CLOSE

トークセッション(全7記事)

クリエイティブなチームを見分ける「たったひとつの質問」とは 伊藤羊一氏が説く、変化の時代のマネジメント論

2019年9月8日、Yahoo!アカデミアの学長を務める伊藤羊一氏の新著『0秒で動け』の出版記念トークショーが、Yahoo!JAPAN内のコワーキングスペース「LODGE」で開催されました。このイベントには、IT批評家の尾原和啓氏がゲストとして登壇。「左脳と右脳をどう動かすか、自分の軸をどうつくるか」というテーマのもと、すぐに行動に起こすための頭の鍛え方を両名が指南しました。このパートでは、行動した後に気づきを得るというサイクルの重要性や、変化の時代のマネジメント論などを語ります。

一番大事なのは、失敗のデフレ

尾原和啓氏(以下、尾原):ここはすごく大事です。結局、変化の時代の成功方程式と、今までの安定成長の時代の成功方程式の違いだと思うんですよね、

伊藤羊一氏(以下、伊藤):なるほど。

尾原:単純に言えば『キングダム』に出てくる人たちって、安定成長のときに出てこられたらみんな迷惑な人じゃないですか。

(会場笑)

伊藤:そりゃそうだ。

尾原:なんだけど、変化の時代って結局なにか新しいことを起こさなきゃいけないから、異端児であるほうが得な時代なんですよね。とくに日本では異端児になる人が少ないから、異端児の希少性が高いんですよ。

伊藤:はい。

尾原:だから異端児になるだけで、いろんなご縁がまわってくるし。失敗したとても、異端児であることの失敗のリスクが減っている。例えばみんな学生ベンチャーとかをやって失敗したとするじゃないですか。

でも仮に、その人が2億円を調達して華々しく失敗しましたと。でもその2億円を使って海外4ヶ国に展開したという経験があったから、大企業としてほしくないですか?

伊藤:そうですね。

尾原:だから今一番大事なことは、やっぱり失敗のデフレなんですよ。むしろ日本という社会の中では……単純に言ってしまうと、アメリカに比べて日本はアントレプレナーになる人の確率・発生率が3分の1しかないんですね。

伊藤:なるほど。

尾原:それだけ成功も3倍なんですよ。ましてや、僕の統計の中だと赤マフラーをずっとし続けている人は、僕以外に1人しか知らないんですね。

伊藤:もう1人いるんですか?

尾原:神田(敏晶)さんというんですが(笑)、あいつはテンガロンハットのほうですけども。

伊藤:なるほど。

異端者ほど舞台に上がれる回数が増える

尾原:なので、やっぱり外に飛び出ることで、飛び出ただけで「珍しい」と思ってもらえるから、少なくとも打席がまわってきてバットを振る回数が増えるんです。

伊藤:なるほどですね。

尾原:バットを振る回数が増えると、そこでチャレンジができるから成長できるんですよ。もちろんその赤マフラーも、なんのチャレンジもしなかったら単なる変なコスプレ野郎です。

でも、異端児であると舞台が増えるから。ヒーローショーを300回やっていれば講演だってうまくなるし、伊藤さんだのプレゼンだって、最初はそんなにそんなにね。むしろ実はものすごくナーバスな方だから、いろんなことを考えられて、ものすごく震えるわけでしょ?

伊藤:実は新人のとき、銀行員で2年目になったときに、新人が200人ぐらいいたんですけど、「銀行で1年過ごして楽しかったこと・辛かったことをプレゼンせい!」と言われたわけです。夜にそれをやったこともあって、今も半分ぐらい寝ているとそのときの光景を思い出して、「わー!」みたいな。

尾原:目覚めますよね。

伊藤:そう。そういうのがあるから、「あれは絶対にやっちゃいけない!」みたいな感じで練習をするんですよ。

尾原:やっぱり、そうやってなにか飛び抜けることによって増えるチャンスのインフレがあって。

伊藤:そうですね。

尾原:変化の時代だからみんな「なにかやらなきゃ」と思っているから、飛び抜けた人には舞台の回数が増える。一方で失敗のデフレとして、少なくとも人が踏まない舞台の回数を踏んでいれば、ほかの人がやらない経験、しかも失敗の経験をしているから、いつでも大企業側、安定側にまわれる。

伊藤:そうですよね。

尾原:この2つがあるから、これはすごく大事なんです。とはいえ人はやっぱり失敗するのが怖い。そうすると、やっぱり僕もあれなんですよ、失敗しそうなとき、僕の場合はロープレみたいな感じで考えたりします。

