2024.10.10
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小田木朝子氏(以下、小田木):みなさま、株式会社NOKIOOが主催する毎月1回の90分腹落ちオンラインセミナーにご参加いただきましてありがとうございます。「組織開発や人材育成に関わる方向けに、90分で役に立つ情報をお届けしたい」が、この場のコンセプトになります。
そして今日は、「管理職研修再設計のヒント」をテーマにお送りします。では、今日のスピーカーおよびゲストの紹介から始めていきたいと思います。おなじみの沢渡さんからお願いします。
沢渡:毎度おなじみ、沢渡あまねでございます。作家、組織開発・ワークスタイルの専門家をしております。日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社を経験しましたが、社名を聞くだけで「うわ、硬そう!」って思われるかもしれません(笑)。
小田木:(笑)。自分で言っちゃうんだ。
沢渡あまね氏(以下、沢渡):大企業を中心にキャリアを形成してまいりました。今は自社であるあまねキャリア株式会社のCEO、NOKIOOの顧問、なないろのはな 浜松ワークスタイルLabの取締役等々、複数の顔を持って活動しています。
私のホームポジションは、IT×広報、IT×グローバル広報のキャリアを基に組織の景色を変える支援をしてきました。これまでに350以上の企業・自治体・官公庁のマネジメントや働き方の問題に向き合ってまいりました。
私の顧客は9割が大企業です。私も大企業出身ですので、今日は大企業の組織変革、マネジメント変革の立場からお話しできるかなと思います。3月25日発売の『新時代を生き抜く越境思考』という新刊ですが……。
小田木:「NEW」と書いてあるし、背景にもありますね。私も持っています。
沢渡:小田木さん、ありがとうございます。
小田木:お先に読ませていただきありがとうございます。
沢渡:ありがとうございます。おめでとうのメッセージもうれしいですね。今日はこの本のエッセンスも交えて、みなさんとディスカッションしながらいい場を作っていければなと思います。よろしくお願いします。
小田木:沢渡さん、今日もよろしくお願いします。
小田木:私も自己紹介をさせていただきます。株式会社NOKIOOで役員をしております、小田木と申します。人材育成・組織開発に関わる企業さまのお手伝いをさせていただいています。私が関わる人材育成・組織開発では、D&I推進ということで「多様な人がいるだけじゃなくて、多様な人がいるからこそ組織ってもっとバリューが出せるよね」という内容のお手伝いが多いです。
その観点からも、マネジメントを組織の中で機能させていく担い手としての管理職が、組織としてどうサポートしていくかはめちゃくちゃ大事なテーマだなと思っています。どちらかと言うと、今日の企画は視聴者としても楽しみです。でも、ちゃんと進行させていただきます。よろしくお願いします。
沢渡:よろしくお願いします。(スライドの写真の)小田木さんの右側に書影がありますね。
小田木:はい、そうなんです。ちっちゃな書影ですが、『働く私たちの育休戦略』という本を去年の夏に出させていただきました。まさに多様な人材活躍の中でライフイベントとどう向き合うか、ライフイベントをどう捉えるかは、けっこう大事なテーマだなと思っています。
私自身はこれで1回ずっこけたことがあるんですけど、「みんながこける必要はないよね」という観点で本を書かせていただきました(笑)。
沢渡:作家仲間が増えるのはうれしい限りです。よろしくお願いします。
小田木:でも私は1回書いてみたら、「もうこれ、二度と書きたくないな」と思うぐらい大変でした。
沢渡:(笑)。
小田木:続きまして、本日はスペシャルゲストにお越しいただいております。株式会社EVeM代表の長村さんです。長村さん、今日はよろしくお願いいたします。
沢渡:よろしくお願いします。
長村禎庸氏(以下、長村):よろしくお願いします。
沢渡:ぜひ自己紹介をいただけますでしょうか。
長村:みなさん、はじめまして。長村と申します。沢渡さんとは本当に真逆のキャリアだなと思うんですが、私は1社目にリクルートに入り、『ゼクシィ』というブライダルの結婚情報誌の営業をしていました。
小田木:『ゼクシィ』だったんですね。
長村:はい。4年ぐらいで辞めて、当時は300人ぐらいしかいなかったディー・エヌ・エーという会社に入りました。翌年にはなんと、社員が1,000人になるという。
