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Rebuild working 企業原理の変化と個の”内省”(全4記事)

日本企業に適合しすぎた「塩漬け人材」の問題点 「管理」から「つながり」へ、コロナで変わる人事の役割

コロナパンデミックにより、今までの企業活動の在り方が半強制的に見直される形となりました。人生100年時代の到来、終身雇用の崩壊、AIの台頭など、多くの課題を抱える中で、これからの企業の在り方、そして個人の生き方はどのように変わっていくのでしょうか。そこで今回は、「企業原理の変化と個の“内省”」をテーマに行われた、熊平美香氏と石丸晋平氏の対談の模様をお届けします。本記事では、石丸氏から日本企業の「塩漬け人材」問題について、企業の人事を「管理」から「つながり」へ変えていくべき理由について語られました。

「教育を変えたい」と行っている、リフレクションの啓発活動

清水邑氏(以下、清水):時間になりましたので、セミナーを開始させていただければと思います。ゲストのお二人、よろしくお願いします。

熊平美香氏(以下、熊平):よろしくお願いします。

石丸晋平氏(以下、石丸): よろしくお願いします。

清水:あらためまして、本日は平日のお忙しい時間にご一緒いただきまして誠にありがとうございます。本日は「企業原理の変化と個の“内省”」というテーマで、直近書籍をご出版されたお二人をゲストに迎えて、お話をさせていただければと思っております。今から1時間ちょっと、最後までお付き合いいただければと思っております。

本日のタイムテーブルでございます。冒頭お二人から自己紹介というかたちで、あらためてお二人のお考えについてお聞きをさせていただきます。その後は、各自10~15分ずつ、出された本の内容、そして本日の内容に関わるものをご講演いただきまして、その後パネルディスカッションという流れで行いたいと思います。

さっそくご登壇者紹介というところにまいりたいと思います。まずは熊平さん、お願いいたします。

熊平:ありがとうございます。みなさま、こんばんは。昭和女子大学キャリアカレッジの学院長をいたしております、熊平美香と申します。よろしくお願いいたします。

私は昭和女子大では女性の活躍推進ですとか、ダイバーシティの推進、それから働き方改革などもやっております。それ以外にも「教育を変えたい」という熱い思いを持って、教育を変える活動もいたしております。リフレクションの啓発もその一環ということで、今日は特にこの「リフレクション」にテーマを寄せてお話をさせていただきたいと思います。

リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術

清水:ありがとうございます。本当に私自身も楽しみにしてきましたので、後ほどよろしくお願いいたします。続きまして、石丸さんお願いいたします。

これからの人事の「ヒューマンリレーションシップス」という考え方

石丸:みなさんお時間いただきありがとうございます。私、株式会社ZENKIGENという、人事領域にAIのサービスを提供する会社で、新しいAIのサービス開発の責任者を務めさせていただいております。

実際この「人事」「人とAI」という領域は、かなりいろんな問題というか、不安だったり恐怖だったりが世の中にあります。ここに踏み込んでいくには、あらためて「人は社会の財産である」と認識しなくてはいけません。

人を管理するのではなくて、より自分らしさを発揮してつないでいくという、新しい「ヒューマンリレーションシップス」という考え方を私は提唱しています。そちらに変容していくことを目指し、会社の中での活動や個人的な活動をやらせていただいています。

今回は、テクノロジーや社会の変化に触れて、いろいろと発信させていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

テクノロジー共存時代の新バイブル AIを使う人事 AIに使われる人事 (ディスカヴァービジネスパブリッシング)

清水:本日は就活中の大学生も数名いらっしゃってるので、人事と採用・就職活動でいろいろ接点があるかと思います。ぜひテクノロジーの文脈も含めて、お話をお聞きできることを楽しみにしております。よろしくお願いします。

石丸:よろしくお願いします。

清水:ありがとうございます。私も簡単に自己紹介を申し上げます。本日モデレーターを務めさせていただきます、株式会社ZENKIGENの清水邑(ゆう)と申します。実はZENKIGENに社員1号として入社をしまして、早くも創業と同じく4年と少しが経ちます。

また、この書籍(『AIを使う人事 AIに使われる人事』)を出版させていただいて、こういったかたちで熊平さんともご縁をいただいてお話しできることを本当に楽しみにしております。視聴者のみなさまと一緒になって学び、話し合いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

人が「全機現」できる状況こそ幸せな世界であるという理念

清水:ではさっそく第1パートにまいります。石丸から10分程度講演をお願いできればと思います。

石丸:では10分お時間いただきますが、よろしくお願いします。あらためて株式会社ZENKIGENについて少し触れさせていただいて、そこから書籍の内容に移っていければと思います。

私は株式会社ZENKIGENという会社に勤めています。このZENKIGEN(全機現)という言葉は、「人が持つ能力の全てを発揮する」という禅の言葉になります。やはり現代、次世代は、人が全機現できる状況こそ幸せな世界なんじゃないかというところで、それをテクノロジーを通じて実現していくことを事業を通じてやっております。

