2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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三浦崇宏氏(以下、三浦):嶋野さんの場合、グローバルのPRでのケースもたくさんご存じだと思います。今、海外だと、PRの優れた注目されているものはほとんど露出を競わないですよね。
嶋野裕介氏(以下、嶋野):そうですね。
三浦:そういう結果は、どういう評価がされるんですか?
嶋野:さっきのブランドとPRの話はけっこう大事なポイントだったかなと思っていまして。例えば、今年のカンヌとか行かれた方がいらっしゃるかはわからないですが、僕行ってきて、PR部門のもちろん賞など全部を見ているんですね。やはり今年は圧倒的……。
三浦:カンヌ広告祭は、だいたいみんなプールで遊んでそうですよね。
嶋野:そうですね。
(会場笑)
三浦:嶋野さんは毎回すごくちゃんと聞いていて、僕らはそれを見て「東京へ帰ってから嶋野さんの(話を)聞けばいいんだな」と思ってプールにいるという。本当、嶋野さんのレポートはすごくためになるので、ぜひみなさん読んでください。すみません。
嶋野:私、もうちょっと(話してもいいですか)。
三浦:ああ、はい、続けてください。
(会場笑)
嶋野:例えばオリンピック。たぶん世界中でオリンピックスポンサーがいっぱいいますよね。でも、オリンピックスポンサーでオリンピックを扱って賞を取ったのはトヨタさんだけ。トヨタさんぐらいだったんですよ。
それはなんでかというと、トヨタさんはPRという部門において、なぜトヨタがオリンピックに、そのスポーツに意味があるのか、意義というものをしっかり伝えているものがあって。
日本ではあまり知られていないんですが、「Start Your Impossible」といって、世界的なグローバルキャンペーンがあったりするんですね。
それを見たときに思ったのが、単純に露出がどうというのは最後のおまけにあるだけで、やっぱりトヨタという企業がこれから世の中をどう変えたいかという意思を持っている。この意思があるから、例えば「オリンピックのスポンサーをします」というような美しい文脈をどう作っていくかというのが、わりと今世界中のトレンドになっているのかなという気がしますね。
三浦:カンヌ広告祭がまだクリエイティブフェスではなかった5年ぐらい前に、PR部門の評価指標が「PR露出」から「ビヘイビア・チェンジ」という態度変容をどれぐらい起こしたかということがすごく評価指標になっていて。それがやっぱり一番わかりやすいかなと思っていて。パーソルという企業は尊敬されていると。
三浦:メルカリさんは、もう完全に変化を起こしていますよね。矢嶋さんともお話ししましたが、「メルカリしようぜ」という言葉があったり、一般の人が物を買うときに「これメルカリでどれぐらいで売れるかな?」ということを考えながら買うようになったように、消費の意識そのものが変わった。
これはメルカリという事業そのものと、それを取り巻くパブリック・リレーションズというものがものすごく成功した、1つのわかりやすいよい成果だと思います。いかがでしょうか?
矢嶋聡氏(以下、矢嶋):そうですね。「ビヘイビア・チェンジ」「パーセプション・チェンジ」というのが究極的なゴールで、僕らもそこはトラックしているんですね。
ブランド調査のようなもので四半期ごとに僕らが重視したい指標。例えば「信頼度」「革新性」を上げたい。では、そこの指標、見られたいというところのイメージを挙げて、「この指標で上げてきましょう」という伸ばしたい項目をちゃんと定義して、そこを四半期でそのための活動というものに変換して、そこから逆算してやっていくというのが基本で。
その活動の単位の成果というのは、そういう目的やゴールに対してしっかりそういう露出ができたかというのは見ます。中間指標のような、貢献度のような。
くさびを打っていくというか、僕らのメッセージを打ち込んでいって、それが積み上がっていくと、最終的に僕らとして見られたいイメージになっていくことを意識しながらやっていくのがけっこう大事だなと思っていて。
「単発の露出だけである程度出ました」というのにあまり本質的な意味はなくて。なにか露出によって1つの流れが作れて、それが波及していったり、一発の露出で流れを変えたりすることだって全然あるので、僕らとしてはそういうところを意識していますね。
三浦:ただ、1個ものすごくまじめに話すと、ゴールが「ビヘイビア・チェンジ」というのは、パーソルだったら「尊敬される企業になる」、メルカリだったら「消費者の行動を変える」というのがありますよね。それぞれゴールがオリジナルなのに過程が露出という有り物を使うのが微妙で、ここもオリジナルでちゃんと考えたほうがよくて。
例えば「メルカリしようぜ」という言葉がどれぐらいメディアに出たか、パーソルに対するSNSにおけるリスペクトの声がどれぐらいすごかったかというような。そうやっていくと評価指標ができるんじゃないですか。関連キーワードを入れて。
僕が仕事をするときは、クライアントさんに説明した上で「こことこことここのワードがこういうメディアにあがったら勝ちですよね」というような、逆算を設計してというようなことはけっこうやるので。
有り物に頼らないというか、ゴールを目指して決めたら、そのゴールにたどり着くためのマーケティングプロセス・PRプロセスをものすごく丁寧に、メディアやSNSを観測していくことがたぶんすごく大事で。
大橋直子氏(以下、大橋):さっき矢嶋さんがおっしゃっていた、「意図した内容が意図したとおりに書かれているか」「露出されているか」というのを、オリジナルのキーワードで追ったりされるんですか?
