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経営者的子育てとの向き合い方(全4記事)

出産や子育てに「申し訳なさ」を感じる必要はない 起業家・経営者に贈る、ライフイベントのポジティブな乗り越え方

「次世代の、起爆剤に。」をミッションに掲げるIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)。2021年は、オンラインとオフラインのハイブリッドで開催されました。本セッションでは、「経営者的子育てとの向き合い方」をテーマに、ANRI佐俣アンリ氏、グッドパッチ土屋尚史氏、SHE福田恵里氏、モデレーターにYOUTRUST岩崎由夏氏が登壇。子育てと仕事の両立に不安や悩みを感じている経営者や起業家に向けて、メッセージを贈りました。

育児を経験したからこその会社の制度

岩崎由夏氏(以下、岩崎):最後のテーマかな。ちょっと話が出てたと思いますけど、自分自身が(育児の)経験をしたからこその会社制度や組織とか、あとは事業自体になにか影響があったかをお伺いしたいです。土屋さんからお願いします。

土屋尚史氏(以下、土屋):僕が子どもがいる状態で起業したので、かなり最初の段階から家族優先な組織の制度を作っていました。やっぱり一番最初は子ども手当てをやってましたし、この数年もどんどんアップデートはされていて、当然さっきの結婚祝い金や出産祝い金もあります。キッズデイ休暇という、小さい子どもがいる家庭に特別有給が一応付与されていたり。

うちは役員も全員結婚してて、家族持ちだったりするので。さっきの妊娠発覚のお話で言うと、内定を出したと同時に「すみません、この前妊娠が発覚しまして」という子もいるんですよ。いわゆる就業規則上は、育休・産休の制度(の適用)は入社して半年以上なんですけれども、役員理事も普通に全会一致で、「産休・育休取らせたら」というふうに、すんなりなりますね。

あとは数ヶ月以内にやると思うんですけど、妊活の補助とかも制度として整えようと思っていて。休みとお金と、両軸でやろうと思ってますね。

福田恵里氏(以下、福田):すごい! 

岩崎:妊活はすごくお金がかかるから、ありがたいですよね。

土屋:お金と時間ですよね。

岩崎:転職の事業をやっていて、けっこう妊活を理由に退職される方っていらっしゃって。

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):めちゃくちゃ多い。妊活のフローを見ていくと、日中に3~4時間病院で待機していなきゃいけなかったりするから、現実的にはフルタイムワークは不可能になるというのはけっこうある。

土屋:なので今、そこをもうちょっと整えようと思っていますね。

岩崎:確かにそれいいですね。ちょっと真似しようと思いました。

先駆者的な会社が出す良い制度を、どんどん真似するべき

佐俣:そう、こういうのはどんどん真似したほうがいいと思っていて。たぶん先駆者はメルカリさん。メルカリさんは素晴らしいメニューがあって、妊活をどこまでも補助し続けるみたいな。

岩崎:あれすごいですよね。金銭的な補助ですもんね。

佐俣:あれはたぶん、メルカリにしかできないと思うんですが。でもやっぱり、メルカリさんやグッドパッチさんやheyとか、そういう先駆者的な会社が出してる制度は、みんなで真似していけばいいですよね。

岩崎:そうですよね。特に有給付与ってバジェットとしてはキャッシュが出ないから、スタートアップにもすごく真似しやすいですよね。

土屋:そうですね。

岩崎:あと確かメルカリさんは、Pairs(ペアーズ)の有料課金とかも会社が補助。

土屋:あれ、すごいですね(笑)。

岩崎:出会いからサポートしてくれる(笑)。

佐俣:福利厚生は会社からのメッセージなので。結婚しない権利もあるし子どもを持たない自由もあるので、自分たちが最近気をつけなきゃいけないなと思うのは、僕はやっぱりハッピー野郎なので、「結婚・出産イエーイ!」になっちゃうんですけど、これはこれでな押し付けにならないようにしないといけないなと思います。

土屋:そうですね。同時に、家庭のない・結婚しない社員に対する不平等にならないような制度も、バランスも考えて整えないといけないなと思っていますね。

自分と顧客が一緒に成長しているからこそできる制度

岩崎:ありがとうございます。福田さんはたぶんサービスの影響とか、それこそ女性のお客さんが多いのもあると思うんですけど、育児を経てご自身の中で価値観が変わったりとか、実際になにか変化が起きたりしたんですか?

