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『これはデザインではない 「勝てない」僕の人生〈徹〉学』刊行記念 千原徹也×さらば青春の光 森田哲矢トークイベント(全7記事)

アイデアを考える時に「新しいもの」を見る必要性はない “日本一忙しいアートディレクター”の煮詰まった時の解決術

代官山 蔦屋書店にて、『これはデザインではない 「勝てない」僕の人生〈徹〉学』刊行記念イベントが開催されました。著者で、株式会社れもんらいふ代表の千原徹也氏と、お笑い芸人・さらば青春の光の森田哲矢氏が登壇しました。会社の経営者であり、名前が「テツヤ」という共通点を持つ両者の、仕事や生き方に関する〈徹〉学が語られた本イベント。本記事では、千原氏のアイデアに煮詰まったときの対処法や、森田氏が考える「ベタ」なお笑いのすごさについて語られました。

煮詰まっている時は、自分の体にあるアイデアを出せていない

千原徹也氏(以下、千原):(質問)ぜんぶ読み上げたらけっこうな時間になりますよね。

森田哲矢氏(以下、森田):でもこれは聞きたいんじゃないですか? 「アイデア出しなどに煮詰まった時に効果てきめんな発散or切り替え方法を教えてください」。アイデア出し……煮詰まります? 千原さん。

千原:そうですね、たまに煮詰まりますね。そしたら、ここに来ます。代官山蔦屋(書店)で本を見たりとかします。

森田:ええ、なんで!? それは何かインプットがあるんですか?

千原:なんか煮詰まってる時って、たぶん自分の体にあるおもろいアイデアを出せていない状態なんですよ。

森田:ほう。中にはあると。

千原:あるんです。ぜったいあるんですけど、忘れているんですよ。忘れているものを呼び起こす作業が必要になるんです。その作業に向いている場所だと思う。

森田:確かに、刺激を受けるものがいっぱいあるとかいうことですか?

千原:そうです。例えば、こう歩いて、(書店の)カメラマンのコーナーとか行って、パラパラめくっていると、「あぁ、そうや! あの時見た写真良かったな」とか。なんかリハビリみたいにどんどん蘇ってくるので。そしたら、「あの時おもろいと思っていたこのアイデア、使えるかも」となってくるんですよね。

おもしろいことでも、メモをとらないと忘れる

森田:そういうのって、デザイナーとかアートディレクターの方って、メモったりはしないんですか?

千原:僕はたまにメモったりしていますね。

森田:あっ、基本は別にメモらない?

千原:ぜんぜんメモっていないです。

森田:そら忘れるよ(笑)。老いをなめないほうがいいですよ(笑)。

千原:確かにそうですね(笑)。でも、iPhoneに「メモ」ってあるじゃないですか。本当に良い言葉とかがあった時にはあれに書いたりしていますね。

森田:俺もほんまに若い頃は、メモらなかったんですよ。「おもろいことっていうのは、おもろいネタっていうのはずっと覚えているよな」という感覚。

千原:記憶にちゃんと。

森田:そう。でも、マジで忘れるから。

千原:そうですね(笑)。

森田:たまに作家とかに、「森田さん、こないだ言っていたあのネタってやらないんですか?」と言われて、「……あったな! めっちゃおもろいやんけ、それ!」という感覚になってくるから。メモっといたほうがいいですよ。

千原:だから、iPhoneのメモというのができて、やっとちょっとメモるようになりましたね。それまでは僕ね、メモるじゃないですか、どこにメモったかわからなくなる。

森田:それわかります。

千原:だから、それを探しているのにもう終わったりするから、メモらなかったんですけど。でも、iPhoneのメモにメモっているのはもうすごく直結しているんで、最近はよくやっていますね。

新しいものではなく「子どもの頃に思っていたこと」がアイデアになる

森田:でも、やっぱり煮詰まることはあるんですね。

千原:なんか煮詰まっているというか、呼び起こしきれていない感じというかね。

森田:そうかそうか。この中にあるもんもんを呼び起こせて(いない)。

千原:たぶんみなさんもそうだと思うんですけど、生きてきた中でおもろいアイデアって、毎日の中でぜったいにあるんですよ。だから、新しいものを見て、おもしろいことを考えなきゃという必要性ってほぼなくて。

この本(『これはデザインではない』)でも、子どもの頃の映画とか、そういうところからのアイデアなので。子どもの頃に思っていたことをどこまで呼び起こせるかという感じですね。

『これはデザインではない 「勝てない」僕の人生〈徹〉学』(CCCメディアハウス)

森田:その子どもの頃の発想も、呼び起こせるんですか?