伊藤:そうなんですね。

行動した後に気づきを得るというサイクル

尾原:「ここで会心の一撃が出る」とか、そういうのを考えるやつもいるし、あと俺の友達だと、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』を思い出すやつとか。

伊藤:はい。

尾原:くじけそうになると、途中で「ファ〜ン」とメッセージが流れる。

(会場笑)

伊藤:「プロフェッショナルとは~」。

尾原:「そのとき、〇〇は考えた」と。そうしてやれることをやることで、自分を相対化する。それはさっき言ったように、異端児になることでの舞台の登板機会のインフレと失敗のデフレがあるから。失敗もそうやって芝居に代えて舞台の回数を繰り返していると、いつの間にかしゃべりがうまくなりますよね。

伊藤:そこで恥とかもね、そういうのはみんな経験しているわけだし、みんなつらいと思いながら踏み出しているので、そのリミッターを外してちんけなプライドを捨てようと。やることはぜんぶやろうと。

そしてそれを一発やるだけじゃなくてサイクルで鍛えてくるのがすごく大事だと思っていて。水面上で目に見えるのがこのactionです。まず、思い立ったらすぐ行動することなんです。それこそ0秒で動けというのはこっち側ですね。そのあとにskillとmindがある。

行動したあとに、どうやったらskill・mindにインストールされるかというと、振り返って気づきをえる。気づきというのは、「あ、そういうことか」です。例えば「ああ、自分は今までこんなふうに考えていたんだ」みたいなことをハッと気づくと、これが自分のskillやmindにインストールされる。

このサイクルを明確に意識して、いろんなチャレンジをやって、「これやったら失敗しない」「これをやったらうまくいかない」みたいなことを、やるだけじゃなくてそのあと振り返る。

こういうことやると、必ずそこが自分のskill・mindにつながります。すぐ行動、振り返る、気づきを得る。気づきを得るのは、みなさんにとって、僕らにとって成長の最大の能力です。

「何をやりたいか」は他人のフィードバックを受けない

尾原:ここで大事なのが、みなさん「成長」と言ったときに、Whatの成長とHowの成長を分けていない人が多くて。自分のそういうときのマインドセットとして、人とコミュニケーションするときに「どういう心のあり方で対峙すべきなのか」「どういうプロセスでコミュニケーションするべきか」みたいなHowは、振り返れば振り返るほど良くなるんですよ。

でも一方で大事なことがあって。(スライドを指して)先ほどの2ページ前のチャートに戻ってもらっていいですか? なんでこっちを見ながら戻るんですか(笑)。

(会場笑)

まあいいんですけど。これは「フィードバックを受けない」ということと矛盾しているような気がするじゃないですか。Whatは最初の段階でフィードバックを受けちゃいけないんです。

これはなぜかというと、「意味のイノベーション」という言葉が最近ありまして。とくに山口周さんが『ニュータイプの時代』という本の中で「役に立つ意味がある時代」ということで言い出しているんです。

結局、意味や最近のイノベーションというのは、イノベーションは他人がやったことのないことをやることがイノベーションだから、その言葉を、自分のWhatとして「なにをやりたいの?」というのがあって。

それについて他人に話を聞いても、その人はやったことが無い人だから、「それはやっちゃダメなんじゃないの?」「俺と違うよ」とみんな放棄しちゃうわけですよね。

伊藤:なるほど。

尾原:そうすると、「これはダメなのかな?」と思っちゃう。だから実際にミラノ工科大学の(ロベルト・)ベルガンティさんという方が、「意味のイノベーション」ということを提唱しているんですよ。

そこで、やっぱり彼もWhatに関しては、「最初は誰にも話すな」と言うんですよ。自分の中で強度を高める。もし話すとしたら、「この人だったら建設的にいろんな意見をくれるな」という人に話す。僕だと羊一さんみたいな人にスパーリングをやってもらうんですね。

伊藤:うん。

日本人はHowのチューニングが苦手

尾原:それをやって初めて強度が生まれて、それから人に出す。すると「いや、これやったことないし」「つまんないし」とか言われてもぜんぜん気にならないんです。むしろ建設的なフィードバックだけ受け入れよう、十分な強度になったときに初めてプロトタイプとして人に出そうと彼は言っていて。

