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特別講演「サイバーエージェントの人づくり、組織づくり」(全3記事)

藤田晋氏「若者は上司や先輩がいると意見を言えない」 サイバーエージェント流、若手を活かす育成メソッド

2019年3月9日、「第6回 サーバントリーダーシップ フォーラム」が青山学院大学で開催されました。サイバーエージェント藤田晋社長が、特別講演「サイバーエージェントの人づくり、組織づくり」に登壇。サイバーエージェントの設立に至るまでの経緯と、藤田氏独自のリーダーシップ哲学を語りました。

「採用・育成・活性化」を掲げる

藤田晋氏:(サイバーエージェントの)転機となった合宿以来、社内では「我々に重要なのは人材の採用・育成・活性化だ」と、「この3つ(が大事)だ」と言っています。

これも原体験がありまして、僕はインテリジェンスという会社に新卒で入ったんですが、社員数80人の会社が新卒を40人採用するように、そのころは人材紹介業と人材派遣業が急速に成長していたんです。

これは中に入ってよくわかったんですけど、ビジネスモデルはほかの人材派遣会社とまったく一緒だったんですよね。値段の差別化もできないし、むしろちょっと高いようなものだった。

なんでインテリジェンスだけが急成長したかと言うと、会社内の社員のやる気が違うんです。あとは採用している人材のレベルが高い。活性化させるのが非常にうまくて、会社内でも競争してやる気にさせる。要は採用・育成・活性化に強みがあることは、それ自体が強い競争力なんだというのを就職した会社で学びました。

なので、我々の会社でも「採用・育成・活性化」ということを言い始めました。これは社内でも非常に強く浸透しているので、採用・育成・活性化には惜しみなくお金を使うし、アイデアもどんどん採用して、いろんなものを試していく考え方がベースにあります。

とくに我々は大きな設備産業ではないので、インターネットがインフラとして普及したうえで、その中で広告をやったり、エンターテインメントのコンテンツを流したり、メディアを作ったりしています。

結局、競争力・技術力・アイデア・マーケティング力などは、ほとんどが人に付随するものなので、我々は人材の能力開発を非常に重要なテーマにしています。

会社のコアは、かつての新卒人材が担う

我々はまだたったの21年ですので、毎年新卒を採っているんですが、今では過半数が新卒で入った社員になっています。中途入社でも活躍してくれる人はものすごくたくさんいますけれど、やっぱり会社のコアになっている文化というか支えている人は、新卒で採用して自ら育成してきた人たちです。

社員数が約5,000人で勤続年数5年というのは短く感じるかもしれないですけど、これは先ほどの売上と一緒で右肩上がりに人が増え、採用数を増やしているので。平均するとこのくらいですが、長く勤務している社員も多く、決して離職率は高くないです。

離職率はだいたい8パーセントくらいが健全であると言われているらしいんですが、辞めなさすぎるのも不健全というか、会社に合わない人が辞められないというか。もちろん辞めすぎるのはブラック企業みたいな可能性もあるのでよくないのですが、サイバーエージェントはちょうど健全くらいな感じです。

毎年200人ほど採用していまして、これは5000人に対して200ですから、先ほどの(社員)80人で(新卒)40人採ったところよりはずいぶん比率は低く感じますけれども。やっぱり一人ひとりの名前とパーソナリティをちゃんと覚えるくらいしっかり見ていくという考え方があるので。

本当は150人くらいかなと思うんですけど、200人がMAXかな。それ以上採っちゃうと、もう誰がいるかわからなくなるという現象が起きるので、今は毎年200人ずつ採っています。

これは調査機関が出したのですが、現役社員にアンケートした20代の成長環境というものでダントツの結果が出ていました。

悲しいけれど、上がいないほうがいい

実際にどういうことをやっているのか、これから施策を具体的にご紹介していきます。

まずはこれ、YMCAというのは「ヤングマンサイバーエージェント」という……。

(会場笑)

普通の会社は若手というと30代くらいまでだと思うんですけど、サイバーエージェントだと20代が全社員の半分を占めているということもあり、20代の青年会議所みたいなイメージで作りました。社内の中のリーダークラスの人がYMCAの会長になる感じです。30歳になったら卒業するんですけど、20代だけで中を盛り上げていきます。

