2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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安彦剛志氏(以下、安彦):第2弾、『ゼーガペイン』という作品のときも、同じフォーマットで考えてみました。実際に、同じように投票させてみたんですね。それで投票させてみたら、前回より多くの人が参加したんです。前回はこの取り組み自体が知名度が低かったはずで、一部の人しかやっていなかったのが、前回の投票で知った人が結構たくさんいたんですね。
要は継続することがとても重要で、前に悔しい思いをした人たちが周りの人を集めてきて、勝手にファンクラブ化してやってくれたところがあって。こういう継続するプラットフォームが作れると、もともとのポテンシャルが低かったものでも、少しずつ可能性が高くなってくるというのが、この時気が付いたことです。
そして、ここのターゲットユーザーがとても難しかったんですけど。実は大手のブロガーさんがゼーガペインという作品にまったく興味がなかったんですよ。残念なことに。
(会場笑)
安彦:本当に大手ブロガーが取り上げてくれなくて、「やばい」と。これ、裾野が広がらないと、ファンしか買わないんです。クラウドファンディングって、あたりまえですけどニッチ向けに売ってるものなので、ニッチで終わっちゃったら数十人、数百人で終わっちゃうんですね。
ニッチなんだけど、「たまたまこの時しかやってないから」とボタンを押させることがクラウドファンディングの重要なポイントなので、そのユーザーをどう捕まえるかという時に、前回みたいに大手ブロガーをバーッと目指そうというのは難しいと思ったので、ちょっとコアなファン層、ファンサイトみたいなところの人たちに盛り上げさせるような施策に方針転換しました。
実際にファンサイトみたいなところは、PV数で見ると2ケタ違いました。100万PVぐらいあるようなこの当時のブロガーさんと比べると、それこそ1,000PVとか、そのくらいしかないようなサイトなんだけど、この人たちとうまく融合して、なにか話題作りができないかなということを考えて、いろいろな施策を打ってみました。
まぁとにかく、この時は熱いファンが多かったんですよ。投票するコメントのフォームにはIPアドレスがまったく同じ人がだーっと……。
(会場笑)
安彦:非常にわかりやすいんですね。114、159、176、157で、「何かしたい、したい、したい!」みたいな。こんなふうに一生懸命やってくれる人は、1人1本は絶対買うんです。下手すりゃ3本は買うんですね。ですから、こういう人をいかにうまく捕まえて、見つけてあげるかというのがとても重要だなと。
また、2回目なので、1回目のものをちゃんと分析して考えましょうというところも重要なポイントでした。1回目の『true tears』という作品はDVD3,000本しか売れていなかったのに、それがなんで1万本ぐらい売れちゃったのか、というところをちゃんと考えていきましょうということで。
ここは広告費、宣伝費は一切かけてないので、結局はネット上でどれだけ口コミが広がったかというところがポイントだと思うんですね。
やっぱり初めてのBD化プロジェクト、この当時はクラウドファンディング的なプロジェクトが世の中にもなかったので、それがとにかく新しかったというのと、たまたまこの『true tears』という作品が大手ブロガーさんですごく推してる人が多かったということで、この2つがうまく組み合わさったことは1つ大きなポイントだよね、ということで。
全部ではないんですけど、一部の大手ブロガーさんが積極的に取り上げてくれたので、この人たちに僕の方から意図的にポンポン情報を流しました。おかげで今でもこの人たちとは仲良しなんですけど。そういう仕組みをうまく作れたので、数百万PVぐらいの告知効果がここで出たなぁということでした。
要は大手ブロガーを味方につければ比較的うまくいくんだなというのはわかったんですけど、第2弾でやるときは、もう新しくないんですよ。「BD化プロジェクト1回目、成功したー」って終わっちゃってるので、「今度は第2弾だろ?」って言われちゃうと、ちょっと弱いですよねと。
