2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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稲増美佳子氏(以下、稲増):みなさま、こんにちは。明日から彼岸の今日、9月19日。平成最後の年の彼岸前になります。ここにお集まりいただき、このように同じ空間の中にいるということ。これもなにかのご縁だと思います。
今回私、HRインスティテュートの稲増がお話しさせていただくのは、「人間尊重」がキーワードになります。人間尊重、と言うとちょっと小難しく聞こえるかもしれませんが、みなさんの今お隣にいらっしゃるのも、前にいらっしゃるのも後ろにいらっしゃるのも、人間でございますので、お互いに尊重するというご挨拶を。
「人間尊重」を経営理念に掲げている出光興産の出光佐三さんも、それからパナソニックの松下幸之助さんも、「人間尊重とは礼から始まる」と言っていますね。「人間尊重=礼」だというようなことをおっしゃってましたので……もしかしたらお隣の方は、ぜんぜん知らない方かもしれません。お1人だったら寂しいので、横同士とか。
できればお2人ですが、お1人で寂しそうな方がいらっしゃったら、みなさんお声をかけて、前後で。相手を尊重した笑顔で、「こんにちは」というご挨拶だけでもしていただけますでしょうか。では、よろしくお願いいたします。お隣同士で、「こんにちは」。
(会場挨拶)
ありがとうございます。みなさんの笑顔が見えて、私もホッといたしました。こちらも本当に緊張しております。みなさんに、こんなに良いお天気の日に、いろんなことが選択できる1時間、ここに座っていただいてお話を聞いていただけるだけでも大変光栄です。なんとか価値のある時間にしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
ありがとうございます。さて、みなさんのお手元にある会社案内の中に、今パワーポイントのスライドが映っておりますが、こちらのスライド(が入っています)。たまに映ってるものが入っていない部分もございますが、顔を上げながらこちらを見ていただくかたちで楽しんでいただければなと思います。
それからうちの会社のことがわかるプログラムブックなんていうものも入っていますので、ぜひご覧ください。それから、あらあらなんと、みなさんの机の上には今回のこのサブタイトルにある、「人をあきらめない組織」という本が置いてあります。「どうぞお支払いください」というわけではなく(笑)。これはプレゼントで差し上げたいと思っております。
といいますのも、このセッションは1時間なのでね。私もこの本を書きましたから、本当にこの本に対して想いがたくさんあります。この時間だけではきっと伝えきれないのではないかと。なんとかがんばりますが、その部分以外はぜひ本をお読みいただければなと思っております。帰りにブックオフに持っていくようなことはなさらないように(笑)。
(会場笑)
ぜひ1度は、お読みいただければありがたいなと思っております。
会社のことをちょっとご紹介させていただいてよろしいでしょうか。うちの会社は25年前にできました。25年前というと……安室奈美恵さんがデビューした年ですね(笑)。というのもありますし、真面目に言いますと、戦後レジームの55年体制が終わり、細川内閣が誕生した年です。1993年はJリーグも誕生した年なんです。
いわゆるバブルが崩壊して、ここから日本の企業はまさに「アメリカナイゼーション」と言ってもおかしくないという時代です。グローバリゼーションの中でもアメリカの影響が大きく、そのような国際化の波に私どもの日本企業というのは、ずいぶん影響を受けてきた。そんな25年だったと思います。
私は以前、富士通でエンジニアをやっていました。情報を使って経営を判断していくことが大変おもしろくて、経営の勉強をしました。それで1度、アメリカで勉強させていただいて、日本に戻ってきてから25年前に、たった3人の仲間とともにこのHRインスティテュートという会社をつくらせていただきました。
原宿に土地も買って、建築家とワイワイやって、ログハウスのような「ビジョンハウス」というビルも建てました。そちらでも活動させていただいております。
また、東京、福岡、ホーチミン、ソウル、上海と、アジアにも展開させていただいております。実はちょっと自慢なのですが、この25年間で111冊の本を出させていただいております。
どうでしょう、みなさん。HRインスティテュートという会社なんですが、初めて聞きましたという方、遠慮なく手を挙げてみていただけますか?
