2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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大槻幸夫氏:みなさん、こんばんは。サイボウズの大槻です。今日はサイボウズのコーポレートブランディングについてお話しさせていただこうと思います。
最初にお伝えしたいのが、今日はスライドが90枚くらいあります(笑)。時間は30分くらいなので、だいぶ飛ばしていくと思います。もしデータが必要であれば、名刺をいただきましたら後ほどPDFでお送りしたいと思います。すみませんが、だいぶ駆け足でいきたいと思います(笑)。
私はコーポレートブランディング部というところで、サイボウズという企業をみなさんに知っていただく企業広報の仕事をしております。
大学を卒業してすぐの2000年には、レスキューナウというベンチャーをやっていました。2005年にサイボウズに転職してきまして、以降はずっとマーケを担当しています。15年からブランディングに携わっているというかたちです。
ちょっとおまけなのですが、私の父が中目黒で町工場みたいなものをやっています。もう歳なので引退するかとなったときに、どうしようかと。その頃にブルーボトルコーヒーの社長と知り合いました。
「(うちのお店、)どうですか?」と言ったら、そのままトントン拍子でブルーボトルコーヒー中目黒カフェになっちゃいました(笑)。もし中目黒に行かれることがあったら、ぜひお立ち寄りいただければと思います。
(写真を指しながら)これは創業者のジェームスさんですね。となりは私の父です。はい、宣伝でした(笑)。
(写真を見せながら)日本橋にあるサイボウズの東京オフィスはこんな感じです。ちょっとふざけた感じのクリエイティブになっています。
97年に創業した会社で今は22年経って、世界に11拠点、連結で800人くらいの会社ですね。ベンチャーからだんだん中堅企業に変わってきているという感じです。
企業理念として、私たちはチームワークあふれる「社会」を創りたいなと思って日々活動しています。そのために優れたグループウェア、ツールを提供し、その使い方のメソッドも提供していく。
この社会の中に私たちもいるので、私たち自身がチームワークあふれる「会社」を創ろうと。この4つの価値観、バリュー(理想への共感、多様な個性を重視、公明正大、自立と議論)を日々大切にしながら仕事をしています。
今サイボウズのお客様は、国内外合わせて累計850万名いらっしゃいます。1番力を入れているのは、左上のキントーンというクラウドサービスになります。EXCELなどで共有されているような情報を簡単にクラウドでシェアできるというようなサービスで急成長しております。
グローバル展開が進んでおりまして、USはサンフランシスコを中心に、中国は上海、深圳ですね。そして東南アジアへと、どんどんどんどん広がっています。
それでは「サイボウズって何なの?」というところです。今プッシュしているのは働き方改革の軸です。
今日みたいな大雨の日でも電車が混んでたら、電車が遅れたらいちいち会社に行く必要はないんです。物理的なオフィスじゃなくて、ネット上のオフィスに出社して必要があれば会社に行く。そんな時代が来るんじゃないかと提案しております。
出張手続きとかがあると思います。メールで1対1のやりとりをしていると、この人(当事者以外)はどんなことをしているかわからないんですよね。
でも、例えばサイボウズの総務部のようにキントーンを使って、問い合わせ管理という中でやりとりをしていれば、この人(出張の手続きをしている人)がもしお子さんが熱が出て会社に行けないとなっても、バトンタッチして引き継げる。
「こうやって情報をシェアすると働き方改革ってもっと良くなるよね」ということを提唱しております。
ここから本題です。サイボウズのマーケティングの体制はこちらで、4つの部署に分かれています。
私がいるのはコーポレートブランディングというところになります。それ以外はマーケティングだとかプロモーションの部隊があります。
今うちの部はインターン生含めて全部で17名でやっております。主にコンテンツ編集のメンバーと広報、メディアリレーションのメンバー、それからマネージャー。基本的には3人がリーダーで、評価とか成長支援を分担して担当するというような、ちょっとティール組織っぽいやり方を今トライしております。
僕らのミッションです。ちょっと難しいのですが(笑)。文脈を伴った、差別化されたサイボウズの認知度向上というのをミッションにしております。ターゲットは基本的にはすべての方々になります。
製品ではなくサイボウズの企業姿勢を訴求することで、単なるグループウェアのメーカーではなくて、社会課題に取り組む会社なんだよということを知っていただきたいなと思っています。エクスペリエンスモデル上だと、認知から関心、理解、購入へといたる中で、サイボウズを知らない人に知っていただく。ここに特化した部隊というかたちになります。
やっていることを列挙していきます。1番大きいのはオウンドメディアの『サイボウズ式』の運営になります。ちょうど先週で7周年になりました。
これを運営していたり、書籍の出版ですね。社長のいろんな考えをまとめてプロデュースしていくというところです。
今ちょうど、副社長の山田による『サイボウズ流の理想のマネージャーとは?』という新刊を作っておりまして、10月くらいに発売予定です。
働きがいのある会社ランキング。第3者評価ですね。サイボウズがいくら「いい会社だ」と自分たちで言っててもしょうがないので、第3者評価であるランキングに応募したりとか。
最近やったのは株主総会をもっとおもしろくしたいと。よくわからないですよね(笑)。「ゲストを呼んだりしておもしろくしたいって、どういうことですか?」と正直思いました。
