2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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岩崎由夏氏(以下、岩崎):じゃあ、次に移ります。これはホットな話題かなと思うんですけど、アンリさん育休取ってましたよね?
佐俣アンリ氏(以下、佐俣):初めて取りました。
岩崎:そうですよね。一概に言える話じゃないかもしれないんですけど、すごく珍しい事例だったなと思っていて。恵里ちゃんも産休を取っていたと思うんですが、スタートアップ経営者・起業家は、産休・育休を取得すべきか、自分もしたかをちょっとお伺いしたくって。
土屋さんが起業されたばかりの2人目が生まれた時って、産休・育休って取得されたんですか?
土屋尚史氏(以下、土屋):いや、当時まだこの議論はなかったんですよね。
(一同笑)
佐俣:そういう時代ですよね。わかります。
土屋:この2〜3年(の話題)じゃないですか?
佐俣:本当にそうですね。この2~3年で流れが逆転して、育休を取らないほうが理由を言わなきゃいけなくなってくる。
土屋:そうですね。どの流れかな……。もしかしたら、サイボウズの青野(慶久)さんかもしれないかな。僕は2010年に1人目、2015年に2人目なので、たぶんアンリさんの2人目が同い年ですよね?
佐俣:そうですね。だから2015年は……みんなが(産休・育休を)取るって流れはなかったな。
土屋:ないですよね。
佐俣:復帰できるなら復帰したほうがいい、という感じだったので。僕はやっぱり育休を取らなかったし、「1人目の時から取っておけばよかった」と、取らなかったことをすごく後悔してますね。
土屋:だからやっぱり価値観として、そんなに社会の流れの中ではなかったので、僕もその頭はちょっとなかったんですけど。さすがにこの3年は、会社では男性社員は育休を取ってます。
岩崎:土屋さんの2人目が生まれたのが今の時代だったら、ご自身は取得されたと思います?
土屋:もちろん取ったと思いますよ。
岩崎:そうなんですね。アンリさんは1人目の時は取らなかった?
佐俣:1人目、2人目は育休を取ってなくて、3人目で取って初めて「あ、俺はまったく育児してなかったな」というのに気づいて本当によかった。逆に言うと、「取ってなかったら、これに一生気づかないままいってたなぁ」とぞっとする。まぁ3人いるんで、なんにせよ1人は責任を持たなきゃいけないと。
僕の場合は、3人目が生まれた時に2人目(の面倒)を全部見ていて、「やべえ」と思って。「これは(今まで)見てなかったな」というのと、育休を取ってなかったら、取る人たちに対して説得力を持つのも一生難しくなるというか。
社員が10人ぐらいいるんですけれども、投資先は140社あるので、そういう人たちにメッセージングする時に僕が(育休を)取ってないのは、手触り感がないから「ないな」と。「2週間取るといいんだっけ、3週間取るといいんだっけ」という時に、自分の肌感がないのはけっこう怖かったので、取ってよかったなと思います。
だから結局リーダーは、育休を取れるんだったら取ったほうが、その経験が後々強みになるなって。
岩崎:わかる。
土屋:間違いない。
福田恵里氏(以下、福田):そうですよね。私も産前1ヶ月と産後2ヶ月の計3ヶ月ぐらい、産休・育休を取ったんです。産休・育休って、1年とか取る方が多いじゃないですか。ただ自分自身の経験で言うと、2ヶ月休んだだけで自己肯定感が爆下がりしたんですね。
岩崎:わかる!
福田:わかります? 社会とのつながりが分断されて、「母」としての役割しかできないとなった時に、「私の価値ってなんなんだろう」という感じになっちゃって。「もう、早く仕事に戻りたい」とずっと思っていました。
岩崎:わかる。
福田:わかる?
岩崎:私、産後2週くらいで仕事のSlackは見始めるように戻ったんですけど……。
福田:早いな(笑)。
岩崎:私は無痛分娩だったので、1週間ぐらいで「お腹出てるけど、体調は平気だな」ぐらいに戻ったんですよ。生まれたばっかりって個人差があると思うんですけど、うちの子はずっと寝てたので、かなり暇な時間もあって。犬と子どもが寝てるし、家で1人で「時間あるなぁ」と思って、予定していたよりも早く仕事に戻りました。
佐俣:うちは逆に、3人目の時は2人で話し合って「仕事をしない」というルールを決めて。
岩崎:へぇ〜、えらい。
佐俣:お互い5週間育休を取った時に、「極力仕事をするのをやめよう」と。なんでかというと、5ヶ月前はリモート絶頂期ですね。当然出社する機運はないけれど、全員がリモートに慣れてる状態なので、スケジュールをびっちり埋められちゃうんですよ。
家にいたままスケジュールをびっちり埋められちゃうんだけれど、「それ、在宅勤務だから」という話をして。おそらく最後の育休を取るんだったら、ちゃんと休もうと決めました。だから、うちの奥さんも取締役会、僕もマネジメントプレゼンテーションという週に2時間の枠以外は、全部普通に育児するのに振りましたね。
岩崎:ぶっちゃけ私は、2人目が生まれた時に産休・育休を取るかというと、やっぱりまだ怖いなと思っちゃっていて。手離れするのも怖いし、自分自身が仕事をしていないのが想像ができなくて怖いなと思っちゃうんですけど、メンバーには取ってほしいじゃないですか。
福田:間違いない。
岩崎:だから、背中で見せるためにも自分が取らなきゃいけないんだろうなとは頭でわかりつつ。正直、怖いとかなかったんですか?
