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『これはデザインではない 「勝てない」僕の人生〈徹〉学』刊行記念 千原徹也×さらば青春の光 森田哲矢トークイベント(全7記事)

さらば森田氏×れもんらいふ千原氏が考える「20代苦労した人」が持っているもの 一番しんどい“何もない20代”を乗り越えるためのアドバイス

代官山 蔦屋書店にて、『これはデザインではない 「勝てない」僕の人生〈徹〉学』刊行記念イベントが開催されました。著者で、株式会社れもんらいふ代表の千原徹也氏と、お笑い芸人・さらば青春の光の森田哲矢氏が登壇しました。会社の経営者であり、名前が「テツヤ」という共通点を持つ両者の、仕事や生き方に関する〈徹〉学が語られた本イベント。最終回の本記事では、会場参加者の質問に回答。千原氏が「20代は苦労したほうがいい」と考える理由が語られました。

あえて違和感のある文字の置き方をした背景

千原徹也氏(以下、千原):なんやかんやあと5分っていう。

森田哲矢氏(以下、森田):あら、はやっ!

千原:あと(お答えできる質問は)1個ぐらいじゃないですか?

森田:あっ、男性が。

千原:男性2人、いきましょう。

森田:いいじゃないですか、もうじゃあその2人にしましょう。

千原:どうぞ、どうぞ。

質問者4:1つは、今回出された本の件で、表紙の文字の置き方とかがすごく不思議といいますか、こういう置き方ってなかなかしないのかなと思ったんですけど。何か意図とかされてたのかなっていうのが1つ気になったのと。

『これはデザインではない 「勝てない」僕の人生〈徹〉学』(CCCメディアハウス)

あとはもう1つは、普通の一般の方とか、ふだん会う方とかで、お二人が「こういう人ってなんかおもしろくて魅力的だな」って思う人の共通点って、何かもしあればお教えいただけますでしょうか?

千原:なるほど。

森田:まずデザイン。

千原:まずそうですよね。これもけっこう出版社の人と戦ったんです。もともと僕は、読みにくいほうが人の印象に残るかなという意識があるんですよ。

森田:違和感みたいな?

千原:違和感が。それで、「何て読むの?」と思ったら、そこにコミュニケーションが生まれるじゃないですか。もう『これはデザインではない』というと、どう考えても読める(デザインの)ものやと一方通行なんですけど。

「あれ、ちょっと読みづらいな」となった瞬間に、こっち側(見ている側)の気持ちがこの本にいくので、対話が生まれると思っていて。だから、必ず何かちょっと違和感(を入れる)というのは意識してやっていますけどね。

森田:あえてというか。

千原:あえて。なんでもそうですね。

森田:だって俺、これ(トークイベントのポスター)見て、気持ち悪かったもん。

千原:気持ち悪いでしょ?

森田:「気持ち悪っ!」って思いましたもん。でもそれも「気持ち悪っ」って思わせるほうがいいってことですもんね?

千原:これだって、このまんま書いてあったら何も考えないですもんね。「気持ち悪い」も何も感じないんで。

森田:確かにね。(字が反転してたら)なんやったらちょっと読もうとするしね。

千原:そうですね。だから、それは気にしたりしてる。それで、こういうかたち(表紙のデザイン)にしたりしてます。

おもしろいと思う人の共通点は「自分にないものを持っている人」

千原:あともう1個(の質問)が、おもしろいと思う人。

質問者4:であったり、考え方とかなんか。

森田:共通点ですか。えー、なんやろ? でも、やっぱり自分にないもんを持ってる人のことはおもしろいって思うじゃないですか。これが別にむかつくこととかでも、「自分はそれ絶対やらん」とか「でけへん」とかでも、思いません?

パリピとかでも、「俺は絶対それやられへんけど、なんかこいつら見てたらおもろいな」とか、「こいつらはこいつらなりになんかあるな」っていうことかなと思います。

千原:確かに、まったく自分の発想にないジャンルの人と会話するのはおもしろいですよね。

森田:おもしろいですよね。今日もやっぱり、千原さんに聞かんかったら、(映画のタイトルの)斜めが流行ってるとかわからん。だってこれ、帰って誰かに言おうと思うもん(笑)。

千原:今日帰る途中で3個ぐらい見ると思いますよ。

森田:そうですよね。でも確かに、異業種の人としゃべるって、やっぱりおもしろいなとは思いますよね。

1つでも熱量の高いものを持っている人の話はおもしろい

千原:昨日僕ね、ギャル2人としゃべってたんですよ。ほんなら、2人が顔の整形の話をバーッとやるんですよ。「どこのクリニック?」とか、「あそこね」とか言ったら「あそこ下手やろ」とか、すごい会話してるんですよ。「ここ(鼻周辺)ポコってなっちゃったから、もう1回行かな」とか言ってて。

