
2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
リンクをコピー
記事をブックマーク
麻野耕司氏(以下、麻野):みなさまから事前に質問をいただいておりますので、そちらを順番におうかがいしていきたいと思います。今、前に両社のバリューが出ていますが、いつ、どんな方法でこのバリューを決めたのか、作ったのかという質問をまずおうかがいします。
ヤッホーブルーイングの井手さんからお願いします。
井手直行氏(以下、井手):メルカリさんは、シンプルにバリューと出ていますが、うちは、最初にピラミッドの図を出したんです。ミッション、ビジョン、文化、価値観、ヤッホーバリュー。そのヤッホーバリューがこれなんです。
ちょっと意味合いが違っていて、最も上位概念のミッションは、会社を創業してから、ずっとなかったんです(笑)。97年から創業しましたけど、なかった。「こういうものがないとダメだ」と、お二方と違って私が2008年に社長になったその前の年くらいから、ずっと勉強をしたことがなかった。気ままに生きてきた人間なんです(笑)。
なので、経営にはなにが必要かもわからず、いろいろ勉強していったら、やっぱり経営理念がいる、と。それがないとスタッフが同じ方向を見ないんです。そこで、1個1個作っていきました。ミッションは2008年くらいに作りました。
スライドは動かせるかな? 年代表があるものを見せてくれる? ずっと後ろのほうかな。じゃあいいや。
(会場笑)
後ろのほうだ。1回ちょっと止めて。1年1年、ずっと順次作っていったんです。ミッションが、たしか2008年くらい。あ、これこれ。
2008年といえば、ようやく少し黒字になったくらいで、2020年のビジョンを立てたんです。「2020年に、大手5社が占める市場のシェアの1パーセントを取ろう!」。
そのあと、文化、価値観、バリューの定義付けをして、14年にもう1回ビジョンを変えたんです。なぜかというと、達成しちゃったんです(笑)。
ほぼ半分くらい達成して、「これはリニューアルしないといけない」と言って、もう少し壮大なものにして、2020年にこうなろうと。
本当に優秀な会社は、起業するときに最初に作るでしょうけど、我々は本当、私も含めて素人が集まった企業なので必要に応じて、一つひとつ作っていった。
みんなが同じ方向を向かなかった。だから、ぜんぜんまとまりがない。人によって、富士山を登ろうという人もいれば、そのへんの低い山を登ろうという人もいれば、俺はこっちに行きたいという人もいる。これは1回整理しないとダメだと本当に思って、整理して、意志を込めてこれを作っていきました。
麻野:ちなみに、バリューを「革新的行動、顔が見える、個性的な味」の3つに絞られています。けれど、大事にしたいことって、いろいろ出てきますよね? それを絞るのは難しいと思うんですけど、両社とも3つに絞られています。絞るときに、どんなことを考えましたか?
井手:我々は、こういう意味のバリューなんです。メルカリさんは、どちらかというと行動指針がありますけど、僕らは、行動指針を文化のほうに入れています。
それには経緯があります。会社がどんどん大きくなってきて、「我々はなぜ支持されているんだろう?」という疑問が、スタッフの中でもいっぱい出てきたんです。
その不安を解消するために、ファンがなぜ我々のことを好きなのかを、いっぱい顧客の声がある中で私1人で何百、何千という声をバーっと洗い出したんです。それを仕分けしていきました。
あとは、アメリカのクラフトビールの先進事例です。すごく大きくなって全米に勢力があり、支持されているクラフトビールと、ぜんぜん支持されていないクラフトビールがあるんです。
売上はいいけど、あまりイメージがない。そこの差はなにかを、現地のメンバーにいろいろ調べてもらって、絞りに絞って、残ったものがこの3つ。この3つは、たしかに私も大事にしている。それで、決めました。
麻野:顧客という視点と、他社、そのベンチマークの会社という視点の、この2つの視点から絞り込んだと。
井手:そうです。あとは、最後に、私もとても大事にしているからです。その3つを合計したら、この3つが残った。なので、我々は小さな軽井沢の会社ですが、「軽井沢で造らないといけない」と。
今は軽井沢以外でも造っていますが、「大きくなっちゃダメだ、コンビニに並んだらもうクラフトビールじゃない」など、そういう声もあるんです。けど、それは本当にそうなのかを、市場の声、お客さんの声など、私が吟味します。会社は大きくなってもいいよ、コンビニでも置かれていいよと。
革新的な行動と顔が見える。イベントでもこうやって私が出たり、スタッフが出たり、ホームページも我々の顔がいっぱい出てるんです。あとは、どう転んでも、大手メーカーみたいなビールは造らない(笑)。飲んだ人が、普通のビールとは明らかに違う味わいにハッとするくらいに。
これさえ貫けば、世界に打って出ても、みんなが支持してくれると考え、3つのバリューを作りました。
麻野:ありがとうございます。非常によくわかりました。メルカリは、いつどうやってバリューを決めたのか、作ったのか?