佐俣:怖い……。でも、僕らも3回目だったので。うちの奥さんもいろんな人にアドバイスするんですけど、「別に10ヶ月準備できるから、準備しなよ」みたいな。準備していくしかないし。奥さんはよく言ってますけれども、1人目の時は復帰した後大変だったんですけど、2人目の時からもうheyの代表取締役になっていて、3人の経営陣がカチッといたので。
それでも任されるところはあったけど、3人で経営していたので任せられる人がいました。僕の場合は、いない時のほうがみんな仕事がはかどってるので。育休から帰ってきて、「自分がボトルネックになっているものはない」と気づいて、次の仕事をやりにいくのがお約束なんですよね。「あぁ、私はやはり無価値でした」と確認して気持ちよくなるっていう(笑)。
(一同笑)
福田:でも、私も一緒です。私が産休・育休を取った時がちょうどコロナで、「オンラインシフトをしなきゃ」という事業的な課題もあったんですけど、休んでる時のほうが伸びてることがあって普通にショックでした(笑)。
佐俣:衝撃だったのが、休んでる間に「じゃあ俺らがいろいろやっとくよ」と言って、投資も出資者への報告も全部やっていて。帰ってきたら「もう大丈夫だよ」と言われて行かなくなって、「あれぇ、俺が行かなきゃ済まないミーティングはないんだ」という。
福田:そうですよね。代表がいなくなると、逆にチームががんばるところがあるんですよね。
岩崎:ある、ある(笑)。
福田:「守らなきゃ」みたいな。
佐俣:「そういうもんだ」と決めたほうがいいと思うんですよね。もちろん大変な時期はあるし、本当にどうしても抜けられない時期もあると思うんですけど。そういう時間があると、あとでは絶対よかったなと思うと思うんですよね。
岩崎:なるほど。アンリさんには、投資先にどういうコミュニケーションをするのかを伺いたくて。私、臨月の時に(資金)調達に回ってたんですよ。そしたら人によっては、目の前にめっちゃ臨月の人がいるから「育休取るんですか」「いつから保育園預ける気なんですか?」と聞かれたんですよね。
福田:えぇー。
岩崎:投資家からしたら、「ちゃんと(業績)伸びるんですか?」と、確かに気になるだろうなと。「代表が休む前提なんだとしたら、ほんまにそれ会社大丈夫なん?」という不安もあると思うんですけど、投資先でそういうことが発生した時に、気をつけてコミュニケーションしてることとかってあるんですか。
佐俣:いろいろあるんですけど、シンプルに役報(役員報酬)を上げたほうがいいんじゃないかと思います。もちろん、どういう体制でやるかとか、その人の考え方もあるし。家庭って夫婦の考え方もあるし、それはそれで尊重したいですよね。でも、子育てに使う資金はあったほうがいいから。
僕たちの投資させてもらっている起業家は自制心が強いみなさんが多いので、明らかに子育てに使う資金を計算しないで、自分が生活できるぎりぎりの役報にするんですよ。だいたい企業に務めている時より下げてたりするので、(それだと子どもを)「育てらんねえから」という。
7~10万円の心の余裕のなさって、クリティカルに精神に響くから、「あなたのためじゃなくて、投資家として期待している僕らに迷惑だからやめて」と言ってます。
岩崎:それは起業家としてはめちゃくちゃありがたいですね。
福田:ありがたい。
岩崎:自分からは「(役報)上げる」って言い出しづらいですよね。
福田:言い出しづらいね。
土屋:ちなみにうちは、創業2年目から社員に対しての子ども手当もずっとやってるんですよ。なのでたぶん、経営者の話もそうですけど、やっぱり社員も大変なのは一緒。子ども1人辺り月2万円出したんですね。
佐俣:すばらしい。
岩崎:すごい。
土屋:うちに入ってから、5年の間に子どもが3人増えた人がいて。
佐俣:すごい。
土屋:もともと1人いたので、合計4人なんですよ。
佐俣:すごいなー。
土屋:なので毎月8万円出して、年収が子ども手当だけでプラス100万円になっている人がいますね(笑)。
岩崎:すごいなぁ。その制度すごくいいですね。
佐俣:僕らも2年前から、投資先の起業家へ、結婚と出産に祝い金を出してるんですよね。これは何がよかったかと言うと、制度導入まではみんな結婚と出産を申し訳なさそうに報告してくるわけですよ。
福田:わかる。
佐俣:「こっちは祝い金を出してるんだから申請してくれ」と言うと喜んで報告してくれて、これは本当によかったなと思います。これはVCからのメッセージなので、金額的にはぜんぜん小さいんだけど、「僕らは祝ってます」というメッセージングを出せたのはすごくよくて。