(僕たちは)そんな会話しないじゃないですか。「あっ、こういう会話が普通にあるんや」とか、そういうのは発見というか、おもしろかったです。

森田:1個のことに対して熱ある人はやっぱおもろいですけどね。なんでそんな力説してくんの? とか。

千原:わかる、わかる。

森田:ね! なんかおもしろいなっていう。1個でいいからなんかこう、熱量高いもんを持ってる人は「この人の話、おもろ」と思っちゃいますね。

千原:あと、こないだきゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんのライブ行って。そしたら、みんなが普通に見てる中、おっさんが1人こんなんなって踊ってるのとかは、すごいおもしろいなと思いました。

森田:(笑)。いいですよね、それはもう自分の世界ってことですもんね。

千原:こんなにハマれるってすごいなとか。

森田:すごいですよね、確かに。言ってみれば、きゃりーちゃんはそのおじさんの人生を変えてるわけですからね。

千原:そうですよね。阪神タイガースとかの試合見に行っても、ずーっと金網にこんなんなって(つかんで)文句言ってる人いるじゃないですか。どんな生き方してんねやろと思いますもんね。

森田:確かにね(笑)。ほんまやなぁ。

千原:そういうのは気になりますね。

2人の「21歳の時に死ぬほど楽しかったこと」

千原:じゃああともう1個だけ。

質問者5:本日はありがとうございました。僕は今、映画監督を目指して大学で映画を学んでるんですけど。ぜんぜん違う話なんですけど、僕は今21歳で、お二人が21歳の頃に死ぬほど楽しかった出来事とか、印象に残ってることを聞きたくて。

僕は今、大学生になってから行ったアーティストさんのライブとか、お笑い芸人さんのライブとか、こういうトークショーとかに行ったのが死ぬほど楽しくて。なんかつらいことがあっても、あれを思い出したら「俺は一生生きていける」って思うんですけど。お二人が20歳前後の時に死ぬほど楽しかった出来事を教えてください。

森田:21歳の時は、何してたんでしたっけ?

千原:僕が21歳の時は学生なので。

森田:大学は行ってたんですよね?

千原:行ってました。暇なので、映画がとにかく好きでしたね。昔、僕の時代は単館の映画館がたくさんあったので、とにかくもう毎週末、そこに見に行くっていう。

森田:あ~、いいですね。

千原:日々それが楽しかったですね。それぐらいです。

森田:なんかちゃんとしてるなぁ。

千原:これ、ちゃんとしてます?

森田:答えとして。

何の糧にもなっていない「アホみたいな体験」が残っている

千原:(笑)。死ぬほど楽しかった出来事何? 21歳。

森田:俺21歳ね、もう本当にクソみたいな生活してたんですよ。働いてないし。

千原:バイトは?

森田:バイトみたいなんはしてたけど、だいたい朝からパチンコ屋並んで。

千原:クソみたいな生活ですね。

森田:周りもクソみたいなやつらやから、もう1回パチンコとかも飽きて、21歳の男たちが5人ぐらいで「てい球」で野球しようってなって。ふわふわのボール、わかります?

千原:やばいですね(笑)。あの投げてもフッてなるような(ボール)。

森田:言ってみたら、カラーバットで打つ(ボール)。昔ね、僕らはあそこにビニールテープ巻いて。

千原:やってた、やってた。

森田:やってた? あれを近所の公園で、21歳でやりだしたんですよ。俺は団地やったんで、団地の中に公園があるんですけど。僕らが当時使ってたのは、小学校の時使ってたものよりも、質のいいてい球だったんですよ。あの(小学生の)時のてい球よりもちょい硬いから、グローブで捕らないと痛いぐらいのちょっと軟球に見える感じで。

それでずーっと、朝から晩まで野球やってたんですよね。ホームランの数を競ってたんす。今考えたら、あれめっちゃ楽しかったなと思って。

千原:確かにそれ楽しいですね。

森田:だって21歳で、(ボールが)団地のベランダに入って、ピンポン押しに行くことないですからね。

千原:ないですね。「すいませーん」って言って。

森田:ばばあビビってましたもん。「えっ!?」って。

千原:子どもが来ると思ってたら(笑)。

森田:そういう体験が未だに残ってる。いろんなこと忘れてるけど、そういうアホみたいな体験は残ってて。ただ、俺は別に、それがなんの糧にもなってないですけどね。でも、今考えたら楽しかったな、と思うのはそれかなあ。

謙虚な人は、20代で苦労している

千原:僕は、それ言われると大しておもしろくないですけど、映画ですね。

森田:何歳が一番楽しかったですか?