小泉文明氏(以下、小泉):元資料に戻っていただいけますか。最後のほうのページ。
僕らの事業とバリューの関連性を書きました。私、実は、メルカリの創業メンバーではなくて、ちょっと遅れて入ってるんです。
まずメルカリに入って思ったことが、「インターネットで世界を変える」みたいなミッションだけで、バリューがなかったんです。いわゆる、ふわっとしていて、これは、中・長期的に、この会社はなんの会社なのか、わからなくなると感じました。
私はメルカリ以前はミクシィという会社の経営をしていました。
当時の失敗ですが、強いプロダクトがあると、放っておいても会社のカルチャーができる。ミクシィみたいな、なんとなくオレンジの優しい明るいイメージがあると、会社経営陣が手を抜いても、勝手にそのサービスが成長していく。それに求心力がついて、会社がまとまるんです。
これは、いいときはめちゃくちゃいいんです。けれど、プロダクトのライフサイクルがインターネット業界にはあるので、それが下がってくると、急に会社の求心力がなくなる。結局、さっきおっしゃったように、言いたいことをみんなが言いまくるんですよ。自分のミクシィ像を言いまくるんです。
僕は当時、経営としてすごく手抜きをしたなという反省があります。メルカリに入ったときに、これは間違いなく、もう1回同じ失敗をするだろうと思って、このミッションとバリューを作ることを、僕は最初の仕事にしたんです。
ミッションはみんなで、5年後、10年後、その先の夢を語りながら作りました。その結果、「世界へ」となったんです。
そのときに大事にしたことが、このミッションを達成するために僕らの会社は、メンバーがどう行動をすればいいのか? それをひたすら全員でポストイットで書きまくったんです。ベタベタ、ブワーって貼りまくってそれを最後、近しい考え方をグルーピングしていったんです。
グルーピングしていくと、まだまだ数が多いので、徹底的に議論して、減らして、減らして、減らして。僕は「人間は4つ以上は覚えられない」と勝手に思っているので、3つ以内にしようと選んでいくんです。
選び方の重要性として、結局、僕らのビジネスはCtoCのマーケットプレイスで、グローバルにやる。特徴としては、すごく競争が激しい。日本でいうと、たぶん当時、ネットの全社が参入していましたし、Winner takes allという言葉のとおり、1社しか勝たないんです。
すごく特徴がある会社なので、結局リスクを取らないと、絶対にWinnerにはならないと明確だった。よって、この「Go Bold、大胆にやろう」を一番大事に置いています。
All for One、みんなで成功するためにタッグを組もうと。僕らの会社って、こんなにデジタルな仕事をやっているんですが、リモートワークは禁止なんです。全員会社に来なさいと。会社に来て、みんなで顔を合わせて、同じ方向を向いてやりましょうと。バリューを作って、それを浸透するということを徹底的にやってきました。
僕らの会社でいうと、これを全部、「メルカン」というオウンドメディアを持っていて、そこでどんどん発信しています。
麻野:ありがとうございます。私もいろんな成長企業を見てきて、事業が伸びているときは、理念がなくても、意外と社員が束になる部分があると思うんです。
