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ユニーク人事組織に学ぶ、これからの『働き方』とは(全6記事)

「採用が企業経営で最も重要である」創業2年目だったベンチャーが新卒採用に踏み切った理由

デジタル時代へライフシフトが起こる中、企業として働き方をどう設定していくべきか――。「IVS 2017 Spring」で行われたセッション「ユニーク人事組織に学ぶ、これからの『働き方』とは」では、“個性的”な印象を持つベンチャー経営者や人事担当者に加え、神戸市長も登壇。彼らはなぜユニークな人事制度を取り入れたのか。また、これからの働き方や組織づくりをどう考えているのか。

ユニークな人事とは?

麻野耕司氏(以下、麻野):それではセッション8「ユニーク人事組織に学ぶこれからの働き方とは」を始めてまいります。モデレーターを担当します、リンクアンドモチベーションの麻野と申します。

私はずっと、成長企業の組織人事コンサルティングをしてまいりました。直近では、モチベーションクラウドという、国内初の組織改善クラウドの立ち上げを担当しております。

本日の趣旨ですが、今、経営の中で、組織や人材が非常に重要であると多くの経営層が認識されています。こういうカンファレンスでも、組織や人事のセッションが非常に増えています。

ただし「理念が大事である」「採用が大事である」と似たような話が多いので、今日はちょっと違った、それぞれの会社の独自性やユニークネスが際立つ施策に光を当てます。その裏にある組織、人事、そしてこれからの働き方を掘り下げていくようなセッションにしていきたいと思っております。

最初に簡単に、1分ずつ自己紹介をしていただいて、質問に入っていきたいと思います。それではフロムスクラッチの安部さんから、よろしくお願いします。

安部泰洋(以下、安部):フロムスクラッチの安部と申します。まず、本日はこのような場に登壇させていただきまして、ありがとうございます。並びを見ていただくとわかる通り、弊社がたぶん一番規模も小さく、知名度もない会社です。

今日は、スタートアップなど、比較的規模の小さい会社の経営者・役員の方も多くいらっしゃっていると聞いております。なので本日は、スタートアップとしてどう組織と向き合い続けてきたのか、その中でどういう施策が功を奏したのか、少しでも有益な情報を皆さまにお話できればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

麻野:安部さんありがとうございます。それでは柳澤さんお願いします。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):IVSは今年で10周年ということで、おめでとうございます。2年ぶりに来させていただきましたが、ずいぶん若返っているなという印象です。どんなことを話せばヒントになるのでしょうか。

カヤックには、「面白法人」という言葉がついています。会社を面白くするために働き方や評価の方法といった話は比較的突き詰めてきたので、お話しできるかなと思っております。よろしくお願いいたします。

麻野:よろしくお願いします。それでは本間さん、お願いします。

民だけでなく公として、それぞれの立場から見た組織人事

本間浩輔氏(以下、本間):本間です。ヤフーにおります。この4〜5年は、ずっと人事を担当しています。ヤフーは今、社員が6,000人。グループ合わせて1万人ぐらいいますが、その規模の会社がどんなことを考えているのか、話ができればと思っています。

麻野:ありがとうございます。それでは市長。お願いします。

久元喜造氏(以下、久元):神戸市長の久元喜造です。神戸市ができたのが1889年ですから、128年の組織なんです。今日すごくユニークな、チャレンジングな話をされると思うので、ぜひこれを聞きたいと思って来ました。

同時に公務職場で1万4,600人の組織がいますから、本当に古い。本当に古いですが、その中でなんとか市民サービスを上げていくために、ささやかながら新しい試みもしています。その辺も少しお話をさせていただきながら、ディスカッションに加わりたいと思います。よろしくお願いします。

麻野:ありがとうございます。この4名の方々のお話を引き出していきたいと思っております。今、規模でいくと数十人、数百人、数千人と、いろんな企業様に来ていただいてます。あとは民だけではなくて公ということで、それぞれの立場からの組織人事を見ていきたいなと思っています。

今日、私が用意している質問は「自組織のユニークな人事策を教えてください」ということで、この人事施策を、こうやっていると話していただいた上で、そこの背景にある経営の思想、人事の考え方を掘り下げていけたらなと思っております。

