2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
株式会社カクイックス(全1記事)
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伊佐政隆氏氏(以下、伊佐):トップバッターは、kintone hive福岡から九州・沖縄地区を代表して選ばれました、カクイックスの福里さんにお願いしております。それでは福里さん、よろしくお願いします。
(動画が流れる)
動画音声:創業55年、鹿児島・宮崎の病院・福祉施設のリネンサプライを手がけるカクイックス。将来を見据えて仕掛けた新規事業では、溢れる事務作業を楽にするkintoneの改修要求が押し寄せている。
「けっこう直してくれますね。直してくれないときもありますね。とくにおなかがすいているときとかは、ぜんぜんダメですね(笑)」。
腹が減っては戦ができない。アワードでの戦いの準備はいかに。
(動画が終わる)
福里直也氏(以下、福里):おいは鹿児島(かごっま)から来た福里と申しもす。こげなふとかとこで話をすっこっはあんまいねもんじゃっで、わっぜ緊張しちょいもす。
今日はおいたちのkintoneの使(つ)け方をお話しいたしもす。少しでんやきた(役立)っなら良かがなぁっち、おもっちょいもす。……これで、つかみは終わりです(笑)。
改めて、カクイックスの福里と申します。よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
少し会社紹介をさせてください。私たちカクイックスは昭和38年に創立し、今年創業55年を迎える会社です。昨年、経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定されました。
医療施設や福祉施設などの法人様が主なお客様になっています。鹿児島に本社を置いていて、九州一円で活動をさせていただいております。
主な事業として、リネンサプライ・アメニティ・テレビレンタルのような、法人様向けのサービス。そしてデイサービスや入院セットサービスといったような、個人向けのサービスを展開しております。kintoneは入院セットサービス事業の中で使っておりますので、今日はそこについてお話をさせていただきたいと思います。
2012年、私はkintoneに出会いました。
カクイックスでは、2007年に「サイボウズ デヂエ8」「サイボウズ Office」を導入しており、さまざまな業務改善に役立てていた事実があります。そこで私はこのkintoneに出会った時に、正直一目惚れをしました。
サイボウズ デヂエが持つデータ蓄積と、サイボウズ Officeが持っているコミュニケーション、両方のいいとこ取りをしてくれるものだと直感的にわかったからなんですね。ただ、正直に言うと壁がありまして。サンプルの数が少ないことや、私自身がそこまでkintoneを深く知らないところがあったので、当時は導入までなかなか難しいと考えていました。
さて、入院セットサービス事業が、そもそも何だろうかという話です。例えば今日お越しになっているみなさま方、もしくはご家族の方々が、病院に入院する時、パジャマを買わなきゃいけない。あとは、タオル、日用品(歯ブラシ、コップなど)を買わなきゃいけない。しかも(病院に)持っていかなきゃいけない。意外に手間なんですね。
しかも入院したら、洗濯までしなきゃいけない。こういうことを「私たちが一切合切準備します。だから1日いくらでお貸ししますよ」というレンタルサービスが、入院セットサービス事業です。
そんな入院セットサービス事業は、2016年4月に本格的な始動を始めます。鹿児島のとある病院さんで、このサービス事業が展開されることになりました。そして、その時の条件が2つありました。
1つ目が、院内サービス員。私たちの会社では「コンシェルジュ」と呼んでいるんですが、このコンシェルジュを配置しなければなりませんでした。
そして、契約案内・配布業務・在庫管理をしなければなりませんでした。実は、運用を考えたことがなく、コンシューマー向け(サービス)だったし、入院セットが「そもそも何だよ」と(社内で詳しく知られていないではないかと)思いました。私がこれを聞いたのは1月で、(2016年4月まで)たった3ヶ月しかない。本当に焦りました。
ただ私、実はチャンスだと思っていました。と言うのも、2013年、カクイックスの中で、入院セットサービスの研究をするところがあったからです。私もそこに入っていたのですが、その時に私自身が「入院セットサービスをどういうサービスにすればいいんだろう」「本質は何だろうか」と考えました。
そして、「患者様を中心とした、職員の方々、そしてご家族の方々の、会話・ふれあい・コミュニケーションを増やす」。このこと自体が入院セットサービスの本質なのかなと考えました。
病院の中にコンシェルジュを置きたいなと思っていましたので、私はここにkintoneを使おうと考えていました。しかも最低機能だけあればいいと考えていました。
1月なので、すぐに作らなきゃいけないかなと思ったのですが、「kintoneで本当にやりたいことは何だろう」「入院セットで本当にやるべきことは何だろう」と、もう一度振り返って、立ち止まって考えました。
そして、kintoneを使うためのルールを定めました。1つ目は「すべてのアプリ・スレッドを利用する」です。逆に、余計なアプリ・スレッドは作らない、いらない。余計な項目は入力しない。絶対に必要なものしかやらない(というルールにしました)。