矢嶋:見てはいますね。露出の内容も日々見ていますし、定点で露出の量や露出のバランスなどが変わっていたりというのも見ているし。ただ、そこはけっこう感覚的なものだったりするので。
すごく施策的な話でいくと、例えば、最終的にテレビでそのキーワードを流行らせたいというときに、逆算して例えば「テレビがソースにしているネットメディアにちゃんと数を出しましょう。そこがヤフーに転載されるとテレビがソースにして報道する確率が高まるので、テレビに直接アプローチする前に、まずはネットメディアを狙いましょう」というように、短期的な施策単位の場合、まずネタ元の媒体のメディアに載せましょうというような設計をしなければならない。
岡山史興氏(以下、岡山):いいですか? この話の問題は、すごく手法が目的化しがちというか。例えば「〇〇消費」という言葉を1つのKPIにしましょうという話になったとき、「でも結果、売れたっけ?」というようなところがあったりすると思います。
極論でいうと、そういう一つひとつに成果が出ているんだったら、結果KGIは達成するよねと。「KGIを全社で追えばいいのでは?」という発想もありなのかなと思ったんですが、それは微妙なんですか?
三浦:たぶんさっき嶋野さんがおっしゃったところと一緒で、基本的にKGIはビヘイビア・チェンジや企業としての目標を達成するということがあって、それがプランどおりに進んでいるかを途中で確認するためのサブKPIに使ってもいいのではということはあると思います。
それから、僕はクライアントさんからものすごくめちゃくちゃな依頼を受けることがけっこうあって。「うちの事業価値を上げてほしい」というようなことを言われるんですよ。
「それはどうなんだろう? 株価がインサイダーのようになってしまうのではないか?」という話はちょっとあれなんですが、これは明確にメディアの露出量と相関します。企業が株価を短期的に上げたいんだったら、メディアの露出量をものすごく上げる。
これはすごくシンプルで、メディアの露出量がKGIに対するなんらか重要な施策になることは確かにある。けれども、そこだけが目的になったらいけないというのは、たぶんどのプロジェクトにおいてもそうなのかな。
岡山:すごく細かく丁寧にしていけばいくほど近視眼的になって、そこを担当者はやっているんだけれど、会社の経営層の意識とどんどんズレていくというようなことはすごくありがちだなと思って。そういう経験はありましたか。
矢嶋:その場合、けっこう広告は説明責任が大変で、「これだけ出ました」という露出の量はけっこう大事ですね。運に左右されるところもあるし。そんな見られ方をするし。
「たまたま運がよかったタイミングだった」となりやすいので、「この露出を出したい」というときに、「どういう意図でこういう仕掛けをした」という背景のようなものをちゃんと説明するところ、どういう意図だったのかを伝えるというのもこちら側の責任なのではないかなと(思います)。
岡山: 過程の文脈みたいな話ですよね ?
矢嶋:そうです。
三浦:上坂さん。お願いします。
上坂あゆ美氏(以下、上坂):みなさんの議論にすごく納得して。数値指標に意味がないとか、サブKPIとしてなら価値があるというところもすごくわかるし。でも自分なりに勉強したり、いろんな方からお話を聞いたりするたびに私が思うのは、明日から自分がやる現場との落差というか(笑)。
三浦:そんなに大変なの?
(会場笑)
上坂:大変というか、いまだに現場では「PR TIMES」の露出報告を自信満々にする人がいっぱいいるし。
三浦:減俸だよ。
(会場笑)
上坂:そういう人たちをどうやって本質的にあるべきPRのかたちに持っていけばいいのか。それから、私はここ10年ぐらいずっとこの議論がされているような気がしているんですけれど、なぜそれがぜんぜん進まないのかというところについて、もしご意見があれば聞きたいなと思います。
三浦:電通はそんなに大変ですか? どうですか?
