CLOSE

成長し続ける経営者らの「自らを進化させていくヒケツ」とは(全5記事)

「期待値コントロールが部下への感謝の念を生む」起業家らが実践する“任せるため”のマネージメント

常に成長し続けている経営者の習慣は? 課題は? 「IVS 2017 Spring」で行われたセッション「成長し続ける経営者らの『自らを進化させていくヒケツ』とは」では、CAMPFIRE家入一真氏、セプテーニ佐藤光紀氏、じげん・平尾丈氏、フリークアウト本田謙氏が登壇。モデレーターはKLab真田哲弥氏。それぞれが個人として抱えている課題や変化、それをどのように解決してきたかなどを語りました。

ギリギリまで下げておく「期待値のコントロール」

真田哲弥氏(以下、真田):ちなみにそれを、自分にいつも言い聞かせてるんですか? 「無能、不徳、未熟」、言い聞かせてる。それ、生きる勇気を失いませんか?

佐藤光紀氏(以下、佐藤):大丈夫です(笑)。

まず、スタート地点を思いっきり下げると、なにができてもだいたいプラスなんですよ。先ほどのマネージメントでも「期待値のコントロール」ってよく言うんですけど、「自分と相手が同じである」「このぐらいできて当然」と考えるのではなく、ちゃんと期待値をコントロールして下方に修正する。

期待値って、上方修正のバルーンを持っているので、浮力がついて勝手に上がっていくわけですね。その期待値を、しっかり適切にコントロールして抑制する。そうするとこの(低い)地点の期待値よりも、だいたいプラスに上がってくるので、うれしかったりする。だから感謝できる。

そういうメカニズムが働くので、期待値のコントロールが、感謝のメカニズムを生むと僕は思っているんです。

それと同じで、自分に対する期待値もギリギリまで下げて、「これができたら俺ってすごいじゃん」というふうにして、少しでもプラスの部分について、自分を褒めてあげる。ある意味、心が折れるというよりは、むしろ心が折れないためのマインドセットとして、自分に対する期待値を極限まで下げている。

真田:期待値のバーを下げておくことによって、褒められる余地を残す。褒める余地っていうんですかね、上方修正の余地をつくると。

佐藤:自分で自分を肯定してあげるっていうか。

真田:これはなかなか素晴らしいノウハウですね。確かに、部下に対する期待値をあらかじめ低くすることによって、感謝の念が生まれる。これはみなさんもぜひ、真似したい。いいお話だったのかなと思います。

鎧を着るタイプと裸を見せちゃうタイプ

家入一真氏(以下、家入):僕、たまに時間通りにいくと褒められるんですよ。

(一同笑)

これ、期待値コントロールしてます? 

佐藤:この間、家入さんと朝ご飯を食べたとき……家入さんと朝食ミーティングですよ。まず、来ないという前提で始まるので(笑)。「ちょっと遅れそうです」ってメッセが入った時点で、僕はうれしくなってます。「あっ、ちゃんと移動してる」「起きてる」とか。

真田:(CAMPFIREの)社員から、「うちの社長がすみません」ていうツイートが入ってましたけどね、はい。

家入:すいません。愛されてますね。佐藤さんとか平尾さんは、本当は弱いんだけど、戦って鍛えて鎧を着て、どんどん強くなっていくタイプだと思うんです。僕と本田さんは、最初から裸を見せちゃう。ベクトルが逆方向なんですよ。

(会場笑)

えっ、違います? 鎧を着るタイプと、裸を見せちゃうタイプの対決ですよ。

(会場笑)

でも、裸を1回見せると、今度は服を着るのが恥ずかしいんですよね。

本田謙氏(以下、本田):そうなんですよね。

家入:……次、いきましょう。

真田:(笑)。

コミュニケーションの頻度を上げ、バリューに変える

なかなかわかったような例えでしたが。テーマをもう一度戻しまして。

仕事の任せ方のあたり、経営者としての成長の本質部分だと思うんですけども。仕事の任せ方の、ここをこう努力したとか工夫したとか。佐藤さんからありましたけど、他の方はなんかないですかね。

平尾丈氏(以下、平尾):僕、いいですか?