そして2つ目に、「ハードルを徹底的に下げる」ということをしました。いろいろなハードルがありますが、大きく2つあります。
まず1つ目が、利用。これはコンシェルジュの方々が「選べばいい」「入れればいい」「押せばいい」(というものです)。「〇〇すればいいだけですよ」というように、必要最低限の項目に加えて、動作も最低限になるよう、ハードルを徹底的に下げることをしました。
そして2つ目です。「伝達」とありますが、これは現場の方、コンシェルジュの方々が、管理者である私たちになにかを伝えたい時(に使います)。「困ったことは掲示板」「なんでもかんでも掲示板」とお願いをしました。
その時に、私は1つだけ言い方を変えました。この発表のポイントはこれだけです。私は掲示板に「“言って”ください」と伝えました。大事なことだからもう1度言います。掲示板に「“言って”ください」です。
困ったことや修正してほしいことなど、いろいろなことがあると思います。入力する作業はただの作業でしかありません。私がやりたかったのは、掲示板を通して「私に何か言ってくれればどうにかします、がんばります」。こういうことを演出することによって、さまざまなお困りごとを拾い上げたいと考えました。
これが実際の画面になります。先ほどから言っている通り、最低限のスレッドとアプリしか置いてません。少し駆け足ですが、各機能を説明したいと思います。
まず1つ目は、契約管理。最低限の情報です。ご利用者様の情報と、配布をするときの情報があります。そして入力をする項目で、後ろの画面と背景色が見づらいと言われたので、背景色を変化させて入力する項目を明確にしました。
2つ目は、配布管理。病棟を選択すると、お客様の一覧が出てきます。
そしてPDFを印刷して、コンシェルジュの方々が用紙を持ちながら各病室のお客様へ。Lサイズ、Mサイズなど、いろいろな患者衣のサイズを準備して配布を行っていきます。
そして配布が終わったら、このように実際に書いていただいています。スライドの一番左側に「配布チェック」というものがあって、配布が終わったらコンシェルジュの方に「この方は配布が今日終わりましたよ」といったことや備考など、いろいろなことを書いてもらいます。実はこの紙を、我々は本社の人間と共有しています。
次に、本社との連携。これはkintoneを使われている方が、おそらくこういう使い方をしているだろうという使い方をしています。本社の人間が請求の情報を受けたり、電話を受けます。あとは病院の方々、病院のコンシェルジュの方々もいろいろな情報を受けますので、お互いでやり取りをしながら問い合わせを管理して、対応状況・進捗状況を完了まで持っていきます。
(スライドを指して)これは入院セットの累計契約数と、月間利用者数のグラフになっています。まず棒グラフが累計契約数になっていて、kintoneで約81パーセントのお客様を管理しています。そして、線グラフでは、2016年4月が転機、というお話をしました。今年の8月時点で、月間の利用者は約20倍に増えました。まだまだ増えます。いまも実際に増えています。
さて、「現場にて」とありますが、私は病院さんに行ってきました。配布管理など、いろいろしてきました。(一連の作業が終わると)すぐ、このようにメモ・付箋がたくさん出てきました。「早くこのアプリをなんとかして」「こんなふうにして」「この紙を出したい」……。「わかりました」「がんばります」(と答えました)。
けっこうプレッシャーだったんですよ。コンシェルジュの方々が後ろで、「早く(改善)しないのかな」という感じで。実際にコンシェルジュにこうやって見ていただいたところ、ここまでわずか10分で、単純です。いろいろなことをやりましたが、これ(改善作業)は10分ぐらいで終わりました。「早くできた。すごくありがたい機能だな」と思っています。
いままでは、病院の中のコンシェルジュだけの話をしましたが、実はkintoneは請求の機能を持っていません。したがって、事務の方々が基幹システムへ顧客マスターを二重入力しなきゃいけない手間があります。これは、実はいまも残っているんです。
これをなんとか解消できないかということで、今年の4月にOCRを使って、私たちもお手伝いをしてシステム化をしました。(その結果)約22パーセントの工数を削減することができました。
そして今年の9月、「UiPath」といういま話題のRPAですね……私もちょっと話題に乗りたかったので(笑)。我々のバックヤードの業務を少しでも楽にしたいので、RPAを使って30パーセント削減しました。このような工数削減もできるようになりました。
コミュニケーションの進化には、いろいろなものがあります。病院のコンシェルジュ同士のコミュニケーションなど、要は我々に対して「こういうアプリを作ってくれ」「こういうことをしたいんだよね」という業務改善提案が、よく来るようになりました。
そして(コンシェルジュのみなさんは)病院の中にずっといらっしゃるわけですから、病院の方、職員の方に「こんなサービスを提供したらどうですか」「システムの人、こんなふうにできないんですか」と(提案が来るようになりました)。今度は病院の方々を助ける。
この次。コンシェルジュと病院の職員の方々が自発的に勉強会をしているんですね。(コンシェルジュが)病院の方と話をして、今度は我々の側に、「患者様のためにこんなことはできないか」と言われるようになったんです。実は私、「なるほど、入院セットの本質ってそういうことか」と。後になって聞いたんですが、とてもうれしい話でした。
