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登壇者ディスカッション(全4記事)

オンライン相談室を社員に常時解放 Salesforce執行役員が語る、リモートワークのケア体制

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響であらゆる企業がリモートワークへの移行を進めていくなか、働く環境が変わることによって課題も見えてきました。本トークセッションでは、セールスフォース・ドットコムでインサイドセールス部門を統括する鈴木氏が、リモートワークでも高いパフォーマンスを維持するコツを紹介します。現場のメンバーが働きやすい環境をつくるために、役員・マネージャーが気をつけるべきこととは。

リモートでの1on1はメンバーのケアを中心に

前田ヒロ氏(以下、前田):マネージャーが意識するところで、他に何かありますか?

鈴木淳一氏(以下、鈴木):さっきからお伝えしている、活動は時間単位で確認しましょうということ。

それと、ヒロさんに言っていただいたとおり、リモートワークでは数字が見えてマイクロマネジメントに走ってしまいがちです。「何件足りないよ」というコミュニケーションになってしまいますので、メンバーを信頼してあげるのがいいと思います。

みなさんに聞いてみたんです。いわゆるレポートとかランキングで、数字で出るじゃないですか。メンバーたちは自分の存在感をアピールするために、ランキングで上位にいこうとしてくれるんですよね。非対面だからこそ、そうしないと「仕事をしていない」と思われてしまうということなんです。なので、細かく見えている状態は作りながらも、メンバーのみなさんを信頼して預ける。

マネジメント側としては「今、ちゃんと仕事をしている?」「休憩が明けたらメッセージください」「ランチタイムに入ったら『ランチに入った』、戻ったら『ご飯を食べ終わったよ』と言って」とか、たぶん言いたくなっちゃうと思うんです。

だけど、そういうのは一切せずに「好きに休憩を取ってくれて構わないし、ランチがずれたら好きな時間にランチを取ってくれて構わない」というメンバーを信頼するかたちにしています。

前田:ちなみに、リモートワークに切り替えてから1on1の仕方とか内容って、変わっていたりします? 

鈴木:正直、1on1の内容は、だいぶキャリアとか個人の相談に乗ることが増えましたね。今まで週に1回実施していた内容は、1週目と3週目は数字の話、2週目と4週目はキャリアの話という棲み分けでした。でも今はこの状況で、数字をずっと見ているじゃないですか。そこでも数字の話をしちゃうと、ずっと数字のコミュニケーションになっちゃうんです(笑)。

前田:確かに(笑)。

鈴木:なので1on1では数字の話をする比率が減って、メンバーのみなさんのケアとか状況とか、もしくはご家族とかその周りの環境とかも含めたサポートのほうに徹する機会のほうが増えていますね。

前田:なるほどですね。確かに一人でいると、キャリアとか、自分は今後どうなるんだろうとかというのを、いろいろ悶々と考えだしてしまいますもんね。

鈴木:それこそ「自分自身の仕事とかキャリアがこのままでいいのか」と考える方々も、おそらくいるでしょう。やっぱり、そこを支援してあげる状況が増えてきていますね。

勤務時間中いつでも話せるオンライン相談室

前田:そういう悩み事とか、思っていること、考えていることを引き出すコツとかってあるんですか?

鈴木:引き出すコツ……。コミュニケーションなので、基本的には「たくさんしゃべっていただく」ということに徹しています。マネージャーはとにかく聞くことに徹する、傾聴することを基本としています。いつメンバーが相談したくなるか分からないので、空き時間は何時でも相談に乗れるオンライン部屋を用意する事ですね。私も空き時間はオープンしています。

前田:誰でも入れるようにするみたいな感じですね?

鈴木:そうです。営業戦略室という支援部隊が我々インサイドセールスのところにいるんですけど、非常にすばらしい支援を実現しています。朝からずっと相談室をオープンにしてくれているんですよね。9時に開いて18時に閉めるんですけど、そこに相談したい方が好きなタイミングで相談しに行ける環境を作っています。

1on1のタイミングまで、相談を待たなきゃいけない状況ではなくて、自分がちょっと気になるタイミングとか、ちょっと嫌だなと思ったときにパッと相談できるようにしています。オフィスだったら声を掛ければ済む話とか、「ちょっと今時間いいですか?」「ちょっとコーヒー飲みません?」で済む話を、うまくオンラインでもできるようにしています。

前田:それは本当に重要ですね。

鈴木:そうなんですよ。けっこうな人数が相談部屋に来るんですよね。1日平均で10人くらいその部屋に来ます。

前田:そんなに! すごいですね。

鈴木:オープンにしていい相談の場合は「だいたい今日は何人が来てくれましたよ」と、結果報告も社内SNSで公開しています。私も、ここまで相談者が多いのは予想外でした。