(会場挙手)
本当に遠慮ないですね、みなさん。
(会場笑)
ありがとうございます(笑)。でもよくわかりました。このご縁ができて、本当にうれしいなと思ってます。
これまでに111冊の本を出しているのですが、これはがんばってみんなで分筆しております。お手元の本も分筆で、かなり想いを込めて書いた本です。その意味で、実は印税は個人のボーナスのようです。貢献分で個人に渡してあげるというような、変わったマネジメントをしています。
私どもは会社を作ったときから、自分たちの利益をいろんな海外の方々とシェアをし、また日本でもこういった活動をさせていただけ、その点で大変恵まれております。ですので、「恵まれていない」と言ったらすごく失礼ですが、そういう機会を持たない方々に対してシェアをしていきたい。シェアリングというのが、私どもの会社のベースの理念なんです。
なので、私たちは自分たちの利益を使って、マダガスカルの学校を助けたりとか、ベトナムに学校を作っちゃったりとか。全社員みんな一丸となってアフリカに行っちゃったりとか(笑)。採用させていただくときも「そういうことにお金を使うけどいいですか」、と確認しています。自分たちのことを25年前から、ソーシャルカンパニーと考えている、そんな会社でございます。
私どもの会社のミッションは、つくった当時から「主体性を挽き出す」。この「挽く」というのは、小麦粉やコーヒーをじっくり挽くようにということで。無理やり引っ張り出すのではなくて、私どもがミル役になったら、そこでできあがった綺麗な小麦粉で、どうぞお1人お1人、またその組織の1つ1つが、ケーキになったりクッキーになったりパンになったり……と、ご自分のなりたい姿になっていかれるように。じっくりと挽いて差し上げられるような存在になりたいということで、コンサルティングと研修プログラムをさせていただいている会社でございます。
「主体性」というのも、時とともにやはり意味が変わってきています。私がアメリカから帰ってきたときは、日本人はもっと海外に対して主体性・自主性を持っていただきたいという、そのような国際的な教育もやっていきたいという意味で、「主体性・自主性をもっと挽き出しましょう」と。もっとご意見を言っていただけるような日本人になっていただきたいという想いがありました。
でもそのうちに、「日本人は本当に素晴らしい」ということが、研修やコンサルティングを通して分かってきました。だけど自分たちの中にある可能性を、残念ながら挽き出し切れてない方もいらっしゃるんじゃないか。「自分の自主性」という意味から、「可能性を挽き出す」という意味になりました。
日本も世界も、企業の環境も大きく変わっていきます。一人ひとり、そしてその企業の使命を、もう1度挽き出していただきたいと、今私は考えています。何のために設立されたのか、何のためにこの世に命をいただいたのか。その使命を、組織であれ個人であれ気がついて、それに則って生きていけるような時代に、やっとなってきたんじゃないかなと思います。そこのお手伝いをしていきたいな、と思っております。
(スライドを映しながら)「なんだこれは」と思われるかもしれませんが、実はうちの会社を一緒に立ち上げた野口吉昭という者が、9月10日、つい先日新刊を出しました。これ見よがしに宣伝してますが(笑)、ちょっとみなさんに、Amazonでポチっ、なんてしていただけるとありがたいかなと。
「思考・言葉・行動・習慣・人格・運命の法則 人生を変える自分の磨き方 人生に奇跡を起こす方法」と、もうどれがタイトルなんだという。
(会場笑)
「わからないじゃないか」と突っ込みたくなるような(笑)、そんな本なんですが、私もいろいろとネタを提供してます。マザー・テレサさんの言葉とかですね。それから小泉……息子さんのほう、進次郎さんの言葉みたいなのを提供しました。
自分たちで言うのもなんですが、「野口、良い本を書いたな」と思っております(笑)。本屋さんで見かけたら、ぱっと手に取っていただければと思います。ありがとうございます。
