2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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麻野耕司氏(以下、麻野):自分のキャラに合った組織の成長のさせ方を見つけておくとか、確立させておくことが、300人の壁を突破するには大事なんやなぁというふうに改めて思いました。
青野慶久氏(以下、青野):本当ですね。自分の棚卸しをしたほうがいいですね。
麻野:確かに自分を知るって大事ですね。
南壮一郎氏(以下、南):300人の壁という問いかけにおいて本質的に重要なのは、創業事業における市場規模ではないでしょうか。
麻野:そうですよね。マーケットの規模が大きくなかったらそもそも……。
南:そうなんですよね。300人の壁ということだけで言うのでしたら。
麻野:確かに。逆に今、僕は多角化や事業責任者に目を向けて質問したんですけど、今のみなさまが創業の頃とか、もうちょっと会社の規模が小さい頃に戻るなら、こんなことをやっておくなというものはありますか?
「今のうちにこういうことやっとけ」でもいいですね。300人に戻れるならどんなことをするかという。もしくは今、50人とか100人くらいの会社の社長に「これやっとけよ~」と言うなら、どんなことかというものはありますか?
鉢嶺登氏(以下、鉢嶺):うちは上場前までは70人だったのが、上場後に3年で700人になったんだよね。その時に組織がぐちゃぐちゃになっちゃいました。あまりにも急激に急拡大しすぎて。それは何かと言うと、ベンチャーのときにオプトイズムと言われるようなものをすごく大事にしてきたわけですよ。
それを得々と説いてきた70人には浸透していたけれども、あっという間にその10倍の人たちが入ってきちゃった。それがほとんど転職で入ってきたわけですよ。そうすると前の会社の常識を持ち込んでくるじゃないですか。
それがけっこう有名な一流企業だったりすると、「え、オプトってなんでこんな制度がないの?」とか「こんなこともできてないの?」というものがブワーッと10倍で入ってきちゃって。僕らが今まで正しいと思っていた自信が揺らいじゃったわけですね。
一番重要だと思っていた社風が揺らいじゃったので、そこにまた大きな投資をしながら、改めてベンチャーイズムみたいなものを浸透させたことがあるんですよ。
だから2社目のソウルドアウトを上場させる時に、荻原という社長に僕がずっと言っていたのは「上場までにもっと人を増やしなさい」と。ソウルドアウトは210人で上場して、そこから3年で700人に増えたってたかだか3倍でしょと。だったら大丈夫だからって。
短期間で社員を10倍に増やすと本当に組織が壊れるよ、ということは言っていたので、あんまり急激に増やさないように、赤字でもいいから早めに(徐々に)増やすようなことも組織戦略上は重要なのかなとは思いますけどね。
麻野:同じ300人の辿り着き方でも、こういうふうに伸びていくのと、グーっと最後に300人に伸びるのだと組織の作り方の難しさが違うので、なるべく同じくらいで増やしていく。そうするとイズムが薄まらないというような。
鉢嶺:イズムは一番重要だと言ってもいいくらい、僕は大切にしていたから。創業の300人くらいまでのコアメンバーに、どれだけ創業者のイズムを植え込むかが重要かなと思いますね。カラーだと思うんですよね。
南:それに付随することで、僕もすごく共感するところがあります。我々は、当時は特に意識はしておりませんでしたが、1年という期間において、社員数が倍を超えたことがありません。組織の成長イメージで言うと、10、20、30、50、100、200、400、700、1,000という従業員の増え方だったと思います。
この組織の急成長の中で意識をしていたことは、退職率でした。特に、入社1年以内の退職率を常時見ていました。採用において、会社にとっても、従業員にとっても避けたいのは早期離職です。そして、早期の離職を防ぐために最も重要なことが採用基準を下げないことだと個人的に思っています。
急成長させようとすると、ついついそれまで死守してきた採用基準を下げてしまいがちです。採用基準の中でも特に鉢嶺さんがおっしゃっていたような、バリューフィットという概念を、採用の現場ですごく大事にしてきました。
鉢嶺:はい。
南:鉢嶺さんがおっしゃっていたバリューを、我々はBizReach Wayというものにまとめました。グループ経営体制に移行しても、Visional Wayとして受け継いでいることでもあります。
今も昔も、Visional Wayに明記されているミッションやバリューに共感する方々と、自分たちは一緒に働きたいと思っています。結果的には、事業創りをしていきたいと真摯に思う仲間が集まり、切磋琢磨しながらみんなで成長を続けていました。社風や文化は少しずつ変わりながらも、その根幹が守られてきたことが、今に繋がっていると思います。
