2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中離有氏(以下、田中離有):ポイントの3つめです。最初に(会話の)数を増やして絆を強めました。今度は内容をどうやって深めるのかということです。Uniposの本質は、感謝を形にして送受することで信頼関係ができて、その結果として組織の熱量が上がることだと思うんですね。
「人に興味がある」「人のために何かしたくなる」という精神が、カルチャーとして生まれると思っています。(スライドを指して)これは2019年5月の日経新聞の「働き方の変化とモチベーション」という記事です。九州大学の池田(浩)准教授という方が、感謝することの心理効果について述べられています。
読みあげますと「感謝されることよりも感謝することのほうが、広範囲で多くの効果をもたらすことがわかっています。感謝することで、精神的な健康や幸福が促されるだけではなく、顧客や同僚など相手の視点に立って物事を考えるようになり、周囲に積極的に協力するようになります。
結果として、会社全体の協力関係が醸成されることにつながります。各人が感謝する習慣を持つことが組織力を高める大きな力を秘めているのです」。
私は2018年(にUniposを導入した)ということで、1年前にやっていましたね。2019年にこの記事があり、やっぱり感謝体質の人のほうがエネルギーが高いのなら、(私どもも)「感謝される人」よりも「感謝する人」を評価しようということになりました。
田中離有:DXの成功の鍵に関して、基本「感謝体質の人」か「不満体質の人」かで成果が分かれると思います。『マーフィーの法則』というものがありますね。(この中に)「愚痴や不平不満は不幸を呼ぶ呪文です」と書いてあるんです。人生がうまくいかない人は不平不満、愚痴、悪口、泣き言、文句を必ず言っています。
Uniposによってもたらされた感謝体質とは、言い方を変えると「当たり前ではないんだ」と気づくことです。片付けてもらって当たり前、何かしてもらって当たり前ではなくて、ちゃんと言葉で返す。ポイントで返す。これが不満体質の人をなくすんじゃないかと思います。
逆に言うと、不平不満が多い人は完璧主義ですね。自分を中心に考えがちです。マイナス思考、ネガティブ思考です。そして、人のことが羨ましいと思っています。この人たちがDXを推進できるか? 私はできないと思います。
なので、まず必要十分条件ではないけれども、最低の条件として、組織が感謝体質になること。そうすれば、DXは成功に向かい始めるのではないかと思っています。我々の事例を、2例ほど挙げさせていただきます。
田中離有:まずは事例1。(スライドを指して)書類の山ですね。これは高さ48センチメートルもあったそうです。太陽光発電設備の設置報告を経産省に報告しなくてはいけないのですが、これを担当の女性が1人でやっていました。
1枚処理するのに10分かかるのか、20分かかるのかわかりませんが、何千枚もあって、とても処理しきれない状態。これを「みんなでやろうよ」ということで、全員で入力作業をすることになったのが初期のことです。
でもその後「毎月毎月これをやるのは大変だよね」ということで、部署を超えてRPA、つまりロボティクス・プロセス・オートメーションを導入しようと決定しました。書類の転記などを、ロボットにさせちゃおうというものですね。
夜中セットをすると、コンピュータが8時間ぐらいかけて、Excelデータを転記する作業を全部やってくれるんです。これは外部の会社を巻き込みながら、完全自動化に成功しました。当然、これは仲間同士でUniposの送り合い(となりました)。
この事例からわかるように、(私どもは)DXをやろうとしたんじゃなくて、周りの人の困りごとを解決するためにDXを使ったんですね。Uniposという文化がそれを促した事例だと思っています。
次にAGVの事例。無人搬送機、Automatic Guided Vehicle。私どもの製造工場には配合工場というものがあります。いわゆる塩ビ(塩化ビニル)の配合工場は24時間3交代勤務でやっています。
従来は作った材料を人の手で計量して、伝票に手書きで記入をして、それをわざわざリフターという手動のパレットを動かす機械で搬送していました。なので「量らなきゃいけない」「書かなきゃいけない」「運ばなきゃいけない」状態でした。
これを製造現場の人たちのために、製造技術もしくは他の製造部門の若者が、GASを使ってプログラミングすることで解決しました。(具体的には)自動計量・計測して「ちょうど300キロになりましたよ」など信号を飛ばす。そして自動搬送機を呼んで、ガーッと動かす。そして伝票作成も全部自動記入・記帳するということを行いました。
うちの製造技術の人は、製造や電気などはわかりますが、プログラミングはできません。この会社には情報システム部門はいないんですね。なので若い人たちが「これ、できる」と言い出して、いわゆる市販のというか、広がっているGoogleのスクリプトを使いながら解決したという事例です。たぶんUniposを送りあったんですね。楽しみながら勝手にやっています。
この2例とも、私は何一つ指示していません。勝手に現場がやっているというやつですね。
(スライドにある)こんな感じの機械です。下にモーターの付いた機械があって「それを貸してくれ」と言われて「いいよ」と言ったら、勝手に改造して動かしていました。
田中離有:ということで結局、感謝体質の組織にするにはどうしたら良いのか? 感謝をしてUniposを送るような人というのは、セロトニンが出ていて安心・安定状態なんですね。
送られたほう、感謝された人はつながりを感じるので、いわゆる幸せ物質のオキシトシンが出ます。すると組織は感謝があふれた状態で、かつ部署を越えた交流ができてくる。ここにDXというテーマが出てきて「これ、なんとかみんなでできないかな?」と(課題が持ち上がった)時に、興奮物質のドーパミンが出るんですね。
