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SESSION 3 Company ほんとうに欲しい会社はなにか?(全3記事)

AI時代は個人の働き方がカギになる ソニー最年少課長とGoodMorning代表が語る“良い会社”の条件

2019年9月15日に開催された「trialog summit 2019 Alt.Rules」は、時代に合わないルールをただアップデートするのではなく、これからの時代に目指したい社会・生き方について考えるイベントです。「情報・見た目・会社・アイデンティティ」の4つのキーワードをテーマにトークセッションが行われました。
本パートでは、ソニー株式会社「wena wrist」統括課長の對馬氏・GoodMorning代表の酒向氏が登壇。大企業・ベンチャーそれぞれの立場から、これからの時代にあるべき会社の姿について議論が交わされました。本記事では、良い会社の条件や、AI技術等の発展を前提とした働き方についてお届けします。

これからの「会社の在り方」を考える3つのポイント

篠田:ありがとうございます。お時間的にあれなので、一旦ここまで私がまとめて、そのあと、ご質問を受けたいなと思います。

これまで「欲しい会社、在りたい会社って何?」というテーマに対して、お二人から出していただいた“会社の良さ”とは何かというと、何かを成すためのいろんな意味での経営資源がちゃんと整っているということ。

個人にとって、それらをうまく引き出せる状況になっているのがたぶんいい会社で。自分から見た時に、その経営資源がブロックされていたり、それを手に入れるのに、ものすごく煩雑な手続きを経ないといけないのは、たぶん良くない。できればそこがスムーズに手に入るのが良い会社、というのがまず1つ。

もう1つが、個人のいろんなライフステージとの関係において、ライフステージが変動していくんだということを前提に動いている会社。これもすごく“欲しい会社(の在り方)だ”というお話がありました。

最後、ソーシャルのところに関しては、ややギミックというか理屈をこねてまで無理して「いいことをやっています」と言うんじゃなくて、もちろんマイナスはすっと直すけれども、無理にプラスにするというその作業そのものが、社会にとって良いことをしている限りお客さんがいるわけだから、それでいいんじゃないのと。

そこをしっかりやる会社がいい会社だな、という感じでお話をうかがいました。今までの議論があって、でもやっぱり会社はちょっとバッドな感じがする、というご意見もあったので、私の「構造の仮説」をお話しして締めようと思います。

内部だけでなく“外部の経営資源”もうまく使えるかがカギ

篠田:私が20代だったかつての時代と今を比較した時に、何が一番違うかと言うと、かつての時代って経営資源は会社にしか溜まっていなかったんです。私が大学生になった頃は、まだ会社にパソコンは無い時代。ましてインターネットなんて無いんですよ。そこを想像してもらうと、会社に必要な生産機械だけじゃなくて情報、いわゆる知識産業もすべて道具は会社にしかないので、個人の力が弱かったんです。

そうなると(働く人は)会社の仕組みに従わなきゃいけないし、それこそ会社の言うことを聞かないと路頭に迷うわけです。それが今は学生さんとか、高校生だって手に入るようなコンピューターやインターネット、それからクラウドがあって、かなり個人にパワーが集まっているんですよね。

その変化をちゃんと踏まえて動いている会社が、さっき言ったような「良い会社」の条件に近くて。その調整がまだ遅れて、古い時代のくせが残っちゃっている会社が、今を生きる私たちからすると違和感があったり、場合によってはすごく嫌だなと思うという。そういう構造なのかなということを、お話をうかがいながら思いました。

對馬:ちょっとだけいいですか。

篠田:はい、どうぞ(笑)。

對馬:「経営資源を引っぱれる会社が良い会社だ」とあったと思うんですけど、何かソニーで新しい事業をすると言うと、「ソニーの工場で、ソニーの技術を使って、ソニーの物流拠点・販売拠点・カスタマーサポート拠点を全部使ってやったらいいじゃん」と思うじゃないですか。それはもう、全部嘘です。

そういう拠点って100万台とかを作る前提での拠点になっているので、そうすると適切な時もあれば、そうじゃない時もある。なので、そうじゃない時に別の選択肢を取れますか、ということはすごく大事なんですよね。そうじゃないと、どうしても小さい事業から始めることになるので、適切なところと付き合っていくべきなんですよね。

その時に、さっきおっしゃっていた「個人の力が強くなっていて、今はいろんな選択肢が出ていますよね」ということはすごく共感するところになります。クラウドファンディングもその中の1つだと思います。

篠田:ということは、良い会社のもう1つの条件として、外にある資源にも柔軟にアクセスしているという状態が、すごく大事ということですね。

對馬:そうです。すごく大事です。

0→1の事業は、ニーズ調査をしても意味が無い

篠田:ありがとうございました。じゃあ、ここで会場のみなさんからお二人に、ぜひ質問をしていただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。あ、もうさっそく手が挙がってる。前の方からお願いします。

質問者1:貴重なお話、ありがとうございました。

對馬さんに、技術者として大企業の技術者のニーズ調査についてお聞きしたいです。学生レベルでなにかやろうと思うと、どうしても技術先行では失敗してしまい、狭い範囲のお金持ちの方にウケるようなビジネスがうまくいくと、よく言われるんです。

大企業だとまた違うのかなと思いますし、実際に「wena wrist(ソニーのハイブリッド型スマートウォッチ)」さんは今どれぐらいニーズに応えることに重きを置いているのか。また、どういう調査をして、どうピックアップしているのか、というのを教えていただきたいたいです。

對馬:そうですね。まず一番初めに質問するって、すごくいいことだと思います。

(会場笑)

