2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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安斎勇樹氏(以下、安斎):そんな感じでいろいろコメントもいただいていますけど、残り時間もあと15分なので、ちょっと別の話題にいっていいですか。
石井遼介氏(以下、石井):もちろん。
安斎:石井さんとぜひ話したいと思っていた話があって。ここまで1ミリも触れてこなかったんですけど、今日のイベントのタイトルって……。
石井:あー、それね!(笑)。みなさん覚えていますか。今日のイベントのタイトル。
安斎:「生産的なチームは何をしているか」というタイトルで、生産性とか生産的というのが表題に入ってたんですよね。これをちょっと僕、石井さんと議論したいなぁと。
石井:あるいは、みんなに聞いてみます?
安斎:そうですよね。聞いてみたいですよね。一言で言うと「生産性って何だ?」。
石井:これは、むちゃぶりトークなので、否定されても痛くないやつです(笑)。
安斎:そうそう。生産性が高いチームってなんやねんというところって……。
石井:ちょっとチャットでみなさんの意見を聞いてみたいですね。
安斎:実はブラックボックスだよなぁと思っていて。生産性が高いチームであることが是として、そのためのHowを質問がとか、枕詞がとかって話がありましたけれども。生産性が高いチームっていったい何なんだろうか、みなさんどう考えているかぜひ聞きたいなと思って。これは正解がないと思うんですけど。
石井さんのスライドでも、生産性の1つの指標として心理的安全性が大事なんじゃないかとか、心理的安全性がどういうふうにチームのパフォーマンスにつながるかというエビデンスの話だったりして、「生産性」というものが1つの心理的安全性のよさの前提になっているのかなと思いますけれども。
石井:すごい、続々とコメントが入っていますね。ROIで計算している人もいますね。「アウトプット÷インプットが高い」とか。「昨日まではなかった何かが今日1つでも生まれているチーム」、「期待に応えられること」というのがありますね。
安斎:いいですね。
石井:「目的に向かってみんなが仕事をしている」。
安斎:「1ミリでもいいから日々成長、進化変化している状態」。いいですね。
石井:「改善できるチーム」。
安斎:「ひとまず処理件数が多いと教わった」。なるほど。
石井:でもそれはそれで、確かに生産性の教科書とかには、ちゃんと書いてある内容ですよね。生産性って何でしょうねということだと思いますが、その本当の問いは今の時代における生産性は何かとか、本当の生産性は何かとかそういう話ですよね。
安斎:そうなんですよね。僕はそのへんを問い直してもいいんじゃないかなと思っていて。アウトプット/インプットと書いてくださった方がいらっしゃいますけど、まさに「生産性」と調べると、そういうことが定義上も書かれていて。
労働においてたぶん労働力を投入したのに対して、投入したより多くが返ってきている状態が生産性で。だからコストよりパフォーマンスがいい状態ですよね。
そのコストって労働力とか時間とか、お金もそうですよね。わかりやすいのが、例えば時給が1,000円の人が、2時間かけて準備して、3時間働いた結果、5時間投資したんだけど結果3,000円しか得られないとなると、たぶん生産性が低いことになる。
でもすごくいいバイトを見つけて、準備は2時間で済んだんだけど3時間働いて1万円得られたら、いつもより約3倍生産的だから、「生産性が高い」となると思うんですけど。
安斎:僕が今回言いたいというか問いたいのは、そのインプットとアウトプットをどういう時間スケールで測るのかというのと、そのアウトプットを、何をもって測るのかというところだと思うんですよね。
いわゆる経営の考え方って、経営の考え方の中のマネジメントの考え方の中にチームがあって、チームの生産性という議論があるとした時に、いわゆる従来のマネジメント論って、インプットする資源というのは、人的資源とか財務資源と言われるような……。
石井:お金であったり……。
安斎:要は何人に給料をいくら払っていて、そこに予算をいくらつけて、1年経って財務的にプラスが返ってきたら、経営に成功しているわけですね。
その中で個別のチームが、それにかなう生産性をかなえていくというのが旧来のパラダイムだと思うんですけど。それでたぶん、お金のインプット・アウトプットとか人的管理みたいなことをする時に、心理的安全性が高いほうがROIが上がるよというのが、いったん旧来パラダイムにのった心理的安全性の主張だと思うんですけど。
