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チームマネジメントを機能させるコミュニケーションとは何か(全1記事)

「うまくいかない」感は伝播し、チームの現実になる メンバー各人が「何とかなる」と思えるコミュニケーション術

テレワーク下でメンバーの心情を把握し、効率よく成果を出し続けるために必要なマネジメントの要素は何でしょうか。このソリューションを提供する場として、株式会社SmartMeeting株式会社SmartHRの主催イベント「テレワーク下でも目標にコミットし続ける『チームマネジメント』」が開催されました。 本記事では、『テレワーク時代のマネジメントの教科書』の著者・髙橋豊氏によるセッション「チームマネジメントを機能させるコミュニケーションとは何か」の模様をお届けします。チームの信頼や関係の質を高めるコミュニーケーション法や、グッドサイクルを生む仕事の任せ方などが語られました。

目指すは、共通の目的に向かって進むチームマネジメント

髙橋豊氏:髙橋豊と申します。本日は、テレワーク下でも目標にコミットし続ける「チームマネジメント」について、投影資料に基づいてみなさまと一緒に勉強していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

こちらは簡単な自己紹介です。直近まで株式会社パーソル総合研究所の執行役員をやっていまして、現在はいろんな呼ばれ方がありますが、フリーで組織開発と人材育成のファシリテーターやコンサルタントをやっています。

日本能率協会コンサルティングという会社から始まったコンサル生活の中で、ここ20年はチームビルディングをはじめ、マネージャーやリーダーの育成を担当しています。私はアメリカンフットボールをちょっとやっていまして、この画像は社会人の時の……76番が私ですね。社会人になってからはチームを作る立場にいましたので、「関係を作っていく」というお話をできればと考えています。

直近では『テレワーク時代のマネジメントの教科書』という本を出させていただきました。これまでチーム作りやコミュニケーションは対面が中心でしたが、テレワークの中ではどのようにコミュニケーションを取り、チームを作っていけばいいかを研究しています。

目標にコミットし続けるチームマネジメントとはいったい何でしょうか。今まではどちらかと言うと、リーダーがメンバーに対してリーダーシップを発揮して、メンバーは信頼してそれに付いていくかたちだったと思います。リーダーも目標にコミットし続けないといけませんし、メンバーもコミットし続けないといけないと。

チームマネジメントの要諦は、テレワークであろうとなかろうと、リーダーとメンバーが最終的な目的や目指す方向をしっかりと共有して、協働することにあります。コミュニケーションを取って分担された役割を果たしていくこと。これが重要です。

リーダーとメンバーの間の信頼関係の構築はもちろん大切ですが、メンバーがリーダーに盲目的に付いていくのではなく、全員がリーダーシップを発揮できるように、共通の目的に向かって進んでいくチームマネジメントをする必要があると考えます。

上司の「押し付け」と部下の「受け身」で生まれる、バッドサイクル

その中で一番大切なのが、「上司と部下の関係の質をいかに高めていくか」です。これは、お互いの信頼関係をどう作っていくかにつながります。リーダーもメンバーもお互いに尊重しあって、一緒に共通の目的に向かうためにどうすればいいかを考える。もっと言うと「共通の目的とは何か」から話していく。

チームでの議論を進める中で、一人ひとりが自発的に行動できるように考える。要するに、共通の目的に向かって、自分の役割が何で、その役割の中で果たすべき行動をしっかりと考えていく。一人ひとりが自発的に考えて行動すると、必ず成果が出ると思います。もしくは結果が思わしくなかったとしても、誰かに言われてやって結果が悪いよりも、「どうしたらいいか」と、また自発的な思考に戻ることができると思うんですね。

悪い結果でも一緒に考えて共有できる関係になると、協働やチームワークによって信頼関係が高まる。関係の質も高まって、そこでまたおもしろい議論ができると。そうして、いい結果がどんどん出ていく。

悪い結果だったとしても、それを受け止めて、次に向かって進むことができれば、上司に対する部下からの信頼が高まります。一生懸命考えて行動することで、上司が部下を信頼できるようにもなると思います。