我々の会社はスタートアップと言われるものでして、資金調達をして人事領域のAI開発に使っています。やはり今リモートワークが主流になってきましたが、「人」と「AI」はまだ対立関係にあったり、AIが人を判断したり、あるいはAIが人の仕事を奪ったりというような風潮があります。その中で目指しているのは、新たなテクノロジーとしてのAIの可能性、そして人の可能性を引き出して、よりAIと人間が調和した、新しい世界を作っていくことです。

今は「harutaka」という採用DXのサービスを提供しています。こちらにAIを搭載していくことで、日々の営みの中で人がそのままだと気づきにくかったり、コンフリクトを起こしやすいような現場の課題に対してAIがサポートをして、居心地よく、働きやすいような採用活動に貢献していきたいというのが、我々の展開している事業になっております。

日経新聞などのメディアにも一部取り上げられました。面接というものに対して、単純に判断を支えるというより、「より良い体験の場にしていく」ということで発信をしています。

現代は、働く大人が安心して暮らせる時代ではない

石丸:今回のテーマである「企業原理の変化と個人の内省」というところで、企業原理というのはある意味外圧による変化だと思いますし、個人の内省というのは自分で内省をして内側から変化していくところがあると思うんですけれども、こちらについてお話しさせていければなと思います。

私個人として、令和に替わったタイミングで社会を見渡した時に、真面目に健全に人のためを思って働く大人が安心して暮らせる時代ではないと感じていたところが大きくあります。

背景としては、社会保障制度が崩れていく、あるいは人生100年時代、そして1億総活躍ということで、ある意味「人生を通じて働き続ける社会」になってきたと。そんな中で、企業の論理に従っていればある程度生活が保障された終身雇用の時代が終焉して、これからは社会的な機関に支えられるよりかは、自分でどうにかしないといけない時代なんですね。

一方で人工知能やロボット、外国人の労働者など、さまざまな「より安価な労働力」を代替手段にして、私たちの仕事が奪われていくという文脈が大きくあるんですね。さらに、世界の変化のスピード、そして技術の発展の速度は、指数関数的に加速すると言われております。やはりこの時代背景の中で「安心して過ごせる」ということを確立しづらい方が多いんじゃないかと。むしろ、不安が蔓延しているように感じていますね。

個人主義・能力主義が行き過ぎているように感じていた部分もありまして。やはり「家族主義」という、隣の人と共同体としていい時も悪い時も過ごすような社会があり、これがすべていいわけではないんですけれども、そこから管理主義的に、より合理性を求めた社会に変わり、そこからさらに競争主義というか、「能力の高い人は生き残りやすいけれども、そうでない人はどうしたらいいんだ」という状況が生まれた。そういったところを問題視しています。

企業システムに適合しすぎた「塩漬け人材」の問題

石丸:その中でも、やっぱり組織の中で働くというの論理の中で、どうしても「自分らしさ」よりも「役割を果たし続ける」ということで、これを「塩漬け問題」と名づけています。

では「塩漬け人材」とはなんだということなんですけど、私の中では企業のシステムの中で、その運営を責任感を持ってやり続けた結果、その組織の中で求める役割だけが発達している人。それ以外は発達していないような状況になっている人ということですね。

企業で働くすべての人がそういうわけではないんですけれども、今、多くの人がそういったシステムの中で働いているような環境があると思っています。そして終身雇用が終焉して、より自律を求められるという、急な変化と外圧がかかっている状況があると思います。

でもテクノロジーの文脈ですごく問題視しているのが、こういった組織システムの中で完全に適応している人というのは、人間性があって思いやりのある発言をするというよりかは、やはりこのシステムの中の合理性の中で判断をしているような、人と言うよりも機械に近い状況があるなと思っています。

「人とAIの調和」といいつつ、組織の人があまりにシステムに適合してしまうと、企業論理だったり経済性の部分だけで新しいテクノロジーを活用していくという文脈があり、そこはすごく課題があると考えています。特にこの資本効率を高めていこうとする文脈の中に「DX(デジタルトランスフォメーション)」という言葉もあると思うんですけれども。

「無用者階級」を生む社会に、ノーを突きつけたコロナパンデミック

石丸『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』というベストセラーを書いたハラリという哲学者が、(テクノロジーが進歩することで、社会の変化についていけなくなり職に就けない)「無用者階級」が生まれると言っています。つまり社会になにも求められない人はこれから増えていくよということですね。

この『AIを使う人事 AIに使われる人事』を書くきっかけになったのが、この資本主義とテクノロジーの加速が無用者階級を生み出し続ける、そんな状況にリアリティがあるんですけれども、でも「そんな世界に誰がしたいんだっけ?」というところが一番のきっかけになります。