岩崎:それは早くパクりたいです。
福田:パクりたいね。heyさんとかも出産お祝い金みたいなものをやっているし、最近さまざまなスタートアップも取り入れてますよね。うちも来年から出産お祝い金やつわり休暇など子育て系・出産系の制度を整えようと思っています。子どもを産む人ばかりではないので、そういった制度の要否の個人差はもちろんあるんですけれど……。
佐俣:いろんな考え方があっていいと思うんですよね。もちろん、結婚するのもしないのも自由だし、子どもを作るのも作らないのも自由な時代なんですけれど。
自分たちの会社に勤めてきてくれている人が結婚していってるか、ライフステージをステップアップしているか、望んでいる人が出産しているかというのは、ベンチマークとして客観視すると強烈な数字が出たりするのはあって。
経営者はふとしたタイミングで、「自分たちのメンバーって、この1〜2年で家族たちがアップデートされてるんだっけ?」というのは、改めて考えてみてもいいのかなって思うかな。
岩崎:入社後もそうなんですけど、けっこう入社(前の)ハードルが上がってるなと思っていて。日本のモデル就業規則って、「入社後1年経ってからじゃないと産休・育休が取れません」と書いてあるんですよ。
うちのプロダクト責任者って、妊娠9ヶ月とかで転職してきてくれたんです。私が(妊娠)5ヶ月ぐらいの時に初めて会ったんですけど、その時に改めて就業規則を見直してみたらモデル文章のままになってしまっていたことに気がついて。「いや、ありえないでしょ」と思って慌てて書き直しました。その一文を取り払うだけでめちゃくちゃ優秀な人を採用できるんですよね。
佐俣:それが強みですよね。経営者として、家族を迎えたり新しく子どもが増えていくことを体験してるからこそ気づける、ルールのバグ。
福田:間違いないです。
佐俣:ルールのバグをいくつか塞ぐと、今まで採れなかった優秀な人たちが僕たちのことを見てくれるという考え方があるじゃないですか。こういうふうに、糧になると思って(子育てを)経験していったほうが、経営者は楽。
岩崎:わかる。
福田:間違いない。うちも女性のキャリア支援をやっている会社なので、今働いている男女の割合が、女性が8〜9割とかなんですよ。
佐俣:すごい。
福田:SHEも働いているメンバーの平均年齢が28〜29歳とかなので、そうなるとあと2~3年後とかに、たぶんメンバーの妊娠・出産ラッシュがくると思っていて。その時に、もし自分がそれを経験してなかったら何がネックになるのかわからないし寄り添えないし、制度も設計できないなと思いました。自分が率先して妊娠・出産を経験した理由として、そこはありますね。
岩崎:そうですね。採用候補者さんと話す時に、自分の言葉としてしゃべれる強みがあるなと思っていて。「妊婦さん、ぜんぜんウェルカムですよ!」「大変だったら休んでください!」みたいに言えるので。
岩崎:保活(子どもを保育所に入れるための活動)とか、めちゃくちゃインプットしてますもん。「保育園のリスト作った!?」とか。
福田:(笑)。頼りになるなぁ。
佐俣:保活とか、認可の保育園に受からないかもしれないという時の、あの絶望感って……。
土屋:絶望。
岩崎:やばいですよね。
土屋:あの絶望はやばいですね。
佐俣:あの絶望ってたぶん、「あれ、わが家詰んだ?」という危機に瀕した人しかわからない。
福田:しかも、けっこう経営者って点数低くなりがちじゃないですか。
岩崎:なりがちですね。
福田:自由度が高いと見られて、けっこう保育園に落ちることがあるので。
岩崎:めっちゃ区役所で聞かれました。「自分で(会社)やってます」「家ですか? (子どもの面倒を)見られるんじゃないですか?」「見られないです」みたいな(笑)。
佐俣:今だと「実質、在宅ワークですよね。大丈夫じゃないですか?」「大丈夫じゃねぇよ」という。
福田:言われちゃう。
岩崎:もう保活についてはめちゃくちゃノウハウがあるので、なにかあったら聞いてください(笑)。
佐俣:在宅ワークと育児は両立は不可能。
岩崎:いや、ぜんぜん無理ですよ。
岩崎:ありえないですよね。
佐俣:ありえないよ。
岩崎:子どもがPC触りに来ません?
福田:来ます。
佐俣:気がつくとPC触ってる。
福田:ちょっとでも床に置くとうわーって泣くから、ずっと子どもを膝に乗せながらパソコンやって。
岩崎:膝に置いたらこう(手を伸ばして)PC触りに来るじゃないですか。
福田:(笑)。
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