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第四回 経営者道場 株式会社マネーフォワード 辻庸介 氏(全2記事)

会社の大きさと、経営者の器の大きさは同じ 辻CEOが語るマネーフォワード成長のプロセス

2018年8月1日、hoops link tokyo にて「第四回 経営者道場」が開催されました。hoops link tokyoは、SMBCグループが『くぐると何かにつながる「輪」』をコンセプトに運営するオープンイノベーション拠点で、日々業界業種問わず事業創出に熱い想いを持つ方が集っています。第4回となる今回の経営者道場には、株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEOの辻庸介氏が登壇。後半となる本記事では、マネーフォワード成長のプロセスについて語ったパートをお送りします。

ステップバイステップでニーズを掴む

辻庸介氏(以下、辻氏):ゼロイチというのは真っ暗闇の中を走ってる感があって、当時は本当に恐いなって思っていました。その後、たまたまいろんなことがあってサービスが徐々に浮遊しだしたんですけど、そういった経験を踏まえた上で、大事なのはこの4つかなと思っています。

まず、はじめに「小さくテストする」っていうのが大事だなと思っていまして。当時ぼくたちは、6ヶ月くらい頑張ってかけてエリアでリリースしましたがダメでした。

これをもっと小さく、ステップバイステップにすればよかったという仮説があるんですよね。例えば「ユーザーはお金の情報をシェアしたいはずだ」とか、「ユーザーにはこういうカスタマーペインがあって解消したいはずだ」とか。その仮説を1個ずつクリアするようなことをしていくべきだったなと思います。

今回声をかけていただいた(GMOの)相浦社長に、前回リブセンスの村上さんが来られたってお聞きしたんですよ。村上さんってサービス業の天才だと思うんですけど、その村上社長に相談したときに「ああ、なるほどな」と思ったことがあります。機能って作っちゃって出してしまうとわからないじゃないですか。だから機能を出す前に、例えば機能が10個あるとしたら、ひとつひとつをさらにもう10個に細かく分けて、1個ずつステップバイステップで作っていくと。

そうすると、ある方向で進めたものに対してのユーザーの反応を見ると「ちょっと違ったな」とか「これはダメだな」とかがわかるんですね。もともとの10のコストをかけてやって失敗したときだと取り返しつかないんですけど、1くらいだったらまだなんとかなるんですよね。だから、なるべく細かくつくるというのが大事だなと思います。

それで、村上さんはすごいなと思ったのが、新機能を作るときWebページの上のほうに、「◯◯の機能について」みたいなリンクを張るんですよ。5分もあればできると思うんですけど、それがどのぐらいクリックされるか、ユーザーがどれくらい興味を持つかを見るそうです。

リンクを踏んで飛んだところに普通だったら機能があるんですけど、初めの場合「ところでこういうことを考えているんですけど、どう思われますか?」とかって厚かましく聞くんですよ(笑)。

(会場笑)

そうやってニーズをつかんでやっていくと。これはちょっと極端な例だと思うんですけど、それがステップバイステップになっていくというのがすごく大事だなと。これが1点目でございます。

本当に話を聞くべきユーザーとはだれなのか

2個目は「妄想を持たずユーザーに聞く」。ものづくり、サービスづくりする上で大事だなと思います。

ぼくたちって、固定観念があったり自分たちのこれまでの経験があるので、「これはいけるはずだ」とか「こういうサービスがほしいはずだ」とか、思い込みで作っちゃうんですね。思い込みで作ったら、だいたい外れます。ぼくも結局、それでサービスを作っちゃって大失敗するんですけど。

とにかく「自分の意見が正しい」なんて思わずに、ユーザーに聞き続けるというのがとても大事だなと思います。「カスタマーに聞きに行く」「街に聞きに行く」「ユーザーに来てもらって使ってもらう」とか、それを謙虚にやることが本当に大事で。

3つ目は「じゃあそのユーザーって誰なんですか」っていうところなんですけど、コアユーザーの行動だけを見るってすごい大事だなと思っています。

(マネーフォワードの前身である)マネーブックのソーシャルの要素を削って、現在のマネーフォワードというサービスにしたんですが、当時はプレゼンさせていただいても、やっぱりほとんどの人がこわいとか、使わないとかおっしゃっていました。

ほとんどの人にそう言われると「これはダメなのかな」とか自信無くなったり、ベンチャーキャピタルの100人をまわってもほとんど断られました。そこで、あるとき気付いたのが、みんなを幸せにしようとしているんじゃないかと。みんなから「いいね」と言われるサービスは、逆に言うと、もう世の中に存在しているはずであると。