でも、事業が伸びているからという理由で束なっていると、こう(右肩下がりに)なったときに、サッと人が離れていく、気持ちが離れていくのだと思います。そのときに、事業ではなく、理念で束なっていると踏ん張れますよね。
小泉:僕が思っているのは、会社と事業を分けたことです。そうしないと会社と事業が近くなっちゃう。とくに、強いプロダクトの会社は、ほとんど会社と事業の差がないので、事業の思いが会社の思いにオーバーラップしてくるんです。
ただ、そうすると事業が落ちたときに、同じように落ちてしまう。だから、なるべく、今、メルカリという会社と、メルカリというサービスを分けることを、すごく意識的にやっています。
麻野:なるほど。
小泉:Googleについても「グーグラー」という言葉はうまいなと思う。Googleという検索エンジンのイメージと、グーグラーっていうイメージを、だいぶ分けていると思います。ああいうイメージで、会社とサービスを分けることを意識してやっています。
麻野:バリューを作る上では、ミッションからさかのぼること、事業環境を見た上で落とし込んだというところですね。ありがとうございます。
バリューがすごくうまく機能している会社さんは、ちゃんとビジネスを踏まえて、それを成功させるためにどういうバリューを作るべきなのか、リンクしている。その印象は私も受けます。
次の質問です。バリューを作りました。ただし、多くの会社は作っても、うまくいっていない。要は、策定したけど、浸透しない会社がすごく多いと思うんです。
どんな会社でも最近は理念を作っていると思いますが、ほとんど浸透してない。モチベーションクラウドで見ても、スコアがすごく低い。けれど、両社ともそこが高く、うまくいっている。
バリューを浸透する上で、大切なポイント、うまくいった施策があれば、教えていただいてもいいですか? 井手さんからお願いします。
井手:うまくいくかどうかは、もう1つしかないと思っています。「トップが諦めない」。それだけなんですよ。
僕もいろんな経営者の方と知り合いになって、お話を聞きます。僕らはビール屋ですけど、チームビルディングに、たくさん取り上げられている。「どうやったらヤッホーさんみたいになるんですか?」と、会社に来るんです。
みんな、うちの会社を見るとびっくりするわけです。いろんな上場会社の社長さんも来ますけど、「どうやって、こうやってるんですか?」と聞かれるので、話します。
「こういうことを設定して、諦めない。徹底してやる。事あるごとに、経営理念のミッション・ビジョン、いろんなのをしょっちゅう言う。ちゃんとそれになっていなければ、その場でちゃんと言う」などです。もうあの手この手、壁にミッション・ビジョンも張り出してるし、覚えていないチームは読んで、みんなで覚えて発表する。研修もやります。
徹底したら、経営理念が浸透しないはずがないんです。経営理念が浸透していない会社は、僕が言うのもおこがましいですけど「本気じゃない」、それだけだと思います。
麻野:トップのコミットメントだ、と。非常にわかりやすいです。ありがとうございます。小泉さんはいかがですか?