南:また、創業から5年目まで、新卒採用に一切頼らず、ストイックにキャリア採用に注力していたことも、その後の組織の成長に大きく貢献したと思います。組織が70名くらいになって、初めて新卒社員が入社したので、他社と比較しても遅かったのではないでしょうか。
ちなみに、それまでの社員の大半は、20代後半から30代前半で、それなりの規模にまで成長した企業でマネージャーやリーダーとして鍛えてもらってきたメンバーが多かったです。自分もまさにそのようなプロフィールでしたが、そのような人材を中心に創業期の組織創りを意識的に行っていました。
麻野:おもしろい。
南:新卒採用も「組織全体の10パーセント以上は絶対に採用しない」とみんなで決めました。組織を急成長させようとすると、どうしても新卒採用に頼りたくなってしまうのも十分に分かります。しかし我々としては、新卒社員の成長は先輩社員全員の責任として、丁寧に育てたいという思いがあったため、受け入れ体制が整ったと思えたタイミングで新卒採用を始めました。
キャリア採用同様、新卒採用でも、自分たちらしい採用基準を守り、数ではなく質を必ず担保することを続けています。注力し続けているのは、バリューフィット。会社として大事にしていること、また会社として目指しているものをはっきりとお伝えしたうえで採用すること。今でも変わりません。
鉢嶺:でもね、僕は創業してすぐに新卒採用を始めたんですよ。
南:そうですよね。
鉢嶺:そこがよかったなと思うのは、言い方は悪いけど、新卒の人はキャンバスが白いから染めやすい。だから「こういう会社にしたいんだよ」と言って共感してくれると、そのまま信じて一緒に進んでくれる。やっぱり中途の人は前の会社の常識を持っているから、なかなかそうなりづらいとは思ったから、新卒が一定の比率いることはけっこう重要かなと思います。
南:時代背景の違いもあると思います。鉢嶺さんの時代のスタートアップの創業と、僕たちの10年後の創業では、キャリア採用で採用できる人材の層がまったく違うのだと思います。これは、三木谷さんや鉢嶺さんなど、先輩起業家の皆さんが、がんばって日本にスタートアップの文化を創ってくださったおかげです。
ちなみに、我々は、新卒社員の存在も、すごく大事だと思っています。新卒社員は、中長期的に会社の文化そのものを創っていくことだと僕は信じています。時代によって違いはありますが、会社の成長フェーズによって、組織を構成する人材の適切なバランスを見つけていくことが重要だとこの10年で学びました。
鉢嶺:なるほど。
麻野:いや~確かに。今の南さんの話はけっこう刺さって。僕は新卒至上主義の会社で育ったんですけど。逆に今創業してみて、中途で優秀な人はこれだけスタートアップのマーケットに出てきているんだなと思うんですよね。それこそGoogleやCarlyleの人たちが年収半分以下くらいにしてもぜんぜん来るような状況。これはもう先輩たちががんばってくださったからやと思うんですけど。
南:それが真実です。
麻野:今は昔とぜんぜん違っているので、そうなるとやっぱり新卒のように、仕事をしたことがない人のポテンシャルの見極めはめちゃくちゃ難しいと思うんですよ。でも、結果を出している人を採れるのはすごいなぁ、とちょっと思っちゃったところはありますね。
南:麻野さんとやりたい人はたくさんいると思いますよ。
鉢嶺:まあそうだよね。
南:また、鉢嶺さんの30人の会社に行きたいという人もたくさんいると思います。僕が楽天イーグルスに入社した状況と似ていますし。数十人の組織の中で、三木谷さんや島田さんの下で育ててもらったことは、僕の人生を大きく変えましたので、鉢嶺さんが本気で「俺がおまえを育ててやる!」と覚悟を決めて誘ったら、30歳前後の優秀なビジネスパーソンがたくさん集まると思います。
鉢嶺:あはは。そうだね(笑)。
麻野:青野さん、そのへんはどんなふうに思われますか?
青野:まさに今おっしゃったところとまったく同じことが起きていまして。私たちもやっぱり創業してなかなか中途が採用できないので、新卒でがんばらなきゃなと思って、新卒採用をがんばっていたんですよ。だから今、開発のトップも営業のトップも実質サイボウズ新卒みたいな人がけっこうやっているんですよね。
ただそれがこの5年くらいは完全に逆転していて、学生が減っていることもあると思いますけれども、中途のほうがいい人がどんどん採れるので。数としては今たぶん新卒の何倍も中途で採っていますね。やっぱり世の中が変わってきていることを実感しますね。
カルチャーを大事にするのはやっぱり新卒でも中途でも同じ。僕らは特にグループウェアの会社なので、グループウェアが好きな人しか採らないという感じですね。そこは守っていますね。
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