嶋野:いや、僕はそんなに大変ではなくて。理由はわりと明確で、自分で戦略、PRプラン、クリエイティブ、メディアプランを全部立ててしまうタイプだから、一貫せざるをえないんですよ。主語が1人だから。
クライアントととも一貫してプロジェクトを進めているので、場合によっては、はじめから「これぜんぜんSNSでシェアされないですよ」と言ってからちゃんと設計することありますし。
企業さんや商品が「なりたい」「なるべき姿」のゴールをまず描いてあげて、「だからこの戦略なんです」「だからこのクリエイティブなんです」「PRなんです」というのが言えると、わりとぜんぜん問題なくいけるという感じがするので。
理想論すぎるかもしれませんが、もし可能だったら、今やっている分野がどの分野かわかりませんが、ちょっとウザがられるかもしれないものの、なるべく全部見るよう口出すようになっていくとすごく重宝されるし、説明にブレなく責任が一本化できるかなと。
上坂:嶋野さん、何年目ぐらいからできましたか?
嶋野:もういい歳ですからね。今、何年目だったかな。クリエイティブまで含めてしまうと12〜13年目でやっとという感じですね。それまではメディアとマーケティングだけで精一杯でした。つまり、論理で効く部分だけだったらなんとか6〜7年目ぐらいでコントロールできるんですよね。
ただ、PRもそうですし、とくにクリエイティブだと、ロジックが効かないところは、多少経験を積まないと自信を持って言えないところはあるかもしれないですね。
三浦:上坂さんは、今、何年目なんですか?
上坂:社会人でいうと5年目なんですが、マッキャンに入ってまだ1年ちょっとなんです。
三浦:ということは……なにがしんどいか、もう1回教えていただいていいですか?
上坂:みなさんがおっしゃったような、本質的な狙いに合意できて、そのために数字を位置づけるというところまでトップレベルでお互いに合意できることって、ものすごく幸せな仕事だなと思ったんです。
しんどいというか、PRをちゃんと理解している人がほとんどいないということにびっくりしました。なので、チーム内でもけっこう意思が共有できなかったり、それがゆえにクライアントに対しても説得がしきれなくて。
まだまだ若手なのでなかなかできないというようなところもあり、自分の中でそのあたりにジレンマがけっこうあるかなと思ってます。
三浦:それでいうと、僕は入社して最初にマーケットに配属されて、そのあとPRへいって。わりとCDはPRのことをわかっていないから……CDも、どういう人かによりますが、あのおじさんたちは基本的には自分の広告が話題になったらうれしいわけです。自分のことを作品だと思っているから。「話題にしてあげますよ」という立ち位置ではないなら、わりとすんなり話を聞いてくれることも、アリよりのアリ。
(会場笑)
上坂:ちょっとテーマが逸れそうで申し訳ないのですが。
三浦:大丈夫ですよ。
(会場笑)
上坂:もちろん「広めてあげますよ」という話はあるんです。ただ、その発想の起点が社会文脈起点なのか製品・サービス起点なのかというところで、信仰宗教の違いぐらいの差を感じていて。「言語が違うのかな?」というレベルで話が進まないなと。私のやり方が悪いのかもしれないですが。どうしたらいいでしょうか?
三浦:どうですかね。
嶋野:実際そうです。僕も宗教が違うと思っていて。違う宗教の人とは交わらないというのが僕の(結論です)。
三浦:そういう人とは仕事をしない?
嶋野:しないです。
三浦:でも、たぶんそういうふうにはまだ言えないんですよね。
嶋野:まだ言えない?
上坂:はい。まだ言えないです。
三浦:僕は、5年目ぐらいのときに、クライアントに勝手に「僕はCDです」と名乗って全部勝手に仕事をしていて、何件かの事故を起こして相当大変だったんです。
(会場笑)
でも、矢嶋さんや大橋さんのように、本質的な議論ができる方はたくさんいらっしゃる。そういう方との仕事をもう……。
上坂: 見つけてくればいいのかな。
三浦:見つけてくればいいんですよ。
上坂:ああ、なるほど。
嶋野:そうやって自分の仕事を広げていくしかないかもしれないですよね。
三浦:広告代理店は本当に……わからない。マッキャンエリクソンさんは知りませんが、少なくとも博報堂とTBWA\HAKUHODOは、途中の手続きで何度かミスを犯しても、ホームランを打てば認めてもらえる文化だったりするから。悩んでいる暇があったら、大橋さんに連絡するというのはどう?