千原:人生で? 何歳やろね。

森田:まあジャンルがいろいろあるでしょうけどね。今も楽しいでしょうけど。

千原:そうですね。もうずっとしんどくて、特に20代は本当につらかったので。34歳ぐらいからおもしろくなったかな。

森田:でも確かに、「20代で苦労したほうがいい」って本で言ってたじゃないですか。それってマジで、いやわかんないすよ、僕もゴシップが好きやから。でも、売れてる20代の俳優、態度とかがもうクソなんですよ。なぜなら、苦労してないもん。

彼らのその気持ちわかるんですよ。だって、俺も「この俳優の容姿で生まれ、このちやほやのされ方したらこの態度とるわ」って思うから。芸能界を見てて、やっぱり芸人が一番謙虚というか。

それがなんでかと言ったら、苦労してないやつなんかいないんですよ。言ってみたら、霜降り明星ですら、20代で売れてるけど、たぶん辛酸を何回もなめてるから。みんな20代で苦労してるんですよね。なんやったら30代も苦労してるから。

それってたぶん、今に活きてきてるというか。別に仕事にも活きてきてるでしょうけど、人間関係にも活きててるかなと思いますよね。

千原:そうですね。

「20代が一番しんどい」とわかっていれば楽になる

千原:だから、逆に僕は本で「20代苦労したほうがいい」と書いてたのは、こういう業界の人は、みなさんだいたい20代で苦労してるんですよ。その時に「これ、いつになったら晴れんねん」と。

森田:わかる、わかる。

千原:「いつ抜け道あんねん」ってなる時に、僕がいつも言ってるのは「20代が一番しんどいから」って。それをわかっとけばいいよといつも言ってるんですけど。

森田:そっか。「20代やから当たり前やねん」って言えば、ちょっとは楽になる。

千原:そうそうそう。楽になると思います。だってね、若いっていうだけなので、実績ない、信頼ない、経験ない、何もないじゃない。お金もない。楽しいわけないですよね。だから、だんだんそれがちょっとずつ増えていって、30歳ぐらいになってやっと人生が見えてくるというかね。

森田:だから、(質問者に向けて)ここから9年しんどいですよ。

千原:いや、そうですね。

森田:本当。でも、「あ、しんどいんや」って思っとけば、なんか耐えられるんじゃないかっていう。

千原:自分だけがしんどいわけじゃなくて。

森田:ほんまですね。それ思っといたほうがいいですもんね。でもこれさ、同い年のやつが23歳ぐらいでボーンってなんか(跳ねる時がある)。

千原:なる人いるよね。でも、それはもう放っておいたほうがいいよね。それは「珍しい人や」って思っておいたほうがいいと思います。

森田:確かにね。でも、そう考えたら辞めなくてよかったですね。辞めるのも1個の選択肢ですけど、辞めないに越したことはないじゃないですか。その考え方はいいかもなと思いますね。

千原:そうですね。自分が苦しいのって、「向いてないんかな」とか「やり方間違ってんのかな」と思うと思うんですけど、みんなここはしんどいんだって思っておくとね。

「50歳で夢が叶った人」は例にしてはいけない

森田:それで言うとね、こないだM-1で、錦鯉さんが優勝したんすよ。50歳ですよ。じゃあね、クズたちが「50歳まではいけるんだ」って思う例もあるから(笑)。

千原:(笑)。そうですね。

森田:そう。だから、まあ難しいところですけど。俳優さんもそうじゃないですか。今、言ってみたら「晩年売れるブーム」やから。エンケン(遠藤憲一)さんとか、吉田鋼太郎さんとか、小手伸也さんとか。あの人たちって50代とかで売れるから。だから、役者とかでも売れてない人たちって辞めにくいやろなと思って。

だって、50代でずーっと実家におって、もうほぼおばあちゃんみたいなオカンに「アンタどうすんの?」みたいな言われても、「いや、俺は53歳で売れようと思ってる」とか、言い訳きくからね。それってどうなんやろなとか。

千原:確かに。なんか50歳で夢叶ってるやつは、もう本当に例にしたらダメですよね(笑)。

森田:それはダメですね(笑)。

千原:だって、そこまでずーっと夢追い続ける人がいるってことでしょ? そりゃ周りが大変ですよね。まあ、でもいいんじゃないですかね。歳とっても何か夢持ってるって、生きる糧にはなりますよね。

(時間を確認して)はい、終了です。

森田:あら、こんな感じで(笑)。

司会者:ありがとうございます。異なる世界で活躍するお二人の貴重なお話、ありがとうございました。

森田:ありがとうございました。

千原:ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:それでは、れもんらいふ代表、千原徹也さん。さらば青春の光、森田哲矢さんでした。みなさま、拍手でお見送りください。

(会場拍手)

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