真田:はい。

平尾:これはサラリーマン時代にかなり修業したテーマなんですけど。なにをやっても、他の人がしたら自分がやろうと思ってることとは違う結果が出るんですよね。

その中で自分が基本にしているのは、コミュニケーションの確認の頻度をめちゃくちゃ上げることです。もう、1時間おきとかに。これ、やられたらイヤですよね。それぐらい、今どうなったかっていうのを聞きます。

ただ、そのコミュニケーションが単なるコストにしかなっていないのか、バリューを生み出しているのか、というのは設計が必要だと思っています。

先ほどの事業計画を500枚つくるのでも、いきなり500枚提出させないんですよね。まず、自分たちのパッケージの中で、自分たちの成功事例の最大公約数みたいなのを共有していて、そのフレームワークの中でやってもらう。「冬休みにだいたいやってきなさい」と。けっこう詳細に、毎年PDCA回したものを出します。

冬休み明けにみなさんが出してくるんだけど、それを最初は戦略論、もしくは骨子、そしてそこでゴーが出たら次のプロセスにいきます、みたいなところをかなり仕組化しています。コミュニケーションの頻度は増えるんだけど、コストは下げてバリューに変えてところを工夫してやっている感じですね。

真っ白なキャンパスを渡すか、塗り絵を渡すか

真田:今これね、本田さんがおっしゃったことと丈くんがおっしゃったこと、真反対じゃないかなと思うんです。

うちの社内でもそうなんです。僕、マネージメントには2通りがあって、「ある程度は任す」と言ったら任せきって、その間、細かいことは一切出来上がりまで言わないタイプの任せ方。丈くんみたいにこまめにコミュニケーションをとって、中間確認をみっちりとっていく任せ方。

これはまるで違う任せ方なのかなと思います。本田さん、丈くんみたいなマネージメントの仕方はしたことあります?

本田:したことはないです。

ホワイトキャンバスを渡してやりがいを感じるタイプか、塗り絵を任せてきれいに塗るタイプか、どっちのタイプの人かなと見るようになったっていうのは、自分が成長している部分かなとは思うんですけど。決してホワイトキャンバスが難しくて、塗り絵の方が簡単というわけじゃなくて、あくまでもタイプの話かなと思っています。

ただ、自分はホワイトキャンバスが好きなせいもあって、昔はつい白いキャンバスを渡していたんだけど、それで自分の想像以上にきれいな絵を描くというよりは、どこから筆をつけたらいいかわからない人がいる。

しかも立場的に、「いきなり僕には描けません」とも言えず、周りに相談して回り回って悩んでいることを僕が知る感じになっちゃうのは、やっぱり良くないなと学んだということくらいですか。

真田:なるほどね。

自分を押し殺して我慢する、我慢大会

ちょっと僕の話をさせてもらうと、僕は指示を出す、確認するという頻度をいかに間隔を広げていくかを、自分の中の指標にしていた時期がありました。あるいは、自分の部下に対してマネージャー教育をする上で、世の中でいう係長……5人ぐらいのマネージャーは、1時間に1回「これちゃんとできてるか?」をチェックをしていく。

係長を4~5人束ねるぐらいの、仮に課長とすると、1日1回、朝会で確認する。部長になると、1週間に1回確認する。社長になると、1ヶ月に1回確認する。

確認や指示を出す頻度を、長くてもちゃんと回るように仕組みをつくっていくことが、マネージメントの成長だと定義をして指導しているんですね。そうすると「1ヶ月放置してても外れないようにするには、どうしたらいいのか」と、今度は自分の中で考え始める。

初期段階にしっかりとオリエンテーションをする。方向性はこうで、基本理念はこうで、目標はこうで、目的はこのためにこれをやることをしっかり打ち合わせして、そのためにどういうリスクが想定できるかというディスカッションを、初期にしっかりしておく。

自分が頭の中で、「こうやってこんなふうなものをつくればいい」と思ってたものとまったく違ったものが上がってきたとしてもいい。到達地点や目標地点、自分と意識がちゃんと合っていれば、中間で「そうじゃなくてこうだよ、あーじゃなくてそうだよ」とやらなくても、自分のイメージと違うものができあがってきても、目標とか理念とか、目的さえ一致していれば別にいいのかな。

ということで、いかに期間を延ばすかを、自分の中に本当は言いたくて。「そうじゃないんだよ、それじゃなくてそう」を言いたくて言いたくてっていう、自分を押し殺して我慢する我慢大会とか、けっこう僕はやりました。そういうことないです?

