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佐宗さん×篠田さん×中竹さん「これからの個人のあり方を考える」(全6記事)

体育会系には「わからない」と言えないシステムがある 中竹竜二氏が語る、組織を変える方法論

2019年9月14日、日本初のティールカンファレンスとして、ティール探求者が一堂に会する大規模カンファレンス「Teal Journey Campus」が開催されました。「これからの組織のあり方」を示して注目を集めた『ティール組織』発売から1年余り。「どんな形やあり方が、自分の組織に合っているだろう?」「だれもが本当に自分らしくあれる職場は、どうすれば実現できるだろう?」 。さまざまな問いに対して、学びを共有してインスピレーションを与え合い、仲間を見つけ、つながることで「次の一歩」を見い出すことを目指すイベントとなりました。本パートでは、「個人のあり方を考える」と題して、篠田真貴子氏、佐宗邦威氏、中竹竜二氏が登壇。小学生のころから「先生を教える人」になりたいと思っていた、中竹氏のエピソードを振り返りました。

篠田真貴子氏、佐宗邦威氏、中竹竜二氏が登壇

司会者:では、登壇者の方をお迎えします。みなさんは、お話を聞きたいからこの場にいらっしゃっているんじゃないかなと思うので、(登壇者の)お名前をみんなで呼びたいなと思います。

「篠田さーん、佐宗さーん、中竹さーん」とみんなに言っていただいて、登壇者の方が出てくるかたちにしたいなと思います。「せーの!」と私が言ったら、ぜひみなさんで「篠田さーん、佐宗さーん、中竹さーん」とお願いします。自分が一番聞きたい人がいたら、その人オンリーでもいいですけれども、ぜひわーっとみなさんの声で登壇していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

では、いきます。どうでしょう。声を出す準備は大丈夫そうですか。では、登壇者の人に来てもらいます。では、よろしくお願いします。せーの!

会場:篠田さーん、佐宗さーん、中竹さーん。

司会者:では、おまかせいたします。

篠田真貴子氏(以下、篠田):任されちゃった(笑)。とりあえず名乗りますか。あらためまして、篠田真貴子です。よろしくお願いします。たぶんご案内のパンフにあったとおり、充電中という身分でして、預金残高は着々と減っておるのですが、心は着々と豊かになっているという状況でございます。よろしくお願いします。

(会場拍手)

佐宗邦威氏(以下、佐宗):みなさん、こんにちは。佐宗邦威と申します。今はBIOTOPEという会社の代表をやっております。

ティール組織。ちょうど2年半前に、ギリシャに(嘉村)賢州君たちと行きました。ギリシャのカンファレンスって、8日間ぐらい時間があって、暇な時間がけっこう多かったので、空き時間にいろいろ構想をスケッチしていた本が、今年の3月に出ました。そこからもう時間が経ったなと思いつつ、感慨深い気持ちでおります。

篠田さんも中竹さんも、お仕事でも関係があったお2人でもありますので、今日はすごく楽しみにしております。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

中竹竜二氏(以下、中竹):中竹です。よろしくお願いします。たぶんパンフレットではチームボックスという会社の代表になっていると思いますが、バックグラウンドと世の中的には、“ラグビーの人”というかたちで出ています。私自身もプレーはやってたのですが、今はコーチを教えるという仕事をラグビー協会の中で行っています。

もともとは、私自身が早稲田という母校の監督をやってた時に、まったくもってコーチ経験がなく監督になっちゃったんですね。何を重視したかというと、監督が一切教えないと。ほとんど選手に考えてやってもらうという手法で勝たせました。おそらく日本ではじめて、フォロワーシップというものを活字にして書籍で出しました。そういう意味では、昨日もラルーさんが言ってたように、ちょっとティールに近いかたちでチームづくりをずっとやってきました。

専門はフォロワーシップやリーダーシップマネジメントで、ここ最近はチームカルチャーですね。いわゆる総合的な社会の文化というよりは、それぞれの組織に宿るカルチャーを専門に、先日はFCバルセロナのような勝利の文化を持っているところの研究だったり、実際にそれをどう企業の中に導入するかということを仕事でやっています。そんな感じですかね。

(会場拍手)

三者三様の「個人のあり方」の切り口

篠田:モデレーターもなくて、ノー打ち合わせでここにいまして、どこからいきましょうかね。これからの個人のあり方で、さっき楽屋でうっすらしゃべっていたのは、そもそも「個人のあり方」と言われたときにどの切り口からいくんじゃ、という話をしてたんですよね。佐宗さんは……。

佐宗:僕自身はソニーだったりP&Gという大企業で働いていました。とくにソニーにいた時期には、自分が新しくやりたいなと思ったことをなかなか会社では理解されない。理解されないなかで、自分がやっていることはナイーブなんじゃないか、ということをけっこう悩みながらやっていた時期があります。

そういう時期に、自分自身の考えをそのままやってみたものを会社にフィードバックすると、あまり自分のことを「理解してくれ、理解してくれ」と言わなくても、それなりに理解される。自分の中でも満たされているし、うまく距離を保てると経験したことがあるんです。

今、僕自身は会社を起業しているので、そういう意味で自分自身の個人という意味だと、また別の切り口があります。今回、ティールの議論の中でも、かなりヒエラルキー型組織の中における個人というようなテーマもありました。そういう中で自分自身を出す、キャンバスを作っていくリーダーシップがあるんじゃないか、ということをテーマとしては思いました。

篠田:中竹さんは、さっきの「ホールネス(全体性)」はやっぱりいいキーワードだなと。

中竹:そうですね。ホールネスとか、最近出ているオーセンティック(本物・信頼できるさま)ですかね。自分らしくあるようなところが、ざっくりとしたテーマで投げかけられて思い浮かんだ。3人とも「今日のテーマなんだっけ?」ぐらいな感じから、さっき「あ、そういえば個人だっけ?」みたいな感じでした。

篠田:(笑)。

先生を変えられる仕組みがあれば、もっといい学校になる

中竹:昨日のラルーさんの話でもあったように、やっぱり人間って外的システムによってかなり影響を受けるんですよね。僕もそれをずっと感じています。僕は小学校のときに、先生にはなりたくないけど、先生を教える人にはなりたいなと思ったんですね。

篠田:小学校のときからですか !? 

