CLOSE

#第64回上司道勉強会 出版記念講演 指示しなくても動くチームの作り方(全3記事)

アメとムチで人を動かすのは、単なる“付け焼き刃”に過ぎない 「部下が動かない」と嘆く前に、見直すべき指導の問題点

上司の指示なしでも動ける「自走式組織®」を目指すためのポイントを、​​『指示しなくても動くチームの作り方』著者である吉野創氏が解説します。タイプ別の部下への接し方や、上司にとって大切な姿勢など、理想のチームを作るメソッドを明かしました。本記事では「自走型組織」を生み出すためには、どのようなマネジメント手法が必要なのかを語っています。

指示なしで動く「自走型組織」とは?

吉野創氏:みなさん、よろしくお願いします。上司道のみなさんとは本当によく会うので、いつもアウェイ感のない中で話をさせてもらっています。本当にありがとうございます。とはいえ、今日は初めての方も多数いらっしゃると思いますので、自己紹介も含めて進めていきたいなと思っています。

僕の初の著作『指示なしで動くチームの作り方』は、職場のマネジメント職の人に読んでもらいたいなと思って書いた本です。その出版記念講演なので、内容にも少し触れながら、指示なしで動くチームを作っていくために大事なこともお伝えできればなと思っております。よろしくお願いします。

じゃあ、さっそく行きたいと思います。まずは自己紹介です。私がどんなことやってる人なのか、知らない人たちもいると思いますので少しだけお話ししますと、会社の文化を変えています。指示なしで動くチームや組織、これを「自走式組織」というキーワードで(呼んで)、自走式組織を作る方法をお伝えしています。

トゥルーチームコンサルティングという会社をやっています。2社目の一般社団法人ですが、自走式組織協会というのもやっていて、今は2社を経営しています。「自走式組織®」を商標登録をさせていだたいて、体系化しました。それを全国で企業さまにコンサルティングをしています。

1人で自走式組織を作っていこうと思っても、やっぱり数が多いのでなかなか対応できない。ということで、仲間を作ろうという発想から、3年ぐらい前から自走式組織®コンサルタント養成講座という、自走式組織®メソッドを学んでいただける講座をやっています。ここでどんどん仲間を作っていって、自走式組織、笑顔のあふれる組織をみんなでつくっていこうというキーワードでお話をしています。

経営の知識ゼロの状態で、コンサル業界に飛び込んだ

そして、僕のコンサルティングの師匠は福島正伸さんという方で、また後でお話ししますが『メンタリングマネジメント』という本を出しています。この本との出会いが、コンサルタントとしての私のターニングポイントになったんです。

その話をするとちょっと長くなってしまうので、今日はこれぐらいにしておきますが、福島正伸さんはメンタリングマネジメント理論を日本で提唱している人です。メンタリングマネジメント理論を取り入れて、自走式組織®メソッドの強化を図っています。

「最幸企業」というのは当て字ですが、最も幸せな企業。やっぱり、働くほどに幸せになる職場、組織、企業を作っていこうと悩んでいる方はすごく多いんですね。そこに向けての勉強会なども主催してやっていて、企業の中小企業経営という業界紙にも連載をしています。

僕は経営コンサルティングファームに入って、支社長を経て独立をしているんですが、その時に体験したことをちょっとだけお話しします。実は、もともと大学を卒業後、ジーンズメーカーのエドウィンという会社で営業マンとして仕事をしていたんですよ。

なんでエドウィンに入ったかというと、ジーンズショップを自分で作りたかったんです。自分でオーナーとして店を出そうと思っていました。でも、自分でオーナーとしてやろうと思ったら、やっぱり経営って難しいんですよね。

「じゃあ、経営を学ばないといけない」と考えた時に、経営コンサルタントというお仕事を初めて知ることになって、その業界に飛び込んだのが今から16年前のお話です。もともとジーンズメーカーの兄ちゃんですから、経営のけの字も知らないわけですよ。

例えば、みなさんは試算表や決算書をご存知ですよね。試算表の見方もわからない、勘定科目すらわからないような状態で飛び込んだんですよね。なので、みなさんのようなマネジメント職の人や経営者さんとお話ができないわけですよ。それでは悔しいし仕事にもならないということで、とにかく経営理論の本をたくさん読みました。