平尾:僕はもう言っちゃいますね。我慢して言わないでズレてしまうのもお互いにとってコストではないかと。自分自身がコストにならないようにっていうのは意識しているので、経営的手戻りをいかになくすかを常に考えています。

今日はちょっと、コミュニケーションのテーマがけっこう拡がっていっちゃったんですけれども、もう1つ会社が大きくなっていったとき、ボラティリティもけっこう上がるわけですよね。

そのボラが上がるときのベータを、いかに下げられる経営をしているかみたいなのは、すごい大事だなと思っています。ちょっとしたコストで、例えばチャットで1行送る程度のコストで共有ができるなら送ったらいいと思うんです。

そういうツールみたいなのもそうですし、いかに変数を抑えながらリスクを見つつ大きくするかは、常にずっと考えてましたね。

愛と感謝を伝える「イエス・バット方式」

真田:ありがとうございます。残り10分になってきたので、次のテーマ。先ほど佐藤さんから、「愛と感謝」というキーワードが出ました。これたぶん、経営者だったら社員に対して「愛と感謝」と思ってない社長はいないって思ってるんですけど、これを伝えるのってすごく難しいじゃないですか。

日本人の男性って、例えば西洋人の男性は、奥様に結婚して10年経っても「愛してるよ」と言えるけど、日本の男は奥さんに「愛してるよ」と、毎日言ってる男性はあまりいないと思うんですよ。僕もそんなことぜんぜん家で言わないです、言うのが苦手で。

これ、社員に対してもなかなか難しいことで、自分の中でもチャレンジの1つだと思っているんです。僕は最初っていうか、今もできていないですけど、そんなに上手じゃなくて、そこを苦労してます。そのあたり、社員とのコミュニケーションで努力してることとか、工夫していることとか、なんかありますかね。

佐藤:とても単純で、ふだん来るメールなどにも必ず最初に「ありがとう」とつける。もちろん対面でもなにかをしてもらったときに、必ず感謝から入る。

例えば良くない情報に関するメールとか、ちょっとトラブルのこととか、クレームのこととか、そういう経営上の問題について、相談なり共有を受けることは多いと思うんですけど。

そのときにも、「報告ありがとう」と、まずは感謝から入ります。それで「こうしようか」と、本題に入るっていうことをしています。そうやって毎回感謝の言葉をつけ続けると習慣になり、それが普通になっていく。

真田:それって、聞いたことあるんですけど、百貨店とかサービス業、ホテル業とか、入社して最初の研修は「イエス・バット方式」。イエス・バット話法って言うんですか。

クレームとか言われても、まずは必ず「ありがとうございます」と言って、それから次の会話に入るっていう。それって、なかなかできそうでできないから、口に出して何度も何度も反復してリピートして、トレーニングをする。

毎朝「ありがとうございます」と言ってると、習慣になるからできるようになる。でも、そうしないと逆にできないから、毎朝声に出して「ありがとうございます」と練習をする。そういった会社が多いと話を聞いたことがあるんですけれども。

経営者もとにかく、最初は「ありがとう」から。

謙遜は美徳か?

佐藤:癖で言うと、謙遜って美徳だと考えてしまうことがあると思うんです。「調子いいみたいですね」「いやいや」みたいな、そういう会話があったりとか。「そんなことないですよ」とかって返す言葉の習慣ってあると思うんですけど、ある時から僕はそれをやめたんですよね。例えば、会社の業績でもそうだし、自分についてもです。

真田:すごいですね、業績って言われてたら、じゃあなんて言うんですか?

