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ピクシブという会社を創る企業カルチャー(全2記事)

「ピクシブはオフィスがSlackになった感じ」 オープンな議論を誘発するミーティングスペースのあり方

pixiv10周年を記念して開催された「pixiv MEETUP -10th Anniversary-」。CEO、CTO、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーがさまざまな視点からpixivの10年間を振り返りました。「ピクシブという会社を創る企業カルチャー」と題されたセッションでは、創業者の片桐孝憲氏と現代表の伊藤浩樹氏が登壇し、ピクシブのオフィス設計や代表交代の裏側などについて語りました。

ピクシブのオフィスの設計思想

草彅洋平氏(以下、草彅):次にオフィスの話をしていきたいと思います。オフィスの設計に関しては、まず、伊藤さんからお聞きした方がいいんですかね?

伊藤浩樹氏(以下、伊藤):そうですね。これも作った時に……ちょうど僕が入った直後くらいに、こういうピクシブの……これ何階だっけ? 6階か。わかんなくなっちゃった(笑)。2階だよね、これ? 机を、全長250メートルくらいつなげた机にしてもらっています。

これはこのオフィスがこういう机になる前からそうなんですけど、基本的にはオープンスペースのミーティングを前提としていて、本当に一部の会議しか、ガラス部屋というか、個室にしないというのを徹底しています。

なので、(ピクシブに)いらっしゃってる方々も多いと思うんですけれども、打ち合わせをしている横で面接が始まっていたりとか、そういうことは日常茶飯です。社内の打ち合わせをしているときに、ふっとたまたまトイレから帰ってきたエンジニアが乱入して「いや、俺は、それはそうとは思わない」みたいな意見を言っていくこともあります。オープンな議論とコミュニケーションをひたすら意識して、ミーティングスペースを設計しました。

あとは、本来多数のオフィスは理路整然とした机の並びだったり、設計になっているとは思うんですけれども、ひたすら人とぶつかりまくるというか、むしろ自分の机に行きにくい設計がいいというか。そういうところで、いろんな人とぶつかって、いろんな人とコミュニケーションするという。さっきコミュニケーションと申し上げましたけれども、オフィス全体もそこをすごく意識して設計しました。

確か、そもそもこれを作るようになったのは、片桐の「机の森」というポエムが事の発端でしたね。

片桐孝憲氏(以下、片桐):そもそも、IT企業がおしゃれでかっこいいオフィスを作る、というのがふつうの流れとしてあった中で、スターバックスみたいなものとか、そんなオフィスを作ることよりもpixivというサービスを提供する会社としてどうあるべきかというところから考えていきました。「かっこいい」とか「おしゃれ」なことよりも、「業務効率」とか「ミーティングしやすい」とか、自分たちの会社の「モノの作り方」に適したオフィスってどういうものだろう、というところから始まって、作っています。

草彅:設計は、チームラボさんですよね?

片桐:そう、チームラボと一緒にやってますね。彼らの作り方も、ただ派手だったらOKっていうんじゃなくて。結局、色がいっぱいあったほうが騒がしくてもOKみたいな空気とか、そういうのが作れるよね、というのもあって。業務効率を圧倒的に上げていくんだったら、例えば会社の中でリラックスできるスペースなんてないわけですよ、ピクシブはね(笑)。リラックスしたいなら家帰ろうよっていう(笑)。

(会場笑)

それぐらいの設計で作ってるっていう感じですかね。だから、あんまりオフィスの中にバーを作ったり、昼寝できるようなスペースを作るよりも、結局仕事というのがミーティングか開発なので。そういうことがしやすい設計にしていこうというのが、このオフィスですかね。

あと、こういうオフィスを作ればそういう仕事の仕方になるというわけじゃなくて。結局オフィスと制度とか。例えば、会議に勝手に入ってもいいとか、そういうものとセットなので。例えばランチ会とかも全部そうなんですけど、それだけやれば、そういうふうになるというわけじゃないっていうかね。と、作りながらも思ったことですかね。

ピクシブはオフィスがSlackになった感じ

草彅:片桐さんが、個室でミーティングするのを嫌うというか、嫌がるというか、他のノイズが入ってくるようにしたいというような意向を聞いたんですけど。

片桐:そうそう。今は会議室でのミーティングが多いんですけど、すぐにみんなブラインドを下げたがるんですよね。なんか、「そんな密会じゃなくない、これ?」っていうのがあって(笑)。

別に、オープンなスペースでミーティングしていったほうが、喋ってる中でも他のミーティングの熱気みたいなものが伝播したりもするし。そういう設計のほうがいいよねというのが、僕の思っていることですかね。全部が個室だったら、どんな話をしてるかわからないし。興味がある話題がちょっとでも聞こえたら、「入っちゃおうかな」みたいな。そういう設計をしてますね。

