2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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櫻井将氏:続いて「エンゲージメントを向上させたい」ですね。先ほどお話しした「WillとCanとMustの重なり」が増えるということが、要はエンゲージメントを高めていくことなんですね。
(スライドの図に)なんで点線が引いてあるかというと、昔は会社組織と個人の距離感を近づけるには「(従業員側が)組織側に寄ってこい」とされました。「自分たち(会社組織)の価値観の庭の中へ入ってこい」と、社員寮を作り、同じ釜の飯を食い、同じ時間を過ごす。それによって、この重なりを増やしていっていました。
今、それを望む従業員の方は、多くないと思います。会社と個人の距離を変えずに、この重なりを増やすにはどうしたら良いのか。それは、やっぱりこの個人側の「Will」や「Can」の円を広げていくことが必要だと思います。
その時に非常に重要なのが、その方の価値観を扱うことなんですね。特に多くの日本のビジネスパーソンは、価値観を重視します。経営者の方や、いわゆるデキる方は、ビジョン型であることが多い。3年後どうなりたい、5年後どうなりたいという目標に対して、バックキャスティングしていくんです。向こう(あるべき未来)から線を引いて、目標をドリルダウンして、「じゃあこれをやっていこう」と決めていく方が多いと感じます。
自分自身の価値観を満たしていく、それを積み上げていくことに幸せを感じる方が多いからなんですね。感覚的には、8割くらいがこうした方々です。なので、ここを扱うのがすごく重要で、「どうなりたいか」より「どうありたいか」。つまり「どんな状態だとあなたは楽しく幸せに働けるんですか?」という、自分の価値観を言語化していくんです。
自分の行動や思考の「好き・得意」を深めていくと、この円が広がっていきます。そして「好き」の背景にある価値観に気づいていく。「自分はこういう価値観があるんだ」「人と一緒に働くことが好き」「直接的に、誰かの役に立つことが好きなんだ」と、この円がだんだん広がって、重なりも増えていくんですね。
同じ仕事をやっていても「私はこういうことが好きだから、この仕事が好きなんだな」とつながっていく。ビジョンではなく、価値観を扱っていくと、この重なりが増えていくことが多いと思います。
YeLLのサービスとしては、社外の人と1on1を行うので、実際に仕事の話はできないんですね。実際の行動や業務の話はしないんです。どちらかというと「その人が今何を感じていて、どんなことを大切にしているのか?」ということを、すごく丁寧に聴いていくサービスなんです。こうした、自分の価値観にふれるような話ができると、エンゲージメントスコアは向上していきます。
先ほど、理念浸透のところでお見せしましたが、YeLLを利用した層は、wevoxのすべてのスコアが上がるんです。利用しない層では、上がったり下がったりします。これは、自分自身の価値観にふれていくと、エンゲージメントが上がるという数値的なデータと言えます。
おもしろいのは「仕事量は適切か」とか「使命や目標が明示されているか」などは、同じ部署内でやっているので、仕事量は変わっていないはずなんですね。「成果に対する承認があったか」に関しても、上司の方はそんなに変わっていないと思います。自分が自分の価値観にふれていき、自分のやっていることの意味を理解して、解像度が上がっていく。それによって、勝手にエンゲージメントスコアが上がっていくのが見られます。
つまり、働く方の「価値観」、その先にある「気持ち」を扱っていくと、自然とエンゲージメントが上がっていくんです。もちろん、幸福度も上がっていきます。(スライドの表は)前野(隆司)先生の「幸福の4因子」と、(エド・)ディーナー先生の「人生満足度尺度」で、世界的なウェルビーイングのスコアになります。エールを導入すると、こちらも統計的に優位な状態で上がることがわかっています。
自分自身の価値観にふれていくと、会社に対するエンゲージメントも上がるし、自分の人生に対する幸福度も上がっていきます。
あと2点ですね。「組織体質を改善したい」「1on1が自己流だからやり方を知りたい」。これも、我々は1on1のサービスなので、よくお問い合わせをいただきます。また「心理的安全性」や「もっと(何でも)言い合える状態を作りたい」と言われるケースもあります。
私は今40歳なのですが、もうちょっと上の世代の方が新人の頃は「黙って言われたことをやれ」「(上司の)背中を見てついてこい」「3年はとりあえずがんばってみろ」「教わるんじゃなくて盗め」と言われたと思うんですね。
