2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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加藤順彦ポール氏(以下、加藤):よろしくお願いします。「闘わずして勝つ冴えたやり方」ということでお話しします。私は昨日の朝、シンガポールからやってまいりました。9年半前に日本を出て、日本を外から揺さぶって刺激を与えられる人になりたいと思って、挑戦を続けてまいりました。
具体的に何をやっているかというと、海外で起業する日本人の傍らで、資本を突っ込むだけじゃなくてボードメンバーになって一緒に会社経営を取り組んでいこうと。今25~6社の会社に資本参加して役員になっていて、みんな社長は日本人で、ほとんど全てが海外法人。いわゆるハンズオン型です。
いくつか、投資している会社を紹介します。この会社は、シンガポールとバンクーバーに物流拠点を置き、周辺の国の皆さまにコンタクトレンズを越境でECするLENSMODEという会社です。
こちらは、今カンボジアとインドで、農民にクレジットを供与してお金の流れを良くしようとしているAGRIBUDDYという会社です。
こちらビットバンクは日本の会社で、この10月から事業者登録できた、いわゆる仮想通貨の取引所です。
僕は海外で起業しようと言ったんですけれども、社長が「どうしても日本でやりたい」ということで、しかたなく日本で作ったんですが、本当に昨日のセッションでありましたように、仮想通貨の事業者は日本で作るのが一番良かったので……良かったなと思っております。
こちらカマルクは、インドネシアで家具を作っております。
つい先日、LIFULLさんの出資をうけるということを発表した会社です。
そんな私は、今を遡ること31年前、大学1年生のときに、今日のLaunchPadで審査員だった真田(哲弥)さんという方が起こしたリョーマという会社の創業に巻き込んでいただいて、それから2年後、東京でNTTの情報料金回収代行サービス=ダイヤルQという仕組みを使ったプロバイダの事業を、若い人ばかりで作ったんですが、ちょうど大学を卒業するころ会社はあえなく潰れまして。
大学卒業後1ヶ月で無職になって、そのままその受け皿会社への就職を経て、25歳のときに雑誌広告専門の広告会社NIKKOを作りました。どんな雑誌かというと、いわゆる成人誌なんですけれども。
(会場笑)
男女の出会いをプロデュースする……今でいう出会い系の、当時はツーショットダイヤルと言います。男性はダイヤルQ2で電話して、女性はフリーダイヤルで電話して、回線をマッチングして、「0」を押すと相手が変わるというサービスが大変当時流行りまして。これは基本的には大手企業はやらないんです。具体的にはこういう広告を出します。
(会場笑)
こちらは女性向けの広告です。男性向けはQ2で。「電話すると良いことあると思うよ」「電話でお話できるよ」というマッチングサービスです。
今でこそこういうIVSとかすばらしい場所でマッチングサービスについて語る人というのも、堂々と現れましたけれど、当時は非常に後ろ暗いサービスで、こういうサービスをやってること自体内緒という時代だったので、事業者もみんな顔を隠して住所まで隠して、嘘の名前で会社をやっていました。
その出版社さんと広告主さん、つまりツーショットの事業会社さんの間に入って広告代理店をやるのが当時の私の仕事だったんですが、結果的に言うと大当たりしまして。でも電通や博報堂、あるいは大手の広告会社もこのツーショットダイヤルに手は出さなかった。
非常に売上は大きかったんですけど、そういう後ろめたい感じが当時はありましたので、私は始めたばかりの人たちがほとんど市場のパイを取るという状況を見て、「あ、スタートアップでも、こういう人の目をかいくぐるような商売をやると、わりと大きめのパイを取れるんだな」と気づいたあたりにインターネットがやってまいりました。1995年です。
私は起業して3年目でしたけれど、アメリカからやってきたインターネットを見て。インターネットの商売で一番最初に盛り上がったのは接続事業だったんです。いわゆるプロバイダです。インターネットのネットワークを個人の消費者の方とマッチングして、月額いくらとか料金を付ける商売が当時流行りまして。
商売の構造をよく見ると、なるほど、これはダイヤルQ2とかツーショットと似ていて、無名な会社でも、ベンチャーでも、広告によって新客を集めてマッチングをどんどん増やしていけば、売上を立てることができる。
しかも、インターネットは当時得体の知れないものだったので、これは大手は参入しないと思いまして、こっちに乗り換えようということで、1995年から1996年にかけて、クライアントをどんどんツーショットからインターネットの商売に切り替えていったんです。
当時のインターネットの商売というのは接続事業なので、プロバイダさんが広告主さんのメインになったんですけど、そこから徐々にポータルだ、ネットサービスだとお取引先が広がっていきまして、ネットバブルに乗ってNIKKOという広告会社も成長できた。
結果的に、2006年の売上で120億円、従業員で140人ぐらいのところまで、インターネットとともに成長できたんです。
