2024.10.10
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大東洋克氏:ここからはサブスクリプションのビジネスについて話をさせていただきます。昨今はいろんなところでサブスクリプションのビジネスが謳われていると思うんですね。日々のニュースの中でも、テクノロジーにかかわらず、シェアリングエコノミーの分野でもサブスクリプションについて目にされることが多くなってきたと思います。
実際この仕組みはどこから来たのか、このビジネスはどうやって始まったのか。そもそも僕らがインターネットに触れていく中で、身の回りに起こったことはなんだったのかということから振り返ってみます。
90年代初頭に初めてインターネットにつながりました。ダイヤルアップでモデムにつなげて、インターネットを使ってメールを送りました。初めてYahoo! で検索しました。初めてインターネットでものを買いました、といったことですね。僕は2002年に初めて就職したんですけれども、そのときインターネットで職を探すという体験自体が初めてでした。
あとはコンテンツが乗ってきたりですとか、商売をしたり、お金を預けたり、インターネットバンキングみたいなのが乗ってきたりとかですね。今ではインターネットで投資したりですとか、コトにつながるインターネットみたいなものが出てきました。
基本的にはこれって、なにも特別に新しいことではなくて。日常生活で私たちがこれまで行ってきた、暮らしてきた日常生活とインターネットの境目がどんどん溶けていっただけです。サブスクリプションというのも、実はぜんぜん真新しいものじゃないと僕は考えています。
例えば日本で一番強力なサブスクリプションのモデルって何かというと、私は個人的にNHKさんだと思ってるんですね。完璧なコンテンツ、それから広告のないニュースサイトですね。あとは完璧な集金プランとか料金モデルみたいなのがあるってところは、ビジネスモデルとしてはすごく優れていると思います。
それを同じようにやるということではないんですけれども、そういう日常生活とか、これまでのビジネスの立て付けのところを、どうやってインターネットに乗せていくのかといのが重要ではないかと思っています。
今サブスクリプションのビジネスがどこに向かっているのかというと、これまで都度課金で買うことが当たり前であったインターネット上での「買う」という行動が、サブスクリプションで「パッケージを買う」という文化にシフトしていっているということです。
これまで2000年代とかだと、フリーミアムのインターネットビジネスといった「自由に使ってもらって、そこから有料課金乗せていくぞ」みたいな型はあったと思うんですけれども。これがよりパーソナライズされ、プレミアム体験を売るような仕組みになってきています。
そのプレミアムな体験自体が、サブスクリプションの根本的な魅力になっている。要は、普通の日常で生まれているようなコンテンツというものを、ただ有料課金にしていくんじゃなくて、その上にプレミアムなユーザー体験をどう付加価値を付けていくかというところがサブスクリプションのビジネスの根幹になっており、さらにそれが集客ツールになっていると思っています。
サブスクリプションの重要なコンポーネントとして考えるものは、大きく4つあります。1つ目がサブスクリプションのビジネスをいかに設計していくか。とくに既存のビジネスモデルからサブスクリプションのビジネスに移行するときの、現状ユーザーをもっと把握することですとか、ビジネスが移行するうえでのインパクトの分析、さらにどうグロースさせていくかという設計、それからシステムの導入といったことですね。
システムの導入というのは、あくまでも既存のシステムですとか、CMSとかコンテンツの財産を活かしたうえで導入できるものが理想です。それをいかにうまく活用していくかというと、その中の既存のコンテンツですとか、ユーザーIDの基盤というものをどうやってうまくマネージしていくかが重要になってきます。
あとは、そのマネージするID基盤に乗せたIDの管理ですとか、顧客情報の管理、課金の管理、会員属性の分析なども重要な要素になりつつあります。それをいかに継続的なマーケティングの施策に移していくか。属性の分析ですとか、単純にコアの分析をどうやっていくのか、マーケティングの施策をどうやって繰り返し打っていくかというところが重要な要素になるかなと思っています。