「人間尊重」「職場関係づくり」「人をあきらめない組織」。本日は、まさにタイトルにあったこのキーワード3つを挙げています。「どこにも興味がない」という方がここに座ってたら本当、ごめんなさいなんですけれど(笑)。一応なにかしら、テーマにも惹かれてここに座っていただいたかなとは思います。
どれに1番……あ、1番じゃないですね。どこに言葉として惹かれたか。3つ手が挙がってもいいんですけど。申し訳ございません、ちょっとみなさんの興味によって時間の配分も変わってくるので、遠慮せず手を挙げていただけますでしょうか。
「人間尊重」というところ、ここが自分に響きましたという方。
(会場挙手)
ありがとうございます、半数くらいいらっしゃいます。「職場関係づくり」、ここですね、という方。
(会場挙手)
半分くらいかな。「人をあきらめない組織」、ここですね、という方。
(会場挙手)
あっ、みんなだいたい同じ感じでございました(笑)。
(会場笑)
では、バランスをとってやっていきたいなと思っております。「人間尊重」というところに入らせていただきます。
「気づかぬうちの”モノ”コミュニケーション」は、自分たちの会社の中にもないでしょうか。「あの子に言っといて」とか。それからアルバイトさんのことを外食産業で、1本、2本、3本なんて勘定するような。そんな職場も実はあったりするんですよ。
私たちは人間尊重を本当にできてるだろうかと。もしかしたら、人のことを、”モノ”コミュニケーションしてしまってるときはないだろうか。これ、もう1回自分たちの職場のことを振り返ってみると、「あちゃー」なんてことはけっこうあったりします。
取引先様のこともそうですね。またはご自分の会社のパートナーさんも。いろいろな関係で成り立っているビジネスだと思うんですが、相手のことをついつい”モノ”コミュニケーションしてしまってるような、そんな残念なコミュニケーションがあったら、本日から切り替えていただきたい。
ここまでの習慣はいいんです。そういう時代だったんです。そういう言い方をしてもおかしくない組織だったんです。でも、ここからはぜひ、少しずつ意識して切り替えてみていただきたいということなんです。実は時代は大きく動いております。
人間尊重がなぜ大切か。当たり前ですけど、誰だって尊重されたいからです(笑)。みなさんもやっぱり、尊重されないよりは、尊重されたいですよね。1番尊重されない状態というのは、実は戦争みたいな……アウシュヴィッツだったり、石井細菌部隊だったり。ああなっていくと、人間のことを番号で呼びますね。
同じ人間だと思ったらとてもできないような、尊重や尊厳を忘れてしまうようなコミュニケーションをとらざるを得ないとき、人はその人を”モノ”として扱います。番号で呼びます。
それはちょっと悲しいじゃないですか。誰だって尊重されたいはずです。私たちは、なんと平和なこの時代に生きているわけです。そして先進国です。それを世界に示していくような、そんなマネジメントを日本から生み出していきたいな、と思っています。
ではみなさん、ご自分は職場で「尊重されてる」と感じますか? または、目の前の方を「尊重しているな」といつも思って、お仕事をしていらっしゃるんでしょうか。ちょっとシビアな質問ですが、先ほどのご挨拶したお隣同士、こちら3人とかで、たった1分しか差し上げられませんが、どう感じているか呟き合ってみていただけますか。
「こういうの私はイヤです」という方は意思を尊重しますので、「話しかけないでください」というバツ印を出していただければ、ぜんぜんOKです(笑)。お隣同士で、改めて「尊重」ってどうですか。どうぞ、ぼそぼそっと話し合っていただけませんか。
(会場相談)
はい、ありがとうございます。すいません、とってもいい感じでお話しされてるのに遮ってしまって申し訳ないです。今、「ついついやっぱり『派遣さん』なんて言っちゃったりしちゃいますよね」とかおっしゃってましたね。ここまでは、いいんです。そう思ってください(笑)。
(会場笑)
いいんです。ですけれども、今日からはちょっと意識していただく。そんなコミュニケーションに切り替えていただければなと思います。