今の管理職の方々って本当に苦しいなと思うのは、自分は必死に歯を食いしばって成長してきたのに、管理職になった瞬間に「ちゃんと部下の話を聴け」と言われる。「部下の気持ちを受け止めろ」「一緒にキャリアを考えろ」「わかるように伝えるのが仕事だろ」など言われて、すごくつらいなと思うんですね。
これは1on1の観点だと「食べたことのない料理を作れ」と言われているようなものだと思うんです。(スライドにあるのは)エジプトのコシャリという料理です。食べたことがある方は「あんな味ね」と思うから、自分も味見しながら作ってみることができる。
でも、食べたことがなければ、作ってはみたものの「これ合ってるの? おいしいの?」と、わからないままに進んでしまいます。特に、1on1はクローズドな状態で行うので、正解がわからない状態で続けがちです。このように、上司の方も苦しい状態になっているのかなと思います。
1on1のスキルを上げていく上で、圧倒的に足りていないのが「上司自身の聴かれた体験」です。これを作ることによって、組織全体の「聴き合う(文化)」「聴く(力の向上)」「心理的安全性」などを高めていくことができます。
(エールでは)こういった取り組みを、サポートさせていただくケースが多いんですね。「聴かれた体験」を組織が提供すれば、「聴く力」が向上し、組織の心理的安全性が高まっていくことが起きていきます。
「聴くスキル」というのは、習っていないだけで、みんな学べば身に付くんです。管理職の方々は優秀なので、頭で理解して、本当に必要だと思って実践し、PDCAを回せばすぐに身に付きます。
具体的に行うこととしては、きちんと「頭で理解」していただき、「実践」していただくことを繰り返します。社外(人材)との1on1で、実際に聴かれることを体験していただき、「聴かれるって良いな。自分も学びたいな」という動機づけをした上で、学びのスキルを動画でお伝えしていきます。
先ほどのマイクロラーニングのような形式で、短い動画を使っていきます。実践としてみなさん1on1をされているので、その振り返りも社外の人材と行っていきます。
この繰り返しをしていくと、本当におもしろいんです。(スライドを指して)これはYeLLを始めて3ヶ月ぐらいの会社さんですね。大企業の子会社さんで、管理職の方90名がYeLLを受けてくださっています。
これ、リアルにコピペした言葉なんですが「メンバーが率直に意見を言ってくれるようになった」「部下が席まで来てくれることが増えた」「雑談が多くなった」「面談回数が実際増えている」「笑顔での会話が増えた」「若い部下が今まで以上に笑顔で話してくれる回数が増えた」といったお声をいただいています。「笑顔で」ってうれしいですね。
あとおもしろいなと思うのが「厳しいコメントをしやすくなった」ということですね。聴くことによって、きちんと相手が(心理的)安全性(を感じてくれている)。だから、こちらも厳しいことを言っても、受け取ってくれる。「フィードバックを本音で出せるようになった」というコメントも出てきています。
みなさん、聴くスキルや1on1スキルを向上させたいと話されます。(初めは)「知らないからできない」という状態だと思うんですが、この段階(Step1~Step5)を少しずつ登っていければ良いと思います。
ただ、一足飛びに1on1のコーチのプロのような状態を目指す方もいらっしゃるんです。車の運転ならば、鼻歌を歌いながら、助手席の人と話をしながらうまく運転できる状態ですね。
でも、最初は座学で運転というものを学んで、教習所で練習して、うまくいったり失敗したり、なかなか最初は公道に出てうまく運転できないという状態がステップとしてあると思います。聴くというスキルになると、一足飛びにいこうとされる方もいますが、順番にこのステップを進んでいただきたいと思います。そうすれば、先ほどのこういった(うれしい)言葉が出てくるようになると思います。
また「聴き合う状態」とはどういう状態なのかということも、表にしています。こんなステップをだんだん進んでいきます。多くの方が「座学で学んだが、実践ではうまく使えない」という状態でも、だいぶ変化が出てきます。「意識すれば聴くことはできるんだけど、ふだんはうまくできない」という状態でも、組織はかなり変わってきます。
組織の中で、個人の聴くスキルが上がっていくと、組織の状態が一気に変わっていきます。組織の中で出てくる口癖も変わってくる。このあたり、参考にしていただきたいと思います。