上坂:(笑)。
大橋:クリエイティブディレクターの方で宗派が合わない方とは、たぶん一生交わらない。
三浦: 即クビですか?
(会場笑)
大橋:即クビですね。本質的なゴールも、さっきのように抽象度の高いところで議論がしたくても、「いや、でもそれってどれぐらい?」というように、すぐKPIに落としたがって、「成功したでしょ?」ということを言ったりしますし。
あとは話している途中で作品に寄っていってしまうんですね。気持ちよくなってしまうというようなところでズレていく方もいるので。
(会場笑)
三浦:即クビですか。大橋さんは。
大橋:それぐらいの責任を負っている仕事だと思っているので。
三浦:そうでしょうね。わけのわからない宗教に大橋さんが染められる必要はないですよね。
大橋:それぐらい「話す」「議論をする」というのが大事なので、それはけっこう求めているかなとは思います。
上坂:ありがとうございます。
嶋野:パーソルさんの、あの広告を見てけっこうびっくりしたんですよね。
大橋:ありがとうございます。
嶋野:あれは本当、社会概念というか、上質なものではあるんですが、なかなか成果はどうだったか……すみません、質問を逸脱してしまって……もし今(答えていただけるのであればお願いしたい)。
大橋:ぜんぜん(大丈夫です)。一応、パーソルがリブランディングをした目的は……テンプグループという、テンプスタッフが中心の会社なので、人材業なんですね。
人材業は社会的にレベルがあまり高くないというか……みなさんがそういうイメージではないと思いますけれども、やはりマッチングして中抜きをしているというような見られ方をされてしまったり。
それから、派遣村というのが昔あったと思いますが、景気が悪くなった瞬間にすごく叩かれやすかったりするので、イメージ形成だったり、業界全体をなかなかよくしていけないというような(イメージがあります)。
派遣だけでは私たちも顧客の課題解決がなかなかできなくなってきていたのが3〜4年前だったので、人材を超えるんだ、それを超えた価値を提供するんだというのでリブランドを決めて、スタートしたブランディングプロジェクトでした。
そういう意味では、そういった感想を持っていただけるということでKGIのところでは成功しているという議論ですね。みんなが超えられたというところ。KPIは達成しているんですよ。投資したところの改善自体は達成しているので、それは両方よかったねというかたちにはなっています。
大橋:でも、やっぱりM&Aで大きくなってきているところもあるので、「変わっちゃったね」「あれに対してどういう事業理解をしていったらいいのか」「顧客の期待にどう応えていくのか」という、事業に落とし込んでいくところはこれから作っていかなければいけないので、そこに対して課題がたくさんあるんですね。課題設定として、もしなにか思いついていただけるんだったらご提案いただきたいですね。
(会場笑)
三浦:なるほど。すごくありますよ。いや、もうあまりフィーが取れなくなっちゃう。
(会場笑)
尊敬される企業を目指すということであれば、やるべきことはいくつかあるかもしれない。
大橋:そうですね。まだ手をつけられていないことがたくさんあるので。
三浦:たくさんありますよね。それでいうと、矢嶋さんのメルカリの上場のタイミングの新聞はやっぱり効いたなと思いますよね。
矢嶋:そうですね。結局、広告も広報もマーケティングの手段だなと思っていて。通常上場承認のタイミングはどこも一緒で、「財務状況はこうです」「戦略はこうです」「今の貸借表はこうです」というファクトのデータだけが載っていて、肝心の会社の思いのようなところが伝わらないんですよね。でも海外だと「創業者の手紙」が必ず 報告書の中に入っていて。
大橋:そうですよね。
矢嶋:日本の上場にあたってはそういうフォーマットがないので、どこの会社もやっていなかった。ただ、僕らは会社の概念である「Go Bold」なコミュニケーションの仕方で僕らの価値観を伝えたいよね、というので、2018年5月の上場承認のタイミングで「創業者の手紙」を公開しました。
実際、投資家にも配って、Webでも誰でも見られるようにして、というのが伏線としてあって。でも、それだけだとやっぱり届く人は少ないから、そこはクリエイティブと広告の力を活用しようということで、2018年6月19日の上場日当日に、日本経済新聞に「創業者の手紙」と野茂選手をセットにした30段見開きカラーの上場広告を出稿しました。
パッと見て一発目に「なんで野茂とメルカリが広告に出ているんだ?」と。よくよく読むと、野茂選手はメジャーリーグで第一人者として活躍して、今は大谷選手などいろんな選手が活躍しているのも野茂選手の活躍があったからで。僕らも野茂選手のように「日本から世界に挑戦して成功したパイオニアになりたいです」というメッセージに繋がるという謎解きになっています。