なぜなら、時代は大きく変わっています。これは6月26日に日経新聞1面です。ニュースピックスという無料アプリのニュースアプリがあって(そこが出した広告です)。別に私、回し者ではないんですが(笑)。やはり時代を読むことができる、そんな情報を全部集めてありますので、(このアプリは)参考になるんじゃないかなと思います。
「さよなら、おっさん」と(書いてありますね)。私も本当におっさんですから(笑)。自分の中に、きっと3分の2くらいはおっさんな部分があります。これは性別に関係はありません。または年齢にも関係がありません。
ニュースピックスさんが言っているこの「さよなら、おっさん」ですが、これは既得権益とか自分のやってきた習慣に囚われ過ぎている、そういう人のことを「おっさん」と呼んでいるんです。
日大アメフト部から始まって、昨今は体操、それからモリカケ問題。それから財務省のセクハラ問題。「なんだかおかしくない?」みたいなことが、世の中起こってませんかね。まさに「おっさん」文化。「おっさん」の意識を持っちゃった人。ちょっと誤ったことしちゃってませんか、ということですね。
ここまではよかったのかもしれない。30年ほど前は許されたことかもしれない。だから、時代が変わったんです。だって「#MeToo」の運動だってセクハラのことだって、「そんなのはあたしなんて、もう当たり前ですよ。笑い飛ばして終わりですよそんなのねぇ」なんてことが、今や「訴えます!」みたいになっちゃう。
武田鉄矢が「僕は死にましぇん!」みたいに言ったあのドラマ、覚えてますか? はっきり言って、あれ、ストーカーですよ。
(会場笑)
そういうもんなんです。時代が変われば常識が変わっていくわけですよね。そういう意味で言うと今、日本型タテ社会が限界にきているということですね。これ、後でもう少しまたご紹介いたします。
(スライド文言:経団連、この恐るべき「 」集団 1.全員男性 2.全員日本人 3.全員60歳以上 4.全員「 」経験者 5.全員「 」なし)
さてみなさん、ここ(空欄)に入るもの、なんだと思いますかー?
(会場笑)
経団連の会長・副会長、別にこの方々に、私は文句もなにもございません。ただこの18人が、全員男性、全員日本人、1番若くても62歳。ここの2つ(4番、5番)とここ(最初の見出し)に来るもの、なんでしょうか?
じゃんっ。すいません、時間がなくて(笑)。「(この恐るべき)同質集団」ということで、日経オンラインでしっかり出ていました。全員「サラリーマン経営者」です。京セラの稲盛さんのように、自分で起業家だったなんていう方はいなくなってしまいました。
そして、「全員転職経験なし」です。このダイバーシティの時代になんなんですか。そんな感じじゃないですか? ここが「ダイバーシティ・インクルージョン」なんて言っても「大丈夫ですか?」みたいな。そんな感じがいたします。
もちろんカラフルなご経験もされてますし、心の広い方々だとは思います。しかし「もっといろんな人が入ってもいいんじゃないの?」というのが正直なところですね。
さて、そのことに重なるんですが、「違いを楽しむ~多様性を受け入れる」ということが、日本人はなかなか難しいんですね。私もそうです。でもこれは仕事のやり方とかに対しても、今働き方改革ですごい苦労してるのはそういうことですよね。なかなか意識が変わらない。
でも人に対してもつい色眼鏡で見てしまったりしていると、これもいけないことです。「この頃の若い人はな~」なんて、自分の思考の枠組み・傾向があることを認識すること。これ、とっても重要です。
さっきお聞きした「尊重し合ってますか? 職場はどうですか?」とついて、「お互いが尊重し合ってみんなハッピー、みたいな組織なんてあるわけないじゃないですか」とおっしゃる方もよくいらっしゃいます。本当なんでしょうか。そういう組織に向かっていくことは、本当にできないんでしょうか。
1度真逆に考えてみていただきたい。「できるんですよ」ということを基点にして考えてみたら、「どうしたらいいんだろうか」と考えてみる。「できないんですよ」じゃなくて、「できるんですよ」。じゃあ、どうやったらできるんでしょうかね。これを考えていきませんか。