サブスクリプションのビジネスですごく重要だと言われているのは、もちろん新規会員の獲得というのは大事なんですけれども、それ以上に会員の満足度を上げるようなプロダクトの施策ですとかグロースの施策、それからそこに対してのデータ分析やマーケティングの運用というものです。
我々が考えるサブスクリプション成功の鍵というところで、よくサブスクリプションの導入を考えられているパブリッシャーさんは、いかに無料会員を増やしてそこから有料会員の登録に促していくかに注力されています。
そのコンセプトに対して、僕はちょっと違うものを提案しておりまして。いかに全体の会員の中のロイヤルユーザー、頻繁にWebサイトを訪問してコンテンツを読んでくれるユーザーを育てていくか。これが一番の施策だと思っています。
あと、どちらかというとPVを増やすための投資よりも、コンテンツのクオリティを上げてロイヤリティの高いユーザーをいかに増やしていくかというところの投資を増やしたほうがいいと考えています。
そのKPI設計というのも、パフォーマンス評価をするうえではページビューを見るよりも、ロイヤルユーザーの比率がどれくらい高いかが、実際にサブスクリプションの有料課金に移行を促したときの成功としては大事なのかなと思っています。そのためのKPI設計が重要だと考えています。
あとは今、各パブリッシャーさんのWebサイトにはいろんなリファラーがありますよね。ソーシャルからの流入ですとか、検索からの流入、外部リンクの流入ですとか。もちろんアプリからもあると思いますし、ダイレクトの流入もあります。それぞれのリファラーごとのトラフィックというのは、やっぱりモチベーションがぜんぜん違ってくるんですね。
ソーシャルで言うと、例えばソーシャルでつぶやいた人に対しての興味だったり、サーチであれば検索したワードに対する興味であったり。外部リンクであれば、そのニュースメディア自体に対する興味みたいなものがあるので、時系列で物事を追っているのか、人を追っているのか、キーワードを追っているのかによってモチベーションというものが変わってきます。
なので、いかにユーザーの特性を知って、そこに対してどんなオファーを出して、有料課金への誘導を行っていくのかが非常に重要だと考えています。それに合わせた、よりパーソナライズされたマーケティングの設計を行っていくことが、サブスクリプションの導入にはすごく重要になってきます。
あとはコンテンツの性質ですね。コンテンツにもそれぞれいろいろあると思うんですけれども、一つひとつのコンテンツが新規ユーザー獲得に貢献しているのか、それともロイヤルユーザーの満足度を上げることに貢献しているのか。あとは、実際にサブスクリプションの誘導に貢献しているコンテンツというものが、将来的には一つひとつ分かれてくると思います。
それぞれのコンテンツの特性というのを分けたうえで、このコンテンツの見せ方をどう活用していくかが重要だと考えています。一つひとつのコンテンツのリファラーもそうなんですけども、けっこう日本のパブリッシャーさんはトップページ軽視の傾向がすごく多いなと思っていまして。例えば検索ですとか、ソーシャルから流入が入ってくることによって、トラフィックの獲得が半分以上を占めているということが多いと思うんですね。
意外とロイヤリティの高いユーザーというのは、トップページを見る傾向がすごく強いですね。なのでトップページからいかに回遊させるか。あとはエンゲージするコンテンツを見せていくかということが、実はサイト全体としてのロイヤルユーザーを増やすためには非常に重要なことになっております。
日本のパブリッシャーさんではトップページの行動ですとか、そこに対する回遊施策とかを打たないことによって、逆にロイヤルユーザーが育っていないという傾向が出るのではないかなと考えています。
ここでChartbeatというツールですね。今日お越しの方の中にもユーザーのみなさんがすごく多いと思うんですけれども、リアルタイムでエンゲージメントの分析ができるツールというものを提供しています。
(スライドを指して)こういったダッシュボードですね。今の時点で何名のユーザーがサイト全体にいるとか、回遊率どれくらいとか、滞在時間どれくらいというのを見ることができるようなダッシュボードなんですけれども。一つひとつのコンテンツごとに流入の分析をしたり、エンゲージメントの分析をすることができるようなツールです。
ここではちょっとプロダクトの紹介は置いておいて、これでどんなことがデータ分析をしてわかっているかということを紹介させていただきます。
