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VUCAの時代へ突入した2020年を経て、2021年の採用はどうなる?(全6記事)

「社員クチコミデータ」で分かった、業績と組織文化の相関性 オープンワーク代表が見る、成長企業の条件

「激動の2020年を経て、2021年の『雇用』や『組織の在り方』はどう変わるのか?」をコンセプトにした、人事担当・経営者向けのイベント「HR Knowledge Camp 2021」が開催されました。各セッションのテーマに纏わるキーパーソンを迎えて行われ、本記事では「VUCAの時代へ突入した2020年を経て、2021年の採用はどうなる?」をテーマに、変化の激しい時代を生き抜く組織づくりのための、採用基準のポイントが語られました。

社員のパフォーマンスに対する評価基準

江成充氏(以下、江成):なるほど。石田さん、(サイバーエージェントでは)「挑戦と安心はセットで」とかなり強くおっしゃられている一方で、いわゆる業績低迷者っていうんですかね。通期連続や2期連続の場合は、わりと強めのコミュニケーションをしたり、異動も打ち出されてらっしゃると思うんですけれども。心理的安全性と、チャレンジと失敗を許容することの境目は、社内でどのように作ってらっしゃるんですか?

石田裕子氏(以下、石田):明確に線引きをしているわけではないですが、誤解がないように改めてお伝えをすると、業績が悪い、成果が出ないから「あなたはローパフォーマーだ」ということはないんです。ただ、価値観や仕事に対する姿勢、マインドっていうんですかね。

江成:スタンスですね。

石田:スタンスやマインドにミスマッチがある場合は、率直に「あなたちょっと合ってないですよ」「今のままの姿勢で仕事に臨んでいくと、お互いにとって良くないですね」というような。なので「変えましょう」と。

意識を変えていくことの先に、1つの選択肢として異動や配置転換があったりするだけなので。成果が出なければ即異動、ということは一切ないんですよね。ただ、今おっしゃっていただいたライン引きって、すごく難しいというのが率直なところではあるんですが。

江成:そうですよね。

石田:すごく端的に言ってしまうと、成果を出している人は当然厚遇していきますし、合っていない人やずーっとフリーライダーのようにただ居続ける人、特に今のようなリモートにおいては見えなくなってしまっている部分もけっこうあったりするので、少なくとも「実は一日中ゲームしてました」みたいなことが、なにも手を入れられずに放っておかれる社風ではないですね。

締めるところは締める。ちゃんと成果を出している人には、抜擢や成長機会をちゃんと提供していきましょう、という考え方でやっていますね。

企業における「風土」と「制度」のバランス

大澤陽樹氏(以下、大澤)CAJJプログラムって今もまだあるんですか?

石田:あります。

大澤:事業のランクづけがけっこう外にも出てるし、こういうクチコミでも「敗者にはセカンドチャンスを」って出てるし。こういうのをやられると、けっこう採用的には……競合の人事としてはつらいというか(笑)。

石田:あぁ、そうなんですかね。

大澤:山っ気のある人は、やっぱりサイバーさんに行きたくなっちゃう、とかね。

江成:このあたりって風土と制度の2つの面があると思っています。大手企業では制度はあるけど風土がなかったり、ベンチャーでは風土はあるけど制度がなかったり。

サイバーさまだとこの掛け算が両方あるように思います。制度が運用され、風土を築き続けられるのは、本当に強い会社だなぁと外から見てて思いますね。

石田:いえいえ。でも本当に、他社の人事の方にも聞かれるんですけども、私たちはぜんぜんオープンなんですよ。「こういうことをやってますし、こういうことをやってみて失敗しました。ぜんぜん流行らなかった制度です」みたいなこともすごくオープンに公開してるんですけど。

大澤:確かに(笑)。

石田:一方で、そのまま自社に持ち込んで同じようにやってもうまくいかないケースもよく聞くんですよね。そこってもちろん社風や企業文化ありきというか。それぞれに合ったやり方がきっとあるはずなので、ぜひいいところだけを取っていただくといいかなと。

私たちもいろんな企業さまから学んでいるので、いいところを取って自社の社風に合ったオリジナルなものに転換していかなきゃいけないんだなと思います。私も当社の人事制度や事例をお話して、「ぜんぜんうまくいかなかったです」と言われたりもするので(笑)。

大澤:本当にそうですよね。

「どう組織を作ればいいか」まで見据えた採用を

大澤:「2021年の採用」がテーマで、2021年に限らずだと思うんですけど、事業と財務と組織・採用をちゃんとリンクさせないといけないなと思っています。サイバーさんは事業系の施策が多かったり、「敗者にセカンドチャンスを」という(企業風土がある)。やっぱりベースに財務力もあって、インターネット業界の事業を多角化して。

しかもITインターネット領域って移り変わりが激しいじゃないですか。だからいろんな事業をちゃんと立ち上げていかないと、すぐに業界から評価されなくなってしまうので、事業を多角化していく。あとはそれをある程度の資本も使いながらやれるのが前提で、さっきの採用やCAJJという制度がハマると思うので。表面だけ真似するとけっこう痛い目を見ることはありますよね。

江成:そうなりますよね。質問で「同じ業界の企業さんとサイバーさんとの、差が生まれるポイントはなにかあるんでしょうか?」というメッセージをいただいていますが、こちらはいかがでしょうか?