これはいろんなところに使える逆転の発想だと思います。「今の若い人たち、なんだかねー、ぜんぜん自分で動いてくれないんですよ」とかおっしゃるかもしれない。でももしかしたらそれは、私たちの見方のほうが誤っているかもしれない。
人の欲求というのは、大きく変わってきています。これはマズローの欲求段階ですね。まず、戦後なんていうのはもう欠乏動機ですから、モノがあればうれしい。お仕事がない時代には、仕事があればうれしい。物質的な欠乏を満たすこと、「もっとお金を」、「もっと車を」みたいな。そんなことで幸せだった時代がありました。ある意味では、とても幸せな時代です。
しかしそれが一定に満たされると、今度は精神的な欠乏動機が出てきます。「もっと人様から認められたい」とか、「自分はもうちょっとやりがいある仕事をしたい」といったような、社会的な欲求で認められたい、または自分を尊厳として認められたい、というような精神的な欲求が出てきます。
今の若い方々はいろいろなモノを持ってますから、もう欠乏動機では動かない。充分に持ってるんです。物質も持ってれば、精神的にも安定してるんです。良いお友達がいるし、良い家族はいるし、という方々が多いです。そういった世代は何で動くか、何が動機となるか。
「成長動機」。実はこれも大きなキーなんです。「えー? あの人たちが『成長しよう』なんて思わないよ。なんたって自分の好きなことしかやってないよ?」……その見方はもしかしたら、一面しか見てないかもしれない。そう自分の気持ちを切り替えてみていただけないでしょうか。
アメリカで言うところのZ世代、1995年以降の生まれ。この方々が今年、新入社員として入ってきました。とうとうZ世代です。Y世代がミレニアル世代と言われた世代です。このミレニアル世代も、私たち80年代前に生まれた人間とはずいぶん違います。
しかし、とくにZ世代が社会人デビューして、彼らのことをよく知らないと、もしかしたらそこに大きなギャップがあるかもしれません。デジタルネイティブです。95年、Windows。95年、インターネット解禁。このときに生まれたんです。生まれたときからデジタルネイティブです。
そしてプライバシー保護の意識が高いです。音楽をオンラインで大量に消費します。ブランドではなく、本質に価値基準を置きます。仲間とどんどんコミュニケーションをリアルタイムにとります。起業家精神が旺盛です。アメリカでは9.11、そして日本では3.11や阪神大震災を経験しているので、社会的課題への意識がとても高いです。アメリカではこの人口が26パーセント、約4兆円の市場規模と言われています。
その方々とともにこれから作られてくる、ニューエリートの時代。みなさんに本を買ってくださいということではないんですが、Googleにもいた有名なピョートル(・フェリクス・グジバチ)さんが『ニューエリート』という本を出して、これも今ずいぶん話題になってます。
オールドエリートは「性質:強欲」「要望:ステータス」「行動:計画主義」で、「人間関係:クローズド(差別的)」。「考え方:ルールを守る」「消費行動:見栄消費」(笑)。ちょっと言い過ぎですけど、でもこういう方も確かにいらっしゃったんでしょう。
ニューエリートは「性質:利他主義」「要望:インパクト・社会貢献」「行動:学習主義」で、人間関係は「コミュニティづくりなどのオープンなコミュニケーションを重視」し、考え方は「新しい原則を作り」、「消費行動:ミニマリズム」。無印大好き、みたいな。そんな感じですね。これは中国でもそうですし、もうどこでも今、世界的に同じような流れが起こってきています。
こういったニューエリートたち、そしてこれからのZ世代。私たちはもしかしたら、自分たちの観念を押し付けてしまってるだけなんじゃないか。もしかしたら大きく変わってるんだから、あちらの正しい言い分を、ちゃんと耳をそばだてて聞いているだろうか。
「ワークライフ・バランス」という言葉が、働き方改革でずいぶんはやっています。でも私はこの言葉はあまり好きではありません。ワークとライフでバランスとるって、なんか人生分担してるみたいで、その考え方自体もちょっとおかしくない? みたいな。