飴と鞭で動かすマネジメントは、長くは続かない

たくさん(本を)読んで、クライアント先・企業さんに行って、知識だけを身に着けたお兄ちゃんが来て経営理論のお話をするわけですよ。人と組織の壁、つまり知識だけでは人は動かないんだということは、たぶんみなさん分かると思います。理論・理屈だけでは全然人は動かないということを痛感したんですね。

その時、僕はクライアント先にも成果を出せたり出せなかったし、自分自身が支社長をやっていた時に、自分の部下もなかなか動かせなかった。僕自身には部下を動かすという業績責任があるわけですよね。売上とか利益の目標を達成しないといけないです。

「思う通りに部下が動いてくれない」「売上が上がらない」とか、マネジメント職の方や経営者さんは考えたことがあると思います。そういう時、みなさんはどうされますか? 当時の僕は、人を動かすためには「その人が目指していることを話すこと」だと思ったんですよ。

働いている人は、では、何のために仕事しているのかというと、「お給料のため」でしょうと思ってたんですよ。みんなお給料を上げるために仕事してるんだから、みんなのお給料を上げられるように売上を上げないとダメでしょうと。この売上だったら冬のボーナスは出せないよ、給料は上げられないよと、会議の中で言ってたんですね。

これを「飴と鞭」と言いますよね。飴と鞭で部下に接すると、部下は簡単に動くわけです。ただし、その時だけ。……で、動かなくなったらまた言わないといけない、また動かなくなった、また言わないといけない……この繰り返しなんですね。「ああ、やっぱり言わないと動かないんだ、飴と鞭で動かすのがマネジメントだ」と思ったんですよ。

そういう状態の中で、私にコンサルタントは向かないなと思いました。胃が痛くなるし、ずっと(部下に)言わないといけないから、やめようと思ったんですよ。やめようと思った時に、僕をずっと見てくれてたある先輩から「お前は人と組織と向き合うことを避けてるだけだろ」と言われたんです。

「部下の働く目的」を尊重すると、一体感あるチームになる

理論・理屈でコンサルティングをしようと思っていましたから、それはなんとなくわかってたんです。でもズバリと言われて、「じゃあどうすればいいんですか?」と聞いたら、「お前は人と組織の壁と向き合え。コンサルタントの仕事を半分にして、残りの半分は合宿研修の講師をやれ」と言われたんですよ。

合宿研修はこんなイメージです。(机の)周りに座ってるのが人と組織の壁で、「経営がうまくいかずに困っている組織の方たちご一行さま」が来ているわけです。

一般社員さんから課長さん、部長さん、経営者さんまで20人ぐらいいます。こういった合宿研修を2泊3日でやって、最終日にはみんなで理念やビジョンの方向にベクトルを据えてやっていこうという状態にするわけです。講師は私一人です。どこにも逃げ場がないので、向き合わざるを得ないです。でも、これが僕には良かったんですよね。

向き合ってると「こういう時に人ってやる気になるんだな」「こういう時に人は覚悟を決めるんだな」「こういうふうにお互いの理解が深まるのか」ということがわかってくるんです。そして現場で見ていて、こうすれば、人間同士の関係の質が高まるんだなというのがなんとなくわかってきました。

ただ、それだけだと再現性がないですよね。この会社で良くなったって、ほかの会社ではできないかもしれないし、ほかの業種でうまくいかなかったらダメだし。ということで、いろいろな企業さんで試行錯誤したものを体系化して、いわば再現性を持ってできないかなと思って作ってきたものが、自走式組織メソッドのベースになっています。

じゃあ、どのようにしていくとよりよいチームになっていくのかを構築してきました。現場でわかったことを書いたのが、今回の『指示なしで動くチームの作り方』という本ですね。「売上を2倍にする」と書いてますが、売上2倍というのは後から付いてくると思ってます。

部下の働く目的を大切にすると、自らの意思で動くようになって、しだいに一体感のあるチームに変わっていきます。よかったら(書籍を)見ていただけたらと思います。読者層は、小さな部署や組織・チームのマネジメントに関わってるビジネスパーソン。上司、管理職、リーダーと呼ばれている人たちにぜひ読んでほしいと思います。