冒頭でも言いましたけど、僕と石井くんって大学生の頃、一緒にビジネスをやってプロジェクトをやって、なんか……。
石井:大変でしたねぇ(笑)。
安斎:大変でしたよね(笑)。1年とか2年とか、大学で勉強しながらも日々膝を突き合わせて一緒に仕事をして、終わったら大量に酒を飲んで(笑)。
石井:楽しかったですねぇ。
安斎:楽しかったですよね。じゃああの……。
石井:楽しさはROIのR(リターン)なのか? みたいな。
安斎:そう。数年やったけど儲かったかと言ったら、小銭でしたよね(笑)。
石井:今もう1回やれと言われたら、けっこう厳しいものがある。
安斎:厳しいですよね。
安斎:じゃああの数年間って生産性が低かったのかと考えた時に、僕からするとそう思えない何かがあって。やっぱりあの経験があるから今があるし、そこで石井さんと利害を超えて膝を突き合わせてやったおかげで、僕はすごくかけがえのない戦友ができたと思うので。経営的に言うと超極上の社会関係資本を手に入れたと。
石井:でも、当時はそんなこと思っていないですけどね。
安斎:そうそう。
石井:10年後一緒にイベントやって、お互い本を書いていてとか、想像すらしなかったですね。
安斎:そう、そう。だから最高の社会関係資本と最高の知的資本を手に入れたんだけど、財務資本的にはいまいちのアウトプットだったとした時に、それがあるから今こうしてここでイベントをやっていたりとかこれからも一緒に議論していくと考えると、僕の中ではめちゃくちゃ生産性が高かったなと思うんですよね。
そうするとたぶん会社も一緒で。この会社で働くと定時で帰れるし給料もいいし、かつ会議とかも効率的だし、割のいい会社で、利益も出ているという表面的な生産性が高い状態ってそれはそれで望ましいのだけど。
一緒に働いている人がどんな人かよくわかっていて、あいつはこういう趣味で、だったら何かプレゼントをあげようかなみたいなことが言えたり、「また飲み会っすか、つらいっす」とかじゃなくて、業務関係ないのに「飲みに行こうよ」と言える人がいたり。もしかしたら転職したり定年した後も、親しい友人ができるとか。
今ウェルビーイングとか言われますけど、そういうふうに思えるほうが、豊かなんじゃないかなと思った時に、生産性というものを、財務資源のインプット・アウトプットと考えるんじゃなくて、さっき言ったような社会関係資本とか知的資本とか、もうちょっとインプットとアウトプットの豊かさを経営の議論に入れたほうが、かえって長期的に財務資本がよくなったりすることもあるだろうし。
石井:ありそうですよね。
安斎:そもそも、言い換えると心理的安全性って手段なんですか、目的なんですかというところで、僕は目的であってもいいんじゃないかなと思います。
石井:なるほど。
安斎:生産性を上げるための手段に心理的安全性をおいている限り、心理的安全性になれないのではないかという仮説なんですけど。
石井:なるほど。つまり、今日心理的安全性を10削るけど、生産性が30上がるからそれでいこう。みたいなことになりうるってことですよね。
安斎:そうそう。経営者が1on1とかで、うんうんと話を聞いてくれて、適切なフィードバックとかをくれて、心理的安全性を高めていっても、結局財務的な生産性を上げるために心理的安全性を上げていると思った瞬間にちょっと嫌じゃない? この上司は儲かるために話を聞いてくれてたんだ、となる。
石井:言っていることはよくわかります。本音中の本音でいくと、僕はひとりひとりの人がハッピーであれば、もっと言えば、ひとりひとりが有意義で豊かな人生を送れることが大事だと思っています。
そっちが大目的で、そのために重要な手段のひとつが、心理的安全性という感覚です。人生の時間を使う職場をいいものにし、財務的な指標にも中長期で貢献する観点で、個人と組織の結節点となる重要な概念だなと。
石井:一方で、この心理的安全性という概念をより多くの人々、特に経済界の人々に広める上で、「生産性が上がりますのでやりましょうよ」という切り口でお話したほうが、実際に生産性も上がるうえ、幸せな人がトータルで増えそうという感覚は持っています。
安斎:施策を導入したりする時に、ROIを説得材料にしたほうが動かしやすいというのはありますよね。でもたぶん現場で職場のストレスとか人間関係に悩んでいて、この本を手にとって、「ああ、石井さんの本いいな」と思った人は、おそらく会社の生産性を上げるために「いいな」と思ったんじゃないと思うんです。
『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)
石井:ないですよね(笑)。