小田木:本当に?(笑)。
沢渡:急拡大。
長村:一生で見られるか見られないかわからないぐらいの、急拡大の渦の中にいました。
小田木:貴重な体験でしたね。
長村:合計で8年半ぐらいいたんですが、急拡大する会社ですごくラッキーだったなと思います。入ったのはまだ27歳だったんですが、29歳の時には子会社の取締役をやっていたり、年間で100億円ぐらい売上があるような事業部の事業部長をやったり。たぶん、普通はできない仕事をすごくできたなっていう感覚です。
沢渡:そうですね。
長村:これがベンチャーキャリアの魅力だなと思いながら、すごく楽しんでやっていました。ディー・エヌ・エーが2,000人ぐらいの会社になって大きくなってきたところで、もう少し小さいところでもっとチャレンジしたいなと、ハウテレビジョンという会社に転職しました。
取締役COOということで、事業の統括をする担当だったんですが、入社して2年ちょっと経った後に東証マザーズに上場しました。会社を大きくして上場させる経験ができたかなと思っています。
長村:ディー・エヌ・エーやハウテレビジョンでは1年単位ぐらいで異動しちゃって、何かに特化して仕事をした覚えがないんですよね。ハウテレビジョンの時も、COOって「何でもやります」という仕事なので、聞こえはいいんですが、「何かできるんですか?」と言われれば「特に何もできません」というような仕事でして(笑)。
だから「何をしてきたのかわからないな」とけっこう悩んだんですが、「マネジメントをしてきたな」という思いはずっとありました。「ベンチャーに特化したマネジメントって、やっぱり普通のマネジメントとちょっと違うよな」と思っています。
自分がマネジメントを誰かに教えようとした時に、適切な書籍や研修がなくて、都度けっこう苦労したなという思いがあったので、「自分が作ればいいんじゃないか」と。それが事業として大きくなるか小さくなるかはわかりませんが、まずは自分が欲しいものを作ってみようということで会社を作って、今に至ります。
創業して1年半ぐらいですが、累計で300人弱ぐらいの方が受け入れてくださいました。たくさんの人が「いい、いい」と言ってくれるので、調子に乗って会社をどんどん大きくしていこうということでやっています。
沢渡:ありがとうございます。波に乗っていて素晴らしいですね。波を作って波に乗る。最高です。
小田木:まさに仕掛けていくという印象を受けました。長村さんをゲストにお呼びし、おなじみの沢渡さんと企画した今日の管理職とマネジメントをテーマにした90分腹落ちセミナー。せっかくなので、スペシャルついでにちょっとスペシャルなかたちにしてみようと思います。
沢渡:スペシャルついでに(笑)。
小田木:そうそう(笑)。今までにないトライアルをいくつか仕込んでいるので、まず最初にみなさまに共有させていただきたいなと思います。「今日が初めてだ」という方は、ぜひ今日この場を楽しんでいただければと思いますし、「いつも参加していますよ」という方は、今日ならではのスペシャル感も楽しんでいただければと思います。
小田木:まず、スペシャル感その1。2冊の書籍の著者をゲストにお呼びしました(笑)。
沢渡:(笑)。
小田木:沢渡さんの書籍『マネージャーの問題地図』と、長村さんの書籍『急成長を導くマネージャーの型』。
長村:ありがとうございます。
沢渡:「2冊とも持っています」というコメントをいただきました。ありがとうございます。
小田木:本当に? すごいですね。
長村:うれしいです。
小田木:「なんちゅうアンテナの高さや」という感じですが、ありがとうございます。2冊ともマネジメントについて書いた本なのですが、沢渡さんの本は管理職の課題を捉えながら、大企業のマネジメントを変化の時代に合わせてどうアップデートしていくべきかを書いています。
さらに、「マネージャーに全部押し付けちゃ駄目だよ」というところで、1人で抱え込まない、かつ変化の時代のマネジメントへの挑戦みたいなものを書いていると思います。長村さんの本は、ベンチャー企業のマネジメントを書いているんですが、ベンチャー企業じゃなければまったく響かないかというと、むしろ逆です。事業を成長させる上で必要なマネジメントの型が何かに着目されています。
この2冊の著者さま同士を呼んでイベントを盛り上げようとしているのが、注目ポイントその1です。さらに、両方とも技術評論社さんから出ている書籍です。この企画に際して、甚大な協力をしてくれたのが技術評論社さんなんですね。