だから、みんながいいねと思うサービスを作ってもたぶんダメで。本当に一部の人が、「すごくいいね!」と言うサービスをまず作ってみようと。Facebookもよく考えると、ハーバード大学の一部の人から莫大な人気が出て、そこから広がっていったと思うんです。

僕たちがコアだと決めるターゲットユーザーを見て、その人がどう言うかだけを聞こうと決めました。こわいという人たちは、マネーフォワードのサービスを見て「ありえない」とか言うんですけど、そういう人たちってFacebookもTwitterもやってなかったり。それに関わるところだと、昔は「クレジットカード決済ってこわい」とか言っていたなとか、いろんなことを思って。

ユーザーと同じ目線になるトレーニング

そうして、ぼくらが使って欲しい人を決めようと思いました。もう1人でいいと思うんですよね。何人か置くとややこしくなるんで。”この人”が田中さんだったとしたら、田中さんの意見だけを聞く。その人の意見だけを聞いてつくるっていうのを決めまして、機能とかを絞り込んでいきました。

だいたいサービスをつくるときに、あの機能もほしい、この機能もほしいってみんな機能を作ればいいと思ってるんですけど、本当に必要な機能って1つか2つだと思ってまして。そのコアになる機能はなにかっていうのを決めるためにも、やっぱりコアユーザーの行動だけを見るのがすごい大事なんじゃないかなと思いますね。

これはある程度サービスの規模が大きくなってくると、さらに大事になってきて。いろんな価値観とか、こういうの欲しいとか、いろんな思いを持つ人が出てくるんで。そうなってきたら、いつもいる5人の意見だけを聞いて、この5人のために作ろうと決める。そうすると議論がすごいフォーカスして、あれもほしいこれもほしいっていうのがなくなるというのが経験上あります。

なので「コアユーザーの行動」だけを見ます。そうするとマーケットが小っちゃいからじゃないかとか、そういう話が出るんです。でも、マーケットが小さかろうが大きかろうが、ユーザーに突き刺さるサービスを作らないとその小さいマーケットにすら届かないので。そこはステップバイステップで整理してやっています。

4番目ですが、みなさんもサービスを作られている中で、「ユーザーと同じ目線になる」って結構難しいなと思ってまして。その練習をけっこうやっています。例えばAという機能を出しますと。100人のユーザーがいたら何パーセントが使うかを書いて、ぼくが10パーセントの人が使うと思ったら10パーセントと書くんですが、例えばそこに企画の人が「いやこれは違う、20パーセントは使います」とか追加して書いていくんですよね。

それで実際リリースするじゃないですか。そうして1ヶ月後に答え合わせすると、見事にずれてます。やっていくとだんだんこのズレが減っていくので、いいトレーニングになってお客さんの気持ちがだんだんわかってくる。

ある時ぼくは、女性の予想が自分の予想とあまりに違いすぎて、これでは女性の行動がわからないと思って、それ以来プロダクトを開発するメンバーの中心に女性が加わりました。

そういう形で、自分のできるとことと、できないとこが少しずつわかってきます。この4つを知っておけば、ぼくも大きな失敗をせずにこられたんじゃないかと思っていまして、今日シェアさせていただきたいなと思った次第です。

ちなみにもう読まれてる方多いと思うんですけど、『リーンスタートアップ』と最近出た『スタートアップウェイ』という本を先に読んでいたら、あんな失敗しなくてよかったなとすごい後悔しました。

これは大企業も今使っていて、トヨタさんとかも使っている方法なんですけど、すごくいい本だし、プロセスもできると思うので、サービスをつくる人は必見じゃないかなと思います。

オープンであることと、ワクワクすること

家計簿から確定申告、メディア、請求書、給与、マイナンバー、金融機関様向けのマネーフォワード、クラウド経費、ファイナンス、通帳、決済など、この6年くらいでいろんなサービスをつくってます。

もちろんこの裏にはたくさんの失敗したプロジェクトがあります。ぼくが「これは絶対成功する!」って言ったサービスも、3ヶ月でクローズするという悲しいできごともございまして。そういうとき、社内における社長の信頼感の低下はすごいです。

(会場笑)