伊藤:ちょっとでもよくなる可能性があるんだとしたら、それを全部取り込みたいと。だから、基本はもう全オフィスを使ってミーティングしているという部分はありますね。勉強会にしろ、いろんな会議にしても、オープンにしながら、いろんな人が……もしかしたら本来聞くつもりなかった人でも、そこで聞いて良かったってことがあるかもしれないっていうところにかけていくし。そういう「共有文化」というか、オープンにしていくというのをひたすら徹底していきたいんです。

片桐:なんかね、ピクシブはオフィスがSlackになったみたいな感じ(笑)。意味わかりますか?

伊藤:全部オープンチャンネルですね。

片桐:テーブルがチャンネルみたいな、そういうイメージですかね。

草彅:実際、会議している時に、伊藤さんとか片桐さんが入っていくみたいな。まあ、片桐さんは今違うかもしれないんですけど、あるんですかね?

伊藤:ありますね。変にチーム内で議論がスタックしてるぐらいだったら、入って助けられたほうが効率がいいっていうこともたくさんありますし、今はどういうことを考えているんだろうかというのを聞きたくなります。あまり細かくマネジメントしたいということではないんですけれども、みんなが何を考えているのか、僕自身がすごく知りたい。

逆にピクシブをどうよくしていくかというのは、僕だけじゃなくて全員が考えてることだと思っているので、僕の糧としてもほしいなっていう。むしろ僕から持ちかけたりとか、そういうのはいっぱいあります。

代表交代の陰にあったそれぞれの思い

草彅:ありがとうございます。じゃあ、次のスライドに移ります。2017年の1月に、代表が交代されて、片桐さんから伊藤さんに代わったことなんですけれども。まず片桐さんから、変わった経緯を。

片桐:変わった経緯……。経緯かぁ……経緯ねぇ……。

(会場笑)

ピクシブという会社がやっていく方向というのが、ある程度「こうだよね」というのを本当に社員全員が理解していて、伊藤をはじめとしてみんなが自発的に良いサービスを作ってくれていたんですよ。そういう意味でいうと、僕暇だったんですよね(笑)。

(会場笑)

片桐:暇だったんで、この数年はみんなの目を盗みながら南米のアマゾンに行ったり(笑)。

伊藤:めっちゃバレてましたよ(笑)。

(会場笑)

片桐:そういうことをやっていく中で、DMMの亀山会長から話があって。よく考えたら、伊藤がピクシブに入社した時に、いつか彼がピクシブの社長になっていくんだなと思っていたので、僕のイメージの中ではピクシブという会社で実現したいことがまだまだあったんですけど、「ま、いっか」みたいな。「やれるでしょ」みたいな(笑)。

(会場笑)

「じゃあ、行ってくるわ」みたいな。チャレンジというか冒険が好きなんですよね。アマゾンででかいナマズを獲るような感じでDMMでもでかい挑戦してきます、みたいな(笑)。そういうイメージですかね。

草彅:代表になられて、伊藤さんは、どうですかね?

伊藤:ピクシブに移る、自分の一番のモチベーションになった言葉があって。2012年の後半、片桐からもよくいろいろと声をかけてもらった時に、「なんで、自分を採用したいと思ってるんですか?」みたいな話をした時、「同じようなバックグラウンドの人間はたくさんいるかもしれないけれども、友情がないと失敗したときに怒ってしまう」と。「たぶん、コンサル上がりからくると、大体できて当たり前だと思っちゃう時に、大体のことは本当は失敗する」「プロフェッショナルに任せたときに失敗すると怒ってしまうけれども、友達だったらしょうがない」と。

「僕は伊藤が失敗するようだったらしょうがないと思えるから、たぶん一緒にやっていけるんだよね」みたいな話をしてくれて。それが僕の中で決め手になったんですよね。

それは今でもずっと思っていて。代表の話をもらったときも、正直ベストを尽くすしかないですけど、どうなるかわからない中で、「あなた言ったじゃん」と。「失敗しても怒らない」って言ったよね、と。それならやりきれるかなというか、やってみようっていう、ただそれだけですね。

片桐:今の解釈は素晴らしくて、ものすごくポジティブに誤解してる(笑)。

(会場笑)

今の話って、「失敗したらしょうがない」というのは、もちろん人間関係とか友情みたいなものもあるんだけど、自分がやるよりもうまくできそうな人に任せてダメだったら、自分がやっても失敗したんだから一緒だよねって思っちゃうんだよね。

(会場笑)

意味わかるかな?