小泉:まったく同じです。若干、テクニック論で言うと、全部の英語に日本語がついている。なぜかと言うと、短いセンテンスなので、英語のほうが覚えやすいんですよ。
ただし、イメージが一人ひとりブレちゃうので、日本語でサポートしている。あと僕らは、バリューをグローバルで一緒にしたかったので、英語があって、そこに日本語をあてる設計にしているんです。
これを僕らは、めちゃくちゃ「見える化」しています。僕らが一番成功してるのは、会議室を名前にしたことです。そうすると、放っておいても、「会議どこでやるの?」「Boldでやる」「Allでやる」と自然に口に出すので、考えなくても何回も毎日口に出す。(今、着ている)Tシャツにしたり。こういうことをやっています。
僕が一番大事にしているのは、社員がこういう言葉で遊び始めたら勝ちなんですよ。例えば、ビールを飲んでいて、「井手さん、もっとBoldで飲みなよ!」みたいな。「だったら、All for Oneでお前も飲めよ!」「飲み方プロっぽいね」みたいな(笑)。こう言いだしたら勝ちなんですよ。
言葉で遊び始めることは、本人たちの中で消化したということ。宗教っぽいかもしれないけど、目で見るとか唱和するとか、どんどん行動に変わっていくように進化していくことを、ずっと意識して、これまでやってきました。
麻野:社員が思わず口に出してしまう仕掛けを入れるということですね。
井手:1つ思ったのは、うちもそんな状態がありました。社員自らが問題意識するわけです。急成長しているので、人もいっぱい来ます。「新しい人たちに経営理念がちゃんと浸透してないよね」と言ったら、あるチームが日めくりカレンダーを作ったんです。
日めくりカレンダーで、「クラフトビールの革命的リーダーになる!」「自ら考え、行動する!」など、おもしろおかしくビジュアルで撮って、解説も入れて、毎日そういうものが出てきました。
すごいのは、僕がなにもタッチしていないのに、社員が自分で考えて、遊びも入れてやった。真面目にやるとみんな嫌がるから。そんなチームがあったなと、小泉さんが言ってパッと思い出しました。
2025.02.06
すかいらーく創業者が、社長を辞めて75歳で再起業したわけ “あえて長居させるコーヒー店”の経営に込めるこだわり
2025.02.03
「昔は富豪的プログラミングなんてできなかった」 21歳で「2ちゃんねる」を生んだひろゆき氏が語る開発の裏側
2025.01.30
2月の立春までにやっておきたい手帳術 「スケジュール管理」を超えた、理想や夢を現実にする手帳の使い方
2025.02.03
手帳に書くだけで心が整うメンタルケアのコツ イライラ、モヤモヤ、落ち込んだ時の手帳の使い方
2025.01.29
社内会議は「パワポ」よりも「ドキュメントの黙読」が良い理由 Amazon元本社PMが5つのポイントで教える、資料の書き方
2025.01.31
古い手帳から新しい手帳への繰り越し方 手帳を買い換えたら最初に書き込むポイント
2025.01.28
適応障害→ニート→起業して1年で年収1,000万円を達成できたわけ “統計のお姉さん”サトマイ氏が語る、予想外の成功をつかめたポイント
2025.02.04
日本企業にありがちな「生産性の低さ」の原因 メーカーの「ちょっとした改善」で勝負が決まる仕組みの落とし穴
2025.02.05
「納得しないと動けない部下」を変える3つのステップとは マネージャーの悩みを解消する会話のテクニック
2025.01.07
1月から始めたい「日記」を書く習慣 ビジネスパーソンにおすすめな3つの理由
2025.02.06
すかいらーく創業者が、社長を辞めて75歳で再起業したわけ “あえて長居させるコーヒー店”の経営に込めるこだわり
2025.02.03
「昔は富豪的プログラミングなんてできなかった」 21歳で「2ちゃんねる」を生んだひろゆき氏が語る開発の裏側
2025.01.30
2月の立春までにやっておきたい手帳術 「スケジュール管理」を超えた、理想や夢を現実にする手帳の使い方
2025.02.03
手帳に書くだけで心が整うメンタルケアのコツ イライラ、モヤモヤ、落ち込んだ時の手帳の使い方
2025.01.29
社内会議は「パワポ」よりも「ドキュメントの黙読」が良い理由 Amazon元本社PMが5つのポイントで教える、資料の書き方
2025.01.31
古い手帳から新しい手帳への繰り越し方 手帳を買い換えたら最初に書き込むポイント
2025.01.28
適応障害→ニート→起業して1年で年収1,000万円を達成できたわけ “統計のお姉さん”サトマイ氏が語る、予想外の成功をつかめたポイント
2025.02.04
日本企業にありがちな「生産性の低さ」の原因 メーカーの「ちょっとした改善」で勝負が決まる仕組みの落とし穴
2025.02.05
「納得しないと動けない部下」を変える3つのステップとは マネージャーの悩みを解消する会話のテクニック
2025.01.07
1月から始めたい「日記」を書く習慣 ビジネスパーソンにおすすめな3つの理由