福田:SHE受講生のママの比率が、明らかに増えているなと思っています。昔、SHEって顧客のボリュームゾーンがだいたい20代前半の方々だったんですけど、こないだ平均年齢を出したら28歳とかになっていて。

自分の成長と共に、顧客層もかなり多様化しています。顧客と一緒に成長してきているので、入会時は独身子なしだった方でも結婚や出産というライフイベントをSHE受講中に経験される方も多くなっていて。そういう時に例えば、出産・産休でお休みされる方はSHEも休会して大丈夫な制度を作ったりとか、いろんな形でサービスにも反映していますね。

岩崎:休会システム、めっちゃいいですね。

福田:そうなんですよ。だって人生の一大事で体も大変な時に、スキルアップとか無理ゲーじゃないですか。なのでそこはもう十分に休んでいただいて、本当にまた学びへのモチベーションが出てきたら戻ってきていただくかたちにしてますね。

岩崎:確かに。もう(つわりで)ゲロゲロ吐いてる時に受講してられないですもんね。

福田:そう。してられない、られない。

子どもが生まれて変わった、投資家としての価値観

岩崎:確かに。アンリさんは、育児とかを経て価値観が変わったこととかありますか? 

佐俣:やっぱり投資は影響があったかなと思います。昔から僕を知ってる人はわかると思うけど、「給料をゼロに近づけて無限に働けよ」みたいな、もともとけっこうオラオラ系なタイプなんですよ。27歳で独立して、けっこうそういう「THE・ボーイズクラブ」スタイルでやってきたので。

子どもが生まれて価値観がだんだん変わってきました。投資家だし、「自分がこういうスタイルを再生産するような振る舞いをするのはよくない」と思ったら、だんだん変わってきて。この1~2年で、僕らもベンチャーキャピタルの中では比較的大手になってるので。「自分たちの規模も大きくなったし、僕らから新しいことを発信していかないと、この世の中の価値観のスタイルを子どもに引き継ぎたくない」と思って。

岩崎:そういうパラダイムシフトだったんですね。

佐俣:そうですね。子どもができて、特に育休はインパクトが大きくって。「こらアカンわ」みたいな。

岩崎:「今まではオラオラで、ボーイズクラブ的なのをやってしまっていた側だけど、これじゃいかん」みたいなツイートを最近しているのを見て、秒でファボったんですけど(笑)。

佐俣:僕はボーイズクラブっぽいし、スタートアップの世界は「カンファレンスの後はキャバクラだー!」みたいなカルチャーがもともと強くて。「嫌だなー」と思いつつ、「先輩が行ってるし、自分は付いていって名前を覚えてもらわないと!!」みたいな若手だったので。

これを再生産しても、別に誰もうれしくないだろうなと思いました。もう全員行きたくないと思ってるのに、「なんで行ってるんだろう」みたいな。それを止める側の1発目で、ばつっと今までのスタイルを辞めた。(そういうカルチャーは)無駄じゃないですかね。

若い起業家から「ダサい」と思われたら終わり

岩崎:私たちからすると、今、第一線でヘッドを張ってるアンリさんとかちょっと上の世代の人がそういうことを言ってくれるのは、すごくありがたくて。突然やりやすくなるんですよね。どっちかと言うと、今まではちょっと後ろめたかったのがパイオニア扱いされ得る。

佐俣:ちなみに僕もすごく「昔はお前、そっちだったろ」「お前、10年前はそんなこと言ってなかったじゃねえか」みたいに言われるんですけど、「今とはぜんぜん違ったから、そりゃ言ってねえよ」と。