伊藤:わかります。

片桐:「僕がやるよりも、伊藤がやったほうがいいっしょ」みたいな。ピクシブだけじゃなくて、新規事業とかをやるというときに、僕自身が「事業部長やります!」みたいな感じで、僕が全部決めて、事業を作っていくというよりも例えばBOOTHのプロダクトマネージャーの重松とかを見ていると「彼がやった方がいいよね」とか。「彼が失敗するんだったら、俺でもダメだったな」みたいな(笑)。そういうふうに思えるかどうかというのがすごく重要かなって感じですかね。

これからのピクシブ

草彅:ありがとうございます。最後に「これからのピクシブ」という感じでお話をお聞きしたいなと思うんですけれども。今後のピクシブのサービスについて、伊藤さんからお聞きしたいなと思います。

伊藤:pixivはクリエイターとファンの濃いコミュニティと、そのコミュニケーションの集合体だと思ってるんですね。なので、そこをひたすら強くしていくということが、まず大前提だとは思っています。まだまだpixivは海外に行く余地があると思っていて。特に中国でも、もう同様のサービスだとか、漫画のコンテンツが流行ってはいるんですけれども。グローバルにどうpixivを持っていけるかっていうことを、1つ考えていきたい。

さらに、今年1年で思っていることなんですが、クリエイターというものが、最強の価値の塊だなと思っていて、どんどん自ら価値を創り出せる、コンテンツを創り出せる存在だなと思っているんですね。そういう人たちがもっと、ファンと濃いコミュニケーションをしたり、支援をもらったり、いろんなコンテンツをもっと自由に創り出せる環境を作っていきたい。

今、サロンだったりライブ動画だったり、いろんなファンビジネスが流行ってきてるとは思うんですけれど、そういったところでも、僕たちがクリエイターさんと繋がっているからこそできることがもっとたくさんあると思っていて、クリエイターさんとファンとの関係性をより濃く、強くしていくことを意識したサービスをやっていきたいですね。特に、pixivFANBOXとか、そういったものを強化していきたいと思っています。

あと、いろんなトレンドを取り入れていくというところですよね。例えば、ライブ配信だとか、そういったところをpixivそのものにも取り入れていきたいなとは考えています。

考えれば考えるほど、やりたいこととかやらなきゃいけないことがたくさんあって。まったく人が足りていないという状況です。ぜひみなさんご応募くださいというのを、最後にお伝えしておきたいです(笑)。

草彅:ありがとうございます。片桐さんからは、ピクシブに期待すること、みたいなお話をお聞きしたいんですけれども。

片桐:期待するっていうか、これからのピクシブという話なんですけど、元々会社やりたくて会社作って。それが今に至ってくるんですけど。最初の設計が良すぎたんじゃないかなと思っていて(笑)。

(会場笑)

というのは、どういうことかというと、僕ずっと本を読んでいたので。例えば、「永遠に成長する会社ってどういう会社だろう?」とか、ビジョナリーカンパニーとかいろんなものを読んで。やっぱり会社にとって完璧な理念というか、すごくいい理念さえあれば、それに沿って社員が自発的に動いて、新規サービスができていくんじゃないかなって、10年以上前から思ってたんですよね。実際その通りになっているんですけど。

pixivができて最初の1年、ずっと考えていたのは、pixivというもののWebサービスとしての価値ってなんだろうって。そういうときに、データベースだったり、交流の中から新しい作品が生まれるとか。そういうプロダクトとしての価値というのを、「ここだよね」というのが見えて。

その後に、組織としてどうやってこのプロダクトを中心にしながら発展していくんだろうって考えたときに……いつも言っている話なんですけど、もともとより多くのイラストを集めるというのがpixivの理念だったんです。それが創作活動がよりおもしろくなる場所とか、もっと楽しくなるような場所を作っていくというのが、この会社がやっていくことだよね、という理念に変えたときに、この理念でいい人も集まるし、いいサービスも作れるって思ったんですよね。10年前にね。

というのが、今に続いているというか、強度ある理念ができたなと、今自分に感心してます(笑)。

(会場拍手)

草彅:大きな拍手をありがとうございます。じゃあ、以上で(笑)。

(会場笑)

今日の鼎談を終了したいと思います。これから、パーティがあるんですよね。

伊藤:想像以上に、オンタイムで終わりましたね(笑)。

草彅:なにか思い残すことは、大丈夫ですか?

伊藤:強度な理念に支えられて僕たちは生きていきますし、これからも生きていくということも、改めて本当に片桐さんに感心しました(笑)。

片桐:いやいやいや。

(一同笑)

伊藤:ありがとうございます。

片桐:ありがとうございました

草彅:どうも、ありがとうございました。

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