だからWhatというのはやっぱりそうしたほうがいい。イノベーションというのは今までやったことのないことをやることだから、強度が生まれるまではWhatに関してフィードバック受けないことが大事なんですよ。

ただ、先ほどのaction・skill・mindのセットにおけるHowの部分に関して言えば、「どういうプロセスで自分を高めていけばいいの?」「誰のなにを参考にすればいいの?」「自分自身がどういう態度でいればいいの?」みたいなHowはいくらでも改善できるから、Howはどんどん振り返っていい。

伊藤:そういうことですね。つまりWhatは、圧力釜の中に入れて、自分で「うおーー」と熟成させていくことだと。

尾原:そうそう。一番得意な「うおーー」。

伊藤:さっきのミキサーにかけてかき混ぜるのも、ある意味そういうことなのかもしれないですね。ところが、Howのほうはどちらかいうと、人に「どう?」と聞きながらやると。

尾原:Howは少しでも改善できることですからね。とくに、このマインドセットのHowをチューニングするのが日本人は下手なんですよ。例えば心がストレスでものすごく散漫なときに、今やる課題に集中できるかどうかとか。

これは先ほどの動画のように、一方で集中しすぎるとゴリラが見えなくなってしまう。ゴリラを見るモードと白いパスを追いかけるモードをどうやってスイッチングするかというのは、mindに関してHowなんですよ。こういうのはいくらでもラーニングできる。

伊藤:なるほど。メタ認知時間を持つということですね。

尾原:そう。例えばの話ですけどね。

テーマの抽象度の上げ下げすることで「人を動かす」

伊藤:ありがとうございます。次は「人を動かす」というとことなんですけど、これは2つありますね。(スライドを指して)まずはこの図なんですけど。

尾原:いい図だなあ。

伊藤:はい。実は僕、グロービスでよくこういう図を描いていたんですけど、これは俺が発明したんだと思っていたんですよ。でも『どこでも誰とでも働ける』という尾原さんの本を見たら、一番最後のページにこれが出てきて。

尾原:チャートがね。

伊藤:もうね、そのときは本当に涙が出てきて、その瞬間に「尾原さん、これなんですよー」とか言ってメッセをしたんですけど。

これはどういうことかというと、自分と相手、例えば同じ会社の中でコンフリクトが起きているようなときに、自分と違う部署の相手と話をしていると、同じテーマであっても見方が違ってきますよね。例えば営業部と財務部とは立場が違うじゃないですか。

そのレベルでやっていたらコンフリクトが起きるだけなんですが、抽象度を上げていけば、つまり「会社として俺たちはなにを目指しているんだっけ?」ということを考えるレベルまでいけば、どちらの部署も同じことを考えているわけです。

もっと言えば、「日本のためになるよね」と考えるようなレベルだったら、「世界平和のため」と言ったらもう全員ですからね。邪悪なことを考えている人以外は絶対に合意できるんです。

そのレベルまで抽象度を上げて、でも上げすぎるとどんなテーマでも合意しちゃうから、そこからもうちょっと抽象度を下げて合意できるポイントを探していくのが重要だと思っていて。

地区の戦いでは敵同士、ワールドカップでは仲間に

尾原:『キャプテン翼』の1巻でいうと、日向くんと翼くんがライバルなんですよね。でも、ワールドカップ編になったら変わってくる。自分たちの地区の戦いじゃなくて、ワールドカップの課題にすればするほどみんなが仲間になるから、いかにそうしていくか。

伊藤:そこを合意すれば、「合意をしているはずなのに、今対立しているのはこういうことなのか?」という交渉にもなっていくわけです。だから、最初の「私の立場」「あなたの立場」みたいなときよりも、ずいぶん合意に至りやすくなる。

尾原:アリババのジャック・マーさんとか、彼はものすごくGreedyな、戦闘モードになったときは本当に怖い人なんですけど、それ以外では博愛主義なんですよ。それは彼から言わせると、「マラソン競争の最初の100メートルで争うやつはいない」と。

一番わかりやすいのは自転車の競争ですよね。自転車の競争は最後の方まではライバルチームと組んで風の抵抗を減らしながら進んでいくんです。そして最後の最後になったら、バラけてそこから全力で行く。

要は、今までは資源が限られていて、日本は人口が少なくて、というところで戦っているからライバルだったんです。でもこれからの変化の時代では、放っておくと30年間で地球2個分の資源が要るようになります。資源によって僕たちが食い潰されるみたいな課題の中では、僕たちが進化しなきゃいけなくなる。だからマラソン競争なんですよ。