やっぱりリーダーは結果を残さないと、誰もついてこないんだなとわかりました(笑)。

また、当社が意識していることで「オープンである」とか「ワクワクすること」とかってすごい大事だなと思ってまして。経営者の方って、やっぱり社員をワクワクさせたり、夢とかビジョンを描かないといけないなと日々思っています。

今はもうAPIで全部つながる世界ですし、ネットですべての情報が拡散する世界です。ユーザーさん1人ひとりが発信力があるので、そういう前提で企業やサービスをつくらなきゃいけないと思っています。そういった時にはブランドがすごい大事だなと思っていて。

ブランドといっても「プロダクトがいい」とかじゃなくて、企業の姿勢とか、ちょっと大げさだけど「生き様とか理念とかに共感するか」というのがすごく大事な世の中に、ますますなってきていると思うので。経営者として、こういったことを常に頭の中に置いておかないといけないと思います。「こうやったらワクワクしてくれるかな」というのは、経営者のなかでよく議論しています。

プラットフォームは10年に1回変わる

(スライドを指して)「経営者として」ということでお持ちしたんですけども、この辺はちょっといろんな議論があって、これはぼくの勝手な思いなので間違ってるかもしれないんですけども。1つ目はスピードです。技術の普及速度って、めちゃくちゃ上がっているなと思います。先ほどご紹介した『スタートアップウェイ』にこの表があって、ああそうだなぁと思ってすごく今までのモヤモヤがスッとしたんですけども。

これが何かと申し上げますと、アメリカの人口の25パーセントまで普及するのにかかった年数です。例えば電力だと45年くらいかかってて、電話だと35年ぐらいかかってるんですけど、インターネットだともう8年くらい。スマートフォンだと3〜4年とかで、普及スピードは昔に比べて爆速的に上がってると。

IT業界って変化が速いじゃないですか、世の中が一気に変わっていく。ぼくも情報についていくので精一杯なんですけど。ガラケーからスマートフォンになった時にガラッと変わったように、プラットフォームのチェンジが少なくとも10年に1回は今後起こるんじゃないかと思っています。僕は今42歳なので、人生100年だとすると、あと60年はある。あと6回は大きなチャンスがあるので、1回ぐらい当ててFacebookとかGoogleみたいにになれないかなーと思ってるんですけど(笑)。

そういう意味で、我々にも大きなチャンスがあるんじゃないかと思っております。本当に技術の普及スピードが速くなってきているので、ぼくたちはこの外部環境に適応しないといけない。10年生き残る会社って4〜5パーセントで、20年だと0.3〜0.1パーセントしか生き残ってないっていうデータがありまして。これを見るたびに、普通のことをやってたら絶対生き残れないんじゃないかとすごい焦るんですけども、それもこういうことだと思うんですよね。

どんどん環境が変化しているので、自分自身たちが変わっていかないと絶対取り残されて潰れる、ということだなと思いました。なので、とにかく変わらないといけない。

先日リクルートさんの峰岸社長の講演をお聞きしたんですが、リクルートさんはあまりにも変わることが多いので、逆に変わらないことだけを決めたと。それは企業理念である、ということをおっしゃっていました。企業理念以外は全部変えていいっていう。リクルートさんには「圧倒的な当事者意識」などその理念は全部で3つあるんですが、そういうことを決められたとおっしゃっていました。

リファラルリクルーティングによる採用強化

2つ目は「身軽な経営」です。あんまりアセット持ってもしょうがないですし、ピラミッド型の組織ってもう、これからはあんまり流行らないと思うので。スモールチーム、権限移譲にしていく必要があるんじゃないかなと思います。ただ、大きな組織になってくると「じゃあどうやって商品をつくるのか」となるので、大きなチャレンジだと思うんですけど。

3つ目はデータ活用。データが全てを変えていくと思うので、すごく大事だと思っています。もうお時間もないのでちょっと飛ばしますね。

4つ目の人事戦略についてはけっこうお役に立てる点じゃないかなと思って。経営者が集まると、だいたい8割くらいの悩みは「人」です。企業の成長において人事がすごく大事だと思っていて、ぼくも週に2回、人事部と定例ミーティングを必ず持ちます。

人事といっても職務は広くて、採用、評価、人材開発、組織設計、社内コミュニケーションなどいろんな項目があると思います。それぞれやるべきことを適切にやっていかないといけません。

採用ってみなさんすごく悩まれると思うんですけど、当社でうまくいっているのは社員紹介の制度です。だいたい4割くらいは社員紹介で入社しているんです。うまくいってたんですけど、うちよりうまくいっている会社があったので、うちの人事部の責任者が聞きに行ったんですよね。