しかも値段がぜんぜん高かったんですよ。Blu-ray Discで第1弾を販売した時は2万5,000円(注:1クール13話)でした。それが次発売する時は、3万6,750円(注:2クール26話)という売価に。安くはないです。これ、やっぱりなかなか入金してくれないので、実際にそのままやろうとすると、1,000本とか、その程度しかきっと売れないだろうなぁと。そこで、どういうふうにしてユーザーを取り込むかというところの戦略を考えました。
この頃のユーザーはある程度自分が好きなサイトを巡回するのがメインだったので、巡回サイトに入ることがけっこう重要で、そこになにかイベント的なものをやってあげて、「現実でこんなイベントが世の中でやってるから、おもしろいから見てみようぜ」みたいな、そういう戦略をちょっと立ててみようということを考えました。
なので、こんなような感じ。
ネット上でリークをするとか、発表ネタをするとか。あと、世界で初めてBD-BOX特典をユーザーが選ぶ、みたいな感じで、特典で制作する制作物をユーザーが決めようみたいなプロジェクトを実際にやってました。
こういうのをいろいろとスケジュール化して、いつごろからどんなことをやるか、ヒット数のイメージとともに仕組みを作ってやっていました。これをやったおかげで、最終的にゼーガペインに3億円以上お金が集まったというところになります。
クラウドファンディングみたいな仕組みをやるときというのは、最低限こういうビジョンを自分で持たないと、絶対うまくいかないと思います。モノを出したら人が集まってくる、なんていうのは夢物語でしかなくて、そのお金を出させる理由をどうやって作ってくかというところがすごく重要で、そこをうまくストーリー化してあげるというのがポイントかな、と思います。
私の方では、「クラウドファンディングの成功のための3つの要素」というのを作っています。この3つの要素というのはなにかというと、いきなり答えが出てくるんですけど、「味方になるターゲットユーザーを突き止めなさい」「ソーシャルループを作りなさい」「味方が喜ぶモチベーションを用意しなさい」という3つです。
超どうでもいいんですけど、2010年ぐらいから、僕はこの「ソーシャルループ」という言葉を流行らせようといろんなところで話してるんですけど、いまだに流行ってないんですよ(笑)。
(会場笑)
安彦:なんかね、「ソーシャルで話題がグルグル回るからソーシャルループっていいんじゃねぇの?」って思ったんだけど、流行んないんですよねぇ。すいません、どうでもいいんですけど(笑)。
それで、「味方になるターゲットユーザーを作る」って何かというと、「買うユーザー」と「味方になるユーザー」は違うんですね。買わなくてもいいんです。買わなくてもいいんだけど、このプロジェクトを応援したいとか、「このプロジェクトすげぇよ!」って騒いでくれる人をどれだけ捕まえられるかというのが、ネット上で人を呼んでくる一番のポイントです。
下手すれば中学生とか小学生とかで、ネットに超強い子。お金はないんだけど、毎日1日100ツイートぐらいしてくれるみたいな。こういう人を捕まえるだけでぜんぜん違うんですね。そういう戦略をする時に、よく大手企業が商品化をするときにやっちゃう間違い、って言ったらあれですけど、買う人をターゲットにするんですよ。買う人って、満足度高ければ買うんですけど、買って終わっちゃうんですよ。
だけどそれは、マスに広告を打って買わせるという戦略だったら悪くないんですけど、クラウドファンディングなんて、そんなたくさん売れるものだったらクラウドファンディングで売りません。普通に流通に流します。わかってるものは流通に流すので、どうしてクラウドファンディングでやるかというのを考えておかなくちゃいけなくて。
なぜクラウドファンディングで売るのかをうまく組み合わせて、引っ掛けていってあげると成功するんだろうな、と思っています。そういう各作品ごとにどのジャンルを攻めたらいいのかというところ。味方になってくれそうな人がどこにいるかをちゃんと考えて、見つけてあげる。
