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収入源の多様化とGoogleの提供するツール(全2記事)

アドからサブスクモデルへの移行は世界的な潮流に 海外の成功事例から考えるメディアビジネスの未来

2019年7月29日、株式会社キメラ主催によるイベント「メディアのサブスクリプションビジネス戦略」が開催されました。国内外で激変のさなかにあるパブリッシャーのメディアビジネス。広告収益による成長モデルはすでに限界を迎え、ビジネス継続が困難になるケースも現れるようになりました。無料の広告モデルから、昨今Webサービスの分野で主流になりつつあるサブスクリプションも交えた有料メディア運営へ、どう戦略的に切り替えればいいのか。本イベントでは、海外事例や日本国内で進行中の取り組みを参考に、サブスクリプションビジネスをいかに推進するかの考え方とその手法について明らかにします。本記事では、グーグル合同会社の友田雄介氏による講演「収入源の多様化とGoogleの提供するツール」の模様をお送りします。

世界の潮流はアドモデルからサブスクモデルへ

友田雄介氏:みなさん、こんにちは。すみません、ちょっと喉をやられているので声がお聞き苦しいんですけれども。Google のプロダクトパートナーシップ本部というところで仕事をしております、友田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

今日は、パブリッシャーのみなさんの収入源の多様化と、それに対して Google がどんなツールをご用意しているか、あるいはご用意しようとしているかというところを、海外の事例なども交えながらご紹介差し上げたいと思います。

最初に、この本日お集まりのみなさまの中で、もうすでになんらかの有料モデルのサブスクリプションモデルをやっているという方はどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

なるほど。1〜2割ぐらいという感じですかね。ありがとうございます。ということは残りの8〜9割のみなさんはアドモデル、つまり広告モデルで実際にビジネスをされているという理解でおります。

そんななか、とくにこの2019年、世界の潮流と言うとちょっと大げさなんですけれども、ほかの国ではどんなビジネスのかたちを考えているかをロイターさんが調査をしまして。実は世界中、N数が163ではあるんですけれども、163のパブリッシャーに聞いたところ、52パーセントが「有料購読モデルに注力する」と回答しております。これは「注力する」と言っているわけで、やっているかどうかはまた別な話ですが。

グラフにもありますように、2番目と3番目のほうですね。これがディスプレイアド・ネイティブアドの部分ですが、その合計で35パーセントということで、今年は広告よりもなんらかのサブスクリプションモデルに注力する方が非常に多いことがこれでわかります。

サブスクモデルに勝機を見出す海外のメディア

それはなぜかということですけれども、実は成功事例が世界中で非常に増えてきているということがあります。

先ほどの講演でもありましたけれども、『The New York Times』が発表していたように、もうすでに450万人の、なんらかの仕組みによる有料課金のお客様を持っていらっしゃるということです。しかも、購読料収入が彼らの全収入の3分の2を超えたということも言っております。

そして『The Guardian』ですけれども、こちらも有料課金者が65万人ですね。これは『New York Times』と比べるともちろん少ないんですけれども、それでも昨年の57万人から65万人に、1年で増えています。

しかもこれとは別に、彼らは投げ銭方式もやっておりますので、30万人の単発の投げ銭のお客様が、これとは別にいると。この65万人というのは、月額課金を投げ銭だろうがサブスクリプションであろうが、何らか月額で払っているお客さんです。これがもう65万人いる。昨年の57万人からこんなに増えました。

さらにアジアに目を向けますと、日経さんの例はみなさんご存じなので省いてあるんですけれども、この『The Ken』というパブリッシャーさんが非常に好調な出だしです。これ、開始から1年です。たったの1年で1万人の有料購読者を得ました。これは年額1万円以上するんですけれども、なんと1万人です。

この『The Ken』の特徴は、もう一切無料をやらないことですね。もうトライアルもやらない。もうとにかく「払わないと見せないよ」というモデルで、インドで成功し始めている。もう1つの特徴は、直接の個人の読者だけじゃなくて法人向けにもサービスをやっているところです。

内容としては独自取材に完全にこだわっていて、いわゆるロングストーリーですね。長編のフィーチャーストーリーをたくさんつくってクオリティを維持して、それをウリに高い値段で、一切無料をやらずというかたちで伸びてきているということです。

今度は南米に目を向けますと、この『Página/12』という新聞ですね。こちらもデジタルのサブスクリプションで、開始6ヶ月でもうすでに50万人の有料会員を集めています。こちらは単なる有料記事だけではなくて、コメント機能とか読者コミュニティ機能を使えるようにするとか、そういったところで付加価値をつけているということです。

どこまで無料で見せるのか、どこからお金を取るのかの線引き

こういったかたちで、世界中で成功事例がどんどんたまってきております。そこに1つ、『The Guardian』のキャサリンさんの言葉をquoteで持ってきたのですが。彼らがどうやってきたかというと、漠然とトラフィックを増やすということではないということです。