千原:そっちのほうがおもしろいんですよね。子どもの頃に響いていたことのほうが、インパクトがあったし。必死に漫画にしたりとか、なんかいろいろやっていたから、良い記憶としてあるんですよね。それをなんとか世に出したい感じです。

しかも、最近見たものでアイデアにしちゃうと、それはみんなやっているんですよ。流行っているものってすぐ他もやりません? 例えば、洋服ブランドとか、テレビですごく有名なブランドとかが出ていたら、ファッション業界はみんなその服を使うんですよ。となるから、「それはやりたくないな」と思う。

子どもの頃のことを呼び起こすと、ちょうど20、30年前やから、今は流行っていないんですよ。で、逆に注目されると。

森田:俺らが17歳の時に流行ったあれ、今この時代に持ってきたら新しいんちゃうん? とか。

千原:そうです、そうです。それをずっとやっている感じですね。

森田:なんかファッション(の流行)って繰り返すというじゃないですか。その理論はほんまにあるということ?

千原:そう思います、たぶん。ファッションだけじゃなくて。

人は絶対にベタなことで笑う

千原:お笑いはどうなんですか?

森田:お笑いはね、そんなに繰り返すという感じでもないですね。ただ、「いろんなお笑いがあるけど、結局は人ってベタが一番笑うよね」というところには行くなあと。プライベートでも、自分がめっちゃ笑っている時って、なんかベタなことやったりするのかなとか。

千原:確かにしょうもないことをやったりするんですよね。

森田:なんかちょっと角度のある笑いって、なんとなくそこまで爆笑じゃないじゃないですか。だから、繰り返すということとはちょっと外れているかもしれないですけど、結局「ベタに勝るもんはないんじゃないか」みたいなことはあるのかな。

千原:なるほど。原点はやっぱりそこだという。

森田:ベタなもんって結局、手法を変えてベタに見せないようにしているだけなんで。人はぜったいベタで笑うので、僕らのネタとかもそうです。

たぶん笑っている事柄は、ベタなことなんですよ。ただ、ベタやと思わせない見せ方にすれば、それが新しいもんになるんじゃないかという感じでやっているから。お笑いってそういうことなんかなと思いますけどね。

千原:だって昔の、僕が子どもの頃に好きやった『ひょうきん族(おれたちひょうきん族)』とか、今見たらぜんぜんおもしろくないじゃないですか。そんな言い方しちゃ悪いかもしれないけど。

森田:まあわかりますよ(笑)。

千原:なんか時代が違うというか。でも、あれもベタですもんね。その見せ方が変わっているのかな。

時代によって見せ方が変わっても、根底にあるのはベタな笑い

森田:でもやっぱりね、俺はいまだに、すごくちゃんとした場で(ビート)たけしさんが出てきて、これ(お辞儀をしておでこにマイクをぶつけるの)は一生笑えますけどね(笑)。じじいが全力でボケるんですよ。めちゃくちゃおもろいです。

千原:たけしさんの『ひょうきん族』の昔のDVDとかを見ていたら、すぐおならをするじゃないですか。あれぜったいおもしろいんですよね。

森田:確かにね(笑)。おならもうんこもそうですけど、たぶん子どもの細胞レベルで人が笑う何かがあるんでしょうね。

千原:ありますよね。

森田:ゴキブリとかもそうじゃないですか。ゴキブリってたぶん人が「嫌だ!」と細胞レベルで思うというか。

千原:感じているからね。

森田:そう。だから、なんかあるやろなと思いますけどね。

森田:おならってたぶん、500年後とかでもウケると思うから。

千原:なるほどね。だって、おならはタイミングで笑えますもんね。

森田:そうですね。原始人とか、たぶんもっとめちゃくちゃおもろかったと思います。「お前それ空気出てんの!? それなにー!?」とか(笑)。

千原:(笑)。「音出てる」とかね。

森田:「あ、俺も出る!」みたいなことじゃないですか、言ったら。

千原:「なんか音色変えられるー!」とかね、そういう感じでね。

森田:そういう意味じゃ繰り返すというか、もしかしたら同じことでも、時代によって見せ方がどんどん新しくなっていっているようなことかなと。

千原:確かに。根底はぜんぶベタということですよね。

森田:なんかベタなんかなあと思いますけどね。

2人の「てつや」への質問コーナー

千原:僕、これ(質問)ぜんぶいこうかと思って、今何時なんでしたっけ? もう1時間過ぎてます?

森田:ああ、そうなんすね(笑)。いや、金の話をしすぎたんじゃないですか。

千原:しすぎたね。

森田:デザインの話をせな。

千原:そうですね。

森田:質問コーナー。これは誰からの質問なんですか?

千原:これはみなさんの事前の質問なんですけど。今日も挙手で質問できるんですよね?

森田:そうか、別に聞きたいことがある方はということですよね。

千原:それでいいんですよね?