矢嶋:そういうメッセージを発信していくと、メルカリに対する見方が変わって「問題がありそうな会社だと思っていたけど、いいこと言うじゃん。」とか「ちょっと応援しようかな」というように、様々な世代の方に共感していただけるのではないかと思い、ここは「Go Bold」にやりました。
三浦:企業コミュニケーションをするときに、実績を言うこともわりといい思うんです。でも、実は世の中がどんどん変化して、例えば3年前に電通が22時以降に帰るようになっているなんて誰も信じないじゃないですか。AIだったり、ブロックチェーンだったり、世の中がだんだん変わっていくなかで、実績を示すことはあまり意味がなくなってきていて。それよりは未来への意思を示すことのほうが企業の価値としてすごく意味があると思っていて。
例えば、嶋野さんがやっていらっしゃった「同棲解消ホケン」というのも、単なるサービスというかプロモーションでありながら、あの会社の意思が見えますよね。「そういう若い人を応援していきたい」というような気持ちだったり。
Go Boldの上場広告も、「メルカリが上場したよ」ということが言いたいのではなくて、「メルカリはこういう意思を持って上場したよ」というところまで伝わっているからこそ、尊敬や期待につながっているという。
広告でも、企業の意思のようなことを、ありとあらゆる企業活動の中で伝えていくことが、今後PRということを考える上ですごく重要になってくるのではないかなと思っているんですよね。
どうですか? 上坂さん。 悲しそうでしたが、火曜日から楽しくできますか。
上坂:仕事は楽しいです。
(会場笑)
三浦:仕事は楽しいよ。はたらいて、笑おう。
(会場笑)
嶋野:髙野さんはどうですか?
髙野祐樹氏(以下、髙野):はい。
矢嶋:今ずっと考えていらっしゃったんじゃないかと。
髙野:矢嶋さんのお話を聞いていて、メルカリさんは、価値あるベンチャーとしてのイメージを形成していますが、小泉(文明)さんがそうですが、経営者が当たり前のようにPRが重要だと考える会社ですよね。
さっきの「PRとは?」という話で、PRを経営課題、経営目標といったものを解決するための手法であるということで考えると……PR会社として仕事をしていると、私の会社はできるだけ基本的には……私もPR原理主義の人間なので、できるだけPRがコミュニケーション戦略の最上位概念であるというところを理解してもらえるクライアントと仕事をしたいと思っています。
お客さんの中には、経営にけっこう近い広報部や、経営企画室の担当者もいます。経営陣と直接話がでれば、そこで示される課題や目的、「PRでこういう成果を出したい」というところが、やはり経営に寄与しているものになることが多いです。一方、そうではない場合は、「自分たちはとにかくこれを達成しなければいけない(と言われている)ので、なんとかできませんか?」というような本質的なところから外れた相談が多いですよね。
先ほど嶋野さんのお話のように、広告をやっているグループと、PRをやるグループというふうに手法で分けると、予算も、マーケティング予算とPR予算という形になりますよね。
実際に事業会社でPRをされている矢嶋さんのご意見を伺いたいのですが、そのように(予算やプロセスが)分かれている企業の中の広報担当者は、どのように経営者にアプローチしていくと、「マーケティング予算やPR予算がどうこうと別々に考えないで、全部一緒くたに、手法は全部フリーで考えて予算も割り振っていけばいいのでは?」という形にできると思われますか。
PR会社としては、そういう考え方のほうが、使える予算が違う場合も多いですし、そういう企業を増やしていきたいというのもあります。でも、実際これは企業の根源的な問題ではないかなと思っていて。よい経営者に巡り合うという以外の、広報が明日からできるやり方がもしあれば、ぜひ共有していただけたらなと。
矢嶋:僕は広報に理解がない会社へは、そもそも行かなくてですね。
三浦:(笑)。
髙野:そうですよね。
矢嶋:そうですね。でも、今勢いがある会社の経営者はどの会社でも、一番深くPRをわかっているなと思うし。逆説的に言うと、マーケッターや経営者にそういうマインドがあるところはやっぱり伸びているなと思いますよね。大事だなとは思いますが、どう理解させるかというところですよね。
嶋野:今の質問は、2番の「組織・働き方」にけっこう近いところがあるかもしれなくて。メルカリさんはどうされていらっしゃるんですか?
つまり、そもそもサービス設計から、いわゆる今まで広報視点やPR視点で作ったというものがあるんだけれど、どうしても先ほど事業の分断されたマーケティング部門というのが(あって)、マーケティングはあちらサイドで。まず、メルカリさんはそのあたりをどうやって回収されようとされている感じですか?