「あなた対わたし」ではなく、課題に対してあなたとわたしがいる

今までの戦いは目の前のパイの食い合いだったけど、これからはAIが発展したり、シンギュラリティが起こったり、SDGsと呼ばれるような「もうこのまま人口が減っていきます、でも人生は100年になっていきます」ということが起きたりして、ダブルで食料が足りなくなるわけですよね。

そうなったときにどうやって解決するかというと、僕らはマラソンをやって課題を解決していかなきゃいけないから、もうオールワールドで戦うしかなくなってくるんですよ。

伊藤:そうなると、「私とあなたは敵である」というよりは、「戦っているところもあるけど、目指すところはここだよね」というようなところを。

尾原:あなた対わたしではなくて、課題に対してあなたとわたしがいる。人は向き合っていると、ついつい課題が見えなくなって相手しか見えなくなっちゃうんですよね。

伊藤:実際に仕事をしている中でも、「部署が違うから対立しているんだよね」みたいなところに気づけば、一歩引いて「なんでやっているのか?」「なんでだっけ?」が見えてくる。そして「ここは同じだよね」というところを振り返って、それからもう1回問題に向かうと案外すぐ合意にいくんですよ。

『どこでも誰とでも働ける』を持っている方は見てみてください。最後の表がこれだから。本当にびっくりしたよ、もう。

伊藤氏が語る、変化の時代のマネジメント方法

伊藤:それからもう1つは、これもマネジメントの話になってくるんですけど、人と接するときですね。要するに、1:Nと1:1×60ということなんですけど、リーダーというのはまず1:Nで、こういうかたちで「よっしゃ、これが今期のキックオフだ!」とか話すわけです。

なので、1:Nというのは当然のことながら必要です。われわれとして、「みんなが出ているこの場で僕が話すよ」と。ただ一方で、それを受け取っている一人ひとりは、コンディションも違うし、理解力も違うし、それから興味関心も違うわけです。

そうすると、僕は「1つのこのビジョンを実現しようぜ」とか言っているつもりなんだけど、人によってはこっちのほうを見ていたり、「こういうことじゃないのか?」と思ってしまうと。

それを修正するためには、やっぱり1:1で触れることしかないですよね。だから常にリーダーは1:Nと1:1×N人分を考えないといけない。

これは日常的に1on1で、例えばここで私がリーダーでみなさんがマネジメントの範囲の中にある方だとします。1:60とかで、60人と1on1をずっとやるのはなかなか難しいんですけど、毎週やるんだったらやっぱり5~6人くらいだと思います。それでもね、一度1on1をやるだけで、ずいぶんその人との関係が違ってきます。

尾原:このあたりは一見すると、「なんでこれが『0秒で動け』と関係するの?」という話なんですけど、結局「0秒で動け」というのは、先ほど言ったように安定成長の時代の行動原理じゃなくて、変化の時代の行動原理が圧縮されたものなんだと思ったんです。

伊藤:なるほど。

尾原:変化の時代の行動原理というのは、なにが起こるかわからないから、なにかが起こったときにふだんと違うことを一緒にできるかとか。安定成長の時代ではみんなが部品になって、みんなが同じことをできるのが強いんですよね。

でも、変化の時代はどこから敵が来るかがわからないんです。例えば(特撮戦隊ものの)ゴレンジャーで、ふだんはあんまり役に立たないカレーばっかり食べている黄レンジャーが実は力持ちだから活躍する、みたいなことが起こる。

だから伊藤羊一さんが活躍する回があれば僕が活躍する回もある。それはやっぱり、それぞれの人に強みと弱みがあって、いかに相手のデフォルトを理解していって、ほかの人の個々を埋めていくかが大事で。そうなってくるとやっぱり、1:Nというのは、人が部品だった時代のコミュニケーションなんですよ。

伊藤:そうなんですよね。

部下を部品として見る組織か、部下を個人としてみる組織か

尾原:それに対して一人ひとりの個性を発揮しようというのが1:1×Nだし、しかも大事なのは、これをやられていたほうが一番感じるんですよ。

要は、メンバーが上司に認識されているか。「あなたのことはあなたとして認識されていますか?」という質問なんですよ。(雰囲気の)暗い部署では絶対に「僕は部下Aって思われてる」「部下Bって思われてる」というのがあって。

