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「働きがい改革」のリアル~専門家と実践者が語る働きがい向上への道~(全5記事)

面談・相談だけでない「残り364日の会話」における関わり 「働きがいの実践者」が語る、日々の信頼関係構築の重要性

働き方や働く人の価値観が大きく変動する現代において、組織には「働きやすさ」だけでなく「働きがい」をいかに高めるか? が求められています。しかし「働きがい向上」に関する課題は企業ごとに千差万別で、「自社にあった『働きがい向上』をどう実現していくか?」について試行錯誤を繰り返している企業も少なくありません。そこで、働きがいの専門家であるGreat Place to Work® Institute Japan 代表 荒川陽子氏と、組織づくりの実践者であるサントリーパブリシティサービス 清水雅理氏が登壇されたウェビナーの模様を公開します。

サントリーパブリシティサービスが実践してきた「働きがい」

斉藤知明氏:荒川さん、ありがとうございました。では続きまして、サントリーパブリシティサービスさんでは実際に「働きがい」にどのように取り組まれてきたのか、どう進めてこられたのか? について、清水さんよりご紹介いただきます。よろしくお願いします。

清水雅理氏(以下、清水):よろしくお願いします。本日は「実践者」という立場で参加させていただいていますが、まずは「サントリーパブリシティサービスっていったい何者か?」というところから、ご紹介します。

サントリーパブリシティサービスは、東京都江東区豊洲に本社がございます。従業員数が3000名弱の、サントリーグループの1つです。

事業としては、サントリーグループ内外の企業のPR施設や文化施設、公共施設の運営・管理を担っています。社会・地域・企業への貢献を目指して、新たな価値創造に向けて、まさに今も、挑戦をし続けている会社でございます。

ではもう少し、歴史を振り返りながらご紹介します。当社は、約60年近くの歴史とともに変革を遂げてきています。

まず最初は1963年。行ったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、東京都府中市に武蔵野ビール工場があります。あのユーミン(荒井由実氏/当時)の歌『中央フリーウェイ』に「左はビール工場」といった歌詞がありますが、まさにそこがサントリーパブリシティサービスの始まった舞台でございます。

そこから20年ほど経ち、1983年にサントリーパブリシティサービスが設立されました。サントリーのお酒の工場案内から始まり、サントリーホールやサントリー美術館それぞれの開業と同時に、ホールサービスや美術館のサービスなどが始まりました。

1990年になりますと、サントリーグループ外の全国のホールへと業務が拡大していきます。2000年代に入ると、サントリーグループ外で指定管理制度による公共の施設の運営管理をスタートするという、大きな転換期がございました。

2010年になりますと、貸し会議室の運営やビジネスサロンの受付業務などが始まるとともに、私が所属している事業がこのあたりから始まっていきます。企業・地域・社会のファンづくりを担うPRパーソンの育成やキャリア開発支援・組織開発支援が事業化され、人づくり事業として誕生しました。

現在2021年。これまで長い年月をかけて「リアルの場における顧客接点の強化」に励んできましたが、コロナ禍を大きなきっかけの1つとしながら、これらのサービスをデジタル化・オンライン化に変換させています。まさに顧客接点の工夫に現在も邁進している会社でございます。

このような組織開発・人材育成の試行錯誤を重ねながら、現在では日本国内に80ヶ所の施設運営を担っている会社です。従業員3,000名弱がこの80拠点の中で活躍をしております。

安定した現場運営とは、いったいどういう状態なのか?

清水:コロナ禍とは関係なく元々物理的・距離的に離れ離れに、日本全国80拠点で活躍している社員の一体感を高めるということと、会社の目指す方向性への共通認識を持つために、全社的な取り組みとして行っていることが2点ございます。

まず、この「ビジョン・ミッション・バリューの実現」です。それから、もう1つが行動指針としての「OUR CREDO」というサービス憲章です。これは先輩たちが作ってくれたものです。サントリーパブリシティサービスに入社をすると、このOUR CREDOが配られ「ようこそSPS(サントリーパブリシティサービス)へ」と迎えてくれます。こうした活動を全社の取り組みとして大切に続けています。

今ご紹介したビジョン・クレドは全社の取り組みになりますが、ここから先は「それぞれの80拠点の中での80通りの人材育成・組織開発」を行っていますので、現場レベルでどのような「働きがいの向上」に向けた工夫を行っているのか? について、ご紹介してまいります。

ここ数年間の取り組みの中で、私たちがまずスタートした活動としては、そもそもこの「安定した現場運営とはいったいどういう状態なのか?」ということについて、かなり深くディスカッションを重ねました。

(スライドを指して)ここに取り上げられないくらいさまざまな意見が出ましたが、大きく分けていくとこちらにあるとおり「衛生的な職場である」「休憩時間がきちんととれる」「休みがしっかりとれる」

そして、従業員同士や上司と「コミュニケーションをしっかりとれる時間がある」。さらに、一人ひとりが「スキルアップに取り組める時間がある」という意見が挙がり、これらに集約されるのではと議論しました。

つまりは、仕事をするためのベース、基本的なことが揃っていることが大前提ということです。実際はとても難しいことですが、「ベースが整っていて、一人ひとりの社員が笑顔で仕事ができる状態」が、我々が考える安定した現場運営なのではないか? これを守ることで「働きがいの向上」にもつなげていけるんじゃないか? とディスカッションしてまいりました。