着地しないMTGは、アジェンダごとに時間制限を定める

前田:ちなみにマネージャーの時間の使い方って、何か変化はありましたか? さっき鈴木さんがおっしゃっていた部分では、チェックとかモニタリングの時間がけっこう増えたという話があったと思うんです。時間の使い方で意識しないといけないこととか、そのへんもしあれば……。

鈴木:我々で話しているのは、ミーティングとか打ち合わせの前の「アジェンダ設定」「内容の設定」を、対面以上にちゃんとやらなきゃいけないということです。そういうふうに、仕切り直しているところですね。今までだと、なんとなくミーティングに参加して進行していたものに対して、(ミーティングの)前にちょっと時間を使うイメージですね。

「今日はこの議題で話す」など、共有用SNSにアジェンダとお題を先に入れておいて、そこから話し合うかたちを取っています。なので、会議中に議事録をまとめてあとから出すっていうよりは、先に出してみんなのコミュニケーションを端的でクリアにし、中身を補填する。逆に、ミーティングが終わったあとはもう何もしないという状態で、次にいくというやり方になっています。

前田:そういうやり方にした理由とか、きっかけってあるんですか?

鈴木:非対面で進めていくので、ディスカッションがワーッと活発になると、答えが出ないまま終わっちゃうミーティングというのが出始めました。わりとみんなが好き勝手なことを言うので、ぜんぜん着地しない状況になっちゃったんですよね。

実際にアジェンダをちゃんとセットして、時間配分も例えば10分はこれ、20分はこれっていうように細かく制限を設けてやると、かなりしっかり話し合いができるようになりました。なので、今は時間制限とアジェンダ設定をしっかりとやっていますね。

前田:話が広がりすぎないように、ちゃんとアジェンダ設定するのもすごく重要だと思うんですけど、実際にその人の意見が聞かれているかとか、ちゃんとその人の声が引き出せているかという点で、とくにグループでのミーティングにおいて何か工夫されていますか?

鈴木:基本的にWeb会議では顔が全部見える状態を作って、みなさんで話し合っていますね。そういうツールを使って、対面と同じようなコミュニケーションができるようにやっています。

あとはGoogleの「Jamboard」(注:オンラインで使えるデジタルホワイトボードツール)ですかね。あれを使って、いわゆる付箋を画面上にパシパシ出していくんです。例えば人ごとに付箋の色を変えたりして貼り付けていく。それでちゃんと自分自身の意見が出ているかどうかというのはチェックできるようにしていますね。

前田:なるほど。そういうツールも使いつつ進めていくという感じですね。

数字を作れない時はアウトプットを増やしてもらう

鈴木:一方、マネージャーは今、チェックする時間が増えてしまっています。スケジュール一杯に働いていて、ご飯も食べられなかったというケースが出てしまっているので、マネジメントの時間配分も注意が必要な状態です。

前田:時間をもっとコントロールするというか、「タイムマネジメント面でこういったことがうまくいった」「こういう工夫をしたほうがいい」とか、何かありますか?

鈴木:さっきのアジェンダにも関わってくるんですけど、アジェンダを設定して前もって内容を共有してからミーティングが始まると、(予定していた)ミーティング時間より早く終わるんですよ。例えば1時間の時間を取っていても40分でミーティングを終えて、残りの20分が空く。カレンダーでは埋まっているように見えても、空いている時間を作ってあげるんですね。

今日も昼に全体会議をしたんです。通常だったらフルに時間を使っちゃうんですけど、10数分前に終わってきれいにアジェンダが流れたので、その時間をみなさんの空き時間にしていただくということで、時間をあえて作り出すようにしています。なので、30分のミーティングも、集約して15分で終えるというかたちを取っていますね。

前田:なるほどです。了解です。ちょっと切り替えて、マネージャーじゃないメンバー、プレーヤーがリモートワークに切り替えるときに意識しないといけないことって、何ですか?

鈴木:リモートだと、存在感は数字や活動で表さなければいけなくなっちゃいます。なので、パフォーマンスは証明のためにちゃんと出す。もしくはそれが難しかったり、新人の方だったりする場合は、SNSのコメントとか盛り上げとかで存在感を発揮するのは、メンバーご自身のためにも意識して実行していただくように伝えています。

数字がちょっと追いつかないとか、活動ができないんだったら、みなさんにワークフロムホームのTIPSやYouTubeのエクササイズの動画を紹介したり、「今日のお昼に何々を食べたよ」とかでもいいので、自分自身から意図的に活動を証明する、アウトプットすることを増やして存在感を発揮していただきたいですね。

前田:ちょっと静かだなと思ったメンバーがいたときって、鈴木さんのほうで何かやったりするんですか? 