成果が上がらずに対立し、押し付け、命令する関係だと、部下もおもしろくなく受け身で聞くだけになる。そうすると自発的に行動せず、結果が出ない。さらに関係が悪化するというバッドサイクルにならないようにする必要があります。

チームで共有した「そうだよね」が現実になる

この関係の質→思考の質→行動の質→結果の質→……というのを、MIT(マサチューセッツ工科大学)のダニエル・キム教授が、組織を成功させるためのモデルとして作っていますが、関係の質をいかに高めていくかが重要です。

関係の質を高めて、コミュニケーションを良くしていくことがなぜ必要なのか。「コミュニケーションが現場での現実を作り出す」という考え方があります。みんなが話し合い、「そうだよね」と思ったことが共有されると、それが現実になるということですね。これが社会構成主義という考え方です。

職場のメンバーの方とコミュニケーションを取る中で、「そうだよね」と思ったことが現実になると。ですので、いかに良いコミュニケーションをするかが、チームマネジメントをする上で非常に重要になります。コミュニケーションは非常に大切なんですね。

もう一度言うと、みんなで「そうだよね」と合意したことがチームの現実になります。ですので、非常に苦しい状況でも、「このままがんばればうまくいくよね」とみんなが思っていれば、苦しい状況でもがんばれば成功が現実になります。すぐそこまで目標達成に近づいているけど、コミュニケーションで「このままいってもうまくいかない」という思いを共有してしまうと、それが現実になるということです。

一人ひとりが考えたことを相手に伝えて、お互いに理解しあって、ちゃんと自分の望んだとおりの反応を引き出すことが「コミュニケーション」だと言われていますが、この3段階をうまく果たして現実を変えていく必要があると思います。

メンバー各人が「何とかなる」と思えるコミュニケーション

現実だと思うことをみんなで共有して、「そうだよね」と思っていれば一番いいですが、人は聞き方・感じ方が違うので、何人もいれば頭の中で思い描くことがまったく違う可能性もあります。一人ひとりがバラバラに感じて、バラバラの現実を作っていくこともあり得る。ですので、全員の意識を共通させていくことが重要です。

上下のコミュニケーションが不調で、やらされ感で仕事をしている。先ほどのバッドサイクルになって、指示どおりやってもうまくいかず、上下お互いに意図しない成果物が増加していく。作っても作ってもうまくいかないと、いろんなことに対する不信感が生まれます。

無駄な手戻りとか手直しが増えると、一人ひとりの徒労感も増加する。さらに時間に対するプレッシャーもかかってくると、疲弊しやる気がなくなり、やってもやってもうまくいかない状況になる。

やる気もなくて仕事の成果も出ないと、仕事に対しての絶望感みたいなのがみんなの中に生まれ、それをみんなで共有してしまうと、それが現実になる。「このチームでは仕事の成果が出ない」という思いが現実になり、マネジメントのサイクルがぜんぜん回らないことになると。

こうならないためには、意義や期待、目標などの伝達を含む上下のコミュニケーションを取ることです。関係の質を良くして、一人ひとりが自分で考え、責任感を持つとともに、「何とかなる」と思うこと。グッドサイクルを回して、期待以上の成果物を増やすことで、信頼や関係の質が高まっていく。

また自分がこのチームにいて大丈夫だと感じる。周りからも褒め言葉がシャワーのようにくると達成感を感じますし、チームに対するつながりを感じることができる。新しいことに挑戦する時間が生まれ、わくわく感ややる気も高まっていくと。

こうしたマネジメントが機能し活性化している状態だと、メンバーに仕事の成果が出続けて成長を実感しますし、自分のやり方で大丈夫だという自己効力感を感じられて、生産性も向上し充実していくと。こういうコミュニケーションをしなければいけないと思います。

