていますが、1on1を導入するとどういった変化が起きるのでしょうか?
世古:部下側は「上司が話を聞いてくれる」と認識し、いろいろしゃべり始めるということがありますね。今までは上司の話を聞いて「わかりました」という上意下達のコミュニケーションで、上司が質問してもあまり意見が出てこなかったのが、安心して自分で考えた意見を言うようになってきたと。当事者意識や自発性を持ち始めたという事例は聞きますね。
ある金融機関で上司側の人たちに1on1の研修をやった後、その会社では社長から上司側に対して仕事の話をせず、かつあまり自分の話をせずとにかく部下の話を聞くようにという独自のお達しが出たそうなんです。
1年後にフォローアップ研修を行いましたが、金融機関はかなり上意下達が強いので、最初はなかなかしゃべってもらえなかったと。でも話を聞いてくれるという安心感を持ったら、重かった部下の口がだんだん開き始め、いろんな話をするようになって雰囲気がかなり変わったとおっしゃっていましたね。
ーー上意下達が強い組織ほど、1on1導入後の変化が大きいということですね。
世古:そうですね。やっぱりみんな疑心暗鬼で「言っていいのかな」という感じが半年くらいあったけど、続けているとだんだん「本当に言っていいんだ」みたいな感じになるとおっしゃっていましたね。
あとは、ある企業が1on1ミーティングの頻度とマネジメントに対する満足度の社内サーベイを取った時に、きれいな相関が確認できたと聞いています。週次、月2回、月次、3ヶ月に1回、半年に1回の中で、週次が一番マネジメントの満足度が高かった。つまり頻度高く対話をしている組織は、満足度が高いということです。なので、質も大事ですけど、まずは頻度や量を増やすことが大事だとおっしゃっていましたね。
ーー1on1の「対話」と一般的な「会話」の違いは何でしょうか?
世古:対話と会話の違いは、目的を持って話をするかどうかです。あとはテーマがしっかりあること。1on1ミーティングでは、上司と部下がお互いに目的を理解して話をすることがすごく大事になります。そして、テーマや内容が目的につながっているかをたびたび検証しないと継続できません。
ちなみに私は『対話型マネジャー』の中で1on1の目的を5つ挙げています。1つ目は「信頼関係作り」。話の中で価値観や考え方を広く深く知ることで、相互理解が深まって信頼関係につながっていくと。2つ目は「成果」ですね。短期的な成果はふだん話していますが、継続的に成果を生むための土台作りの話や、今やっているサービスを2年後にどうしているかといった中長期の成果の部分。緊急性は低いけど重要な事柄ですね。
3つ目は「成長促進」で、メンバーの成長にフォーカスを当てる時間。この1ヶ月を振り返ってどんな成長や学びがあって、何を得たか。意外とそういう話はできてないんじゃないかと思います。4つ目は「モチベーション向上」と言っていますが、気持ちの部分の変化。最低限のこととして、仕事をする中でのモヤモヤや不安の解消ですね。
最後が「働きがい向上」で、仕事の意味や組織全体で何をやっているかをちゃんと知って、自分の方向性とつなげていくための話をする。1on1ミーティングを実施しながら、この5つの目的に沿ったテーマになっているかを度々検証して欲しいと思います。
ーー1on1の必要性を感じて導入しても、なかなか思うように対話を進められないケースがあるようですが、その原因は何でしょうか?
世古:上司と部下の1対1の場と言えば、今まで面談しかやったことがない人が多いからだと思います。面談は、評価や目標設定、あるいは上司から何か特別なことを言われる緊張の場であることが多いですね。1on1ミーティングとは、目的も違えば雰囲気も違います。
また、進め方を知らずに1on1の場を作ると、だいたい部下が問題を報告して上司が解決するという、現場でのコミュニケーションスタイルになりがちです。「こういうふうにやるんだよ」「わかりました」というコミュニケーションですね。
このような情報交換のコミュニケーションは、短期的な成果を目的にして「達成度」の観点で話すことが多いんですね。今、何パーセント達成しているのか。70パーセントなら、残りの3割をどうしていくのか。
これは上司が答えを持っていることが多く、上司が「教える」「問題解決する」「アドバイスする」コミュニケーションになります。これはこれで必要ですが、ふだんこういうコミュニケーションが多いので1on1でも同じくやってしまう。
上司はどうしても問題を解決しようとする「問題解決マシーン」なんです。「こういうのが足りないんですよ」「じゃあこうすればいいじゃん」って(笑)。だから対話にならない。
ーー課題を聞いたら、反射的にソリューションを出してしまうという癖ですね。
世古:そうです(笑)。なので、すぐソリューションに行くんじゃなくて、1on1では、まず部下の話を「聞き切る」という意識を持ち、訓練しないといけないんですね。これは上司にとって、実はとても新しいコミュニケーションスタイルで、マネジャーのスキルとして丁寧に進めていかないと浸透しないと思っています。
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