2024.10.10
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世界情勢の不安定化、そして今も続くコロナ禍によって、多くの企業が経営危機に直面し、厳しい舵取りを迫られています。このような急な外的ショックに対応し、逆境を切り抜ける能力として注目されているのがレジリエンスです。 本記事では、国内外で約130の飲食店を展開する株式会社ワンダーテーブルの代表・秋元巳智雄氏に、社員によるレジリエンスの事例や、“再設計力”をつけさせるために若手社員に与えるものをお聞きしました。
ーー「組織のレジリエンス」につながることだと思いますが、リーマンショックのような大きな危機を迎えた際に「みんなで乗り切ろう」という気持ちにさせるためには、何が大切でしょうか。
秋元:社員が本気で「会社を好きである」ことが大切だと思います。コロナで中断したものもありますが、僕たちは会社が好きになる仕組みづくりをずっとやってきました。トップ面談というのも続けていて、今は他の役員と手分けしながらやっていますが、300人くらいまでは僕が正社員全員と半年に1回、1対1で面談していました。
僕個人の考え方を直接伝えたり、社員の悩みを聞き、彼らが聞きたいことに答えることを習慣にして、信頼関係づくりを続けてきました。危機が発生した時にレジリエンスを発揮できるかどうかは、そういった信頼関係がベースにある気がしますね。
ーー今回は「レジリエンス」がテーマですが、私はレジリエンスには3つの要素があると考えています。1つ目が「柔軟で行動的である」こと。2つ目が「負の感情を制御できる」こと。3つ目が「軌道修正、再設計ができる」こと。これまでお話を聞いて、秋元社長は特に3つ目の「軌道修正、再設計ができる」が強いと感じます。
秋元:今の3つは基本的にそうだと思いますし、僕たちもそういった取り組みをしてきたと思います。例えば最後の「再設計」については、「時代の変化に対応することが大事だ」と常日頃から言っていて、その変化に対応するための会社の建て直しや、ブランドの見直しは、我々の文化になっています。この20年は時代の中で、事業やブランドを「諦める時は諦める」ということをやってきました。
すべてのブランドを10年、20年、そして30年と伸ばしていきたいですが、ブランドによっては寿命が短いものもあります。ですので、常に時代の変化に合わせて再設計をしたり、事業改革をしています。ブランドや事業戦略もそうですし、本部の考え方などもそうです。再設計や変革は、僕たちの文化です。
先ほどリーマンショックで、店の整理整頓をしたという話をしましたが、店を閉めて既存店の売上や利益だけを上げても会社は盛り上がらないので、あらためてワンダーテーブルという会社の目的や強みを考えて、事業戦略を立てました。ワンダーテーブルが強みを発揮できるブランドのロジックを明文化して、当てはまるところに人とお金を注ぎ込んでいけば、再生できるという思いがありました。
ただ店を開けているだけでは、同じ失敗を繰り返すのではないかと考えて、ワンダーテーブルらしいブランドの定義付けをして、それに沿ったブランドだけに集中的に人とお金を投下し、そこを強化することをやりました。
ーー秋元社長が見て、実際に社員の方たちのレジリエンスによって立ち上がった事業や、回復した事例はありますか。
秋元:直近の例では、コロナで飲食店に行くことがなくなって、おうち時間用のブランドを作り、テイクアウトとデリバリー専門の新規事業プロジェクトチームを立ち上げました。去年の4月から9月まで仕込みをして、10月から毎月数百万円の売上を作り、12月はおせちを入れて数千万円を売上げました。4人で半期で6,000万円の売上を出せるチームになったので、この4月からはホームダイニング事業室にしています。
コロナで、今まで週5回外食していた人が2、3回に減っているわけですよね。その代わりUber Eatsや出前館を使って、お気に入りの店の食事を自宅に取り寄せるスタイルができた。もちろんレストランが営業できるようになったのでお店に呼び込むこともしつつ、コロナが落ち着いたとしても世の中のライフスタイルがだいぶ変わったので、ホームダイニングの事業も強化して、時代に合った対策を打っているところです。
ーー先ほどお話ししたレジリエンスの3要素のうち、秋元社長が優れているとお伝えした「軌道修正や再設計ができる」というところについて、ご自身はこの能力をどうやって身に付けられたのでしょうか。例えば自社の従業員の方に軌道修正や再設計力を身に付けさせたいと思った時、秋元社長は何を学ばせたり、経験させたりしますか。
秋元:基本的には権限と責任をある程度明確にすることです。僕はいろんな組織・団体の理事や顧問をやっていますが、責任と権限を作っていないところが多く、作っていても移譲していないケースがあるんですよ。特に外食は移譲していない会社が多い。書類上は「この権限はあなたに与えます」としていても、結局は役員や社長が出てきて、「誰が勝手に決めたんだ」「俺は聞いてない」みたいになる。それだと人は成長しないんですよね。
そういうふうになっちゃうと、社長やオーナーの顔色だけ見て、「言われたことだけやればいいんだ」みたいな話になってしまいます。
秋元:僕はたまたま若い時からいろんな経験をさせてもらって、自分で会社を作ったりとか、比較的早い段階から企業の役員や代表になったので、失敗もたくさんしています。自分でそのサンプルを持っているので、「これは駄目じゃないか」というのはある程度わかったりします。
でも自分が100パーセント正しいわけではないし、大事なのは若い人たちに責任と権限を渡すことです。失敗も成功も、自分たちのものとして経験させることが成長につながり、それが再設計や事業改革のできる組織につながると思っています。
(若手からの)企画の中には正直、「これはたぶん失敗するな」というものもあったりします。でも、それを踏まえた上で「打撲くらいなら別にいい」と思っているわけです。打撲では済まず複雑骨折しそうなものに関しては、「ちょっとこれは止めたほうがいい」と言うかもしれないですけど。基本的にはうまくいかなさそうな企画も、ひょっとしたらうまくいくぞという企画も、責任者の判断のもとにやらせることを心がけています。
多少の打撲くらいだったらいいんです。たまに僕のところに相談が来ると「ちょっと厳しいと思うけど、お前がやりたいんだったらやればいいじゃん。お前の権限なんだから」と言うんです。案の定というか、予想どおりに失敗したりするんですけど。でも、本人が失敗から学ぶことが大事なんです。そもそもその考えで幹部に責任と権限を渡しているので。
ーー幾多の危機を乗り越えてきた御社のレジリエンスの秘訣がわかった気がします。秋元社長ご自身が若い頃から権限と責任を持って行動してきたからこそ、それが軌道修正や再設計の能力につながっていることを理解されている。だから、「多少の打撲くらいならいい」という姿勢で若手の方たちを育てられているということですね。
秋元:そうですね。それが(組織の)レジリエンスにもつながると思っています。
ーー「ワクワクが溢れるテーブル」のさらなる広がりを応援しています。本日はどうもありがとうございました。
秋元:ありがとうございました。
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