森田:デザインに興味ある人とか、ぜったい聞いておいたほうがいいですよ。今しかないですからね。

千原:ここから(事前)の質問を今から受けたほうがいい? そういうことか。じゃあ挙手じゃなくて、ここの質問を聞けばいいんですね。

森田:じゃあだいぶ前からやってたやん(笑)。

千原:ごめんなさいね。でも、森田さんへの質問が来ていまして。

森田:ありますか?

千原:「森田さんが経営や仕事を選ぶ上でぜったいにやらないと決めていることとかありますか?」

森田:経営や仕事……選ぶ上でか。

千原:でも挙手のほうがいいですよね? なんかわりともうしゃべっているから、この会話の流れで聞きたいことがあったほうがいいですよね。

森田:確かに。誰かいます?

千原:誰か手を挙げていただいて。じゃあどうぞ。

質問者1:よろしくお願いします。

森田:よろしくお願いします。そんなにかしこまらなくていいですよ(笑)。

質問者1:すごく緊張してごめんなさい。今日お二人にお会いできてめちゃくちゃ幸せで、楽しかったです。

森田:ありがとうございます。

千原:ありがとうございます。

良い気持ちを噛みしめる方法は「お風呂に入らない」

質問者1:これから横浜に電車に乗って帰るんですけど。この楽しい気持ちを維持するために、お二人だったらどんなことをしますか?

森田:この楽しい気持ちを!?

質問者1:お二人が「今日良い仕事したな」とか「今日めちゃ楽しかったな」という時に噛みしめる方法というか、思い出に残しておくという。

森田:もうほんまにすぐ来てくれる後輩を呼ぶしかないです(笑)。後輩を呼んで飲みに連れて行く。千原さんどうですか?

千原:そうですね、お風呂に入らないとかですかね。

森田:えっ、お風呂でめっちゃネガティブなことを思う人ですか?

千原:思ったりする。

森田:俺もめっちゃくちゃ思うんですよ。

千原:お風呂に入ると。

森田:たぶん、人間素っ裸になった時に、嫌なことが。

千原:バーッて来るでしょ。

森田:バーッて来ません?

千原:来ます、来ます。

森田:みなさんそう思いません? あるあるじゃない? 俺らの仕事やからかな。失敗しまくるからかな。

千原:なんか僕、お風呂に入ってそういう他のことを考えたりリラックスしてしまうと、もう今日のことが切り替わっちゃうので。

森田:その日一日がお風呂で終わりなんや。

千原:終わりなんですよ。だから、終わらせないためには、お風呂に入らずにYouTubeを見たり。

お風呂に入ると襲ってくる「嫌だったこと」

森田:じゃあ、自分の体臭との戦いみたいなこと?(笑)

千原:そうそうそう。だから、気持ち悪さとの戦いですよね(笑)。

森田:僕はお風呂に入った時に、もうあかんかった収録のこととかがブワッて来るの。だから、ほんまに一人暮らしでよかったなと思うんですけど、シャワーを浴びていたら「アーーー!」とか言いますもん。

千原:やばいですね。そうですか。

森田:それは1人やから言うんですよ。たまに後輩が泊まりに来てるのを、忘れていて「アーーー!」とか言ったら、向こうから「なんすか?」って。というくらい、何か襲ってくる。

千原:お風呂が。

森田:お風呂の中でその嫌なことが、嫌やったことが襲ってくるから。確かに、お風呂に入るのは僕もあんまりおすすめしない。

千原:なんか違うことを考えてしまったりとか。

森田:でも、女性ってお風呂好きですもんね? なんならお風呂がルンルンな感じでしょ?

質問者1:なんかお風呂に入ってリフレッシュして、今日の出来事を思い返して。

森田:やっぱり思い返したいんですよね?

質問者1:そうです。

人生において「笑っていること」はいいこと

千原:あと、お風呂に入っても、寝てしまうともうダメですね。

森田:でもさ、寝そうになりながら「楽しかったなあ」「寝ちゃダメだダメだ。まだ楽しい……」とかっていうことじゃないじゃないですか(笑)。

千原:でも、やる気とかあるじゃないですか。「なんか今日はやる気やぞ」みたいな時は、1回寝たりお風呂入ったりすると「明日でええか」となります。

森田:そうなんや。

千原:だから、なるべく持続するために、「今日はここまでがんばろう」みたいな、そんなのはあります。

森田:でも、結局1日終わったら。次の日もまだ楽しみたいんですか?

質問者1:ずーっと楽しみたい。

森田:(笑)。それ、わがままですよ(笑)。

千原:でも、いいですよね。それを持続するという方向が。

森田:そうっすね。人生においてたぶん、笑っていることはいいですからね。笑っている人のところに人は寄ってきますから、と俺は思うけど。

千原:確かに。

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