最後です。キャリア自律というところのサポートをさせていただくケースも多いです。特に「若手の自律」や「次世代リーダーの自律」はもちろん、最近は「ミドルシニアの自律」という話も多数出てきています。
先ほどのトヨタさんの研修と似た図ですね。多くの場合、1日キャリア研修をして「後はがんばって」と、そのまま放置されるんです。人事や人材育成の方の立場を想像するとよくわかりますが、もっとフォローしたくても、そんなリソースが社内にないんですよね。かといって、40代の稼ぎ頭のマネージャーが、部下の50代の方に時間を使って丁寧にセッションするのも、会社としてはできないと思います。
たとえそれができたとしても、50代の方々が年下の上司に対して「本当に自分のキャリアの本音を話せるか?」というと、なかなか難しい。それに対して、キャリア研修の後に、YeLLのプログラムでサポートしていくと、けっこううまく刺さるところがあります。
だいたいキャリア研修の後は、どなたも「キャリアについてもっと考えたい」と思っています。でもなかなか継続しない。理由はいくつかあって、話す機会がないとやっぱり考えないし、1人で考えてもなかなか深まらないんですよね。これまで考えてきた結果が今なので、あらためて1人で考えろと言われても、これ以上は無理なんです。
仕事が忙しいのでつい後回しにしちゃうし、「ここから20年のキャリアかぁ」と考えるだけで重たいし、相談相手が見つからない。同僚に話すにも、家族に話すにも、あらためて話すのは恥ずかしい。そういったところを、エールでサポートさせていただきます。
ここは本当に、外部の人材が使える領域だと思います。特にこの、ミドルシニアのキャリア自律には適しています。自分のことを話せる環境がまずあって、(そこに)聴き手がいることが非常に重要です。自分自身で考えていると、いつも同じ問いになってしまいますが、客観的な問いをもらうことで、自分のことが考えられるんですね。
また、定期的に時間を取って、外部の人と約束していると、そこはみなさんスケジュールを変えないんですよ。こうして、マッチングのできる良い相手とお話をしていくことで、ミドルシニアのキャリア自律のサポートを行っていくことができます。
ということで、本当にざざっと説明しました。丁寧に説明すると、1つ30分くらいかかってしまう内容なんですけど(笑)。今日は少しでもヒントを得ていただければというところです。まずみなさんの課題感を見つけて、その解像度を上げていくことを目的に、何か1つでもヒントを持ち帰っていただきたいとお話ししました。
【ここで、参加者のブレイクアウトルームを挟む】
……お帰りなさいませ。良い時間だったでしょうか。ということで、まとめに入っていきます。みなさん、何かヒントを1個だけ(お持ち帰りください)。全部持って帰らなくても大丈夫です。
今日はこんな思い(3つの信念)を持たれている方が、ここに集まってくださったことと思います。人の価値観や気持ちを、組織は扱ったほうが良いということ、ここにいらっしゃる方は賛同されると思います。内発的に動機づけした社員が増えていくのは、すごく良いことだろうと感じていらっしゃると思います。
ここには、2つの方向性があると思うんですね。上司・部下の関係性は、どこまでいっても大事だと思います。コミュニケーションは一番多いし、一番相談に乗る相手ですよね。この上司の方々が、やっぱり(部下の)感情や価値観を扱っていけるようになるのが大事だと思います。
だから、上司の1on1力、対話力、コミュニケーション能力が高まると良いですよね。「伝える」だけではない、話を聴くというスキルの向上。そうすれば、少しでも感情や価値観を扱える組織になっていくと思います。
とはいえ、ここには利害関係があります。ここにいらっしゃる方、みなさんそうだと思いますが、やっぱり上司には言えないことがある。でも、その上司が辞めた(社外の人間となり、利害関係がなくなった)瞬間、相談できたりすることもたくさんあるんですよね。逆もそうで、自分が辞めたら急に相談にくる人もいたりすると思います(笑)。
利害関係とは構造上難しさをはらむので、会社内でこの構造を超えて、上司以外との対話の機会を作ってあげることはすごく大事なんです。(例えば、)グループで対話をするとか、斜めの関係でメンターを作っていくとか。場合によっては、我々のような社外の人材を使って、その人が本当に自分自身の価値観や感情にふれられるような対話をしていく。話す機会を作っていく。これがすごく大事なんですね。
エールはこの2つ、両方支援をしておりますので、ご興味があればお問い合わせください。私のパートは以上です。
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