絶対に覚えているので。僕もよく座って一番初めに質問してました。

それで、回答なんですけど(笑)。0から1の事業を作る時は、ニーズ検証はあんまり役に立たないと思います。だって普通に調査して出てくるものだったら、みんな気付いているものじゃないですか。それって、みんなが気付いてるものを解決したって、別にどこでも誰でも考えていることじゃないですか。

そうじゃなくて、新しい事業とかアイデアというのは、もっと個人の深い課題にあると思うんですよね。サーフィンをやっている人が、サーフィンをやってる自分を撮りたくて、「GoPro」を作ったみたいな。でも普通の常人からすると、サーフィンをやっている自分を撮りたいとか思わないじゃないですか。そんなこと、わかんないじゃないですか(笑)。

でも、それはやっぱり、その人がサーフィンをやっているから気付けたというだけで、タネというか、誰も気づかないものというのは、そういうすごく深いところにあると思うので。なんか自分の好きなものとか、テンションの上がることとか、そういったものをすごく大事にしたほうがいいんじゃないかなと思います。

そのあと2号機、3号機と作っていくのであれば、もちろん今のお客さんを大切にしながらやっていかなきゃいけないので、ニーズ調査とかはすごく効果が出ると思います。大丈夫ですかね?

質問者1:ありがとうございます。あ、もう一点いいですか。例えば今wenaさん……。

篠田:他の方も……懇親会でぜひ。

對馬:はい、懇親会でぜひ。

便利になるにつれて、人はどんどん生産力を奪われている

篠田:ぜひお願いします。他にご質問ある方いらっしゃいますかね。

質問者2:貴重なお話、ありがとうございます。根本的な質問で申し訳ないのですけども、最近AIとかの発達で、いろんな労働がどんどん人間の手を必要としなくなっているじゃないですか。とくに事務作業とか。いわゆる創造的でない仕事をすべて機械に置き換えた場合、やっぱり人間の労働ってなくなるのかなと思って。

僕、ちょっと考えているのが、古代ギリシャでは、いわゆる労働は全部奴隷が担っていて。自由市民はいろいろ試作をしたり、政治についての議論をしたり、あるいは哲学の議論をしたりとか。そういう時代が、またAIの登場でもう一度来るのかなと、ぼんやりずっと思っていたんです。それについてどう思われますでしょうか?

酒向:めっちゃ難しい(笑)。

篠田:いやいや(笑)。お二人からどうぞ。なければ、私なりのうっすらした見解を述べますけど。どうぞ。

酒向:私は仕事がなくなるかどうかとか、AIがどれくらい発達するかとかは知らない。だから、わかんないんですけど。私は私のやりたいことでお金を稼いで、食べていける方法を探していこうと、個人的に思っているというのが1つと。

あと、ガンジーが「便利になっていくことによって、人は生産する力をどんどん奪われている」みたいなことを言っていたのが、私はけっこう好きで。

AIとか最近の技術だけにはもちろん限定されずに、便利になっていくことによって、余暇を楽しんだり、物を作ったりする時間を本来は得られたはずなのに。生産的に自分が動いていく時間がせっかくできたのに。「なんでそういうことに使わずに、また仕事しちゃったりしてるんだろう」みたいなことは思っていて。

私は便利になったらのんびりしたり、物を作ったりしていきたいなと思っているので、その脅威をあんまり面と向かって感じたことがなくて。なんでそう思うのかを聞いてみたい。

技術の進歩によって、想像もつかない職業が生まれてくるはず

對馬:はい。そうですよね。技術の進歩、AIの進歩もそうですけど、例えば新幹線ができて、東京・大阪間を2時間半で行けますと。それが本当に幸せなことかって、わからないですよね。昔は1週間とか2ヶ月かけて、歩いて行ってたんですよね。「前と違う宿に泊まったりして、超楽しくないですか」と思ってました(笑)。

今はパッとすぐ移動できて、新幹線の中でもwi-fiが通ってすぐに仕事できます、みたいなのがいいかどうかわかんないです(笑)。

酒向:わかんないですよね(笑)。

對馬:はい。ただ、なんか一生のうちに成し遂げられることが多くはなっているんじゃないですかね。わかんないですけど。

篠田:すごくぼんやりした答えかもしれないですけど、現在ある仕事が機械に取って代わられるというのは、これ確実にもう起きています。私がこれまで仕事をしてきた、例えば事業会社の会計の分野なんかはわかりやすくRPA、ロボットで経理処理をする仕組みというのが、かなり一般化しつつあると思うんですよね。

私が社会人になった頃は、経理のベテランの方はみなさん、そろばんで仕事をなさっていましたので。パソコン以前の経理業務からするとすごいんですよ。パソコンやExcelが入っただけでも革命的だったので。経理部門って当時から比べたら、ものすごく人数は減ってるんです。

そういう分野もありますが、さっき萌実さんがおっしゃったみたいに、意味があるかどうかはさておき、人ってやっぱり時間を埋めたくて動いちゃう。余暇ってけっこう難しいんですよ。暇な自分を楽しませるって、知性・体力が必要で。仕事のほうが楽なんですよね。

なので、同時に私は、今思いもつかないような職業が、しかもその技術(AIなど)があるからできるお仕事というものが、私たちの現在の想像を超えた範囲できっと生まれるんじゃないかなと思う。それはもう人間の性だから、と思っております。

お時間もあれなので、ご質問はここまでになってしまいます。お二人は懇親会には出られますか? もし何かあったら、ぜひ話しかけてください。では、このセッションはここまでとします。ありがとうございました。お二人に拍手をどうぞ。

(会場拍手)

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