デヂエやOfficeを使ってから、カクイックスで社内のコミュニケーション変革が起きていました。入院セットの中でkintoneを使うことによって、我々だけではない、そして病院様だけでもない、我々と病院様(のコミュニケーションが進化した)。
今度は患者様までコミュニケーションをつないでいくようなつながりができたことを、大変うれしく感じています。
少しだけまとめさせていただきます。私は、入院セットに至るkintoneの導入・スタートを、3つの段階に分けました。まず第0段階として、「深く知る・考える」ということをしました。
サービスの本質は、「実際、入院セットってどういうサービスなんだろう」「誰に何をすればいいんだろう」と深く考えるようにしました。そして自分自身、私自身がどうやって向き合えばいいのかを考えるようにしました。会社だけではなくて、「私自身がどうしたいか」です。実はここではkintoneにはまだ触っていません。
そして次、第1段階。ここから初めてkintoneを使うことになるんですが、「ギャップを知る・作って壊す」ということをしました。コンシェルジュのみなさんに現場で一生懸命触ってもらっています。「こんなふうにしたい、あんなふうにしたい」「あれを直して、これを直して」「これはいらない、これはいるから」「早く作って」。その内容について、一生懸命話を聞きました。
要は、お話をお伝えしていただいたんですね。その内容を聞いては作る、聞いては壊す。一生懸命、何度も何度も繰り返しました。そして洗練度をどんどん上げていきました。
そしていま、現段階です。もう私から「こうやりましょうか」ではありません。現場の方々にすべてを託しています。現場の方々が「私たちはこんなふうにサービスしたいの」「こんなふうにすれば病院様は喜ぶし、患者様はこんなふうに喜ぶよね」というようなことを聞いています。
それを受けて我々は、一生懸命直す。本質が変わらなければ私はなんでもやります、というようなことをしています。
これで最後のスライドになります。今日ここにお越しのみなさんは、いろいろな立場の方がいらっしゃると思います。現場の方、コンサルタントの方、SEの方、経営者の方など、いろいろな方々がいます。
そういう方々が、例えば「kintoneを使うだけではなくて、こういう業務改善をすればもっとよくなるんじゃないかな」と思いながら、毎日試行錯誤してやっていることと思います。「これはたぶんいいはず」と思いながらやっていると思っています。
これはいいに決まっているんです。当たり前なんです。みんなが一生懸命考えて、誰かのためになにかをする。一生懸命すれば業務改善できる。失敗もあるかもしれませんが、この失敗の積み重ねがだんだんと会社を変えるだけではありません。すごく大袈裟に言うと、これは世界が変わると私は信じています。
私が今年、福岡のkintone hiveでお話をさせていただいた時、全国で8,000社の方がkintoneを使っていると聞きました。そして先日のサイボウズデイズ福岡では、9,500社。ついに今日、1万社を超えたと言っていました。本当にすごいことだなと思っています。
こうやってみなさんと一緒に、どんどん会社を、そして世界を変えていきたいと思っております。以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
伊佐:素晴らしかったです。ありがとうございます、お疲れ様です。
福里:ありがとうございました。
伊佐:福里さんの人柄が滲み出るような(プレゼンでした)。kintone君がお宅にいるんですね。
福里:はい。kintone君、kintoneちゃんですから。
伊佐:すごくいいですね。実際におうかがいもさせていただいて、まさに紙の溢れる現場では、なかなか変えるのが難しいんじゃないかと思っていたんですが、どうやってアプローチしていったんですか。
福里:もともと、先ほどお話をさせていただいた導入の前の部分で、kintoneの前にサイボウズOfficeやデヂエを導入していて、これが「大事なんだよ」と。みんなで情報を共有する、そしてみんなで1つのタスクをクリアしていくことが大事なんだと。
伊佐:なるほど。そのステップがまずあったんですね。紙からいきなり来たわけじゃなくて、情報共有するといいことがあることは、もうみなさんはわかっていたんですね。
福里:はい。その大切さがもともとあったので。ツールがkintoneやなにに変わっても、そこの大事さが社内で共有できていたので、正直ちょっと楽ではあったかなと。
伊佐:なるほど、いいですね。いまどんどん広がっていますけど、次にチャレンジされることは決めていらっしゃるんですか。
福里:はい。RPAはもちろん、11月の来週くらいから一応実証実験ということで(考えているものがあります)。今日JBATさんという会社がたぶんお越しになっていると思いますけど、JBATさんやソニーさんと話をしながら、申込書自体をデジタルペーパーにして。
伊佐:最初から紙を出さないということですか。
福里:出さない。
伊佐:おぉー、すごい。
福里:九州でこれが通用すれば、もっとよくなるんじゃないかなと思います。
伊佐:そうですね。
福里:そういうようなことをいま考えて、実証実験をする予定になっています。
伊佐:素晴らしいです。どんどんチャレンジしていただきたいなと思います。
福里:がんばりたいと思います。
伊佐:はい、ありがとうございました。福里さんに大きな拍手でお送りください。ありがとうございます。
福里:どうも、ありがとうございました。
(会場拍手)
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