安斎:どうせ働くんだったら、職場のみんながギスギスせずに、仲良く楽しいほうがいいよなと思って手に取ったはずで。心理的安全性を上げて、まさに幸福、ウェルビーイングに働くことがゴールになるんじゃないかなと思って。それを推進するマネージャーが生産性のために心理的安全性を上げないとなと思っている限り、なんか噛み合わない気がするんですよね。
石井:その辺りは2通りあるかなとは思っていて。1つ目は、「パワーマネジメントで俺は成果を出してきた!」という方がいたとします。その方々には「実は、心理的安全性を高めていった方が、パワーマネジメントやるより、生産性が上がるのでやりましょうよ。」と、ドライというか、ROI的な観点でやっても、組織は1歩ましになるかなと思うんですね。
まずは「確かに、詰めても謝るだけで、意見言ってくれないな」と気づいてもらうところからスタート、それであってもその方の直下で働くチームとしては助かるというか。
安斎:そうですね。
石井:一方で2通り目ですが、本当に心理的安全性をつくりたい! という方は、「儲かるのでやりましょう」ではなくて、それ自体がやっぱり大事なことだと思って取り組んでいただけるほうがうまくいくでしょうし。
ZETechに研修やサーベイを発注くださるクライアントのみなさまは、ありがたいことにそういう想いを持った担当者様が多いんですよ。そういう人たちとやれると、じゃあ私たちと一緒にやりましょうか! という感覚にはなりますね。一緒に組織をよくするパートナーという感覚でしょうか。
安斎:そうなんですよね。なのでそのへんは今ちょっとずつ違和感を感じながら考えているところで。
安斎:あるじゃないですか、できるビジネスパーソンは筋トレをしているとか。
石井:(笑)
安斎:アートを見ているとか。アートを見ている時に「できるビジネスパーソンに俺はなるぞ」とか思いたくないじゃないですか(笑)。
石井:そうですね。
安斎:結果的にデキるビジネスパーソンにはなりたいけど。
石井:実際にそういう効果があったとしても、アートは「できるビジネスパーソンを生産する」ためにあるわけではないですからね。
安斎:そうそう。「健康的な身体になるし、気分がすっきりするから筋トレする」でいいはずなんだけど、その全部が財務的なアウトプットへの手段であるって階層を位置づけてしまったとたんに、豊かさを失う感覚があって。
でも儲からなくてもいいじゃない、できなくてもいいじゃない。筋トレしようよ健康のためにって言いたいわけでもなくて。
石井:わかります(笑)。
安斎:心理的安全性で幸福な職場を作ることを自己目的化しながらも短期的に成果を図ろうとするんじゃなくて、財務的なアウトプットは、もうちょっと長い目で見てもいいんじゃないと思っているところですかね。
石井:なるほど。
安斎:5年後、どんどんお金が減っていって、倒産してしまってはいけないというのは、この資本主義社会で経営をやる上では、とっても大事なことだからね。
石井:アンハッピーですね。
安斎:だけど3ヶ月ごとに成果を求めて生産的だったか評価するというよりは、逆だと思うんですよね。お金は短期的に評価できるから3ヶ月とか1年間で評価する。人間関係は時間がかかるからすぐ評価できないパラダイムがあると思うんですけど。
石井:確かに。
安斎:逆転させて、心理的安全性で幸福になっているかどうかを3ヶ月スパンで評価して、(利益が)多かったかどうかは3年で評価するぐらいでいいんじゃないのと思うんですよね。
石井:今の先の見えなさも含めると、「四半期で達成しろ」と言うのって、もはや現実的でもないなと思う時もあります。
安斎:そうですね。このVUCAにおいてそこがずれてもねぇ……。
石井:このコメント、超おもしろいですね。「就職に役に立つからボランティアするみたいなもんですね」という。このメタファーはめちゃくちゃいいですね。
安斎:内定をもらった、やめようみたいな。
(一同笑)
なので、心理的安全性が、流行り・ブームみたいな側面もあると思っていて。手段のままにしておくと、ブームが終わったら風化してしまう気がしていて。人間にとって大事な目的であるって認識を作っておけば……。
石井:確かに。大切ですね。
安斎:手段はルールの中では消える運命であるので。
石井:確かにいろんなワークショップの手法も、出てきては消えたりしていますね。
安斎:そう。5年後とかに、「5年前は心理的安全性が流行っていたらしいよ」「あの時は職場を幸せにしようとしていたらしい」と。
石井:「この前はなんとかシンキングで……」みたいな。
安斎:そう。嫌じゃん。それは嫌だなと思っているということをちょっと話したいなと思って話していたら43分になっちゃいましたね。
石井:じゃあ会場の人に締めていただきますか。
(一同笑)
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