鈴木:静かだなと思ったメンバーがいた場合ですか(笑)。Web会議の場合はみんなでカメラオンにして話をしますし、当然、静かな人には話を振ったりもします。あとは、やっぱりチャットとかですかね。なんとなく元気なさそうだなと思った人には、一番ライトなチャットツールとかで、サクッと何か絵文字を送ってみるとか、「元気?」と言ってみるようにしていますね。

外出できる格好で仕事をすること

前田:プレーヤーは存在感を出すことを恐れずに、という部分。他に何かあったりしますかね?

鈴木:ハードルを下げたゆるいコミュニケーション促進ですね。今みなさんから意見をもらって今いろいろやってみているのが、服装です。

前田:ほうほう。

鈴木:つまらない話をして申し訳ないんですけど(笑)。服装をちゃんとするのが、今けっこうホットトピック。やっぱりパジャマとか部屋着で仕事をすると、ダラっとしてしまうし集中できないと、みなさんからも報告があります。なのでけっこうみんな「そのまま外に出ていい格好」で、ジャケットとか、メンバーによってはネクタイを締めている人もいるんです(笑)。

お客さんとお話をするので、ちゃんとした格好ですよね。パジャマで話しているのって、なんとなく精神的にお客様に対していいメッセージができない気持ちになったりするんです。ちゃんと、外出してもいいような格好をして仕事をすることにしていますね。

前田:重要ですよね。僕も最初、リモートワークに切り替えたとき、ベッドから出てそのままパソコンの前に座るみたいな状態が続いたんです(笑)。やっぱり気持ちの切り替えがうまくいかなかったりメリハリがつかなかったりとか、ちょっと暗い気持ちでスタートしちゃうこともあるんです。歯を磨いたり、顔を洗ったり、着替えたり、コーヒーを作ったりとか、こういうルーティンを作るのは大事だなというのはすごく感じましたね。

鈴木:そうですよね。なので私も、ジャケットは絶対に羽織るようにしているんです。これはちゃんと守っておかないとな、ということです。ダラっとしないという意味では、僕は今、靴も履いているんです(笑)。

前田:すごい(笑)。

鈴木:「今日はこの靴で仕事しよう!」みたいな。違う靴を履いて、気分を変えたりしていますね。

オンラインセールスのマナー

前田:ちなみにオンラインセールスとかインサイドセールスとかで、マナーとかはあるんですか? 昨日か一昨日、どこかの記事で「ZOOMの閉じ方のマナー」みたいなのがちょっとバズっていたと思うんです(笑)。そういうのって、あったりするんですか?

鈴木:そうですね。電話とすごく似ているんですけど、自分から切らないっていうことですね。ちょっと日本人っぽいですね。当然、自分から切断はしないので、お客様が退席されるまでお見送りしてから自分も退席するというのはあります。

あと、これもすごく日本人っぽいんですけど(笑)。ちゃんと閉めるときに頭を下げて、マウスで「閉じる」とか「退席する」っていうところにクリックを当てておいて、頭を下げながらポチっと押すみたいな……。

前田:エレベーターが閉まる瞬間と一緒ですね(笑)。

鈴木:そこはみなさんやっていますし、やっぱりお客さんより先にパチっと退席とかはしないので。最後までみなさんが退席しきってから出ますね。あとは、オンラインセールスだと同席しているマネージャー等と「振り返り」として、商談が終わったあとにミーティングをします。なので、お客様にご退出いただいて、最後に「次はどうしようか」という話をしてから閉じるみたいなこともしています。

前田:なるほど。

鈴木:というか、そんな記事があったんですか? オンラインセールスの終わり方?

前田:たぶん半分ネタだと思うんですけど、ZOOMでの下座と上座があって、自分の画面が上司より上にいかないようにしないといけないとか、いろいろあったんです(笑)。

鈴木:それはちょっと、意味がわからないですよね(笑)。

前田:あとは、同じ部屋に上司がいる状態でZOOMをやっていた場合、まず上司が部屋を出てから閉めるとか、いろいろ(笑)。半分ネタだと思うんですけどね。

鈴木:まあでも、やっぱりそれはお客さんにはしっかりやったほうがいいと思いますね。

前田:もちろんですね。服装もそうです。

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