グッドサイクルを生む、仕事の任せ方

そのために必要なのが、仕事を任せる時のコミュニケーションです。目的や意義を伝えて、どんなアウトプットを出してほしいかを具体的に共有し、達成するためには何を乗り越えないといけないかという課題も共有する。その上で、どうするかを自分で決めさせるような仕事の任せ方をすることが大切です。

これはテレワークじゃなくても大切なことですが、テレワークだからこそ意識して仕事の意義をちゃんと伝えていく。関係の質や思考の質、行動の質を高めていく上下のコミュニケーションをすることが大切ですね。

仕事の意義と期待するアウトプットのイメージを確認して、その実現のための課題を議論しながら、一人ひとり任せる人に対しての期待を伝える。任された人は、どうやっていくかを自分で考える。こういうことができると、先ほどのグッドサイクルが回っていきます。

任せる時はこのPDCAのサイクルを回していきます。

特に最初の計画を立てたり、進捗を確認しながら計画をブラッシュアップするところがけっこう重要です。目標達成に向けて自由闊達に議論ができるコミュニケーションを取っていきます。目標にコミットし続けるためにも、目標達成することにコミットするわけですので、そこへの議論をしていく。

議事録作成のポイントは「未完の状態を作る」

しっかりと議事録を作って、周囲への伝達をしていくことも必要です。「あぁ~、終わった終わった」「うまく話せた」といった完結したという印象を持たせるのではなく、「次に向けてもうちょっと議論したい」「これはやっていかなきゃいけない」という気持ちにさせる。次への興味・関心を持って、どんどん考えていくようなことをツァイガルニック効果と言いますが、すべてが完結したと思うと、もう考えなくなってしまいます。

それを未完にすることで次につなげていける。議事録の中で、議論の過程やToDoまで明確にして、未完の状態を作ることをしないといけません。進捗会議で、議事録で書いたことを確認しながら、計画と実績のギャップがどこにあるかを確認して、このギャップがいいかどうかを評価する。そして、新しい課題を作り、それをどうやって解決するかを議論する。このPDCの中でもコミュニケーションが非常に重要です。

こういうコミュニケーションの中で、メンバー一人ひとりが自分らしさを発揮しながら、チームに参画できるという実感を持つ。ミスをしたら罰せられるとか評価を下げられるという恐怖感や、相談をしたら恥をかくのではないかという懸念を持たず、お互いに信頼・尊敬し、安心して弱い部分もさらけ出せるような心理的安全性を確保することも重要です。

「関係の質」は、言い換えると、この心理的安全性が確保されている関係ですね。心理的安全性が高いチーム=仲の良いチームではまったくありません。みんなでいろんなことを話し合えるチームがいいのです。

自由に発言し、共有できる場の必要性

「これを言ったら傷ついちゃうかもしれない」とか、「相手との関係にひびが入るから何も言えない」というのではなく、目標を達成するために何をしなければいけないかを考えて、しっかりと議論できる。相手の耳の痛いことも話ができる。お互いにフィードバックしあうことができる。今の現状について、悪いことを悪いと認識できる、共有できる、評価できる関係性を作る必要があると思います。

ちなみに私はアメリカンフットボールで一度だけ社会人で日本一になり、日本選手権で優勝したことがあるんですけれども。その時のチームは仲が良いわけではなくて、優勝という目的に向かってミーティングでいろんな議論ができるチームでした。練習中もお互いに、どうしたらもっと良くなるかという建設的な話ができました。やはり心理的安全性を確保しながら、お互いの意見を言い合えるチームになる必要があると思います。

そのために自由に発言したり、共有できる場が必要です。チームの空気を、モチベーションが上がったり一緒にやっていきたいという連帯感が出るような気分にして、参加意欲を向上していく必要があると思います。そういう場面を多く作っていく。その中で上下の関係の質を高め、思考の質を高めるコミュニケーションを取れるような雰囲気を作る。空気を作ると、チームができます。

特にテレワークでは、自分のチームがどんな状況かをきちんとわかることが非常に重要で、そのためのコミュニケーションの場が一生懸命作られていると思います。今までよりも情報量が少なくなるオンラインの環境下で、職場の現実がどうなっているかをしっかりと理解しないといけません。