これをやれなかったら、たぶんクラウドファンディングはやらないほうがいいです。「あなたは誰に響く商品を作ってるんですか?」というのをわからないで出してたら、たぶん成功しない。というのが僕の持論です。
「ソーシャルループを作る」のは、これはもうあたりまえです。今の御時世となっては当然といえば当然なんですけど、つぶやきを誘発して参加をする、自分が参加をさせる。そうすると「事前に投票した」という記憶が自分の中に残るんですね。そして投票したものがもし商品化されたら応援したいと思う。もしくは、自分が投票したんだけど2位だった。悔しいけど、1位のものが商品化されたら、次は自分のものがなるかもしれない、みたいな。
そういう、参加した後うまく誘発できる仕掛けを作るところがすごく重要で、そういうソーシャルの参加感と、ソーシャルループを作ってあげるところが大きなポイントかなと思っています。
そして最後のポイントが「味方が喜ぶモチベーションを作り出す」。この「味方」は、お金を持ってる人ではなくてファンなんですね。ファンになってくれる人が喜んでもらえるようなもの。お金を対価に返してあげるのではなくて、ファンだったら喜ぶものって何かなというところを考えてリワードみたいなものをうまく作ってあげると成功する。
例えば、今、第1弾と第2弾しか紹介していませんが、第3弾で同じようにBD化プロジェクトをやった時は「週刊トロ・ステーション」という番組とうまくタイアップをして、このへんの人たちに喜んでくれるような仕掛けを作ってみたりとか、ソーシャルもラジオ番組みたいなものをやってみてうまく盛り上げようというのをやったりとか。
それから、これはいちばんファンにとってうれしいんですけど、新作を作ってあげて、その先行上映みたいなのをしてあげる。これは、すごい数の応募が来たました。そういううまい仕掛けを作ってあげられると、何回でも続けてうまく盛り上がってくれるんじゃないかな、というふうに考えていて。
もう1回まとめ直すと、味方になるユーザーって誰なのか。買うんじゃなくて、盛り上げるユーザーは誰なのかというところをしっかり考えるというところと、ソーシャルでうまくループを作るために、参加感をうまく作ってあげる。それから味方が喜ぶ、お金だけの対価ではない何かを見つけてあげる。そういうものをうまくやってあげると、クラウドファンディングはすごく成功するかなと思います。
あっ、意外と45分いかなかったな(笑)。
(会場笑)
安彦:最後に、絶対に忘れちゃいけないことです。もう1回、これは大事なので言っとこうかなと思ったんですけど、本当に売れるものなら大手が流通で売ります。弊社、ソニー株式会社というところがあるんですけども、当然テレビはクラウドファンディングしません。プレステもクラウドファンディングしません。あたりまえですが、普通に売れるなら売ります。なので、ここを勘違いしないでと。
やっぱりクラウドファンディングって、言うてもスキマなんです。だけど、世の中でまだやってないものを見つけ出すには最高の場所だと思ってます。コアなファンをうまく捕まえるにもすばらしい場所なので、このニッチの声をちゃんと聞いて、ニッチの味方になってあげるのがクラウドファンディングの本当にいちばん重要なポイントだと思っています。
ここを間違えないようにして、クラウドファンディングをうまく使ってほしいな、というのが僕からの今日の……なんでしょうねぇ、覚えていってほしい、最後の言葉、でした。
本当の最後に(笑)、おまけですが、BD化プロジェクト、クラウドファンディングみたいなものをやってたんですけども、今の僕の仕事はそこから更に発展しまして、「ソーシャルの人たちと地域を活性化しよう」みたいな、「聖地巡礼」を1つテーマにもしてるんですけども、現地に出かけていって地域を楽しもう、みたいなアプリケーションとサービスをやっています。
なので、せっかく今日ここに来てくださった方々は、帰りに「舞台めぐり」って検索して、とりあえずアプリをインストールして帰っていっていただけるとありがたいです。以上になります。ありがとうございます。
(会場拍手)
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