そもそも『The Guardian』のサイトを定期的にアクセスしている人は1,000万人いたんですね。1,000万人の定期的に訪れてくる人たちにどうアプローチするかということに注力をしていった結果、57万人から65万5,000人という大きな伸びにつながっているということを言っております。

そういうかたちで、世界中でさまざまな購読モデルの試行錯誤が始まっておりまして。それによっていろんな成功事例……失敗も含めて、いろんなパターンが集まってきていると。

(スライドを指して)これはいわゆる、どういうかたちの有料モデルが、どういうスペクトラムであるのかという簡単な図なんですけれども。一番右側は無料、一番左は有料というかたちで、無料のアドモデルからContributionモデル、投げ銭方式というのがあって、記事は一応名目としては無料ということです。

さらにMembership。これもいろんなかたちやパターンはあるんですけれども、なにか登録してくれということですね。これも基本無料というかたちで多いです。

そして、ここは日本でもおなじみだと思うんですけれども、Metered Paywall。限られた数の無料記事を、例えば「月10本まで無料で読めますよ」とやって、そのあとを読みたければお金を払ってくださいというやり方。

そして一番きついパターンは、一切無料なしで、ヘッドラインぐらいは見せるんですけれども、記事を読もうとクリックすると「お金を払ってね」という、このHard Paywall。

それぞれのメディアの特性、記事の特性などに応じてどのパターンでいくか、読者の属性にも合わせて、どういう組み合わせでどういうパターンでやろうかというのが、各国の出版社さん、パブリッシャーさんの命題となっていて、みなさんこちらのほうにどんどん走っているというかたちになります。

マーケティングファネルを認知からコンバージョンまで持っていくには

先ほどからもファネルがずっと出てきていますが、これはまぁ共通しています。これがいわゆる共通のフレームワークだと思いますね。マーケティングファネルをいかに、この左側のDiscovery、つまり認知から、最後のコンバージョン、リテンションまで持っていくか。いかに左から右に持っていくかというのが、各出版者さんの一番注力しているところだと思います。

日本語で言うと、顧客の行動動線ですかね。ちょっと長いんですけれども、このDiscoveryから……このDiscoveryというのは、自らのサイト以外、つまり自分のサイトではないところで新しいお客さんをどうやって持っていくか。「自分の記事はここにあるよ」というのをどうやって見つけてもらうかということですね。その結果、自社サイトに持ってくる。

次に、実際に来てくれたお客様の読者を、どうやって期待に応えていわゆるエンゲージメントを高めていくのか。「エンゲージメントが高まりましたね」の次に、その人を最終的に売上につなげるにはどうしたらいいのか。どのような購読モデルを提示するべきなのか。先ほどいくつかパターンがありましたけれども、そのどれがいいのか。

そして最後に、じゃあ実際に購読者になってくれた人に対して、その人がいなくなってしまわないようにどうリテンションをするか。先ほどもいくつかその具体的なリテンションのやり方はあったと思いますが、そういったいろいろなツールをみなさん使って、この4つのファネルそれぞれに、各段階でいろんな施策を行っているというのが現状だと思います。

ファネルの各段階で Google にできること

ここからは、私ども Google がファネルの各段階でどういったお手伝いができるのかについて、具体的にご紹介したいと思います。

まずはDiscovery。発見・認知ですね。こちらに関しては、Google 検索で、基本的にはみなさんのコンテンツを一部なり全部を見せて、そこでみなさんのところにトラフィックを流すという仕組みになっておりますので。

それをやる上で、まずは「Google ニュース」というプロダクトが私どもにはありますので、こちらのほうにニュースのフィードをいただくと。それが記事の一部であろうが全部であろうが、Google 検索の結果画面の一番上のところにある「Top Stories」……日本語では「トップニュース」なんですけれども、もしその検索キーワードに合ったトピックが何かあれば、こういうかたちでトップニュースとして一番上に出てくるかもしれません。もちろん保証はないんですけれども。ただ、こういうかたちで出ることもあります。

そこで今度は右側ですけど、「Google ニュース」という私どものプロダクトで、これはアプリでもありますし、Google 検索のトップ画面でもタブとして出しているのですが。これも各ニュースおよび雑誌の出版社さんのみなさんからフィードをいただいて、そこから基本的にはそのお客様に合ったカスタマイズしたニュースをヘッドラインと写真を出して、そこから、Google ニュースの中で見せるパターンもあれば、そのまま記事のほうに飛んでいくということもありますが、こういったかたちで露出機会を増やすということがあると思います。