国も本格的に取り組み始めた、企業の人材育成

こういう人たちに向けた本を書こうと思ったのは、2年前からコロナで職場の状態が変わってきましたよね。こうして今日もオンラインセミナーをやっていますが、2年前はZoomすら使えなかった状態ですよ。オンラインの仕事がいっさいなく、リアルコンサルティングオンリーでした。なので、2020年の4月はお仕事が一気になくなりました。

こういうご経験をされた方、たぶんたくさんいると思うんですよ。その状態の中で、職場の状態が変わったわけです。テレワークなどを中心として、働き方も大きく変わりました。今まで部下と職場で触れ合っていた上司が触れ合えなくなって、マネジメントがうまくいかなくなったという話はゴロゴロありますよね。

それに対して国も考えようということで、テレワークでの働き方の検討会をやったそうです。これは僕の仲間のキャリアコンサルタントさんからいただいた情報なんですが、厚労省のページにあるようなので見てみてください。

人材育成について、この検討会の答えはこんな話です。「自律的に業務を遂行できる人材育成に企業が取り組むことが望ましい」。これは当たり前ですよね。たぶん、みなさんから見ても「当たり前じゃん」と思うことだと思うんですよ。でも、これがなかなか難しい。

そして、さらにこういうものもあります。「労働者が自律的に働くことができるように適切な業務指示ができるようにする」。適切な業務指示、というのが難しいんですよね。「指示」と書いてあるのがちょっと気に入りませんが、管理職のマネジメント能力に取り組むことも望ましいと。

僕も「当たり前のことを書いてるな」と思ったんですが、国も本格的に管理職のマネジメント能力の向上に取り組もうという方向性をさらに強化してきてるんですね。

「自分が育てられたように育てる」が、正しいとは限らない

とはいえ、現場の上司のみなさんは「マネジメント能力」がわからないですね。教えてもらってきていませんから。だから、自分が育てられたように育てる、という人が多いです。そこには、各自のいろんな答えがありますので、うまく行ったり行かなかったりします。だからこそ、現場で実践しやすいようなヒントをなるべく分かりやすく書いた本にしようと思いました。

目指してきたのは自走式組織®作りなんですが、つまりそれは僕のイメージする理想の組織への進化なんですよね。「こういう理想の組織を作っていこう」という流れは実は世界中にあって、日本はどっちかというと独自の路線を行っている状態なんですよね。

数年前、ティール組織という書籍が出ました。読まれた方はいらっしゃいますか? 世界で60万部ぐらい売れたそうですよ。確かにこれは理想の組織ですよ。「実際にこうなりました」ということも書いてあって、「これはすごいな」と思ったんですね。

ティール組織って、簡単に言うとこんなことです。上司・部下の関係なし、役員売上予算なし。日本の組織からすると、この辺がもうすごいじゃないですか。社員一人ひとりが目標達成のために意思決定して動く組織。「これは本当に未来の組織だ」と思いました。

ただ現状、例えば僕のクライアント先やいろんな企業さんを見た時に、この状態で一気にティール組織ができるのかなと甚だ疑問だったんですね。これはいろんな考え方があると思いますから、僕はそのように感じたと理解していただきたいです。

基本的に僕は、中小企業さんの応援をメインでしていますから、中小企業をティールにできるのかなというのは相当疑問でした。「自立した人材だったから可能だったんじゃないかな?」ということがたくさんありました。大企業はティール組織ができるかもしれないけど、中小企業はどうなのか。日本版ティール組織を目指していくことが必要じゃないかなと思ったんですよ。

今の中小企業の現場は、人を管理する、指示命令で働かせる旧式な組織もまだまだたくさんありますし、そのようなマネジメントをやっているマネジメント職の方もたくさんいらっしゃいます。僕も支社長時代はそうでした。それを日本版ティール、まずは指示なしで自発的に働く状態にしていくことが大切じゃないですかと提唱しています。

組織の理想的な状態は「部下の管理が必要ない」こと

部下の管理で悩んでる方は多いかもしれませんが、そもそも部下の管理が必要ない状態が一番理想じゃないですか。指示しなくても動く状態、そういうチーム作りができて、さらに生産性が上がって業績アップする方法があれば、知りたくはないですか? どちらかというと、現場のマネジャーさんたちの視線で書かせていただいた本になります。