そうしたら、やってることは一緒で違うところがあんまりなかったんですけど、1個だけ違うところがあって。当時我々は、社員紹介で来てくれたら、紹介してくれた人に10万円キャッシュと10万円備品買い放題の権利を渡してたんですけど、その会社は、現金を50万円渡してたんですよね。

(会場笑)

双方の不幸を減らす1on1の仕組み

20万円から50万円に変わったって、そんな変わんないだろうとか言ってたんですけど、ちょっとキャンペーンでやってみるかと3ヶ月だか6ヶ月だか期間限定でやってみたら、応募総数が4倍くらいに増えまして(笑)。

(会場笑)

「友だちを紹介すれば20万」だとちょっと尻すぼみするけど、「50万」だといいラインなのかなと思いました(笑)。これ、けっこうおすすめな方法です。ヘッドハンターさんにお願いすると年収の20%とかですから、年収600万の人だったら120万お支払いしなきゃいけないですよね。それに比べると安いですし、なにより社員が自分の会社のこと語りだすんで、自分の会社のいいところも悪いところもわかるようになるので、ロイヤリティも上がってくるのかなと思います。

あとはWantedlyで、社内のいいところや社内でやっていることなどを発信しています。自分たちが思っている以上に、社外からは自分たちの会社についてわかってもらえないので。自分たちが10発信しているとしたら、1わかってもらえたらいいくらいの気持ちで、とにかく発信しようということをやっています。

当社はけっこう社員の名前や顔を出しているので、ヘッドハンターさんから電話かかってきますね。評価・等級・報酬のところですが、評価というのはもともと人を成長させるためにフェアで評価してやるはずであると。日本の評価って、どうもダメ出しをするみたいな感じなのであんまりよくないよねってことで、ちょっと綺麗事かもしれないですけど、マネーフォワードのグロースシステムと名付けまして、どうやったら人をグロースできるかっていうのをやっています。

なかでも1on1ミーティングがすごい大事だと思ってまして、月に1回は必ず上長と部下で1on1をして、30分は必ず個室に入って、部下がどういうことをやりたいのか、どういう目標をしているのかといった話をしています。けっこうあるのが、上司が「あいつは頑張ってない」と言うけど、部下は「頑張っている」ということ。これは両方不幸だと思っていまして。

要は、上司が頑張っていないと思ってるのは、上司の期待しているところに部下のアウトプットが届いてないっていうことだと思うんです。でもそれは、ここまで求めてるっていう期待値を伝えてないのが原因だと思うんですね。

部下は「頑張っている」「ここまでアウトプットできている」と思っていて、上司の期待値を超えてると勝手に思っている。なので、その期待値を調整する。それはお互いに伝えることによってコミュニケーションギャップってかなり減るなと思ってまして。だから逐一、「上司が求めているのはここだ」「部下はここまで頑張ってると思ってます」というのをちゃんと正していくと。そうすれば、お互いすれ違いがなくなっていくと思います。

つまり「Will」「Can」「Must」を一緒にしていくということですね。

社長に必要なのは、絶対に成し遂げるというパッション

そういった感じで、あとは組織設計をスモールチームでやってますとか、社内コミュニケーションの活性化とか。社内コミュニケーションをとにかく良くする。会社は量と質の両方を高めても高めてもキリがないと思ってるんですけど、とにかくここを上げていくということを考えています。

量に関しては、週次の朝会とか月次の朝会とか半期総会とか。あとぼくとのランチに自由に入ってきてもらって、CEOとして質問になんでも答えていくっていうセッションをしたり、全社懇親会したり、月次のMVPとごはんに行ったり、「ありがとう」と思う人にメッセージを送りあったり。そういったことをいろいろと試しています。

やってもやってもキリがないんですけど、本当にやればやるほど会社の雰囲気は良くなるし、みんなやりがいを感じてくれるのですごく大事かなと思います。いろいろ申し上げたんですけど、結局最後に大事なことは3つかなと思ってまして。

なにを目指すのかというビジョンを経営者として高く持つこと。そうすると、良い人も集まってきますしワクワクもします。それを設定することが大事です。絶対成し遂げるんだっていう熱い思い。最後はもう熱量しかないと思うんで、パッションを持ってやっていこうって思っています。

