2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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南場智子氏(以下、南場):みなさん、こんにちは。(フラー株式会社CEOの)渋谷さんと同郷ということで、頼まれたら断れないという関係で引っ張り出されました。10分、何かしゃべれと言われたんですけど……。
「ヒットアプリを次々と生み出す」と言われていますけれども、先般、当社は大きな減損を発表いたしました。17年間ずっと黒字を続けてきましたが、減損を行った結果、業績的にびっくりするような数字を出しました。
減損の断行により、これまで貯まっていた資産をしっかりと見直して、すっきりしたところです。私たちはちょうど(創業から)20年になりまして、ここからまた気持ちを新たに、おもしろいことに挑戦していこうと思っています。
ヒットアプリを次々と生み出しているとこんな大きな赤字にならないわけであって、成功アプリよりも失敗アプリのほうが多いです。
ただ、当社が1つ誇れることは、どんなときも挑戦をあきらめないということと、もう1つは、やっぱり人材です。人材に関しては内外にいろんな人材を輩出していますので、どうやってそれができているのかを、少しお話しできればなと思っています。
まず1つの要因は、単純にいろんな事業をやっているということがあります。事業の幅はみなさんの想像をはるかに超えるのではないでしょうか。まずアプリ事業。代表で言いますと、やっぱりゲームですね。オリジナルゲームもありますし、ポケモンやマリオ、あるいはファイナルファンタジーなどのIP(Intellectual Property、知的財産権)もののゲームなども共同開発して提供しています。
ゲーム以外のアプリでは、今日お話のある「SHOWROOM」や、伸び盛りの「Pococha」など、ライブ配信分野で活発です。
ヘルスケア事業では大きく5つくらいの事業をやっています。例えば遺伝子検査「MYCODE」。東京大学医科学研究所と(共同で)開発しました。血液を取る必要もなく、わずかな唾液から検査できます。
それから今、国立がん研究センターと共同研究で、血液1滴で14種のがんの早期診断ができるということに挑戦しています。これ以外にも、健康サポートアプリ「kencom」の提供などのヘルスケア事業を展開しています。
オートモーティブ、モビリティの領域では先般、大きなニュースに取り上げられましたけれども、例えばタクシー配車のサービス「MOV(モブ)」を提供しています。
日本という狭い市場に今、4社くらいがひしめき合っている状態で、さすがにこの市場規模で多すぎると判断し、JapanTaxiさんと対等で組んで、当社も筆頭株主となり、手を携えてモビリティに挑戦しようという座組みを発表したばかりであります(注:2020年2月4日に、MOVとJapanTaxiの事業統合の合意が発表された。これにより、JapanTaxi株式会社の共同筆頭株主は日本交通ホールディングス株式会社と株式会社DeNAとなる)。
これをMaaS(Mobility as a Service)のプラットフォームとして、どこまでおもしろいことができるか。旅客輸送事業の雄である日本交通さんと、インターネット・AIの雄であるDeNAが組んだわけです。どうかご期待いただきたいなと思っています。
さらにカーシェアサービスAnyca (エニカ) 。こちらをお使いになっていらっしゃる方も多いと思います。こちらは当時新卒3年目の社員が提案してきて、私が経営会議で3回ほど「知らない人と、愛車をシェアリングなんか絶対しないよ」と言って突き返したんですが、その新卒3年目の粘り勝ちで、「もう好きなようにしろ」と私に言わせてしまいました。こちらは今、SOMPOホールディングスさんとの座組みで提供させていただいています。
そして横浜DeNAベイスターズです。2月1日に沖縄でキャンプイン。私も2回行ってきましたけれども、ブルペンの調子を見るともう、間違いないですね。今年は間違いなく、優勝ですね! 問題は、12球団いろんなところが、全部そう思っているというところ。
(会場笑)
