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なぜ従業員のココロは会社から離れるのか? 「マイナス感情最小化」のすすめ(全8記事)

社員の「マイナス感情」を減らすべき 産業医が説く、“従業員満足度の高い会社”への最初の一歩

社員の離職・心身の不調・モチベーションの低下・ぶら下がり社員の増加・ハラスメントなどは、多くが個々の社員の「マイナス感情の蓄積」によってもたらされています。なぜ「マイナス感情」が発生し、蓄積していってしまうのか。そのプロセスから具体的な対策までを、株式会社エリクシア代表取締役で産業医の上村紀夫氏が語りました。本パートでは、会場の参加者から寄せられたさまざまな質問に答えました。

プラス感情を高めることの盲点

上村紀夫氏(以下、上村):じゃあ最後です。幸せ追求でマイナス感情が減らせるかという話ですね。パフォーマンスを上げるために幸せになってもらいましょうという話がありましたけど、これには盲点があります。

もともといい会社さんがその施策をとるのはありです。ハッピーな会社さんがよりハッピーになるのはぜんぜんいいことだと思います。

実際にハッピー系の方々の会社さんは大抵ハッピー系です。すみません、なんか表現が悪いかもしれないですけど、わかります? もともとここ(従業員満足度が高いところ)にいらっしゃる会社さんが多いから。

ですが、実際に多くの会社さんは、ほとんどここ(従業員満足度が低い)です。言い過ぎですけれども、幸せなんて想像できない。マイナス感情が大きすぎて重石になっているので、「ハッピー」と言われても正直なところ従業員はしらけます。そういう会社さんが非常に多いのが現状かなと思いますね。

ですので、実際になにを考えるかというと、先ほどの最初の話に戻ります。会社が提供できるレベル、例えば「給与ややりがいを思いっきり上げちゃえ」みたいな感じで、ここで乖離を起こしてプラス感情を起こせば幸せになるでしょう、というのがハッピー系です。

もっと本当はいろいろあるんですけど、これ(ハッピー)にならないんです。それはなぜだと思いますか? なぜプラス感情がハッピーを生み出さないか。

マイナス感情を減らすことが最終的に幸せにつながる

1つめ、多くのプラス効果は一次的です。これはみなさんよく知っていらっしゃるかと思います。給与を上げても、その効果が1ヶ月もったらいいです。金銭的報酬は正直なところ効果が(長く)もちません。

2つめ、いいことは当たり前になりやすいです。ですので、失った時には文句が出ますけれども、なにかがプラスした時には効果が薄い。すると最終的にどうなるか。なにかを足して幸せを追求するのは非常に難しいです。

しかも余計なところにプラスをしちゃうと、ぶら下がり化が起こります。これが怖いところですね。これを理解できずにやってしまう会社さんが多いので、「ぶら下がり化は本当に怖いですよ」ということを今日は持ち帰っていただくと、大変助かります。

幸せ追求をやるとマイナス感情が減るんじゃなくて、実はマイナス感情を減らすと、それが最終的に幸せを追求することになるんです。

実際に多くの会社さんはこんな感じです。マイナス感情を減らしてようやく幸せにたどり着くということで、マイナス感情の最小化が必要になってきています。

マイナス感情をちゃんと見ておかないとだめなので、実際にできていない会社さんを見ると、1つは現状把握できるだけの調査ツールが不足している。サーベイができていない。もしくはサーベイができていても放置している。ちゃんと有効活用ができていない。

2つめは人事戦略そのものを構築するだけの状況がなかなか難しい。しがらみがあったり、人事のパワーがなかったりします。経営者の理解がなかったりします。

そしてもっとまずいのは、会社にはびこる無関心。人の感情への無関心。あとは想像力の欠如。これらが最終的な悪玉の親玉です。

ですので、もし会社さんで組織活性がないな、離職が多いなとなってくると、根本的な話として無関心や想像力の欠如などがはびこっていないかどうかを見る。ここからスタートしていただいて、いろんなものを組み立てていただくのがいいのかなという、概要的なお話になりました。

最も危険なのは、無関心と想像力の欠如

今回ちょっと時間がオーバーしちゃいました、すみません。労働価値のミスマッチがマイナス感情の蓄積を起こすということと、「心身コンディション」「働きやすさ」「働きがい」の3つがありますと。

あとは、このマイナス感情の最小化がハッピーというか、生き生きと働ける組織の実現につながる。最終的に無関心と想像力の欠如が一番危険です。これを、もちろんご自身もそうなんですけど、管理職や経営者の方などはけっこう多いですよね。

(そのような考えを)持っていらっしゃるとなかなか上がりづらいので、このへんをどう変えられるか、いろいろと施策を練っていただけるといいのかなと思います。

(スライドを指して)最後にもう何度も言っていますが、無関心・想像力の欠如はだめです。本当にこれはだめです。無関心と想像力の欠如はぜひ、大敵として思っていただければいいかと思います。

時間がギリギリなんですけど、質疑応答としてなにか聞きたいこととか、これはどうかなというやつはありますか? 

(会場挙手)

はい、お願いします。

質問者1:マイナス感情でマクロとミクロの時に、マクロのほうがより重要だという話があったと思います。今いろいろお話を聞いている中で、まとめて言うとどういうところでマクロのほうが大事になると思いますか? 

