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小売・流通業界のミライ(全4記事)

中川政七商店が取り組む「ビジョン経営」、その事業構造とは? 取締役・荻野氏が解説

2019年8月5日、株式会社マクアケが「Makuake MEET UP DAY 2019」を開催しました。スタートから6周年を迎えたクラウドファウンディングサービス「Makuake」を運営する同社。本イベントでは、プロジェクト実行者、メディア関係者、流通関係者、金融機関・自治体をはじめとしたパートナー向けに、「アタラシイ未来」をテーマにしたカンファレンスや懇親パーティーなどが行われました。「小売・流通業界のミライ」と題したカンファレンスには、国内外最前線で活躍する企業が登壇。各人が見据える小売業界の課題・未来に関するディスカッションの模様をお届けします。本記事では、中川政七商店が取り組むビジョン経営や主軸事業の取り組みについて紹介します。

「After Makuake」の未来を考える

坊垣佳奈氏(以下、坊垣):みなさん、お待たせいたしました。第2部のセッションを始めてまいりたいと思います。テーマは「小売・流通業界のミライ」ということで、かなりざっくりしております(笑)

「After Makuake」と呼んでいるんですけれども、ここ最近、Makuakeでプロジェクトを実施いただいたあとに、流通業界のみなさんと連携して、その後のサポートををやらせていただいております。

そのような取り組みをご一緒させていただいているみなさんの中から、今日はお三方にお越しいただきました。さっそく始めてまいりたいと思います。今日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

お三方に自己紹介をいただく前に、私の自己紹介を簡単にさせていただきます。株式会社マクアケの共同創業者でありながら、取締役を務めさせていただいております。坊垣佳奈と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

熱気に溢れて第一部のセッションをやりすぎまして。若干声が枯れていることに今気づきました。聞こえていますね、すみません(笑)。

私は実は、サイバーエージェントという会社に12~13年前に入社をしておりまして。サイバーエージェントでは、子会社の創業とか、100~200人規模の会社の、本当にスタート段階の企業経営とか、そういったところを複数社やらせていただきました。マクアケは4社目です。これはサイバーエージェントの中でもかなり特殊な経歴です。

そのような経験を持ちまして、起業家さんを含めた新しいチャレンジをしている方の支援を本気でさせていただいているというのが、マクアケの事業です。先ほどのセッションでもお話しさせていただいたんですけれども、おかげさまでMakuakeの認知度も非常に広がってきていまして。

広がるべきものが広がっていくためのサポートをするMakuake

坊垣:実は私が担当している領域が、全国のプロジェクトのサポートなんです。Makuakeは月に1,000件ほどお問い合わせがありまして、それらをプロジェクトにしてくようなコンサルティングとかをさせていただいているんですね。

そのようなコンサルティングから、実際にコンサルティングしたあとにプロジェクトになったものを、プロモーションさせていただくようなお手伝いをして。広報・PRチームの部分や、まさに今日のセッションのテーマですけれども、流通さんと連携をして、そのあとの販売、流通さんでの取り扱いにつなげていくようなサポートなどを、一気通貫して見させていただいております。

まさに全国のプロジェクトのサポートをしているので、全国津々浦々にうかがうんですけれど、「Makuake知ってるよ」「Makuake使ったことあるよ」という方がかなり増えていまして。本当にみなさんのおかげだなと思っています。

今後、よりサポートの領域を広げていくことを考えたとき、Makuakeというプラットフォームは本当に、中心にある1ツールでしかないなと思っていまして。実際にはMakuakeを使ったあとに、Makuakeで生まれたものたちや生まれたプロジェクトが、より世の中に羽ばたいていく。

ビジョンでも、代表がご紹介しましたが「広がるべきものが広がっていく」というところを、より強くサポートしていきたいなと思っておりまして。ここにいらっしゃるみなさんを含めた流通業界のみなさんと、実は強くタッグを組んでいるような状況になっています。今日はそのあたりのお話を詳しくしていきたいと思っております。

リンクアンドモチベーション、ボストンコンサルティングを経て、中川政七商店に入社

坊垣:では荻野さんから、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

荻野祐氏(以下、荻野):みなさん初めまして、中川政七商店の荻野と申します。鼻声で大変失礼します。娘が大好きすぎて、風邪気味の娘を抱きしめながら寝たら、思いっきりうつされてしまいまして(笑)。ちょっと聞き苦しいかと思うんですが、ご容赦ください。よろしくお願いいたします。

まず簡単に私の自己紹介からなんですけれども、私はもともとリンクアンドモチベーションという会社と、ボストンコンサルティンググループというコンサルティング会社の2社でマネージャーをしておりまして。そこから中川政七商店に入社をしております。

もともとリンクアンドモチベーションという会社で組織・人事のコンサルティングをしていたんですけれども、そのときに中川政七商店の担当を、今から12年ぐらい前にしておりまして。

そのとき以来、一緒に組織づくりをサポートしたり、ちょっと離れたところから時々合流したりということをしていたんですけれども、縁があって今は中川政七商店の経営企画で働いております。

経営企画ですので、当然会社の経営全般を見ているんですけれども、もしかしたらご存じの方もいらっしゃるかもしれないんですが、中川政七商店はビジョンを軸に据えた「ビジョン経営」ということに取り組んでいます。

いわゆるお題目じゃなく、それを事業としてどう成立させながら成長していくかというところの仕組みや、組織をどう作っていくか。そのあたりを主なミッションとしてやっております。次は会社の紹介でしょうか。

大きな2軸となる「工芸SPA事業」と「産地支援事業」

坊垣:ちなみに「流通業界のみなさんにお集まりいただいた」と申し上げたんですが、ちょっと異色ですね?