球団の経営だけではなく、球場の経営もさせていただいています。これがまた、おもしろいところです。場の経営、場の運営。(横浜スタジアムがプロ野球の)試合で年間、何日使われると思います? たった70日ですよ? 横浜スタジアムで70日の試合が行われる。あとの280日も私たちは管理して、賑わいを作るという責任を持つ。こんな楽しいことはないということで、野球以外もいろいろ考えています。
もちろん野球のときも、イニングの合間にトイレに行ったり、食べ物を買いに行ったりしますよね。それをもっと快適にできないかとか、私たちの持っているAIやITのスキルを用いて新しいエンタメ、観戦の環境を提供したいと思っています。
そしてさらに、横浜スタジアム周辺地域の盛り上げにも全力で取り組んでいきたいと思っています。例えば、(横浜市関内にある)元関東財務局の歴史的な建物をTHE BAYS(ザ・ベイス)と名前を付けてオフィス、コワーキングスペース、インキュベーションセンター、スポーツバーなどの複合施設として運営しています。
また、横浜市の現市庁舎の移転に伴う再開発に、三井不動産さんらの企業さんと一緒に取り組ませて頂くことになり、このまったく新しい挑戦にもワクワクしているところであります。
このようにいろんな事業をやっています。DeNAはたくさんの人を惹きつけ、いろんな挑戦のネタを提供して、あとはステージに乗せて、「好きなようにがんばれ」と言う。あとはクリエイティビティと説得力を持って(やってもらう)。私がダメと言っても、さっき話したAnycaのように事業が立ち上がったりするわけです。
そういった幅広さが、1つの土壌になっているのかなと思っています。それがゆえに必ずしも統率されて計画経済的にいかない面もあるんですね。すべてプラスではなく、デメリットに働くときもあります。けれども、全体として私たちは意識的に選択をして、やる気のある人材全員が自分のパッションを大事にしながら、思いっきり踊れるステージを用意する。そういう選択をしているということです。
その結果として、DeNA内に素晴らしい人材が育ち、有名な起業家を輩出しています。卒業生のほとんどが市場でクレディビリティーを築くような仕事ぶりを見せてくれていると思います。
また彼らに限らず、DeNAの中にすばらしい人材がたくさんいます。一国一城の主になっている起業家のように知られていないけれど、実力はすごくある人がわんさといる状態。私はこれがDeNAの強さであり、業績でご心配をかける時であっても、ここに立って足が震えない唯一の理由がそこです。
優秀な人材は、外に出ていった人間だけじゃないということです。「こういう人材をどう育てるのか?」という質問をよく受けるんですが、人を育てるという概念自体が違う気がします。人は仕事で勝手に育つということです。
仕事をぶん投げて、無茶ぶりをして、ほうっておくんです。DeNAで長らくCTOをしていた天才エンジニアの川崎修平さんには「こんなことをやりたいな」「こんな事業をやりたいな」「こんなサービスがあったらいいな」とチームで一緒に話し合って、あとは密室に閉じ込め、そして糖分を提供する(笑)。すると、何ヶ月かするとモバゲーなどのすごいサービスが出てくる。
任せ方にもポイントがあります。「この人にこんな仕事やお題を任せたら、できるかできないかはきわどい。フィフティー・フィフティーかな」というレベルの仕事を任せ続けるというのが、DeNAが一番大事にしている考え方です。
そうすると半分の確率で失敗しそうになります。仕事はチームでしていますので、よってたかって助けますが、それでも失敗することがあります。その場合はどうなるかと言うと、仕事に穴が空きます。「そのリスクは取ろう。でも、人が育たないリスクは取りたくないね」という選択をしているのがDeNAです。
ですから、とにかくステージ、そして仕事。目標を共有して、あとは工夫する余地を整えるだけです。
さて、それに加えて最近ファンド事業であるDelight Venturesを始めました。今までDeNAには会社が用意するキャリアパスは大きく2つありました。1つがマネジメントキャリア。もう1つはスペシャリストキャリアです。
(それらに加えて)このたび3つ目のキャリアを新たに作りました。独立起業・スピンアウトです。もちろんこれまでも、社員を閉じ込めておくという考えはありませんので、誰でも自由に独立起業・スピンアウトしていました。