あえて作る「ナナメの関係」という関係性

清水:そこで、現場を安定運営するためには4つの要素があるだろうと分類したのが、(スライドを指して)こちらです。実践者の視点として分類しましたので、いろいろなご意見はあると思いますが。我々として「これだな」と絞り込んだのが、この4つです。

まず「要員が充足している」。もしかしたら少し特殊な言葉を使っているかもしれません。リアルな顧客接点において「感情労働」をしている我々としては、やはり「誰かが休んだ」とか「5人いるべき組織に2人しかいない」という要員の不足は運営にとって非常にネックです。まず要員が充足しているということが何よりも大切な要素と考えました。

それから「マネジメントの状態が良好である」。また「コミュニケーションの機会が充実している」。さらには「働く環境がよい」。働く環境も細かいことをいうと、事務所のハード面が整っていることや休憩場所があるかどうかということも含みます。この4つの要素が、現場を安定運営させるためには本当に欠かせないと考えています。

今日はこの4つの中でも、主に赤枠で囲みました「マネジメントの状態が良好である」「コミュニケーションの機会が充実している」という2つにフォーカスをして、実際の取り組みについてご紹介します。

3つの大きな取り組みをしていますが、1つめとしては「現場の関係性作りをする」ということです。

みなさんも、よくお聞きになると思いますが、組織の中には「タテの関係・ヨコの関係・ナナメの関係」という関係性があると思います。「上司・部下の『タテの関係』」「友だち・対等な関係ということの『ヨコの関係』」。それから「他部署の人や評価関係にない(ちょっとした)先輩といった『ナナメの関係』」。

具体的な例として我々はここ数年間の中で、なにかのプロジェクト活動を行う時に、あえてこの「ナナメの関係」という関係性を作り、プロジェクト推進に取り組みました。

上司・部下の関係だけでなく、そして同僚同士だけではなく、ちょっとした先輩の関係を入れることによって「ナナメの関係だからこそ相談できる」とか「新たな視点が得られる」といったように、実はつながりを実感できる効果を感じております。これに関しては、私自身も強く実感しています。

「残りの364日」の会話における、信頼関係の大切さ

清水:そして2つめは「コミュニケーション作り」です。これも、よく本を見るとたくさん取り上げられていますが、すごく重要だと感じています。

みなさんが会社で働く日常のシーンの中には、面談の機会、相談する機会、1on1といった対話の機会。さらに議論の機会等が会議体で設定されていたり、制度にあることが多いと思います。

365日の中で、会社から与えられた「面談の1日」や「議論する1日」をどんなに準備して工夫して向き合って話をしたところで、残りの364日の会話において信頼関係が築けていないと、なかなかいいコミュニケーションは図りにくいということです。日々の関わり方、信頼関係の構築がなによりも欠かせないということを、本当に痛いほど感じております。

そしてこの土台にある会話(雑談)の部分です。日常のコミュニケーション、雑談を含むコミュニケーションが大事ということです。もちろんリアルの顧客接点の場でも実現できればいいのですが、難しいですよね。そこで3つめに工夫したポイントとしては、昨年から「Unipos」を使わせていただいております。

リアルの場での日常的なコミュニケーションも大事ですが、コロナに関係なく、もともとが物理的・距離的に離れた80拠点です。さらには、ほとんどのメンバーがシフト制で仕事をしていますので「Aさんとは今日会えたけれども、次に会えるのは1週間後」といった関わり方をしています。

Uniposを使う中で「タテ・ヨコ・ナナメのつながり」や日常のコミュニケーションは、リアルだけでなくオンラインという新しい場でも実現が可能になったと感じています。

Uniposだけではなく、人事制度・プロジェクト活動・マネジメント、それぞれの現場の活動と共にUniposがあることで、一人ひとりの承認欲求を満たす一助になっていると感じていますし、一体感を作り上げていく上でも非常に重要と思っております。

まず自分で自分を尊重することが、なによりも重要

清水:これらの活動の中で見えてきたことが3つございます。

先ほど、視聴者の方からもチャットでたくさん挙がっていましたが「自分の働きを他の誰かが見てくれている」という環境・関係をいかに作るか? ということが非常に重要だということ。さらに、ここで言いたいのは「誰かが自分の『働きがい』を作ってくれるもの」ということではなく、「一人ひとりが主体的に誰かと協働し、心の自律と行動の他律を実現できること」が、非常に重要だということです。

つまりは、お互いに尊重することも重要ですが、「まず自分で自分を尊重するということが、なによりも重要なのではないか」と感じています。以上が、我々が長年活動してきた中で見えてきたことですが、今まさに取り組んでいることについて最後にご紹介させていただきます。

「働くみんなを晴れにする。オンラインスクール(ミンナハレ)」を開校しました。まさに「すべての人」というのは荒川さんもおっしゃってましたけれども、みんなが自律して一人ひとりが晴れやかに働いてもらいたい。そのためのサポートプログラムをリリースいたしました。

「みんな」といってもいろんな人がいますので、まずは我々と同じように働く女性向けのプログラムをリリースしました。働く女性というのは、キャリア上の悩み・仕事をする上での悩み・体の悩み・心の悩みをたくさん抱いています。

特に女性特有の課題がございます。(スライドを指して)これは一覧にまとめたものですが、スタッフ期・先輩期・マネージャー期という、キャリアステージによってそれぞれの女性が抱いている課題に対してのソリューションを提供するということ。

そうすることで、まず女性がいきいきと働き続けることを支援をしていきたい。そのような活動に現在取り組んでいます。

以上になります。

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