これは僕の中で気づきがあったからなんです。政治・経済・グローバルなどのテーマで次のリーダーを育成するG1サミットというイベントがあるんですね。

そこに若い経営者とかも参加するんですけど、ある日「G1U-40」というものができたんです。ちょうど僕が40歳になったときにアンダー40みたいなものができたので、なんか感じが悪いなと思ったんですけど(笑)。

ある日、そのG1サミットに招かれて、講演しに行ったんです。そこには次世代のリーダーと言われる政治家、小泉進次郎さんみたいな政治家やや若い経営者たちがいるんですけど、みんな目が生き生きしているんですね。

そこでは「自分はこの社会で、こういう社会問題をこう解決していきたいんだ!」「グローバリゼーションでこういうところが日本の課題だ!」と、自分の意見をハキハキぶつけ合っているんです。

なぜこれが起きているかと言うと、要は上の人がいないからなんですよね。もっと上の先輩がいると「青いな」という目で見られたり、否定されたりすると恥ずかしいから、意見を言えなかったりします。もちろん実績や経験が足りないと言えないんですけど、若者だけ集めるとこんなに議論が盛り上がるのかということを発見しまして。

アンダー40・アンダー30みたいなことをうちの会社ではどんどん取り入れているんですけど、だいたい当たりますね。「要は上がいないほうがいいんだね」というのが、悲しいけれどよくわかりました(笑)。

同世代だけで堂々と意見を言える環境をつくった

「CA24」もよくある幹部育成です。幹部育成は部長や課長とかになってからやるものですけど、これは入社4年目くらいから30歳前後の人たちを24人選抜して次世代の経営者育成として始めています。

これに選ばれたことをすごく誇りに思ってまたモチベーションも上がるし、選ばれなかった人は悔しいという思いもある。そういうことがあったりします。

「Battle Conference」、これもU30と書いてありますが、これは技術者向けのアンダー30のイベントです。技術者も先ほどと同じで、上の人がいないと自分の技術をすごくドヤる……って言うのかな。若者用語で(笑)。そんな感じでみんなに伝えようとするんですけど、これもやっぱり上の人がいると難しい。

これはどこでヒントを得たかと言うと、理系の子が大学のゼミナールとかで研究室にこもっていると、みんな徹夜でずっと研究しているのにぜんぜん退屈じゃない。夢中になってやっているのに、会社で上司がいるとなんだか萎縮しちゃうというか。同世代の人たちだけで堂々と意見を言えるような環境を作ろうということでこれを始めました。これも当たったと思います。

これは社内キャリアエージェント。キャリアエージェントは人材紹介におけるヘッドハンターみたいな人ですよね。うちの会社のある部署で行き詰まった人が転職を考え始めると、だいたいそういう人材紹介の担当者に相談をするんです。そうすると当然外の会社を紹介されてしまって、うちのグループ内でもっと活躍できる場所があるのに転職してしまう。

昔は転職というと、求人広告や求人票を見て自分で応募していたんですけど、今の時代は求人を見て自分で応募するとなんだか(求人の)レベルがそんなに高くないというか。要は自分の履歴書を平気で晒してしまうよりも、やっぱり人を通じて紹介されたほうが価値がある。そうした転職マーケットの事情もあって、みんな誰かに相談するような傾向です。

それを社内で専門にやる担当を作ったんですよ。(スライドを指して)写真が出ていますけど、この人たちにキャリアを相談すると社内で紹介してくれるということをやっています。

さまざまな福利厚生がそろう

それ以外にも人材の採用・育成・活性化に対しては惜しみなくやっていくということで、おもしろいもの、オリジナリティがあって効果性があるものはどんどん取り入れています。

これは「macalon」という女性活躍促進の支援制度。我々の会社は20~30代の女性が多いので、妊活・不妊治療などに取り組んでいる人もいます。そういった新しい事情にも対応して、会社としてできるサポートをしていくような制度がこのmacalonの中に入っています。

ほかにも会社から2駅以内に住むと家賃補助がもらえたりとか、(有給に加えて)2年で5日休めるとか、そういったものもあります。

あと我々の会社で特徴的なのが、新卒で入った社員を社長に据えることです。僕自身も新卒で入って、1年経っていきなり社長になったわけですけど。先ほど上場した時点で「まだわけがわかっていなかった」と言いましたが、「社内で人材を育成するには、社長というポジションで荒波に揉まれていくのが一番早い」という考え方があるんです。