荻野:そうですね。流通業なんですけれども、次の会社紹介でも出てくるんですが、もともと中川政七商店という会社自体が1716年の創業で。当時「奈良晒」という麻の生地の卸売りからスタートをしてやってきております。そこからもう300年間ぐらい、なんやかんやありながら生き長らえてきて(笑)。

もしかしたら、最近いろんなところでご覧いただいていらっしゃる方もいるかもしれませんが、直営の店舗を出しだしたのはこの十数年くらいです。どちらかというと、もともとは完全にメーカーの会社でございます。

ちょっとだけ違った切り口で会社の紹介をさせていただいているんですが、ビジョンとして「日本の工芸を元気にする!」と掲げております。ここに向けて、すべての事業を行っている会社でございます。

(スライドを指して)みなさまから向かって大きく左側に「工芸SPA事業」と書いておりまして、右が「産地支援事業」とあります。屋号としては「中川政七商店」という社名そのままの屋号が多いんですけれども、左の工芸SPA事業が製造小売りですね。いろんな百貨店さん、SC(ショッピングセンター)さんに出させていただいているような事業です。

ここはセレクトショップという印象を持たれがちなんですけれども、実はセレクトショップではございません。ファブレスではあるんですが、全国で800社ぐらい、800の作り手のみなさまと、商品の企画と製造という商品開発を一緒にさせていただいて。

それを店頭に並べて販売しているということで、SPAと呼ばせていただいています。これが事業の主としての工芸SPAですね。こちらはどちらかというと、一緒にモノづくりをするというプロセスを通じて、日本全国の手仕事、あるいはモノづくりのメーカーさんを支援しているという営みです。

もう1つの産地支援というのは、ちょっと違った切り口です。コンサルティングや経営支援のようなかたちで、日本の工芸メーカーを元気にできないか、という意味合いで行っている事業でして。

産地やその中のメーカーさんに対するコンサルティング、あるいは販路の支援、採用のサポートなど、いわゆる経営全般のサポートをさせていただいて、少しでも産地やメーカーさんと我々の会社が一緒に手を取り合って発展していけるような世界を作っていきたいなと思っています。

そのために目指しているところが、「日本の工芸を元気にする!」です。そんなことをビジョンとして標榜しながらやっている会社でございます。

中川政七商店が直営事業に踏み出した理由

坊垣:ありがとうございます。ちょっと差し込んでいいですか?

荻野:はい。

坊垣:今のお話を聞くと、基本的にはモノづくりから始まっていて、実際に商品をメーカーさんと一緒に作っていくところがメインなのかなと思いまして。そこからさらに小売までやられている理由はなんでしょうか?

荻野:小売というのは、直営店?

坊垣:そうです。

荻野:なるほど。もともと直営店を始めたのは、自分達の足で立って事業をしていきたいという想いですね。もともとは、卸を中心にやってきていたんですよ。

ただ、極端に言うと、卸だと問屋さんやその先の販路さんが傾くと、そのまま自分たちではどうしようもない状態まで傾いてしまうことがあって。それに、卸だけでは直接消費者の方と触れて、その声を聞くことができないんです。

なので、どうしても作り手と距離が離れてしまう、自分たちで対応できないという、わりとアンコントローラブルな状況に置かれてしまうことが多いんじゃないかという想いがございます。

そこを打破するには、非常に難易度は高いものの、直営事業に踏み出していかないと難しいんじゃないかなと。そういう想いで小売に進出をしたんですね。

坊垣:ちょっと難易度が高そうだなと思っていまして。私たちは今、このお二方の力を借りてお店を持てているような状況で、やっぱり直営店はすごくハードルが高い感じがするんですが、最初はけっこうご苦労されましたか?

荻野:私自身は入社前でしたが、そう聞いています(笑)。このお二方の前で小売を語るのは、釈迦に説法にもほどがあると思うんですけれども(笑)、やっぱり店舗数が一定以上広がらないと直営の事業は黒字化もしづらいし、効果も出づらいです。踏み切るという意思決定をする以上は、一定の規模感は求めていかないといけないんです。

当然そこに踏み出していくとき、我々の会社は規模が大きいわけでもないので、直営事業がコケるとまぁ潰れるよね、というところであるという意味で大きな意思決定だったと思います。じりじりと自分たちの位置を失って倒れていくか、リスクはあるけれど、勇気を持って踏み出していくか、というところで後者を選んで一気に振ったかたちかなと思います。

Makuake×中川政七商店の取り組み

坊垣:ありがとうございます。では次に、Makuakeとの取り組み。実はまだまだこれからというところなんですが、軽くご紹介いただいてもよろしいですか。

荻野:はい。前に書かせていただいているのは、先ほど申し上げた産地支援と販路の支援をする1つとして、工芸に特化した「大日本市」という展示会を年2回開催しています。そこにMakuakeさんとしてブースをご出展していただいています。(※2019年9月開催時)

そもそもMakuakeさんとのお話でいくと、どちらかというと我々の産地支援は、今までの会社の特徴もあって「作るべきものを作っていく」という、経営・ブランディング・商品開発と、それをどう会社・産地として残していくかのところは、非常にがんばってやってきているんです。

でも、世の中にそれをどう認識してもらうか、どう伝えていけばいいのかのところは、まだまだ力不足なところがあって。Makuakeさんはその「広げる」というところが非常に強いですね。

一般の消費者の方ともパイプのつながりを持っていらっしゃるので、そこを掛け合わせることで、もっといろんな意味のある取り組みができるんじゃないかなと。そういった話をしていまして、その中の取り組みの一歩として、この展示会をやらせていただいているところです。

坊垣:ありがとうございます。かなりビジョンが近いなというか、シンクロ感を感じています。

荻野:そうですね。

坊垣:これからいろいろと一緒にできたらなと思っております。

荻野:お願いします。

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