成長角度を上げるために、今足りていないことはなにか

また、「信頼する」「任せる」「我慢する」とかあると思うんですけど、最近思うのは、任せて失敗したら社長のせいなので、任せることができる人の能力がどのくらいで、任せる課題量がどのくらいなのかっていうのを冷静に判断して、任せていいのかを決めたほうがいいなと思います。

例えば、あるグループ会社の社長を任せる時に、その難易度を100だとして、任せられる人が80〜90くらいの能力だったらなんとかクリアできると思うんです。でも50の能力しかない人に100与えても絶対うまくいかないんで。そこの見極めがけっこう大事だなと最近思ってまして。

ただ、社長にしかできない仕事をやらなきゃなと思っています。その他のメンバーがやれる仕事はメンバーにお願いすべきです。社長にしかできない仕事って、ぼくが思う成長速度がこうだとしたら、マネーフォワードの成長角度を上げるためになにが足りないのかを考えることです。

ヒト・モノ・カネのなにが足りないのかを考えて、そこをコミットする。それは社長にしかできないことです。連続的な成長はみんな頑張ってやってくれるんですが、「なにか」を決めるのは社長にしかできない仕事だと思います。まぁいろいろと言いましたけど、最後は「明るく楽しく、厳しくやる」のが大事だと思います。

前職の松本社長に言われて印象に残っていることがあるんですが、それは「つらいときほど上を向け」という言葉です。つらいときほど鼻歌を歌えっていう。たしかに松本さんって、たまに鼻歌を歌ってたんですよ。社長になってわかったんですけど、あの時つらかったんだあ、みたいな(笑)。みんな社長を見ているんで、つらいときにふふーんとか歌ったり。

(会場笑)

あと、感情を出してもロクなことはないんで、感情をコントロールするっていうのはやるようにしてます。すみません、徒然とお話したんですけど、そんなことを考えながらやっております。何か一つでもお役に立てたら幸いでございます。ご静聴ありがとうございました。

(会場拍手)

社長として最も大事なものは「器」だった

司会:辻社長、講演ありがとうございました。それでは質疑応答のほうに移りたいと思います。なにかご質問などございましたら、挙手をよろしくお願いいたします。はい、ではどうぞ。

質問者A:お話ありがとうございました。先ほどの話なんですけども、器を大きくするというのは重要だなと思いまして。それには自分自身が大きくならないといけないと思うんですけど、それに対して社長はどういうことをされてきていて、どんなのが良かったかなというのがあれば教えていただきたいです。

:ぼくは、本当に器だと思うんですよね。今の会社の大きさとか状況って、自分の器の大きさだと思うんですよ。そう思うとすごく謙虚になれるじゃないですか。だからすべての問題は自分のせいだと思うようにしている。じゃあ器をどうやって広げたらいいかっていうことなんですけど、一歩一歩しかないと思うんです。

松本社長の下で働いてわかったことがあって、松本さんってスーパースターみたいな人なんですけど、その人でも毎日死ぬほど努力してるんですよね。なのでやっぱり一歩ずつ進むしかないんだと思った瞬間に、なんか頑張ろうと思えたんです。その一歩ずつを学ぶには、人からかしかなくて。

例えば、ぼくには経営者の大先輩の方々がいらっしゃいます。相浦社長もそうですけど、だいたいぼくが失敗したことはだいたいご存知なので、そういう方々からお話を聞いて学ぶっていうのがすごい大事だと思います。ぼくは柳井さんの『経営者になるためのノート』が大好きなんですけど、ああいった本を読むだけでもすごい学びがあります。やっぱり学ぶということかな、と思います。

あとはもう一つ、マネーフォワードには社外取締役に素晴らしいメンバーの方々に入っていただいているんですね。元三井住友銀行・副頭取の車谷さんや、元MUFG副社長の田中さん、ディー・エヌ・エーの元会長だった春田さん、そういった先を行かれてる方に社外取締役になっていただくことが増えて、よくアドバイスをいただくんですよね。そういう方からアドバイスをいただくことで、器をなんとか広げるようにしてます。

質問者A:ありがとうございます。

プライシングがわからなかったら、ひとまず高く設定しておく

司会:他にあるでしょうか。ではそちらの方、お願いします。

質問者B:今日は貴重なお話ありがとうございました。サービスをリリースする際のことについて教えてもらいたいんですけど、価格設定ってすごく大事かなと思ってまして。まだリリースしたことないサービスの価格を設定をするときの、辻さんなりのコツというか、考えなんかがあれば教えてもらいたいです。