上村:そうですね、マクロはわりと労働価値の動き、全体の動きを決めてくるので、ピンポイントでミクロを埋めると、例えば育児をしている人たちを活かしていきましょうということを言っていると、他の方々の労働価値はいじらないわけですね。

そうすると、ミクロの対策になってくると会社としてのインパクトが小さいだけではなくて、施策がすごく近視的になるというか、そういったことが起こるのが1つです。

ただ、一番大きいのは業務に必要な人材を集めるという観点で言うと、ミクロの対応よりもマクロのほうが、あきらかにインパクトが強いです。採用の話・離職の話の両面に効いてくるので、まずはマクロ対策をしてからミクロの策という段階にしていかないと難しいかなという。まあ、順番の話かもしれないですけれどね。

質問者1:わかりました。ありがとうございます。

「サーベイをやれば何か見つかる」という発想は危ない

上村:あとは大丈夫ですか?

(会場挙手)

はい、お願いします。

質問者2:サーベイが大事だと最後におっしゃっていたと思いますけれど……。

上村:サーベイ「も」(笑)。

質問者2:そう、サーベイも大事です。私の会社では産業医面談で、すごく残業しているか、またはストレスチェックでものすごく悪い結果が出た人しかそういう対象にはなっていなくて、1on1で拾えない悩みとかもやっぱり多いんです。それをうまく拾っていく技術はあるんでしょうか。

上村:ありがとうございます。うまく使われる会社さんでは、やっぱり一番いいのはサーベイですよね。

ストレスチェックがサーベイになり得るか。うちは正直なところ、ストレスチェックとサーベイをあえて合わせているんですよ。というのは、ストレスチェックというお上の決めたフレームの中で検査ができることの良さがすごくあるので。その中で、安心して受けてくださいという話でサーベイができている。

サーベイをやっていないとなかなかきついです。数字にならずあくまで想像になってしまうので、サーベイは当然必要になってくる。ここでサーベイの質も重要になってきますが、実際には活かせていない会社さんが多いなと思っています。その原因としては、やっぱり2次分析が足りないからなんですね。

ストレスチェックに関しては、本当に近視的な57項目とかを含めてですけど、「メンタルが痛んでいるよね」「労働時間が長いよね」とか、当たり前のことを当たり前のように言うケースがけっこう多いと思います。そこから学べることがかなり少ないんです。

ですので、会社の中で実際に問題になっていること、例えば働きがいなのか、働きやすさなのか。もっと言うと、もしかしたらぶら下がりの現象なのかもしれないし。

そういったところをターゲットに置いて、それをどうやったら調べられるか。ちゃんとそれをやってからサーベイをやる。「サーベイをやればなにかが見つかる」という発想は危ないです。これがたぶんうまくいっていない会社さんのよくあるケースかなと。御社はたぶん違うので大丈夫だと思うんですけれども。

(会場挙手)

はい。お願いします。

若手の働きがいをキープするのはキャリアサポート

質問者3:先ほど、管理職に対しては研修や教育をするという話がありました。対して、新卒に限ったことで、入ってきた学生に対して精神的サポート以外で、理不尽経験の減少はたぶんもう対処ができないと思うんです。

上村:変えられないですね。

質問者3:そこに精神的サポート以外でできることとはあるんでしょうか? 

上村:入り口のところの選別は別として、そうですね。ある程度全体像を見せるとか、一番効くのはもしかしたらキャリアサポートかもしれないですね。実際に今の仕事と自分の今後のキャリアがどう連動してくるかが見えないと、たぶんやる気が起こりづらい。

やる気が起こらないと、先ほどのピラミッドの「働きがい」から痛んでいって下に下がっていくので。ですので、今のところ若手の働きがいをキープするためにはキャリアサポートがけっこう効きやすそうだと僕は思います。

社会とはどんな感じで、その中でどういうふうにみなさんがキャリアを作っているか、目標とする人がいるのかどうかとか。今日はちょっとお話しできなかったんですけど、離職の話にも連動してきます。実際に会社の中に目標とする人ができるかできないかはすごく重要なんですよ。

それをどうやって会社がちゃんとキープできるか。そしてそれは優秀人材なのか。僕は正直優秀人材ではないと思っています。そこに上がる寸前の方々、我々は「ハイポテンシャル人材」と言っているんですけれども。

そのゾーンのほうが、むしろ重要かなと思うんですね。身近な優秀な方。そういった方々の層を厚く持てるか持てないかが、たぶん会社さんによって大きく変わってくると思います。

そこの部分がもしかしたらキャリアサポートと同時に、効き目のある話かなと。今のところはうちもいろんな施策をやっていく中でそう感じている部分ですね。難しいですよね。

質問者3:最初からセレクションするのも1つかなとは思うんですけれども、さすがに入ってからギリギリ経験をするというのは、今は難しいので。

上村:そうですね、ハラスメントの話とかね。4月、5月になってくるとややこしくなりますからね。

質問者3:ありがとうございました。

上村:こちらこそありがとうございます。では、みなさん今日はありがとうございました。

(会場拍手)

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