後半、10〜15分ぐらい余して会場からの質問もお受けしたいと思っていますので、聞きながら質問を考えていただければと思っております。

まず1社目です。フロムスクラッチの人事施策の紹介からお願いします。

創業2年目から新卒採用を行なっていた理由

安部:人事施策のご紹介をさせいただく前に、簡単に会社のプロフィールも含めてご紹介させてください。2010年に設立をして、今8年目を迎えている会社です。従業員が正社員が約90名、福岡やベトナムの開発拠点のメンバーも含めると150名ほどになります。

ビジネスとしては「b→dash」という、B to B×Saas×エンタープライズ向けという、非常に玄人向けというか、派手さがないような事業を展開しています。企業が保有するビジネス・マーケティングデータを一元管理し、データマーケティングを可能にする唯一のプラットフォームサービスとして評価いただいています。

最近のトピックで言うと、2017年5月にシリーズCラウンドで32億円の資金調達を実施しました。直近2年間で数えると、総額約45億円の資金調達となりました。国内B to Bのエンタープライズ領域では最大規模規模の資金調達をさせていただいています。これが会社概要のトピックになります。

麻野:3〜4年前ぐらいは10人強ぐらいでしたもんね。

安部:そうです。3〜4年ぐらい前は12、3人ぐらいの会社でした。このあとの施策の話につながっていきますが、スタートアップは今でこそ比較的大手企業や、外資のコンサル企業、投資銀行などからのスタートアップ転職組がこの2〜3年増えています。

しかし、我々が会社を起こした当時は、まったくそのような流れはありませんでした。ですが、創業当時から“採用が企業経営で最も重要である”として、全社を上げて採用活動に注力してきました。

例えば、弊社では中途採用にて外資の戦略コンサルや、テクノロジーベンチャー、大手事業会社のマネジャークラス、執行役員クラスの人間を、リファラルリクルーティングや、ダイレクトリクルーティングの手法を比較的早い段階から導入をしながら、現在の幹部層を採用してきました。

あと、新卒採用も非常に力を入れて行っております。2010年に設立した会社ですが、2011年から新卒採用を行っています。なぜ、そのようなタイミングから新卒採用をしているのかとよく聞かれるのですが、10年後、20年後の会社のことを考えると、組織の幹になるのは新卒社員であるという思いからです。

そのため、多くの工数と多額のコストを投下をしながら、新卒市場におけるブランディングを構築していた結果、一般的に言われるハイキャリア、ハイスペックの学生を、100人以下の会社にもかかわらず採用できていると思っています。

現在、弊社で働いている新卒社員は、就職活動において、戦略コンサルや投資銀行、外資大手企業、総合商社などいわゆる「誰もが入社を憧れる」ようなエクセレントな会社の内定を辞退してきたメンバーばかりです。我々みたいな会社に、つまり”伊達と酔狂の世界”に懸けてみたいという思いで入ってきてくれる新卒の学生が非常に多いのが特徴です。

採用力の強化で低い離職率をキープ

麻野:私もいろんなスタートアップを見てきましたけど、採用力という意味ではフロムスクラッチはトップクラスと思っています。

安部:採用だけでなく、組織の状態も評価いただく機会が多くあります。例えば、モチベーションインデックスという、ちょっと聞き慣れない言葉と思われますが、今、隣におります麻野さんの会社が展開しているものがあります。

先ほど麻野さんがお話しされていた「モチベーションクラウド」という、組織の状態や、モチベーションを数値化するサービスを、比較的早い段階から導入をしていました。今だいたい、そのモチベーションインデックス値が73ぐらいです。

麻野:真ん中が50ですよね。

安部:はい。2,000社導入されている中の、上位5パーセントぐらいをなんとかキープしています。

よく言われるのは、組織が10人から30人、30人から50人、50人から100人になっていくにつれ、徐々にいろんな組織課題が顕在化してきて、どうしてもこのスコアが下がっていくと言われています。その中で、比較的このスコアが下がるどころか上がり続けているので、これからお話しする施策が、非常に功を奏しているのではないかと思います。

我々の同業種の中で言うと、だいたい離職率が平均15パーセントから20パーセントと言われる中、直近1年を切り取ってみると6パーセントくらいです。非常に低い離職率を今のところは保っています。

これは決して社員に迎合してるわけではなく、どちらかと言うと、うちの会社は社会とかなり反発した施策です。今の世の中の流れに、あまりそぐわない会社なので、その中でこの離職率をキープしているのは、採用シーンにおいてエントリーマネージメントを徹底してやってきた結果だと思います。

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