これは実際にGoogleがプロジェクト・アリストテレスでやっていて、クリエイティブなチームとクリエイティブじゃないチームを分けるときに、たった1つの質問で分けられるという話があるんです。

それが先ほどの質問なんですね。「あなたは上司からあなたとして見られていますか?」と言われて、7割以上の人が「うん、自分として見てもらっています」「〇〇さんとして見てもらっている」と思える組織がクリエイティブです。逆に、3割より多い人が「いや、単なるメンバーの一員と思われています」というところはクリエイティブじゃないんですよ。

つまり、1:1で見られていたら、「あっ、伊藤羊一さんは羊一さんですから、こういうことをしても羊一さんですよね」と言って、失敗を許容してくれるだろうと思えるんですよ。だから冒険ができるんです。

伊藤:なるほど。

尾原:でも、単なるメンバーとしか思われていなかったら、しょせんは部品ですよね。ということはなにか失敗したときに「あー、この部品要らないや」と思われて交換されてしまう。そう思うと、冒険なんかできないですよね。

伊藤:「失敗しないようにしよう」しか思えないですよね。

尾原:そう。こっちは「失敗しないようにしよう」という組織になってしまって、こっちはむしろチャレンジをすることを褒めてくれる組織になりやすい。だから変化の時代には、こっち(部下を部品として見る組織)じゃなくてこっち(部下を個人として認識する組織)のほうがが大事。

伊藤:そうですね。

尾原:だからこっち(部下を個人として認識すること)をやればやるほど、メンバーが「0秒で動け」になってくる。

伊藤:そうなんだぁ。

尾原:なんで(笑)。

(会場笑)

伊藤:いやあ、「俺、なんで書いてたんだっけ?」みたいなことが多少あったんですけれど、まさにそういうことなんですね。

「このお菓子いいな」から生まれるマネジメントの嗅覚

伊藤:前職で、マネジメントをしている人間が500人いたんですよ。500人いると1on1なんかできないじゃないですか。どうしたかというと、これは2種類あるんです。いわゆる世間で言われているところの毎週やる1on1にはしなかったんですけど、1つあったのはManagement By Walking Aroundですね。

尾原:ああ。

伊藤:ぷらぷらする。「このお菓子いいな」「このお菓子ちょうだい」「あっいいお菓子だね」とか、こういうことをしたんです。お菓子の話だけじゃないですけど。

(会場笑)

あとは「先週〇〇に行くと言ってたよな」とか、こんな話をしまくるんです。そうすると、「いや~、もう伊藤さん邪魔しに来ないでくださいよ」と言う人が8割なんですけど、時々「伊藤さん聞いてくださいよ、あなたどうせ暇だろうから」「なになに?」と1on1が始まるんですよ。

そういうかたちで、1on1すべき人をなんとなく嗅ぎつけておくようなことをやるのが1つ。もう1つが、毎週できなくても1回はやる。

尾原:そうですね、1回つながるとね。

伊藤:つながっておく。前職でも実際そうだったんですけど、上の会議で「全社員に〇〇と〇〇を導入する」とか言うと、いろんなところからLINEで「伊藤さんあれ全然ダメだわ」「これはいいかも」というフィードバックをくれるようになるんですよ。

1対1の関係を1度作れば、あとは定期的にやらなくても大丈夫なんです。なので、「あんまり人数が多すぎてできないよ」という職場でも、1回はやっておくといい。

これはブイキューブという会社で、社長の間下(直晃)さんが言っていたんですけど、Web会議について。例えば尾原さんはバリ島にいらっしゃったりするから、尾原さんと話すときはWebやMessengerを使うことがあるんですけど、一度リアルでつながることをしておけば、あとはWebで大丈夫だと。

みなさんも「部下がいっぱいいるんだけど、どうしたらいいの?」みたいなときには、一度Face to Faceで会っておく。あとはWeb会議とかで回数をこなす。そして時々職場を回りながら様子うかがう。こういうことをすると1対1の関係ができるかと思います。

尾原:伊藤羊一さんとリアルで会ったのって、(知り合ってから)1年半後ですよね。

伊藤:そうでしたっけ?

尾原:僕、ロボットで会っていますから。

伊藤:そうだ。そうなんですよね。

尾原:1on1で日中はよく喋っていたんですよね。『キングダム』のとき。でも、僕はロボットで目を見て話していますから。

伊藤:なるほど、そうだ。やっぱりリアルで会うと、グッと変わりますよね。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • “退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方

人気の記事

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!