ですから、いきなりドーパミンでDX改革をするんじゃなくて、(まず)Uniposで部署を超えたつながりや、感謝であふれた状態を作る。それによって、自然発生的に「仲間の仕事が楽になるようなDXが生まれた」というのが当社の事例だと思っています。
田中離有:まとめますと、DXを推進するためには、おそらく「カルチャーの変革」が必要だと思います。カルチャーは、なかなか変わらないんです。DX=変革です。変革とは「革が変わること」ですから、本当は血が出るんですね。
みんな不安がるので、(変革には)「大丈夫、大丈夫」という心理的安全性が絶対条件だということです。そのためには、仲間同士を信頼し合うこと。何かあったら上司が責任を取ること。
そして何があっても助けにいくような信頼関係の中で、まず方向性が出されて、そして観察がされて、決断して、そして行動すると。いわゆるOODA組織になっていると、結果としてはDXなどが進みやすい。
トップダウンでのやり方もあると思いますが、やっぱり自主的に考えながら進む組織のほうが変化に対応しやすいと思うんです。組織を感謝体質へと変革することで、利他に意識が向く。そして人の困りごとに寄り添うことで、勝手にDXが加速すると私は考えております。
最後に、こんなアフリカの諺があります。「もし早く行きたいなら独りで行きなさい。もし遠くへ行きたいならばみんなで行きなさい」。
これを当てはめると、DXも特定の専門部署が行ったほうがスピーディーに進むかもしれません。ですが多少時間がかかっても、それを進めたいという人材を広く集め、広い分野にわたって、隅々までDXを行う。そのほうが、長期的な人材育成や本当の意味でのトランスフォーメーションができる文化が醸成されるのではないか、と思っております。
「Unipos最高!」ということで、感謝が一番の原動力になります。みなさんもやってみれば、いろんなことがわかると思います。どうもありがとうございました。
横山真介氏:田中社長、非常に具体的かつ示唆に富むお話を、ありがとうございました。それではディスカッションに移りたいと思いますので、モデレーターをUnipos田中にバトンタッチして、進めさせていただきます。
田中弦氏(以下、田中弦):よろしくお願いします。いくつかお聞きしたいと思っていましたが、さっそく視聴者の方から質問も来ていますので、それも拾いながら進めさせていただきます。まずは田中社長、ありがとうございます。
田中離有:いえいえ。
田中弦:僕も田中社長なんで今日は「ダブル田中社長」で意味不明な感じですけど(笑)。そこはご容赦ください。冒頭のアンケートにもありましたとおり、DX推進をやろうという時に、実は一番それを阻むものがカルチャーなんじゃないか? という話がありました。
その解決方法や、どういう視点でご覧になったかということを、今、田中社長にプレゼンしていただきました。そこで3つほど興味深い質問がありますので、おうかがいさせてください。
まず1つめが「感謝体質が組織内に強まったところで、経営的にどのようなことがありましたか?」という質問です。要は、組織が変わったというよりも、経営指針のようなこと、例えば「売り上げ」や「離職率」など「もう少し上段のもので変わったことがありますか?」というご質問だと思います。そのあたり、いかがでしょうか?
田中離有:全員が感謝体質になれば良いのですが、やっぱりその比率の問題はあると思います。ですから不満体質の人が減ってはいますが、そこが少し二極化する問題は、現実にはあると思います。
じゃあ「感謝しない人」ってどういう人かというと、やっぱりプロ意識が強い人なんですよね。自分でできると思っている人なので。逆に言うと、その人は(誰かに)感謝しなくても自分でやれちゃう人。それって逆に危険なんですね。
田中弦:プロフェッショナルがいっぱいいると良いんじゃないか? と思うんですが(そのあたりはいかがでしょうか)。
田中離有:見方としてはそうなんだけど、若手が育成できないとか。
田中弦:なるほど。
田中離有:二極化が起こりやすいんです。やっぱり感謝体質(の組織)というのは人とのつながりが大きい。だから手伝い合って、みんなで作業することが増えるので、助け合う・フォローし合う文化があると思います。
経営的には、能力のある人がいっぱいいれば良いんだけど、まだ未熟な人も含めて、わからない人もみんなでやるという文化がある。これは、チームとしては良いんじゃないかと思いますね。単純に言えば、これで空気・雰囲気が良くなってくるのかな。
田中弦:先ほどおっしゃったアフリカの諺のように、要は最終的にそちらのほうが(遠くに行ける)。遠回りしても良いだろうとお考えなんですかね。
田中離有:そうですね。これが第1点ですね。第2点がDX絡みですけれども、変化に対しての耐性が出てくる。(感謝体質の組織は)エネルギーが高いですからやりたくなるし、やってみようという文化が生まれると思いますね。
田中弦:ロボットもそうですよね。ものすごいロボットとかRPAとか(社員の方々で)勝手にやられたんですもんね。
田中離有:私は本当に知らないんですよ(笑)。DX担当部長や推進部長がいるわけでもなく、社長が全部把握しているわけでもないんです。
(社員が)「やりたいです」と稟議を出して「この機械を買いたいんです。おもちゃみたいなのを買うんです」と言うので「やってみたら?」と言ったら、あんなすごいのが出てきちゃって。課題を自分たちで見つけてくるんですね。それが良いんじゃないですか。だからなんとなく、勝手に現場で変化が推進されたんですね。
田中弦:それは経営者にとっては、別にサボってるわけじゃぜんぜんないと思うんですけど、とてもうれしいですよね?
田中離有:うれしいです。
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