:プライシングは本当に難しくて。この間、大前研一さんのセミナーに行って学んだことの受け売りなんですけど、「プライス、コスト、ボリュームの三次方程式である」と。みんなは「プライスを上げて、ボリュームも増やしてコストはそのまま」みたいな厚かましいこと言うけど、そんなことできるわけないと。なので、「プライス上げたらボリューム下がるし、そういった当たり前のことをやる」とおっしゃっていて。

ぼくがいつも思うのは、提供価値がいくらなのかということですね。例えばマネーフォワードのプレミアムサービスは、提供価値がよく分からなかったんですよね。マネーフォワードを作ったときに、そもそもこのサービスが課金されるのかっていうのがわからなくて。

ちょっと長くなるんですけど、つくった当時は広告モデルでいこうと思ったんですよ。それでGoogleのアドセンスを貼ったんです。当時は収益がなかったので、クリックで5円とか10円とかの収益入ってきたらみんな嬉しくて。結果的に、社内でテストするためにクリックしすぎてバンされました(笑)。

(会場笑)

Googleにバンされたらアカウント凍結されるんですよ。Googleの友だちに「なんとかして」って言ったんですけど、「これはグローバルのルールだから無理」なんて言われて。いきなり僕らの収益がなくなったんですよ。

(会場笑)

そんな経験があるんですけど、まぁそんな話は置いといて(笑)。そもそもこのサービスに課金してもらえるかどうかわからないから、まず実験しようと思ってプレミアムサービスを出しました。300円にしようか500円にしようか、それとも1,000円にしようかと議論になったんですけど、思ったのは「わからないときは高めに出す」っていうことです。

300円と500円だと1.6倍も違うじゃないですか。300円で出すときと500円で出すときで1.6倍以上ユーザーが伸びるんだったら300円でいいと思うんですけど、それはもうわかんないんで、とりあえず高めに出して様子を見るっていうのをやっています。下げるのはいつでもできると思うので。

だいたい現場って、金額を低めに出すんですよ。この前も営業チームとすごい議論したんですけど、すぐ低めにくるんです。「いやいや、もっと提供価値あるでしょ」みたいなことを言うんですけど、それはもうやってみないとわかんないので。高めに出しながら、想定のユーザーさんの反応を見てやっているっていう感じですね。

1つ言えることは、フェアなプライシングにしないと儲けが出ない。儲けが出なかったらお給料も払えないし、広告も打てないからサービスも拡大しない。適切なプライシングをしないと投資もできないので、いい人も集まりません。

「経営はプライシングだ」とよく言われていますし、ぼくもまだ答えが出てないんで、すみませんがこんな回答になります。その辺は後で相浦さんにちょっと……(笑)。

コアメンバーと信頼関係

司会者:時間も押しておりますので、次の方で最後の質問とします。まだ質問があると思いますけども、あとは懇親会で直接うかがうようなかたちでよろしくお願いいたします。

質問者C:ありがとうございました。お聞きしたいのが、ちょっと前の段階でコアメンバーを惹きつけるのをどうしたらいいか、ご経験なり視点なりがあれば(教えてください)。

:おっしゃる通り、コアメンバーを集めるのが一番大変です。ぼくの場合はゼロからですし、ワンルームだったので知らない人は来てくれないなと思って、知り合いをまず誘いました。

我々は6人でスタートしたんですけど、ソニー時代の同期のエンジニアとか、あとはマネックス時代の同僚です。マネックスから引き抜くことはしたくなかったので、マネックスを辞めて活躍していて、「この人と一緒にやりたい」と思える、人間関係・信頼関係ができていてる人たちを勧誘しました。

はじめは当然来てくれないので、働きながら土曜日に集まってあーだこーだって議論していたんです。そうするといつのまにか、もともと僕のプロジェクトだったのが、みんなで議論していくうちに「みんなのプロジェクト」になってきて。

これいけるんじゃないかとか、こういうサービスがあったほうがいいよねとか、そういう感じになっていって。最終的に仕事を辞めてジョインしてくれたというような感じです。まあ、そんなに簡単じゃないですよ。何回誘っても本当に一部しか来てくれてないので。やっぱり徐々に巻き込むっていうのがいいんじゃないかなと思います。

司会:辻社長、ありがとうございました。のちの懇親会で辻社長と直接お話しいただける機会をご用意しておりますので、ご質問のある方はそちらでお願いいたします。それでは辻社長に盛大な拍手をお願いいたします。

:今日はありがとうございました。

(会場拍手)

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