実はニューエリートとかZ世代の人たちは、そういう考え方の方が多いです。私は、「ワークライフ・インテグレーション」という言葉を一時期使ってたことがあります。「統合していく」。ワークとライフを気持ちよく統合していったらいいじゃない。これ、IBMさんなんかは使ってましたよ。IBMさんも「バランス」と使わずに、「インテグレーション」と呼んでいた。
でもSIerさんが「インテグレーション」と使うと、仕事中心的な感じがして(笑)。「仕事に取り込まれる」みたいな感じでイヤだなあと。滅私奉公みたいな印象があった。
私は、ここ3年は「ワークライフ・ハーモニー」という言葉を、ずっと社内でも使ってました。これはネスレさんが使ってます。ワークライフ・「ハーモニー」です。ハーモナイズを取っていけばいいじゃない、という考え方。
でもこのところ、Z世代とともに出てきた言葉は、私もこのとおりだと思ったものは何かと言うと……「ライフワーク」です。自分が生きたい生き方に、仕事がはまればいいんです。そしたらとてもハッピーなライフワークですよね。「そんなことできるの?」と思うかもしれませんけど、これから徐々に、できる土台ができあがってきています。テクノロジー的にも時代の流れも、そして人々の意識もです。
もしみなさんが今している仕事が、自分に与えられた意味のあるライフワークなんだと思えたら、ハッピーじゃないですか。会社にはミッションがあります。会社のミッションにどこか惚れて、会社に入ってませんか? 「うちの会社はこんなことを信念としてる、これは素晴らしい、ここに惚れたんだ」……残念ながらそうじゃなかったという方は、もう1回自分の会社の使命を、ミッションを見直してみてください。いいこと言ってますよ。どんな会社だってひどいことは言ってません。
(会場笑)
本当に素晴らしいことを言ってます。社会をよくしていこう、みたいなこと言ってます。それが本当なんだったら、自分が考えることと一致する重なり合いがあったっておかしくないじゃないですか。その重なり合いを探していこう、と。
もしその会社で言ってることが、「現実はうちの職場はぜんぜん違いますよ」というんだったら、ミッションと現場の間に乖離が起こってしまってるということですよね。これはミドル層が、「なんのために我が社は存在するのか」を、きちんと伝えていないということです。
ちゃんとそこをつないでいかないと。つないでいったら若い人たちは、「そうですよね、このコピー1枚とるのも、実は社会をこうするためですよね!」みたいな(笑)、つながりを感じられるかもしれない。
なのに、「なんだこの仕事。うちの課長のためにやってんじゃねぇか?」みたいに見えたら、「ふざけんなよ」という気持ちになっちゃう。いったい自分は何のために働いてるんだろうか、ということ。ライフワークという意識を持てることがあったら、もっと自分の仕事も自分の人生も、価値あるものになっていきます。
人間尊重って、今目の前にいるこの人のことを、価値あるもの、尊いものとして大切に扱うことです。この人が今、「どんなものをやる気と思って仕事に向き合ってるんだろうか」とか、「この人はどういう生き方をしたいんだろうか」ということを、本当に社内で話し合ったことがあるだろうかと。それを実現できるような組織って、本当に作れないんだろうか……と、考えてみてください。
そりゃあ一足飛びには無理ですよ。でもその努力は、経営層を含めてやるべきだと思います。「そのことに向かってるんだ」ということが、その組織の誇りになっていけば、みんなだってそういう組織になりたいと、一丸となっていく方向性ができてくるかもしれない。そしたらこれまで見たこともないような力を、若い人たちが発揮するかもしれない。
もしかしたら……というところに賭けてみてもいいんじゃないか、という時代がとうとうやってきたんだな、と私は思っております。
尊重をベースにして「関係づくり」をどうしていくのかということです。関係づくりの中では、私は本の中でも実は書いています。ちょっとささっといってしまいますが、本をあとでしっかり見てみてください。
