2024.10.10
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井上英明氏(以下、井上):私、コワーキングスペースに行ったことがないんですけど、コミュニティができているって感じなんですか? そのあたりの魅力や人を引っ張る要素として、そこにコミュニティを感じて、みなさんが集まってきてるのか? 利便性できてるのか? どうなんですか?
村上浩輝氏(以下、村上):どっちもあると思っていますが、先に後者の利便性の話から。
わかりやすいのは、コワーキングスペースじゃないですけど六本木ヒルズアカデミーですね。あそこほどスコーンと抜けているスペースはないので。そんなに料金も高くないですし、使っている人は多いと思うんです。
前者の話でいくと、僕らは明確にコミュニティです。渋谷にあるんですけど、別に駅からいいところになくて。ビルも「え!? ここにあるの?」というようなわりと古いビルで、僕らが入ったときはもうスカスカだったんです(笑)。「わけがわからないコワーキングスペースをやります」と言っても貸してくれたようなビルだったんですね。
借り手がいないビルに僕らが入って、そこにたくさん人を集めた。これはコミュニティのバリューだったと思うんです。
じゃあ、コミュニティにはどんなバリューがあるのか。僕らの場合は、起業した人たちが集まっていました。そうなると、自分も起業したいっていう人は集まるわけですよね。
例えば当時でいうと、今メルカリをやっている山田進太郎さんや、CAMPFIREの家入一真さんなど、そういう人たちが遊びに来ていました。ITスタートアップコミュニティみたいなものが、2011年にco-baを中心にできていたんですよね。
それに「参加したい」「自分も教えてもらい」「刺激を受けたい」みたいなので、どんどん人が集まってきた。僕は審査をしていたので、誰でも入れるわけじゃないんですよね。そういうコミュニティの質を保つというのも功を奏して「あそこに行きたい」という感じになっていきました。
井上:ということは、最初からコミュニティをつくろうという意図があって始められたわけですね。
村上:そうですね。
井上:佐渡島さん、コミュニティと簡単に言ってますけど、プロとして定義をどう考えたらいいんですか?
佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):いや、僕も自分がまだプロだと思ってなくて。この2年ぐらい考えています。
コミュニティについて学ぼうとしても、参考になりそうな本は数少なくて。コミュニティとしてうまくいった前例ってミクシィとか、プラットフォーム型なんですよ。ネットのプラットフォーム型のものでそういう本がちょっとあるくらいです。
じゃあ、コミュニティとはなんなのかっていうと、定義もぜんぜんなくて。地域創生のリアルな場のコミュニティについての学者の本はあるんですけど。ネット上のものってぜんぜんないんですね。
今、僕もコルクラボというコミュニティを学ぶラボみたいなものをやっているんですよ。今そこに100人ぐらいいるんですけど、その様子を見てると、みんなどんどん仲良くなって、仕事を一緒にしたいと思いだしたりするんですよ。
もう、その気持ちが醸成されていて。フリーランスの人もけっこういる。そうなったらコワーキングスペースをつくってあげたほうが、みんなそこで常時会えるから、よりコミュニティが強くなって、いいねってなると思うんですね。
クラウドソーシングで発注したことってあります?
井上:僕はないですよ。
佐渡島:もしもなにかをクラウドソーシングで発注しようと思ったときに、デザインやロゴとか、なにがいいかの価値観を持てている人って少ないですよね。だから、いくらで誰に頼むのが妥当かというのがわかんないですよ。
クラウドソーシングでは、シンプルなことをやってもらうのにあたってすごく便利だと思うんです。でもある種、意思決定が挟まってしまうようなもの、趣味が入ってしまうようなものだと、依頼をするにあたってこちらのやり方も問われてくる。そのため、非常に細かなコミュニケーションが必要になってくるし、不安要素も多く感じてしまう。
もしもコミュニティがあって、その中にデザイナーがいたら、その人がどんな人か知っているから頼みやすかったりする。
例えば、弁護士や医者もそうですよね。急に弁護士が必要になったときに、ネットで検索して出てきた弁護士に頼めるかっていうと、あまりにもSEOがうまいと、胡散臭いんじゃないかなっていう気もするし。一方でSEOをまったくやってないと、今の時代をわかってないんじゃないかなと思って、さらに誰に頼めばいいかわからなくて。
かといって、適正じゃないお金も払いたくないし、たくさん払えばいいというわけでもないってなったときに、意思決定ができないんですね。そんなときに役立つコミュニティって、高校か大学の知り合いぐらいしかいなかったりする。
逆に、会社内だけだと同一の集団になっちゃう。すべて自分の会社内だけでは解決できない問題はすごくあって。昔の地域コミュニティが持ってた多様性、職業がいっぱいあるということが今なくなっちゃっている。
それをネット上でどう再現していくのかということがおもしろい。だからコワーキングスペースみたいなところが有効になってきているんだと思うんですよね。
井上:この中のみなさんは、起業しようかなとか、いろいろなビジネスを立ち上げたいなと思ってるらっしゃる方が多いと思うんですけど。そういったときに、コミュニティは、意図的にキーワードかなにかで集めるものなのでしょうか? なんとなくそこが自然発生的にできあがって、そこに狙って火をつけていくのでしょうか?