Chartbeatのときにみなさんにお話しさせていただいてると思うんですけども、だいたい45パーセントの新規のユーザーというのは、コンテンツを読まずに数秒以内に離脱しています。全体の60パーセントのユーザーは、1週間以内に再訪問しないです。
なので、偶然着地しても、だいたいはみんな読まないし再訪問もしないというのが、悲しい現実でして。いかに再訪問させるか、初回の訪問時にいかにコンテンツを読んでもらうかということが、非常に重要な施策でもあります。
あとは、初回訪問のエンゲージメントが強ければ強いほうがより滞在時間が長く、コンテンツをちゃんと読んでいるユーザーというのは再訪問します。こういったこともChartbeatの分析でわかっています。
デスクトップとモバイルのエンゲージメントの比較なんですけれども、上から……これは平均のスクロールの深度ですね。どこまでスクロールしたかっていうことと、エンゲージメントの時間、秒数ですね。あとアベレージのCTRなんですけども。
デスクトップはスクロールの深度が34パーセント、モバイルが25パーセントで、デスクトップのほうがスクロールの深度が高いんですけれども、実はエンゲージメントの時間というのはモバイルのほうが高いと。CTR自体も実はモバイルのほうが高いということがわかっています。
何が言いたいのかですが、これはグローバルのエンゲージメントの数字なんですけど。
平均がだいたい30秒。35秒、32秒、32秒とあり、これはラテンアメリカ、中東、アジア、アフリカ、セントラルアジアとノーザンヨーロッパって書かれているんですけども、だいたい30秒前後のエンゲージメントなんですね。ですけど日本は、実はエンゲージメントが22秒しかないということがわかっています。
全体のモバイルのトラフィックの比率になってくると、ほかの国というのはだいたい50パーセント、60パーセント、70パーセントくらいなんですけれども。日本は50パーセント以下のモバイルトラフィックしかないということがChartbeatの分析で分かっています。
ロイヤリティというのは、ロイヤルユーザーの訪問のページビュー比率で出しているものなんですけども、だいたいアジア、中東、ヨーロッパになってくると40パーセント以上のトラフィックというものが、ロイヤリティの高いユーザーの訪問から生まれています。
ですが、実は日本は34.7パーセントしかないということです。各メディアにおけるロイヤリティですとか、モバイルの比率が低いということによって、全体のエンゲージメントはほかの国に比べると非常に低くなっているというのが現状でございます。
これをChartbeatというツールで分析するんですけれども、このあとに紹介させていただくPianoというものはどういったものかといいますと……こういうのを見られたことありますよね?
海外のサイトなんかではよくあると思うんですけれども。コンテンツの上にポッと出てきて、「有料購読してくださいください」みたいなオファーが出ると思うんですけれども。こういったものを簡単に導入できますよというのがPianoのツールです。
それを4つのコンポーネントで、サブスクリプションのコンテンツ管理からマーケティングのオートメーション、それからユーザーIDの管理とそれに対するマーケティングのメルマガですとか、コンテンツ配信の管理ができるのがPianoというツールです。
先ほど申し上げましたようなサブスクリプションのビジネスに移行するために、どんな要素が重要なのかというお話をさせていただきました。サブスクリプションのビジネスに向かっていくにあたって、より高度なビジネスですとか、マーケティングの設計にどう向き合うかが大きな課題かなと思っています。
今日は私のほうでオープニングセッションを担当させていただいたんですけれども、このあとにPianoのサービスの概要と、あと実際にサブスクリプションのユースケースをもっと詳しく説明させていただいて、そのあとに休憩を挟んでGoogleさんの取り組みの紹介、それから電通さんと富士山マガジンサービスによる、これまでにサブスクリプションのビジネスに携わってこられたみなさんとのパネルディスカッションを行います。
全体から見た解答みたいなものを、みなさんに掴んで今日は帰っていただけたらいいかなと思います。オープニングセッションはこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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