岩崎:アンリさんもアップデートしていっている。

佐俣:アップデートしていけないわけがないので、アップデートしなきゃいけないんだったらしたほうがいい。

ベンチャーキャピタルをやっていて思うのが、若い起業家たちから「ダサいな」と思われたら終わるので。若い人たちより先に価値観をアップデートをするぐらいの気持ちでいないと、一瞬でダサい人になる。僕は独立した時に、上の世代の起業家や投資家をみんなダサいと思ってたので。

岩崎:なるほど(笑)。

佐俣:「あぁ、今はダサいと思われてる側だ」と思って。要は、僕にとって起業家の人はユーザーなので、ユーザーからダサいと思われたくないじゃないですか。

子育てや出産に、不安や申し訳なさを感じる必要はない

岩崎:残り1分半ぐらいになってしまったので、そういうライフイベントを控えている起業家や、「検討しているんだけどちょっと不安だな」という後輩や経営者や起業家の方に、最後にみなさんから一言ずついただければなと思います。土屋さんからお願いします。

土屋:今日もいろんな話が出ましたけれども、相当時代が変わっていますので、これから起業する方々はどう考えても前の時代よりも仕事と家庭の両立がやりやすい。確かに物理的にしんどい部分はあるかもしれないですけど、その価値観を認めてくれる周りの方々がすごく多い時代かなと思っているので。

「不安だから」と、子どもを育てることや妊娠を遅らせるということをあまり考えずに、どんどん社会のために人口を増やしていったほうがいいので、がんばっていきましょう。

岩崎:ありがとうございます。福田さんお願いします。

福田:これから起業したりとか、起業されている経営者の方々って、きっといろんなステークホルダーに対して子どもを産むことに不安や申し訳なさも感じる場面があると思うんですけれども、まったくその必要はないなと思っていて。

子どもを産むことは誰にも咎められないみなさんの自由な権利だと思っているので、不安や申し訳なさを感じるよりも、産んでも大丈夫な体制や環境を作ったりとか、周りのステークホルダーとの信頼関係を作っていくという、ポジティブな方向にパワーを使ったほうがいいなと思います。そこに至るプロセスすらも開示していけばいいと私は思うんですよね。

例えば、もし自分が子どもが欲しいと思っていたら、産む前から株主の方や社員とも「いつくらいに欲しいと思っている」というような話をしておくとか。そういう事前共有をしておくだけで、受け入れのスムーズさもぜんぜん違うなと思います。そこは本当に、申し訳ないとはぜんぜん思わずに堂々と胸を張ってやっていってもらえればなと思っています。

起業も子育ても、悩むけど後悔はしないもの

岩崎:ありがとうございます。最後にアンリさんお願いします。

佐俣:(子育てに対して)悩むと思うんですよね。でも今思い返してみると、起業するかどうかも悩んだわけじゃないですか。これを聞いてる方は起業家の方が多いと思うんですけど、翻ってみて「あの時起業をして後悔してますか?」というと、だいたいみんなしてないわけですよね。

育児も同じで、すごく悩むしうまくいかないこともあるけれど、「じゃあ子どもを産まなきゃよかったですか?」というと、そうじゃないなっていう人が多いと思うんですよね。

そういう性格のものだと思うんですよ。やっぱり悩むんだったら、1回ぐっと踏み込んでみてもいいんじゃないかなと。もちろん家庭にも自分の体にも負担がかかるものなんですけど、「でも、起業もそうだったよね」とみんな思うんですよね。

なのでとりあえずぐっといってみればいいのかなと思っていますし、そういう人生の決断をして、起業しながら家庭も作っていこうという意思決定をする人を応援したいなと思うので。そういう方はぜひ、僕らにお声がけをしてもらえるとうれしいなと思っています。

岩崎:ありがとうございます。では今日の『経営者的子育てとの向き合い方』、以上になります。ご清聴ありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

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