矢嶋:けっこう会社によってそれぞれアプローチが違うのでなんとも言えないですが、理想としては統合的にやったほうがいいよね、というのはもちろんあると思います。
一方、全体のコミュニケーションを統合する過程でコミュニケーションコストがすごくかかる、というデメリットもあります。ちゃんとそこを、どのタイミングでどういう手段を使うかというのかがわかっているクライアントや代理店さんでないと擦り合わないので。
矢嶋:僕らは今は広報部門とマーケティング部門をあえて別にしています。ただ、並走しながら、彼らがなにをやっているかというのを当然見ているし、そこを広報としてレバレッジできるよねというところのタイミングが合えば、僕らもそこに乗っかっていくし、あるいは広報でやっている活動の中で、マーケティングサイドに貢献できることがあればしていこうという形で連携しています。
三浦:なし崩し的に今「組織・働き方」にいくともっと……。メルカリの場合は、社長の小泉さんがいらっしゃって、マーケティング・広報・宣伝・PRというような概念がいろいろあると思いますが、どういう組織体制なんですか?
矢嶋:時期によって変わるんですが、もともとは小泉がマーケティングと広報を両方見ていました。今は若干組織が変わって、マーケティングサイドはより事業成長やユーザー獲得にコミットしていこうということで、小泉の傘下を離れ、プロダクト部門が管掌する体制になっています。
三浦:営業手段だから、マーケティングサイドもそこを上げるためにいろいろなことやっていく。
矢嶋:そこはそうですね。短期的にはGMVを上げるんですが、サービスとしてブランドをどう構築していくかという、それはもう少し中長期的にやっている感じで。
そうすると、広報よりプロダクトに近い位置でやったほうがいいので、プロダクト部門の下に移管されています。
三浦:一方で、ここにいらっしゃるメルカリのPR・広報は、コミュニケーション部分の責任領域というか、なにが達成すべきものなんですか?
矢嶋:そうですね、マーケティングサイドはGMV、売上に直結する施策をやっています。
僕らPRサイドとしては、どっちかというとそもそも市場のニーズを作っていく、顕在化させていく部分を担っています。
例えば、いま若者たちが売ることを前提に物を買っているというトレンドが来ているんですとか、そういうのが次のトレンドになるんだとしたら、「これウォッチしておかないと」「メルカリを使っておかないとやばいよね」というところまでどう世の中の空気を作っていくか、というのを意識しています。
三浦:まずサプリと手術ですね。健康な状態を作っていく広報的な部分と、わりと常に短期的数値を上げ続けなければいけないというところで目線が分かれていて。
嶋野さんや僕らサイドからすると、たぶんPRにはコミュニケーション予算のようなものがざっくりとあって、その中に短期的な課題解決と中長期的な課題解決というようなものがあって、それぞれ個別にアプローチしていけると、もっと商売が大きくなったり、よりよいソリューションが出てくることもあるのかなと思ったりします。
嶋野:エージェンシー側、企業さん側のどちらにしても、どうしても担当が分かれてしまうのは仕方がないと思いますが、それを統合して見れるリーダーの存在をどうやって作るかというのが一番重要ですよね。
三浦:そうですね。クライアント側にも、こちら側にもそういう人が必要だし。
矢嶋:本当にそこを両方見れる……両方の使い分けだと思ってやっている人が最強だと思いますが、どうしてもマーケティングは短期的な目線に寄りがちだったりするし、広報はもうちょっと中長期的で。さっきの宗派の話ではないですが、けっこう噛み合わないことが多いですね。
嶋野:でも、意識的に作らない。
青山弘幸氏(以下、青山):その事業の成長をマーケティングするという点について、僕自身がユーザー数、売上というようなわかりやすい指標をわりとずっとやってきたんですね。
それこそ去年事業プロデュースというところで、KPIだけでなくサービスを広めるとなったときに、はじめてPRに関わって。そのときに実はKPIだけではなく、社会とつなぐためにメッセージ、コンセプト、ミッションといったものをすごく考えて。それを発信していくと「いいサービスだね」という反応がすごく返ってきたんですよ。そのときにPRはすごいなと思ったんです。
組織でいうと、KPIや売上のほうがわかりやすいので、力学的にけっこうそっちが伸びがちだなと思っていて。そのなかで「PRすごいよね」という文脈や土壌というのをどう作られているのか。また、そういう人材はどう育っていくのかというのがすごく気になるな、教えてほしいなと思って。