中竹:はい。

篠田:それ、もうちょっと聞いていいですか。どういう小学生ですか(笑)。

中竹:人ってシステムによって変わるんだといったときに、そのシステムを教室の中で作るのは、だいたい先生なんですよ。その組織のカルチャー。そのときにハードはなかなか変えられないにしろ、ソフトを変えるときは、僕が1人の先生になるより、この人を変えると変わるんじゃないかというのはずっと思っていました。

篠田:へえ。

中竹:そういう仕事は校長かなと思ったんですけど、校長は面倒くさいなと思ったら、スポーツの中では僕みたいな、いわゆるコーチのデベロッパーというのがあった。僕自身、今の仕事でももちろん教師を教える仕事もやっています。僕が小学校の頃にはなかった職業が、今は出てきている。

篠田:ある意味、ご自分で作っちゃったと思う(笑)。

中竹:まあ、そうですね。どちらかというとフラストレーションですね。たぶん佐宗さんも感じたような、たぶん先生も学校という大きな仕組みの中にいるんだけど、この先生を変えられるもっと大きな仕組みがあれば、もっといい学校になるのになとは思っていました。

佐宗:ちなみに、それの質問を先にお聞きしてもいいですか?

中竹:はい。

体育会系に存在する、「わからない」と言えないシステム

佐宗:今、学校時代の話がありました。そのあとスポーツの世界にいらっしゃったじゃないですか。スポーツって、ものすごく強いヒエラルキーがある傾向が強い分野だと思うんです。

中竹:そうですね。

佐宗:まさに、いろんなチームなどを見ていくなかで、弊害というか、それに対しての思いが出てきたきっかけってあったんですか?

中竹:僕はずっと体育会系が大嫌いだったんですよね。

佐宗:大嫌いな……。

中竹:ずっといますけどね(笑)。

佐宗:体育会系にいらした。

中竹:超体育会系のド真ん中にいます。

佐宗:ですよね。

篠田:早稲田のラグビー部の主将だったのに(笑)。

中竹:僕自身はずっと小学校からラグビーをやっていたので、ほとんど「わかったか!」「はい!」みたいなね。あれは質問じゃないですからね。

(会場笑)

コーチは質問が大好きなんですよ。「お前らわかったか!」って質問している感じですけど、ほぼ質問じゃないですからね。そういう世界にいて、「わかりません」と言えないような雰囲気でした。こういうシステムなんです。

篠田:イエスかイエスしかないんですね。

中竹:まさに僕はそれがシステムだと思ってます。「わからない」と言いたいのに言っちゃいけないシステムがあって、コーチを変えないと変わらないなというのはずっとありました。

篠田:でも、私みたいな凡人だと、そのシステムにしばらくいるうちに、「わかんないと言いたいのにな」という気持ちすらわかんなくなっちゃうというか、埋没してしまうんだと思うんです。

中竹:それが当たり前になっていく。

篠田:そうそう。でも、それが中竹さんはそうではなかった。

中竹:いや、心の中では客観的に「この人も別にそんな偉そうにしたくなくても、コーチとか先生は偉そうにしないといけないジレンマの中でもがいているんだな」というちょっとした同情心も、小学生ぐらいからありました。

篠田:(笑)。

佐宗:とんでもない小学生ですね(笑)。

中竹:先生に反抗してとかはあんまりなかった。

篠田:むしろかなり引いてたと。

中竹:「この人も家庭があって大変だろうな」と思いながら。

マイノリティだったことで身に付いた“想像力”

篠田:(笑)。私はそういう大人びた客観性はぜんぜんなかったんですけど、たまたま子どもの頃に海外に住んで途中から日本に来たりであるとか、大学生から社会人になるときも、ちょうど法律が変わって「それまでは男性しかできなかった仕事が、女性でもできるようになります」となって、「おもしろそうだからそっちにいこう」ということがあって。いくつかの経験において、結果的にマイノリティの立場だったんですよね。

そうすると、みんなと同じ選択肢や同じバックグラウンドであれば、絶対受けない質問を受け続けるわけなんです。だから、子どもの頃であれば、それこそ「なんでそんな靴を履いてるの?」ということから聞かれる。

中竹:一つひとつ。

篠田:例えば就職活動のときに受けた銀行の面接で「あなたが総合職を受けることについて、お父さんはなんと言っていますか?」とか、「普通、聞かないでしょ」ということを問われ続けるんです。

「なんで私はこっちがいいと言ってるんだっけな?」ということを言語化する機会に恵まれた結果、「自分が世の中で前提とされているのと、どうも違う選択肢とか違う行動をしているらしいぞ」ということを、常にフィードバックとして受け続けている感じがありました。

でも、それが私だから、そうすると「人によって前提が違うんだな」と思いながらずっと来たような感覚はあります。そっちを通して、中竹さんは小学生だったかもしれないですけど、私は社会人ぐらいになってから、それこそ「部長とか大変だな」とか「ああせい、こうせい、と言ってるけど、わからないで言ってる可能性があるな」と想像できるようになった。ちょっとそういうところはあったかもしれないです。

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