管理職やリーダーは、メンバーがどんな行動をして、どんな感情を持っているかを、見に行ったり聞きに行って、情勢判断をする。情勢判断をしたら、このままいくのか、何かを変えないといけないかを決断する。指示命令とは、このようなことをやらなければいけません。

これはOODAサイクルや、OODAで「ウーダ」と呼ばれます。

テレワーク下で、より大切になる捕捉力

今まで、コミュニケーションでは話の内容や話し方、ボディランゲージを観察しましょうとよく言われていました。これはアルバート・メラビアンという人が調査した結果で、話し方とかボディランゲージという非言語の部分で多くの情報が伝わると言っています。

人の感情や気持ち、思考、ロジック、記憶、経験、感覚などですね。対面で同じ場所にいるとその非言語の情報を収集しやすかったんですが、テレワークだと画面から話し声だけが聞こえてきて、話し方やボディランゲージを収集することが非常に難しくなりました。今まで一緒にいて、何気ない会話の中で言葉だけでなく、非言語の情報も収集していたのができなくなってしまった。

この見えなくなったものをしっかりと見えるようにしないといけません。チームのあるべき姿と比較して現状はどうなのかをちゃんと評価できないと、ギャップがわかりませんので。ギャップがわかれば、その原因を特定できて、やるべき課題を作ることもできる。その課題を解決するための方法を話し合えば、解決策が見えてくることになります。

現状をいかに捕捉するかも、コミュニケーションを良くしていくために必要です。そして一人ひとりがどんなことを考えているかを、常に評価できる状態にしておかなければいけません。そういうことをしっかりとやっていくと、チームビルディングがうまくできるようになると思います。

チームマネジメントは、現状把握と評価の二面で考える

これはタックマンモデルと呼ばれる、(ブルース. W.)タックマンの4段階のチームビルディング・モデルですね。集団を作って、目標が形成されたら、心理的安全性を確保した上で多様な意見を取り入れながら、多様な人と一緒になって行動することでパフォーマンスを上げ、目標を達成していく。チームビルディングの状態をしっかりと見て、次に何をするべきかを考えていくことが必要です。

さらに足りないところは何か。上司からいろんなものが伝達されてきますが、それが現場でどのように実行されているかを見なければいけません。全体が1つの調和した有機的な組織・チームとして動いていくためにも、情報がどう伝わっているか。一人ひとりがどんな気持ちで仕事をしているかをしっかりと確認しないといけません。

どんな状況かを把握して、関係の質を向上できれば、目的に向かって進むチームビルディング・チームマネジメントができるし、そういうコミュニケーションも取れるようになります。

ですので、ミーティングやコミュニケーションの場をしっかりと記録して、自分たちがちゃんと目的に向かって進んでいるか、どこまで来ているか、ギャップがどれくらいあるかを考える。かつコミュニケーションを1回やっておしまいじゃなく、継続的にやっていけるように議事録を作り、みんなでそれを共有する。ギャップを捕捉しやすい状況を作っていく必要があります。

もう1つは、そういった今の状況をしっかりと評価することも考えないといけません。ミーティングなどをいかにうまく回していくかと、現状がどうなっているかを見ていく。この二面がチームマネジメントで非常に大切です。

現状をちゃんと把握し、評価・改善していくことが必要です。チームマネジメントをより良くしていくためには、その両面で考えることが大事ですし、テレワーク下でも目標にコミットし続ける「チームマネジメント」につながると思います。

ご自身のチームのコミュニケーションがどうなっているのか。それをどうやって評価し、捕捉していけばいいのか。みんなの考えをどう把握していけばいいのか。みなさんの中でイメージしていただきながら、現場でどうしていけばいいかを考えていただければと思います。

こういうかたちで、チームマネジメントを機能させるコミュニケーションや関係の質、そして心理的安全性などの話をさせていただきました。30分ありがとうございました。

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