三浦:短期的に言うと、PRはわりと裁量も効くし、マーケットにも多少効くし、いろいろなパラメータに効くマルチビタミンのようなところがあるので、すごくお得ですよ。普通に考えて、「レバレッジに効きますよ」という、極めて短期的な説得の仕方はあると思います。
それとは別に、パーソルとメルカリがそうであるように、企業は成長していくにあたって社会的責任が絶対に生じてくると。それをいかに早いタイミングから組織として設計するかがすごく重要で。
逆説的に言うと、そこを設計できていない経営者の企業で成長しているところはあまりないので、そういう当面のマルチビタミン論と、社会の公器としての企業というものの説明はちゃんとしたほうがいいかなと思いました。
それから、もう1個。今嶋野さんがおっしゃったように、PR、アド、マーケティングについて総合的な人間が育たないといけないというのは、僕も本当にそうだと思っていて。
もっと言うと、PRにはたぶん概念と感覚というものがあって。PR感覚というのはあるんですね。「これはバズるぞ」「これで燃えるな」「これは燃えるけど、大丈夫だな」というような。
あとは実地として「誰に何時に電話した」「どのメディアが書いてくれるか」というような細かいことがものすごくあって。上の概念と感覚がない人間はマーケティングの責任者になれないと思うんですね。ベーシック。それは代理店側のクリエイティブディレクターもそうですし、クライアント側のCMOもそうだし。
そこは極めて基本的なことで、なおかつ、それがあまり社会に備わっていないというのは、経営者にとっては当たり前すぎること。ZOZOの前澤(友作)さんや、たぶん小泉さん、山田(進太郎)さんはすごく普通にわかっているので「なんで俺がそんなことを言わないといけないの?」とは思っていない。
代理店側はたぶん、今の上坂さんもですが、宗教が違いすぎてしまってコミュニケーションが隔絶してしまっている。だからこそ嶋野さんは電通でもすごく大事にされるし、僕もわりと仕事をやらせていただいているということなのではないかなと思っていて。
三浦:どうですか? 青山さん、大丈夫?
青山:ありがとうございます。KPIだけでなく、サービスのミッションをちゃんと伝えるために、自分でプレスリリースを書いています。僕もやってみて気づいたんですが、言葉にする大切さがあると思っていて。
三浦:いいですね。
青山:ようやく気づいたなというところだったんですよ。だから、先ほどもおっしゃっていたマーケティングとPRの機能であったり、どういう方法で磨くということを考えたときに、どうしたらそこに近づいていくか。両方をわかっている人はどう育っていくのかというところを聞きたいなと。
嶋野:やってみないとわからないですね。
三浦:やらないとわからないですよね。どうですか? やらないとわからないですか?
矢嶋:やらないとわからないですね。
(会場笑)
青山:僕も、怒られてしまうかもしれないですが、あまり信じていなかったところが実はあったんです。わかりやすくなかったので。だけど、やっていったときに「ああ、すごいな」と。マーケティングのように数字で現れないけれども、社会や仲間が応援してくれるなという感じがあって。でもこれをやり続けるのは組織によってはつらいだろうなと思って。なかなか評価されづらいかなという面があるので。
三浦:PRは、戦略、感覚、技術、リレーションという4つぐらいに分かれる気がするんですよ。まず、PR戦略はいわゆるマーケティングで、「今どういうポジションにビジネスを置いて、どう考えればグロースするんだっけ?」というようなことを考える。
感覚は、それをもうちょっと、言語化しないままに「これはいけるな」「これはうまくいかないんじゃないかな」という。次に技術。技術はやっぱりすごくあって。プレスリリースを書く人も……僕は正直、すごくうまいんですよ。
(会場笑)
どうしたら日経系に取り上げられるか、テレビに取り上げられるか、報道で取り上げられるか、Webで取り上げられるかなどいろいろあるので。だから技術はやっぱりすごくあって。
最後にリレーションがあるんですよ。例えば今回だったら、「この記者だったら書いてくれるけれども、こいつに言ってもダメだな」「これだったらBuzzFeedの誰々さんが書いてくれるけれど、これは違う」「日経は朝9時までに情報を入れないと書いてくれないけれど、前日の夜に入れてしまうと先に書かれてしまうから日経はダメ」というリレーションがあって。
これはね、下は絶対に感覚。やっぱりやってみないとけっこうわからないですね。ただ、座学でもなんとなく戦略のようなことは身についたりします。
三浦:矢嶋さん、どうですか?