結論を先に言っちゃいましたけども、NIKKOが伸びたのは私が優秀だったからでも何でもなくて、インターネットの広告産業が伸びたので、一緒に我々もその尻馬に乗れたんだなと思っております。
さて、先ほど雑誌広告からスタートして、という話をしたんですが、90年代の後半……ネットの黎明期は、実は情報源が雑誌だったんです。とくにアメリカの最新事情をみんな雑誌で入手していた。『インターネットマガジン』とか、『Yahoo! Internet Guide』とか。そういう雑誌を読んで、これからの流行る商売とか、今いけてるトレンドとかを知ってた。
当然IVSも、なかったんです。イケている人の存在とか、そういった中の声というのは、Webサイトではなくて雑誌を通じてみんな入手していました。今日ここに持ってきたのは、今から21年前の1997年1月号の『WIRED』という雑誌なんですが、これを当時のネット界隈は熱狂して読んでいた、いわゆるトレンドが載っている本だった。
それで競ってインタビューを受けたり、あるいは自分たちの新製品の広告を出しているのがこの『WIRED』という雑誌。中の記事も、非常にセンスのいい上品なデザインで、ビジュアルがガッと立っていて、いかにも「これからの未来はインターネットだ!」みたいな雑誌でした。
私は新しいトレンド、未来、あるいは次のNext big thingとの接触の方策、それはこの『WIRED』に広告を出すことだと。そこで名乗りを上げることによって、イケている人たちの認知を上げることが肝要と考えるようになりました。
私もネット系企業の広告をやっていたので、クライアントに対して「『WIRED』に出ることが御社の業界内での認知のアップにつながるよ」「どんどん出ていくことで、認知を上げていきましょう」という提案をして。
こちらが当時のNIKKOの一番のお客さま「interQ」さんです。実は、今ではNIKKOの親会社になっていますGMOさんなんですけれども。当時は今とぜんぜん違う商売をしていました。これは何かと言うと、入会もしなくていい、個人情報も入れなくていい。ただ、ダイヤルQ2の番号を入れるとあっという間にネットにつながるよという、インスタントプロバイダという商売を「interQ」さんがやられていたんです。見開き赤文字で「一分で接続。」と。
我々NIKKOは、この「interQ」さんの広告を媒体に合わせて作ってリサイズして原稿も書いて、あるいは当時はCD-ROMを接続ソフトをのせて、「interQ」さんとご一緒に広告の作業を進めていました。見てください。更に2ページ見開き買ってこのQ2のずらっと並んでいる番号です。
『WIRED』というのは先進的なクリエイティブな雑誌で。
「自分たちイケているぜリクルーティング」もありますし、あるいはベンチャーキャピタルに出資してもらおうということで、キャッチーでかつスタイリッシュな広告を打つところが多かったんですが、「interQ」さんはどちらかと言うと、私がもともと得意だったダイヤルQ2のように、ボンボーンと広告を見させて今すぐ入って! と。
(会場笑)
全国にアクセスポイントがあるんだから、今この場でパソコンを立ち上げて接続しなさいよ! というようなことをド派手にぶち上げてたわけです。
同時にこれまさに仮想競合のやる気を削ぐ方法でして。『WIRED』を見ている人たちが、「広告を大量に出しているから儲かってる感じはするけれど、こんなクレイジーでアグレッシブな広告を打つところとは一緒にされたくたくない」と感じるであろう匂いをぷんぷんさせて、ある種異質であることをアピールすることで競合の現れるのを確信犯で威嚇していたのです。
「interQ」さんはその後、インターネットをQ2を使って接続するというサービスは競合が現れないまま、この2年後、99年の9月に上場を果たしました。で、その後はどんどん「お名前.com」やレンタルサーバーの会社、GMOインターネットへ変わっていきました。
常に大量に宣伝する用意があるよということを示すことで、競合すら現れないような状況を作るというのが、ある意味こういったキーパーソンが集まる機会では大事で。いかに自分が熱狂しているかというとをアピールすることが、闘わずして勝つ方法なのかなと思っています。
みなさんもご記憶に新しいと思うんですが、今年6月に「CASH」というサービスが現れました。華々しくデビューして、わずか数時間で数億円ばっと出ていったんですけれども、その何時間後にはサービスが停止して、3ヶ月間もの間、「CASH」というサービスはやっていませんでした。その間マスコミでもネットの論壇でも、あるいは我々界隈でも賛否両論があったんですけれども。
結果的にこれに似たようなサービスというのは、初日に何億円も出ていったということもあって、みんな尻込みしてしまったというのと、ある意味で威嚇することに大成功したことで、わずか1日しか営業していないのに競合が現れないというすばらしい状況になって、その後3ヶ月営業が止まったまま……再開した後にこのような状態になったのは、みなさんもご承知の通りでございます。
ということで、一切闘わずして威嚇するだけして勝つ方法を、今日はお話しさせていただきました。私は今、インターネットを通じてコンタクトレンズを世界一安い値段で売っています。世界一安いので競合にならないでください。どうもご清聴ありがとうございました。
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