今日は編集者の方も来てくださっていますが、こういった協力とコラボレーションの下で開催できたイベントでもあります。
沢渡:コラボレーションです。
小田木:注目ポイントその2ですが、「通常比、200パーセントの“ライブ型”」と書いてあります。
沢渡:ハードルを上げるなあ(笑)。
小田木:通常の90分腹落ちセミナーは、資料の充実度が1つの魅力じゃないかなと思っています。私たち企画者側はそこに力を入れています。
「200パーセントの“ライブ型”」では、事前に用意された資料ではなく、当日のゲストのトークから生まれてきた発見やポイントを資料に書き込んで、この場で生まれた資料を終了後に共有させていただくという仕掛けをしてみたいなと思っています。
沢渡:「できるかな? はてはて、ふむ」という感じですね。
小田木:そうなんですね。いつもは「資料データを共有します」とお伝えして、アンケートに回答すると即座にダウンロードできます。今日は恐れ入りますが、アンケートを回答いただいた方に明日ダウンロードできるようにURLをお送りしますので、ご送付まで一晩お待ちいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
沢渡:みんなでチャレンジしましょう。
長村:その通りですね。
小田木:ちょっと自分でハードルを上げ過ぎちゃった感が半端ないですが、ありがとうございます。最後の着目ポイントは、今日の全体のトークライブの地図を書かせていただいています。
テーマは「管理職研修再設計のヒント」ですが、副題のほうが大事かなと思っています。「これからの時代に求められるマネージャー・管理職の要件」をゲストとともにひも解いていくのが、今日のセミナーです。
このテーマ、およびゴールに至るプロセスとして、そもそも何が問題なのか。その上で、これからのマネージャーの要件は何と言えるんだろうか。最後に、そんなマネージャーを組織に増やしていくためのヒント(を探ります)。
もっと言うと「勝手に育ってね」ではなく、組織がマネージャーをどう支援していくことで存分にパフォーマンスを発揮でき、会社としても成長できるんだろうかということです。いろいろな仕掛けを仕込んでみたんですが、ぜひ楽しんでいってください。
そして今回も、チャットを使ってできる限りみなさんの関心や問題意識を拾いながら進行していきたいなと思っております。
小田木:ということで、始めてまいります。まず1つ目のお題は、「マネジメントの実践」。そもそも何が問題なのか、どうしてこのテーマに対してみんな考えるのか、悩むのか、難しいと思うのか。これをまず、沢渡さんと長村さんに聞いてみたいなと思います。
「教えて、沢渡さん&長村さん マネジメントの実践で何が問題? どうして難しい?」。それぞれの立場や観点からでけっこうです。
沢渡:トーク番組みたいですね。
長村:じゃあ私、いいですか。
小田木:はい、ぜひお願いします。
長村:マネジメントの実践という言葉を聞いた時に、「みなさん、『マネジメント』って何のことを思い浮かべますか?」というところから入らなければいけないなと思っているんですよね。
人によっては、「メンバーの方とコミュニケーションを取ることだ」というのもマネジメントでしょうし、「チームの目標とか役割を決めること」「チームの会議体を整備すること」や、評価もマネジメントです。マネジメントという言葉(の意味)が広いので、何のことを言っているのかをはっきりさせるところから始めなきゃいけないなと思います。
つまり、「マネジメントの実践が難しいな」と思っている方々は、マネジメントの何が難しいと思っているのかを、まずは言語化して可視化していかないと、何が問題でどうしたらいいかわからず、ずっと立ち止まっちゃうんじゃないかなと思っています。まず、ここが1つ大事かなって思います。
小田木:ありがとうございます。難しさを論じる前に、そもそも何をマネジメントだと思っているのか、よくわからないから難しく感じているのか、それとも定義した上で「この点に関して難しくて」というところまで解像度が上がっているのか。「そこからじゃない?」っていうことですね。
長村:そうですね。
小田木:まさに今日のセミナーのテーマに「マネジメントの要件定義」という着眼点を入れています。この要件定義が曖昧だったり、自分の中になかったり、組織の期待と自分の中での要件定義がズレちゃっていたり。もしかしたらそこに難しさの手前の課題があるかもね、ということですね。ありがとうございます。沢渡さんはどうですか?