矢嶋:けっこうセンスのようなものがいっぱいあると。実際メルカリで僕もそうでした。事業会社でいくと、会社として言いたいことを、どのタイミングで、どういう形でメディアにアウトプットしていくのが最適か、というのはけっこうセンスだなと思っていて。
そこはすごく言語化するのが難しくて。僕は部下のメンバーたちに対しては、小さくてもいいから自分で考えて、小さな成功体験を積ませます。肌感で1セットやってみないとわからないので、失敗してダメだったときは「また次こうしよう」という感じでやって。けっこうそこは、自分が当事者でないとわからないです。
三浦:嶋野さんは、もともと広告代理店でマーケットをいろいろやって、今はすごくクリエイティブで、アウトプットもすごくPR的だと思うんですが、どうやって身につけられたんですか?
嶋野:すごくありがたいことに、いきたくないのを含めていろいろな部署へいけたので身についたというのは大きいと思います。三浦さんの質問にちゃんと答えられていないような気がするのですが、さっき青山さんの「どうすればいいですか?」というのにアドバイスできるとしたら、1プレイヤー上のものを扱う本を読むといいと思います。
例えば、僕は今、マーケティングもPRもアドもフラットにやればいいと思っているんです。なぜかというと、僕はその前に経営の本をたくさん読んだときにそうと思ったんですね。経営視点からしたら結果さえ出せば、なんでもいいんですよ。
嶋野:そう思ったときに、例えば、CSV経営をご存じですかね。Creating Shared Value。ああいうことを考えると、やはり社会にちゃんと価値があったときに企業にもっとフォーカスするというような話があるときに、PRでなくても、なんでもいいじゃないですか。そういうふうに思っていくと、1個上に上がって。今度は経営のもう1個上へいくと、国家レベルの話です。
そういうことだと思うんですね。1個上を見ていくと、今やっているエリアを俯瞰的に見れる。そういうことをちょっとずつやっていくといいのかなと思います。
三浦:そうですね。ものすごくそう思いました。やっぱりPRは視点的には経営と距離がほぼイコールで。そういう意味だと、国家を見て、「今、社会がどうなっているんだ。だからこそ、この企業はこうあるべき」という、そこをすごく体感的にイメージできますよね。
吉田:働き方という点で、フリーランス広報についておうかがいしたいです。私は少しだけフリーランスだった時期がありましたが、フリーランスだとは相手の方があくまで課題や困っているところありきで、改善できるところに入っていくしかないなと感じました。
事業会社に戻ってみて、事業、会社の中にいると、今まで見えていなかった課題を見つけることができたり、みんなと一緒に中から会社の成長を体験できたりするところがいいなと思っています。でも、広報のみんなと話していると、「フリー広報になりたいな」と思っている方がけっこういらっしゃるんですよね。フリーランスの広報のあるべき姿というか、そもそもフリーランスの広報についてどう思っていますか。
三浦:どうとも思わないですね。がんばればいいじゃないですか。どうですか? フリーランスの広報。どうぞ。
矢嶋:そうですねぇ。お金を稼ぐにはいいんじゃないですかね。なんだろう。スタンスとしてはいいんじゃないですか。いろいろな会社をコンサルテーションして。
三浦:話がちょっとずれるかもしれないんですが、例えばコピーライターやデザイナーでフリーランスになる人はけっこう多くて。僕も最初は1人でやろうと一瞬0.2秒ぐらい考えました。フリーの技術職はお金が儲かりやすかったりすると思うんですが、たぶんやっているうちになんのために働いているのかがわからなくなってしまう気がするんですよ。
三浦:例えば、矢嶋さんだったらメルカリで、その先はわからないですが、少なくとも今は「世の中の消費のかたちを変えるんだ」という気持ちがあったり。僕は今GOという会社で、基本的に「世の中の変化と挑戦に関わるアウトプットを全部応援する」という哲学や宗教があって。
(フリーランスの場合は)それがないので。毎回「今日はパーソルのお手伝いをします」「今日はメルカリのお手伝いをします」「今日はビズリーチのお手伝いをします」というのは、最初はいいと思うんですが、たぶん途中で疲れたり、気持ちが折れてきたりしてしまうと思うんですよ。
若いうちに荒稼ぎしてさっさと引退したり、あるいは家庭を優先して自分の働ける時間を最優先してやることとして、すごくいい働き方だとは思うんですけれども、なんらかの大きな物語の中に身を置いたほうが、人間は本気になれる。
自分のために自分の命は使えないじゃないですか。そういう意味では、なんらかの宗教や物語に身をおいたほうが、社会における自分の価値を最大化できると思っています。
吉田:私もそう思って事業会社に(身を置いています)。
三浦:そんな感じです。今、良いことを言いましたね。真似しないでくださいね。
(会場笑)
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