なので、子会社を創っては社長に抜擢していくということを非常に頻繁にやっています。累計50名以上を排出していると言いましたが、社長と横にいる取締役を含めると、今までにこの3倍以上を排出していると思います。

簡単に言うと、これが一番人材を育てていると思います。社長にしてしまうんです。「社長になったんだから必ずその事業を育て、利益を上げなければならない」という状況に追い込まれた人は、それらしくあるために一生懸命がんばる。貴重な体験をたくさん積んで育っていってもらうために、会社をどんどん創っています。

失敗した人にはセカンドチャンスを

これが会社のミッションステートメントで「失敗した人にはセカンドチャンスを」。挑戦した敗者にはセカンドチャンスを与える。これがセットでないと「社長をやれ」と言われても、そんな責任は取りたくないですよね。

出世競争が激しい大企業とかだと、失点すると脱落していくような感じなので(笑)。みんな「リスクを負いたくない」「挑戦したくない」となりやすいんです。

挑戦した敗者にはというか……(スライドを指して)彼は内定者の時点で子会社を創って社長になったんですけど、事業に失敗したんですね。だけどその間に学んだものは僕から見ると会社の資産だと思っています。彼が経験したものを次に投資して回収しないと投資の失敗になってしまうので。今、彼はマッチングエージェントという会社を創りまして、かなりの規模まで育てています。

これは去年からしばらく休止しているんですけど、10年間ずっと、2年に1回役員を2人入れ替えていまして。役員の人数は8人ですが、8人の中の2人を2年に1回変える制度をやっていました。

見てのとおり役員はみんな若いので、下から見たときに上が詰まっている。「自分のポストがないんじゃないの?」と見えかねないので、「2年に1回、役員のポストが2人分空きますよ」ということで社内を活性化させる目的で作りました。

これも先ほどの採用・育成・活性化の中で、みんなのやる気を引き上げるためにやっている中の1個です。とくに役員が近い人たちは、これによって一生懸命がんばるようになる。ちなみに役員自身も入れ替わる2人になりたくないので、必死にがんばるようになりました。

ただこれ、変えすぎちゃって(厳選されすぎて)そう簡単に変えられない人だらけになってしまったので、去年末で「1回お休みさせてくれ」と社員総会でみんなに説明しました。

僕自身も、会社を始めてからすぐにホームページにコラムみたいなものを書き始めて、ブログをやり、今ではいろんなSNSを使っています。なにかあったときにすぐ「これはどういう考えでやったのか」をオープンにすることは、今の時代にとても重要なことだと思っています。

定期的に社員と食事にいく効果

今まであった制度を変えるとき……例えば先ほどのCA8という役員を2人入れ替える制度をやめるときは、「なぜそこに至ったのか」をオープンなブログに書いてしっかり説明しました。

ちなみについ1ヶ月半前に……もし株主の方がいらっしゃったら、ご迷惑をおかけして申し訳ないんですけれども、会社が下方修正を発表しまして。今期が始まってわずか3ヶ月で下方修正を発表したので、開示と同時にブログに「これはこういうことなんだ」と書いて僕から説明しました。こんなふうに、社員との間も含めてオープンな情報共有になっています。

これがサーバントリーダーなのかはわかりませんが、週1、2回社員と食事をします。もちろん僕がご馳走しているんですが。「社員と行くときは安い店」みたいな経営者は多いと思いますけど、僕は逆です。社員と行くときはいい店をセットして、いいワインを頼んでご馳走します。これからいかにがんばってもらえるか。これは長年続けています。

ある会社の人が「社長が変わって、今度の社長は人気がないんだ」と言うんです。なぜなら社員とご飯を食べていないから。「前の社長は社員とご飯を食べていたから、すごく人気があった」と言っていたんですよね。「(一緒に)ご飯を食べただけでそんなに人気が上がるのか!」と思い、やっています。

(会場笑)

僕の肌感覚としても、けっこう大事だなと思っています。やっぱりなにかあったときに「社長は悪くない」「社長の言ってることは正しい」とみんなが与党になってくれるので、けっこうマメに食事に行っていますね。

(会場笑)

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