佐藤:「ありがとうございます」。

真田:なるほど。「そんなことないですよ」じゃなくて、「ありがとうございます」。

佐藤:とにかく褒めていただいたら、感謝で返す。なんでもいいと思うんですよね。容姿でもいいし、仕事の中身でもいいし、振る舞いでもいいし。

真田:「男前ですねー」。

佐藤:「ありがとうございます」(笑)。

真田:なるほど。みなさん、これですよこれ。

飲んでるときに、トラブルに対する返信は一切しない

佐藤:褒めていただいたんだから、それをまずは感謝しよう。そこから始まって、すべてに癖をつけていく。発言もそうだし、メール1つもです。

正直、個人的な気持ちで言うと、めちゃくちゃ重たいトラブルの報告とかがくるときは、気持ちいいわけはないですよね。やだなあとか、これに向き合いたくないなとか、逃げたいなとか、なんでこんな問題起こしちゃったんだろうって、最初に湧き上がる感情でいうと、僕も人間なんでそう思うんですけど。

一回それを発する前に、相手から投げられてきたボールを返す前に、グッと一呼吸おいて、実際に深呼吸をしたりして、これに対して「報告してくれてありがとう」という言葉で返す。自分の中で言っても、エフェクトはかけてるんですよね。そういうのは毎日毎日練習してないと、再現はできなくて。

繰り返したら感情がコントロールできるようになるって言うほど、簡単な話ではないので。アウトプットの出し方のプロセス、心の整え方のプロセスをいつも意識しています。

あと気を付けているのが、お酒を飲んだらそういう返信はしない。それでトラブっちゃったことがいっぱいあるんで。

真田:なるほど。飲んでるときに、トラブルに対する返信は一切しない。

佐藤:一切しない。

真田:それは大事ですね。

佐藤:だいたい、これが良くない判断のきっかけになることが多くて。

真田:飲んで帰ってパソコンを開けてメールを見ると、トラブルの報告があった時に「カチーン!」ときて、急いでメールを返信して失敗したこと。僕もあります。

佐藤:僕も何回もあって、そのたびに反省して、ある時から返すのやめようと。中途半端に返そうとして、自分が自分をコントロールできると勘違いしてるから、間違った判断をバンバンしちゃう。なので、一切返事はしない。朝、酒が抜けてから返事をする。

真田:今日の教訓。もう佐藤さんからいっぱい教訓をもらいましたね。「飲んでるときにはメールを返信しない」、いいですね。自分も真似しようと思った人、ちょっと拍手をしてみてください。

(会場拍手)

偉そうにしないことを心がける

やはりこれで失敗している人が、世の中に多いってことですね。なるほど。そういう自分を訓練して習慣づけるってことで、なにかやってることってみなさんはありますか?

本田:訓練って感じではないんですけど。

真田:意図的に自分に習慣づけていったこと。

本田:まあでも、社員に対して気を付けてるのって、やっぱり偉そうにしないってすごく当たり前の答えかもしれないんですけど、それは心がけています。それこそ社長からGlobal CEOで、社長の時は「本田社長」って言われることがあったんですけど、最近、「本田さん」としか言いようがなくなって、僕的には気が楽になってはいるんですけど。

真田:確かに。「本田Global CEO」って言いづらいですね。それいいですね、社長って言わせないために。

(会場笑)

Global CEOみたいに長いタイトルにしちゃう。

本田:なるべくみなさんと同じというか、変な特別感は出したくないというのは気を付けています。けっこう身体的には辛いんですが、朝6時半にフライトで羽田に着いても、朝の10時に出社してみなさんと一緒に朝会に出ています。

ふだんの会話のなかでも、社員の方は僕の動きをけっこう見ているんだなぁと感じることもあって。重役出勤みたいなのをしないとか、小さい心がけですけどそういうところからなるべく気を付けております。

真田:ぜんぜん怠惰ではないじゃないですか。

本田:いや、追い込むというか。会社の近くに家も置くしみたいな。そこは楽にするために、環境を変えてどうにかがんばるっていうやり方ですね。

真田:なるほど。

はい、ということでですね、時間になりました。会場から質問をとっても平気ですかね? 事務局さん。それともこれで切り上げた方がいいですかね? じゃあ、ちょっとだけ質問を取りたいと思います。会場にいる方で、質問のある方は挙手をしてください。

ないですね……ないですね。質問なし! ということで、質問はなしなので、本日はこれで終了したいと思います。

いろいろと示唆に富む話があったのかなと思います。これを真似できるところはぜひ真似していただいて、応用できるところは応用していただいて、みなさんの成長につなげていただけたらと思います。

今日の登壇者のみなさんに、拍手をお願いします。

(会場拍手)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • “退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方

人気の記事

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!