経営コンサルタントの仕事はすごく大好きなんですが、それを通じてやりたいことがあって。これは仲間のみなさんにはいつもシェアさせてもらってるんですが、ほとんどの方が人生の中でたくさんの時間を仕事に費やしてると思うんですよ。

仕事というものを、もっともっと感動のあるものや楽しいものに変えていける余地、十分あると思っているんですね。それを変えていきたい。社員のみなさんの成長ややりがい、充実感を日々感じる職場を1つでも多く作りたいなと思って、この仕事をやっています。

充実感を感じながら働く大人たちが、子どもたちにいい背中を見せてほしいんです。そして、子どもたちが「早く大人になりたいな」って、自分の未来へ希望を持ってくれるような社会にもっともっとしていきたい。それが、私が本当にしたいことなんですね。笑顔のあふれる職場を作っていこう。これに共感していだたいた方は、ぜひ友だちになってください。一緒にいろんな取り組みができたらいいなと思っています。

いろいろな現場で本物のチームを作っていくと、業績改善ができるようだということがだんだんわかってきました。じゃあ、それを作っていくという視点でいろんな講演をしたり、企業コンサルティングや支援を現場でやっています。

いろんな方たちとふれ合いながら、最も幸せな企業・最幸企業をつくるマネジメントの勉強会をやっています。これは休日にやったんですが、私服で来ている人もいます。1万円以上ぐらいする勉強会やセミナーに、休日に自腹で来るわけですよ。こんなにたくさんくるということは、やっぱり悩みは深いなと思ったんです。

なので仲間を作ろうということで、コンサルタント養成講座をつくりました。仲間のみなさんとそういう取り組みをしていければなと思っています。

指示なしで動くチームが、結果的に自走型組織を生み出す

じゃあ、指示なしでも動くような自走式組織®を作っていくとどうなるかというと、業績改善は後から付いてくるわけです。これはセミナーに来た方だけにお見せしている数字なので、この場だけの話にしていただきたいんですが、売上が5億円ぐらいガッと落ちたところに対して自走式組織を始めると、41億円までアップしてきました。

売上アップは社員さんたちのがんばりに他ならないんですが、(理由は)もう1つあります。この粗利益率を見てください。15パーセントにまで落ちました。これが16パーセント、17パーセント、17パーセント、18パーセントと、1パーセントずつじわじわ上がっていったんですね。

現場で粗利益のことを見ている方ならわかると思いますが、粗利益を1ポイント上げるのは相当大変なことです。原価、外注費、材料費、労務費を見直していかないと改善できない。いろんな業種ごとに(課題は)ありますが、原価の見直しで一番大事なのは、現場で社員さんが知恵を出していくことなんですね。

それをやっていかないと、ここまでの粗利益の改善はなかなか難しいと思います。自発的に知恵を出すようになっていったことが、大きな利益改善の動きになりました。販管費は5億円前後でそんなに変わらないです。人を増やして売上を上げたわけじゃないんですよ。

粗利率が1ポイント、2ポイント、3ポイントと上がっていくと、営業利益や経常利益段階で過去最高になったんですね。生産性が上がる、残業時間の削減、利益率が改善されるということは、結果として後から付いてくるんですね。

「どのようにそれを作っていくの?」といつも聞かれるんですが、やり方はそんなに特殊なものはなくて、PDCAとか当たり前のことをやってるんですよ。ただ1個だけあるのは、自分たちで考えて教えあったり育てあったりするという、組織の文化を変えていったことだと思います。

じゃあ、チームの文化をどう変えるのか。実はこれがマネジメント職の人たちのこれからの重要テーマになるんですね。「それを押さえれば構築できるよ」という原理原則とポイントを体系化は別のセミナーでお話ししていることなので、今日はこの辺りにしておきます。

いろんな経営者さんに話を聞いて、「理想の組織」がよくわかりました。「社長が指示しなくても動く組織にしたいんだよ」と、みんな同じことを言っています。指示なしで動くチームがたくさんできたら、結果として自走式組織になっていきます。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • “退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方

人気の記事

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!