大澤:一概には言えないんですけど、オープンワークのこの波形でいくと、やっぱり業界ごとにちょっと違いはあって。エスタブリッシュメントな企業が多い業界なのか、わりと新しいプレイヤーが多い企業なのかでちょっと違うのかもしれないんですけど。

1個あるのは、わりとオペレーショナル・エクセレンスで、しっかりと利益を生み出すためのプロセスが決まっていて、あんまり業界の変化が激しくないところはやっぱり「安定して活躍できる人を育てていったほうがいい」という空気が今まであったので。これからどうなるかはさておき、「待遇面の満足度」「人事評価の適正感」「法令順守意識」「人材の長期育成」とか、左のほうが高くなる傾向があるんですよね。

江成:なるほど。

大澤:さっき説明したような、事業モデルとセットで、自社をどういう組織にしていくべきか、どういう人材を採用すべきかを考える必要があると思います。ただヘッドカウントを集めてくる採用マンで終わるのか、事業成長や経営力を上げていくうえで採用していくために、どう組織を作ればいいか(まで考えられるのか)。僕はけっこうここで人事の方のパフォーマンスが一段変わってくるなって印象はありますよね。

残業時間と働きがいに因果関係はない?

江成:「組織文化や人事と組織成長は相関する」という内容について、具体的に解説いただけますか。

大澤:「オープンワークのデータは信ぴょう性があるのか?」といろいろ言われるんですけど。あとはよく「組織なんかに投資して意味あるの?」みたいなことも言われるんです。これは学術的にもあると証明されていて、アメリカとかだともう2000年代からこの研究がけっこう進んでいます。会社の中のヒューマンキャピタル情報やクチコミとかと、将来の株価・財務指標との連関性が(あると)言われているんですね。

じゃあ日本でも同じ研究をしてみようということで、同志社(大学)の先生と金融指標の分析に強いクレジット・プライシング・コーポレーションさんという会社の方に研究をしていただいたところ、やっぱり財務指標や株価と(クチコミが)強い相関性があったんですよね。

よく言われるのが「ニワトリ・卵」。「事業が良くなるから組織も良くなるんじゃないの」と言われるんですけど、実は「両方あった」という研究結果が新しく出たんです。

事業が良くなって内部留保率が高まると、それによって投資ができるから、組織が良くなることもあると。ただ、組織文化が良いからゆくゆくの財務や株価に連関してくることも、改めてデータで出すことができて。もっとおもしろかったのが、例えば「残業時間はあんまり働きがいに相関性がない」とか。

働き方改革があるじゃないですか。あれをやったからといって社員満足度が上がっているかでいくと、あんまり関係なかったんですよ。

石田:意外ですね。

大澤:欲してる人と欲してない人がいる。これって社員満足度や組織文化スコアと業績が関係しているので、残業時間を減らしたら業績が良くなるかでいくと、必ずしもつながっていない。たぶんそこに相関はないという話なんですよね。

そういうデータはすごくおもしろかったんですけど、やっぱりサイバーさんってこれを地で行ってるなぁと。組織文化を良くする(ことと事業を良くすること)……両方だと思ってるんですけど。

サイバーの入社理由1位は「人と組織」の魅力

大澤:文化が強いからこそ、例えば「広告事業からゲームにいくぞ」「ABEMAにいくぞ」ってやっても、もちろん辞める人もいらっしゃるかもしれませんけど、一定(数)がついてこられている。これって、会社のすごい強い財産だと思うんですよね。

石田:ありがたいですね。一言で言うと「変化対応力」という言葉だと思うんですが。やっぱりIT業界ということもあって、とにかく変化に強いというか。それこそ広告の会社からスタートしているのに、ある日突然ブログ(サービス)をやりだして。今で言うとAbemaTVのような「インターネットテレビを作るぞ」ってやりだして。

もともと、メディア事業やゲーム事業、AbemaTVに参入する前に入社してきた人たちは、全然そういう気持ちで入っていない社員もいるんですよね(笑)。

大澤:そうですよね。それは本当に強いなって思います。

石田:なんですけども、「そうなんだ。わかりました、がんばります」って言ってやれちゃう人がやっぱり多いというか、そういう採用をしてきたところでもあるのかなと思っています。先ほどの「ニワトリ・卵」の話ではないですけど、必然的にそういう文化になっているので。

あとから来た人も染まりやすいし、ハマりやすいです。逆も然りで、そういう変化に強い人を採用しているので会社としても文化的に変化に強く、変化に対応できる組織になっていく。やっぱりどっちもあると思いますね。

大澤:入社する方って、何を求めて入ってくるケースが多いんですか? 組織心理学的に言うと、人が組織に属すのは「理念や方針が好き」「仕事や事業内容が好き」「人や風土が好き」「特権・待遇が好き」。人って、このなにかを求めて集団に属すると言われていますが。

石田:さまざまですが、過去数年分の入社理由を見てみると、一番多かったのは「人と組織」なんですよ。「何をやるか」よりも、当社の人やカルチャー、社風や組織の雰囲気が入社の最後の決め手になったという回答が多い傾向にありますね。

江成:確かにそれって、さっきのグラフの右側の話ですよね。

石田:まさにそうです。

大澤:確かに、一貫してるんだ。でもそういう採用をしておくと、VUCAの時代で「事業方針を思いっきり変えるぞ」となった時に、「『20世紀を代表する会社を創る」。そういうカルチャーを作るんだ」というところに惹かれていると、変化対応力が強くなりますよね。すべての企業に当てはまるわけじゃないと思いますけど、新しい時代の採用のあり方の1つかもしれないですよね。

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