ご年配の方はわかるかもしれませんが、テレビ番組の『恋のから騒ぎ』をもじって『株主のから騒ぎ』という、株主を壇上に登らせて副社長がいじるというイベントを開催して、株主と交流したり。そういったイベントをプロデュースしたりしています。
サイボウズといえばホワイト企業(のイメージがあると思います)。いろんなランキングにも入ってきますし、社長もイクメンだということでメディアにも登場しています。
でも、もちろん最初からそうだったわけではないんですね。サイボウズにもブラックな時代がありました。
私が入社した2005年くらいから、売上が40億円前後で踊り場になってしまいます。1発当たって上場までいったんだけど、そのあと伸び悩むという、ベンチャーあるあるかなと思うんですね。
その頃は離職率が28パーセントもあって、毎週誰かの送別会やっているみたいな。入社した当時は「これがネットベンチャーか」と思っていたんですけど、今考えると採用コストがとんでもないことになっているなと。
とくにサイボウズはBtoBのソフトウェアをやってるので、先ほど登壇されたサイバーエージェントさんと違って、学生さんには社名を全然知られていないんですね。なので採用が大変だということで、できるだけ会社に長くいてほしいなと思っている中で、だんだんとこうなっていきました。
働き方改革が進んでいくんですが、今日はちょっと、その話は端折ります。今日お話しするのは、それと同時に外向けのマーケティングにも変革が起きていたよという話です。なので、先に登壇されたお二人とちょっと違うところは、外向けのコミュニケーションがまず変わって、それが実はインナーにも効いていったよという話になります。
プロモーション上の課題について、当時抱えていたのは、それまでのサイボウズの定番パターンが通用しなくなったということ。そして、中小企業向けにスタートしましたので、大企業から認知度が低いよということでした。
まず1つ目のところなんですが……これです(笑)。おじさんは知ってるかなと思います。昔「ボウズマン」というアメコミ風のキャラクターがいました。
ポッと出のベンチャーですから目立たないといけないということで、BtoBのソフトウェアでインパクトのあるキャラクターで広告を打っていました。
インパクトのある広告からホームページに来てもらって、お試しいただくと。60日間使っている間にスケジュールデータが貯まっていて、「もうこれでいいよね」と契約いただくというのが定番パターンだったんですね。
もう1つ、大企業からの認知度が低いということ。調査をしても、やっぱりMicrosoftやIBMには勝てないわけです。担当者がいくら「サイボウズがいい」と言ってくれても、経営者の「サイボウズなんて知らないよ。今どきはGoogleなんじゃないの?」という鶴の一声で落ちちゃうという、悔しい思いをずっとしていました。
さらに、お客さんがどんどん高齢化してきています。お客さんの中心はサイボウズがイケイケベンチャーだった2000年くらいのお客さんです。その方々がどんどんどんどん転職などをされて広がっていったんですけれども、いまや若者たちは「仕事ではGoogleとかFacebook、LINEでいいんじゃないの?」という状態になってきちゃってるよと。こういった、いろんな課題を抱えていました。
社長の青野は「このままではダメだ。新しい訴求にチャレンジしていこう」ということで、そのときに私が拠り所にしたものがあります。変化のときにはやっぱりベーシックな理論が必要だということで、イノベーター理論というものです。
どういうものかというと、こういうものですね。
左から右に時間軸が流れていて、縦は人口のボリュームです。新しいものが登場すると、まず先端層の方が飛びつきます。そこからだんだん時間を経て、1番ボリュームのある一般層にたどり着きますよというものです。その中に5つのフェーズがあるということなんですね。
伝え方というのは、実は段階・フェーズを経るごとに、180度変わっちゃうよということなんです。その中でも1番大きいのが、前2つを先端層、後ろ3つを一般層としたときの、この間。つまりキャズムですね。これが、ジェフリー・ムーアさんが「キャズム理論」と言っているものです。
どう違うかというと、先端層はスペックが命なんですね。何ギガヘルツ、何メガバイト。情報収集が大好きだし、理解もできるし、イノベーションも大好きで、足らない点は自分で工夫しちゃうし、みんなより先に見つけたいという人たちです。
でもキャズムを越えた後、こちら側(一般層)の人たちはスペックなんてどうでもいいんですよね。「私の仕事がどう楽になるの?」という価値のほうが大事になってくる。ITのことなんかよく知らないし、考えるの面倒だし、仕事のやり方を変えたくないし、創意工夫も嫌だし、できればみんなと同じものを使いたい。
これだけガラッと特性が変わってしまうのに、サイボウズはずっとボウズマンをやっていたということなんですよね。
例えばファッションの分野でいえば、先端層というのはブランドで語れるわけです。「今年のシャネルの新作、トレンドはこう出てきたか」と。
でも一般層は「入園式にどういう服を着て行ったらいいですか?」というシチュエーションで、ブランドよりもソリューションで話してもらわないとわからないわけですね。こういう違いがある。
なのにサイボウズは、キャズムを越えてもボウズマンでずっとアピールしていた。なんなら、もっと変な広告もたくさんありました。「サイボウズはおもしろい広告をすることがDNAだ」みたいな、変な価値観が根付いてしまったんですね。
でも、これは先端層に向けてあったから役に立ったわけで、キャズムを越えた一般層には響かず、「なんだこの変な広告」となっちゃうわけです。
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