でもこれからは、優秀な社員のお尻を叩いて「起業せぃ」「スピンアウトせぃ」「DeNAから独立せぃ」ということをやっていきます。そのためにDelight Venturesというのを作りました。
この背景にある考え方として、私は会社をザクロに例えています。何かと言うと、閉じた中に入っている宝石のような粒々。これが人材やすばらしい事業です。それを閉じ込めておいてはいけない。「ザクロをひっくり返せ」というのが、私が社内で叫んでいることです。
ザクロをひっくり返すイメージで表面積を増やそうよということです。事業や人をむき出しにして、その中には外に離れていってしまうものもあるかもしれないけれども、それも含めてつながっていって、みんなで拡大していこうよというイメージですね。閉じ込めるのではなく、開放する。
でも最近は、「ザクロはジュース以外で見たことがない」という人が多くて、この例えが社内でもピンと来ない人が多い。なので、夜空に例えてみたんですけれども、すでにDeNAという星からどんどんスピンアウトしていっている人はいるわけです。
今までは個人的には仲良くしているけれども、公式なつながりがなかったんですね。Delight Venturesの役割は、出資することで、公式な応援というかたちでつながりを作っていくことなんです。
そして、なにもDeNAの人だけに限ることはないよねということで、半分以上は、同じような志を持ったDeNA以外の人にも出資していこうという考え方です。
夜空をイメージしたイラストを描いてもらったら大きなDeNAの周りに小さな星が描かれていて、「この絵は非常に不遜である」と思い、直しました。「DeNAよりもうんと大きい星が出てくるということを心から歓迎するような、そういうユニバースを作っていこうじゃないか」というのが我々の考え方です。
「これがDeNAにとって、どういういいことがあるんですか?」と聞かれますが、大丈夫です。まず優秀な人材に出資しているので、その人たちの成功からリターンを得ることになります。それ以上にこうやってつながって助け合っていると、1社ではできない大きな「うねり」を築くことができると思います。
世の中に提供するデライト(幸せ)の総和を拡大し、その重要な部分にDeNAも参加する。私はこういったギャラクシー的なアプローチが、これからの時代に求められているのではないかなと感じています。
起業で大成功する人もいれば、そうでもない人もいるでしょう。でも、そうでもない人も、実はめちゃくちゃ成長しているわけです。成功しても失敗してもまたDeNAに戻ってきて、社長候補とか幹部候補をやってくれる人も出てくるでしょう。
お互い公式に助け合っていれば、そんなつながりにもなるんじゃないのかな。それを5年・10年かけて証明して、DeNAがこういったアプローチで成功することによって、日本の大企業も真似をしたら日本が変わるんじゃないかな。そんなふうに思っています。
資料には「Japan Problem」と書きました。私は日本の人材はすばらしいと思うんですが、企業に関して大きく2つの問題があると思います。まず、優秀な人材がまだ大企業に吸い込まれていって、そして終身雇用を前提として仕事をしている。人材の流動性が欠如しています。
人は1ヶ所で、同じ環境で、本当にずっと張り切り続けることができるのか。だんだんその会社でしか通用しない人材になって行くのではないか。ザクロをひっくり返せないがために生産性が落ちている部分が必ずあると思います。それがJapan Problemの1つ。
もう1つはスタートアップの層が薄いことです。DeNAの新卒採用は数万人の中から50人~100人を採用し、その後無茶ぶりで成長させていきます。
そういった人間をどんどん外に出すことによって、本格派のスタートアップを世の中に出していく。この2点の問題に対し、DeNAの取り組みが解決の糸口になることを狙っています。
というところで、そろそろいいのかな? では、本日はよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
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