過去に依存して、過去からの成功体験に思考を止めている。このことに対してノーを突きつけたのが、1つ、やはりコロナパンデミックだったのかなと思います。

例えば、絶対的にこの会社にいれば安心っていうくらいの会社でも、急に業績が不安になり、雇用に対して維持しにくい状況が生まれてきたという事例はたくさんあると思います。

こんな中で、図の下側のような、ある意味企業システムの中でできるだけ労働力を所有して、そして分業機能の中で効率性を追求して、管理がしやすい単位に区切っていくというような、そういう特性があったと思うんですけれども。

コロナ禍の有事において人のために動いた人は、労働力の共有をして、社会の財産としての人を開いて、そして安心のネットワークをつないでいくことに邁進した方々。私の目の前にもそんな方々がたくさんいました。

やはり人と向き合う、あるいは会社と向き合う。そういった人事のあり方がこれまでずっと説かれてきたと思うんですけれども。会社という単位よりも、人の人生のほうが長くなってきていますので、こういった「人に開かれた人事」であることが重要だと思いました。健全に働く大人が、安心して暮らすことができる社会を目指していくきっかけがあったのかなと思います。

企業に求められる、テクノロジーによる経済性と社会性の両立

石丸:先ほどの図なんですけれども、こういう個人が競争する環境に今はありますが、これから求められるのは右上の自律ですね。この能力の高さも、企業が評価するだけの能力ではない、さまざまな能力が今は求められていると思います。自律した個人が増えて、そして「互いに支えあう」ではないですけど、連携しあい高め合えるような環境。ここはやはり「会社」という枠を超えて求められていると思っています。

少し概念的な話になっちゃうんですけれども、今までは経済性を追求していけば、みんなハッピーというところがあったと思います。経済成長がすべてを潤す。ただ、今テクノロジーが世の中を変えていく原動力になり、経済性だけを追求すると一部の人はハッピーだけれども、多くの人はそうでないかもしれない状況になっています。そんな中で社会性まで両立させるのが、21世紀の行動原理なのかなと考えています。

例えば、最大の資産運用会社のブラックロックのラリーフィンク会長も「サスティナビリティ」を強く訴えていますし、その中での意識の変化として、「人や社会に対するリスク」というところに非常に関心を持っています。

会社でも、例えばフランスのダノンでは、単純に経済のKPIだけではなく社会性のKPIだったり、人に還元されるようなことまで全部のバランスを取らせた経営に切り替えるよということを言ったり。あとは今までで、「株式第一主義と言えばアメリカ」というところもあったんですけれども、その見直しにかかっているような財界の動きもあったりします。

大きく「企業の行動原理」という意味で、20世紀型では経済の発展をするんだという、この1個でよかった。ところが、これからは経済性、テクノロジー、そして社会性という複合原理に変わっていく。

そんな中で事業活動も、勝ちパターンさえ作っちゃえば、あとはそれをぐるぐる回せばいいという企業経営から、柔軟な対応、レジリエンスだったり、連携した創造性、イノベーションというところが求められている。

その中で人事や人の働き方というのは、これまではしっかり管理をして、合理性を追求することでよかったと思うんですけれども、これからは「つながりを生み出す」ということが非常に求められてくるのかなと思っています。

これからの人事は「管理」から「つながり」へ

石丸:時間も来てますので足早にいきますが、この「ハード面」というところ。企業は目的があり組織機能があり、その機能を果たすための人の能力があるという、この管理型の人事は比較的個人は受け身に働きやすい。それがこれからは、やはり人間関係を重視した中で、自分らしさを発揮しながら信頼関係を築いていくような部分が求められているのかなと思います。

イノベーションも、やはりつながりが重要と言われています。「人事」や「管理」から「つながり」へというところが、すごくメッセージの方向性としてあると思いますので、こちらもテクノロジーを通じて実現していきたいと思っています。

この本を通じて、終始私が訴えているメッセージはこれです。いつの時代も「今の社会をつくり、未来に紡ぐ」という、こういう尊い仕事は「今の大人」の役割であるということですね。ここを改めて自覚した時に、今我々は時代をどういうふうに見て、それぞれがなにを求めていくのかがすごく重要になってくると。

やはり自分らしく安心できるつながりを作って、そのためにテクノロジーを用いていく。そういった人間らしい人が世の中に増えて、本当に仲間とよりよい社会を作っていく土台を作っていけることに、少しでも貢献できればなと考えています。

私からは以上になります。

清水:ありがとうございます。同じ会社なんでなかなかコメントしづらいんですけれども。1つ、石丸からありました「開かれた人事」という概念ですね。社会に開かれた人事という概念に関して、我々実は昨年から人事のコミュニティを組閣しております。

私自身はそこでコミュニティマネージャーをやらさせていただいてますので、ぜひご興味のある方は、「ZINZIEN(ジンジエン)」という人事のコミュニティも運営していますので、覗いてみていただければと思っています。石丸さん、あらためてありがとうございました。

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