(スライドを映しながら)どうでしょう。みなさま方の職場の、この「3大悪玉遺伝子」。私たちはよく、組織の遺伝子分析というのをやるんですね。組織には善玉遺伝子もあれば、悪玉遺伝子もあります。ふるーい遺伝子もあれば、新しい遺伝子もあります。守るべき善玉遺伝子は何で、駆逐すべき・撲滅すべき悪玉遺伝子は何で、変えていくべき遺伝子は何で、創りあげていくべき遺伝子は何か。
これをもう新入社員から経営層までみんな、話しやすい仲間同士でやっていただくと、それぞれの色合いが出てきます。それをみんな知ることが大事なんです。「なんだ今の若手って、うちの善玉遺伝子をこんなふうに思ってんだ」、「悪玉遺伝子をこんなふうに思ってんだ」ということ。これを経営層も知るべきです。それで、経営層はどういう思いで善玉遺伝子を大切にしているか。ミドルも若手も知るべきです。
そういう遺伝子分析を通して、私たちが悪玉遺伝子として見つけたのがこの3つです。「心のないコミュニケーション」、「仕組みがないマネジメント」、「刺激がないオペレーション」。なんだかちょっと気を緩めると起こり得てしまうような、そんなものですよね。
「心がない組織=社員を大切にしていない」ということになっちゃってませんか。気持ちはあるんです、でも時間がないとか。いえいえそんなことありません。挨拶ひとつ、笑顔ひとつ。一人ひとりが意識さえすれば絶対に変わるんです。
心のないコミュニケーションをやめ、社員をもっと大切にしましょうと。仕組みがないマネジメントでは、みんな疲弊していっちゃいます。「なんかこれ、3年前もやったプロジェクトだよね。またやんの?」とか。同じことが繰り返されちゃって、疲弊していっちゃう。社員の能力をしっかり活かすためには、無駄は取りましょう。
そして、刺激がないオペレーション。「なんだか『こなし』で仕事してるよね」、と。「こんな反復作業ばっかりずっとやってたら、いつかAIやRPAやロボットに仕事を取られちゃうよね」……そんな心配も、今の若い人たちは真剣に心配してるんです。私たちの心配とは、程度が違うほどに心配します。そりゃそうです。その方々の5年後、10年後、15年後、20年後。どこまで本当にロボットやAIやRPAが、反復作業を取ってしまうか。そういったことを本当に気にしていらっしゃいます。
若い方々がタコツボの関係の組織に入ってしまうと、もう自分の心をシャットアウトして、「言われたことしかやりませーん」とか、そういう意識になってしまいます。または、ご機嫌取りでニコニコはしてるけど、実はぜんぜん忠誠心もない、みたいに切り替わってしまう。
今タコツボの組織になっちゃっていないか、というのを思いっきり切り替えていかないと。つまり鍵を握るのは、分かち合うコミュニケーションをどうやって作っていくのかですよね。これをやっていかなかったら、本当にRPAに全部置き換えられていきますよ。
チーム協力関係、コネクティング。こういったものの第1歩って、一人ひとりが意識して始めないと。社長の号令で始まるものではありません。1人がさざ波を起こせば、やっぱり少しずつ広がっていくものです。ぜひここにいらしてるみなさま方が、いつも挨拶しない人だったら、まずは挨拶する。「〇〇さん」と言って、目を見てみる。それだけでもぜんぜんOKです。さざ波なんですね。
もしみなさんが、「いやいや『こんなチーム作りたい』と思ったって、若い人たちって言われたことしかやんないし、積極性・挑戦意欲がぜんぜんないんだよ。扱いがむずかしいし、パワハラ・ブラックだってすぐに騒ぐし」なんて思ってるとしたら、先ほど言ったように、これって確かに一面そうです。でもそれがその人たちのすべてかと言うと、そうさせてしまっている私たち側もいるんじゃないか、という意識を持っていただきたいということです。
もしそう感じる相手がいたら、「この人心底そういう人なのかな?」「いやいや違うんじゃない?」「すごいやる気を持ってキラキラして、夢中になってやってることあるんじゃない?」「じゃあどうしてそれが出てきてくれないんだろう」……「出させてないのは私のせいかな?」と、1度その反面的な考え方を問うてみるということです。
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