もう1個は、直接的ではないんですけど、AMPを導入していただいています。ここではたくさんのみなさまがAMPをすでに導入されているかと思うんですけれども、AMPを導入していただくと、それでページの速度がもう圧倒的に速くなりますので。私どもの検索はページ速度も順番に影響する1つのエレメントですから、そこでページ速度を速くしてトラフィックを呼ぶ、あるいは少なくとも認知してもらえるということが言えると思います。

ちなみにこれらはすべて無料でございます。技術的にもそんなに難しくなく導入できると思いますので、もしまだの方はぜひご検討いただければと思います。

「News Consumer Insight」でユーザーを知る

次にエンゲージメントのところですね。実はここからが本題の本題になります。どうやって読者や訪問者といった人たちを知るかというところです。

これは去年の夏に英語版で出したんですけど、「News Consumer Insight」という、Google アナリティクスの1つのダッシュボードとして、とくに出版社さん・マスコミ系のサイト向けに専用のダッシュボードをご提供しております。これは無料ですので、Google アナリティクス 360ではもちろんですし、無料版のほうでも問題なく出ておりますので、ぜひご覧になっていただければと思います。

こちらは、訪問者をセグメンテーションして……これも先ほどのファネルのところでもちょっとありましたけれども、目的に応じて各セグメントに適したアクションを取れるように、具体的かつ実践的なハンドブックまでつけちゃうという。それも各工程に合ったハンドブックがついておりますので、それを参考しながら次の手を打っていくことができるものです。では、もう少し詳しく見ていきます。

これがダッシュボードの最初のページなんですけど。右側のほうですね。これは要はGoogle アナリティクスのデータを少し別の見方で輪切りにしてあるものです。訪問ユーザーはこれを4つのバケツ……先ほどのPianoさんはもっとたくさんバケツがあったのですが、これはもうちょっと大くくりでザクッと切っております。

こちらは4つのバケツ、「Casual」「Loyal」「Brand Lover」、そして最後「購読者」というかたちで分けておりまして。これは先ほどとまったく同じコンセプトですね。左のCasualユーザーからだんだんどんどんLoyalユーザー、そして最後に購読者にしたいということで、左側のバケツのユーザーを右側にどうやって移行させるのかがここでの目的になります。

このデータの肝は、実は世界中、900以上の同業他社のデータをベンチマークとしてこのバケツを区切っているんですね。バケツの数字もご自身のサイトの数字とベンチマークの数字とのギャップを見ることで、いったいどこが自分は他社に比べて弱いんだろうか、あるいは強いんだろうかというのが見えることです。

ここではちょっと他社さんのは見えていないですが、例えば「ここではCasualユーザーさんが41.2万人いました」と。ここで言うところのCasualユーザーの定義は、Google アナリティクス上では「新規ユーザー」というものですね。Loyalユーザーに関しては「リピート訪問者」、さらにブランド愛好ユーザーになると「30日間で15回以上のセッションを持っている」というかたちでバケツに分けて、それぞれの人数なりがわかるようになっています。

ファネルのどこを攻めるのか。この一番上を攻めるのか、上から2番目、移るところを攻めるのか。そのへんは、それこそ先ほど申し上げた他社さんとのギャップを見ながら、「自分たちは他社よりバケツの遷移の部分で劣っているんだろうか」というところを、これを見ながらアクションが取れると。「どんなアクションを取るか?」というところが次になります。

実践的な事例集のハンドブックとケーススタディ

私どものほうではベンチマークとのギャップに注目していて、それぞれの項目のところにリンクが貼っており、そこにNCIハンドブックというものをつけております。

このハンドブックは、目次だけをパッと見せてありますけれども、こういう構成になっておりまして。それぞれのファネルに対してどういうアクションが取れるかという実践的な事例集を載せております。「こんなの知ってるよ」ということも含めていろいろ載っているので、ぜひこういったことを参考にしてもらえれば。これは10章123ページにわたっていろんなことが書いてあるので、ぜひご参考いただければと思います。

これはダッシュボードと、先ほど申しましたように対になっています。「ダッシュボードでこうだった。じゃあこれは何すればいいんだ? あっ、ハンドブックにこんな書いてある。じゃあこんなものをやってみよう」で、やってみると。そうすると「あ、数字が変わった。じゃあ次は何しよう?」ということを行ったり来たりしながら、トライ&エラーをどんどん重ねて、このファネル全体の改善を、最適化するということをやっていただくツールでございます。

あとは、ハンドブックとともにいろんなケーススタディが載っています。ケーススタディはすみませんがまだ英語なんですけれども、「これを使っていいことがあったよ」というみなさまと協力してケーススタディとしてシェアするということをやっています。

先ほどちょっと出ましたが、「ニュースレターでこんないいことがあった」とか「subscriberがこんなに伸びた」、「organic searchのvisitをこんなに増やした」とか、ご自分の業態に一番近いところなりおもしろそうなところを選んでこのケーススタディを見ていただければなと思います。

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