沢渡:いくつも申し上げたいことがあるんですが。
小田木:いくつも(笑)。
沢渡:1つに絞るならば、ロールモデルが不在という問題が大きいのかなと思います。長らく日本のマネジメントは、「習うより慣れろ」「先輩の背中を見ろ」で育まれてきたと思うんですね。ところが、2つの意味でロールモデルが不在となっています。
1つ目は、これだけ時代が複雑化してきたり、あるいはCOVID-19もそうですが、未知のリスクやIT技術の進化が進んでくると、過去の人たちに答えを求めにくいんですね。そうすると、「新たな複雑性やリスク、オポチュニティに向き合って答えを出していくマネジメントをする人が社内にいますか? 先人がいますか?」という話が出てくるわけですね。この意味でのロールモデルの不在。
2つ目は、ジェネレーションギャップです。例えば、30代で課長になりました。ところが、1つ上の部長は50代、60代という時に、見る背中が生きてきた時代背景は異なりますから、当然答えを求めにくいわけです。そうすると、組織の中にロールモデルが見出しにくい。
今日は「越境」と(画面の背景に)書いてありますが、このように組織の外の人たちと「今の時代に求められるマネジメントって何か」というディスカッションをする。あるいは、長村さんが提供してくださるような新しい型を取り入れながら実践していくマインドが必要になるのかなと思います。
小田木:なるほど、ありがとうございます。
小田木:本当にそういう意味では、長村さんの観点ともつながるかなと思いますが、難しさの要因の切り方としては見えるところにお手本がない。もしくは、見えるお手本が求められている姿だと思うと難しさを感じてしまったり、「(管理職に)なりたくないですけど」という話になっちゃう。
「なんでロールモデルがいないのか」という観点では、管理職、もしくはちょっと前に管理職になった世代が管理職として求められていた環境や、その中での成果の出し方が変わってきているからじゃないかと思います。
沢渡:そうですね。
小田木:そういう意味で長村さんと沢渡さんにお聞きしたいのですが、より難しくなっている、もしくは(難しく)見せている事業環境というか背景をどう捉えていますか?
長村:私が思うのは、「キャリアの成功のすごろく」と言うんですかね。
小田木:すごろく(笑)。
長村:大きい会社に入って、次はこうなってああなって、こうなって定年というかたちで、その会社の中でずっと生き続けることこそがキャリアだ……というのは、ここにいらっしゃる方だったら当然だと思います。でも、そんな時代じゃなくなっていると思うんですよね。転職もしやすいですし、転職というかたちではなかったとしても、会社員でありながら少し違うことをやってみるとか。
沢渡:副業とか。
長村:はい。副業やキャリアの選択肢がすごく開かれている時代だと思います。昔はその会社にしがみついておかないと、すごろくからふるい落とされるから、「だったら上の言うことを嫌でも聞きます」「理不尽に耐えなさい」というのがメンバーの要件だったと思うんですよね。でも、メンバー側からしたらもうそんなことをする必要がない時代なので。
沢渡:そうですね。
長村:そういうマネジメントをされたら、メンバーの方が「じゃあ他へ行きます」と言うだけの話です。そういう意味でも、スタイルは変わらざるを得ないんだろうなとはすごく思いますね。キャリアの流動性が高まった結果、変わるんだろうなという感じはすごくしています。
沢渡:組織側も変わっていかないと制度疲弊を起こしますよね。今がその時期なのかなと思っています。
長村:そうですよね。
小田木:今の長村さんの観点では、マネジメントの要件が曖昧、もしくは定義しにくい、明確になってないという課題と併せて、今度はマネジメントとして関わるメンバーの難しさが出てきますね。
例えばキャリアサポートという観点が出てきた時に、今までの育成方法とか動機付け方法では成果が出ない、結果が出にくいという難しさもあるんじゃないかと。今のキャリアすごろくの話からふわふわっと想像しました。
沢渡:長村さんのワーディング、すごく好きなんですよね。
小田木:ワーディング(笑)。
長村:(笑)。ぱっと思い付いたことを言っちゃってすみませんね。
沢渡:いや、さすがです。組織をクリエイトされてきた方だなと、腹落ち感がありました。
長村:僕は新卒の時にリクルートに入りましたが、リクルートもすごく大きい会社で、大企業のカテゴリーに入るのかなと思うんです。上司の人からは「理不尽に耐える力を身に付けなさい」「アピールしなさい」と口酸っぱく言われていたんですが、たぶんそれは今(の時代に)言ったらダメだと思うんですよね(笑)。変わってきている感じがします。
小田木:そういう意味では、「マネジメント=普遍的なものである」という考え方をアップデートする前提があるかどうかで、感じる難しさも変わりそうだなという気がしますね。
沢渡:そうですね。
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