佐渡島:文化に対する信頼感みたいなものだと思います。コミュニティになると、習慣とか文化みたいなものが自然と生まれてきているんだと思うんですよ。
それで、「グロービスに来られてる方は起業したいと思っている人が多い」といったときに、グロービスの卒業生同士が起業している会社同士であったとするじゃないですか。そうしたら、助けやすい。何期生かは別としても、初めの心理的ハードルがすごく下がりやすいんだと思うんですよ。
それがやっぱりコミュニティの価値だなと思います。今までは、大学が最後のコミュニティだったのが、変わろうとしている。
もちろん、趣味のゴルフで知り合ったコミュニティとか、子どもの保育園のコミュニティとかそういうのってあるとは思うんですけど。そこって楽しくはあるんだけど、発展性が意外とないんですよね。
発展性があるコミュニティをどうやってつくっていくのかというのがすごく重要じゃないかなと思いますね。
村上:まさに人が集まるという意味だと、なにか軸を立てれば集まると思うんですよ。「こういうのが好きな人」みたいなの。そういっても集まっただけじゃコミュニティにならない。集まった人をコミュニティ化していくのは、僕らも模索中なんですけど。
僕らなりの考えとしては、まずは自分が手本となって振る舞うということ。僕らも最初co-baを立ち上げたときは、自分たちがコミュニティマネージャーというかスナックのママ的な感じでコミュニティをかき混ぜる役割をやっていたんですね。
最初は、その場の振る舞いや暗黙のルールというか「こういう文化なんだ、コミュニティは」を僕ら自身が体現してやっていくことで、「あ! このコミュニティではこういう振る舞いが必要なんだ」と。
例えば、グロービスのコミュニティは本当にすごいと思うんです。最初はまず堀さんが旗を立てて、行動指針とか、これを是としているみたいなところを馴染ませていって、自然とワーっと盛り上がり始めたらスッと引く。あとはもう勝手にネットワーク外部性で、みんなどんどん広がっていくみたいな。
場の振る舞いを自分で実践して、馴染んできたなと思ったら、ちょっとずつ引いていく。そしていつの間にか自走しているというのがつくり方かなと、僕らは話してます。
井上:村上さんのところは、イベントの企画やパーティーとかもやられてるんですよね?
村上:やります。
井上:コミュニティのオンラインとオフラインの関係という部分で、感じていらっしゃることはありますか?
村上:あ~、オンラインとオフラインの関係……。そうですね。Facebookが流行り始めたのと、僕らが2011年コワーキングスペースを始めたのが同じだったんですけど。2つ感じることがあります。
まず、オンラインとオフラインの垣根がだんだんなくなったなーって思ったというのがあります。例えば、まず1つ目は、co-baをつくる過程を全部、Facebookページで毎日毎日、写真で上げたんです。「今、もうちょっとでできます」みたいな。
そうすると、オープン前から「俺、応援してるよ」みたいなco-baファンができていて、しかもそこに対して、「僕らクラウドファンディングで集めます」となった。ちょうどCAMPFIREが出始めたくらいで、みんなまだぜんぜんクラウドファンディングを知らなかったけど。「え!? なんかおもしろいじゃん」みたいなかたちで。
つくる前から、Facebookページやクラウドファンディングを通じて、ファンの人が集まってくれて、最初からコミュニティができていたというのが1つ。
2つ目は、できたあとのコミュニケーション。Facebookグループをつくって、そのグループの中で、それぞれ「僕はこんなサービスをやってるんです」と交流し始めていた。
さっき控え室でも話してたんですけど、オンラインでそういうコミュニケーションをしていて、いざco-baに来ると「昨日、投稿してましたよね? サービスローンチおめでとうございます」みたいなコミュニケーションが始まったりする。なにか行き来する感じがすごくありましたね。
僕はそのプレ境界線がなくなった、ポスト境界線がなくなったという体感や、そこの境目をあまり感じずに2011年に起業したので。起業したときから常にそんな感じだった気がします。
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