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未来の「働く」をクリエイトする事例紹介 社員の仕事、どう減らす?(全4記事)

最初に排除したのは「会社に長居してしまう要因」経営破綻したJALが挑んだ働き方改革

未来の「働く」をクリエイトするWorkcreation!(ワークリエーション)や託児所付オフィススペース「ニア宅オフィス」など多様な働き方を実践する株式会社KDDIエボルバが、「働き方改革実践セミナー~「働く」を変える初めの一歩~」を開催。セミナーでは働き方改革を実践する企業の方々をゲストにセッションを行いました。そのパネルディスカッションでは、実際に働き方改革を実践している日本航空やGoogle、リクルートなどの企業が登壇。改革を行ったことで、社内にどういった変化が起こったのでしょうか。

長時間労働改革をした結果、多様な人材が活躍する世界になる?

小安美和 氏(以下、小安):浜田(敬子)さん、どうもありがとうございました。浜田さんのほうから「働き方改革ブームはなぜ起きたか」ということで、その背景を語っていただきました。

変えるべきこととしては、3つあります。「長時間労働改革」「女性のキャリア支援」「男性の意識改革」というのテーマを掲げておりますが、パネルディスカッションにおいては長時間労働改革をどのようにやっていくか。その結果として、多様な人材がどう活躍できる世界を作れるか。そんな観点から素敵なゲストのみなさんをお呼びしております。

「社員の仕事をどう減らすか」というタイトルは、『AERA』で有名なキャッチをつくり続けてこられた浜田さんにつけていただきました。消灯するなど残業を減らして、どうやって帰ってもらうか。実際に、電気を消したりパソコンを消したりするなどされている企業も多いと思います。

でも、それだけでは本質的な働き方改革にはつながりません。今日はそれよりもさらに踏み込んで、本質的に働き方を変えている企業の方、本業で新しい働き方を創出されている方をお呼びさせていただいております。

まず日本航空株式会社、調達本部調達第一部企画グループ長の埋金洋介さん。続きまして、グーグル合同会社、ブランドマーケティングマネージャー兼Women Willプロジェクトリードの山本裕介さん。株式会社リクルートホールディングスiction!推進事務局長の二葉美智子さん。最後に、株式会社新閃力代表取締役の尾崎えり子さんです。

みなさん拍手でお迎えください。

(会場拍手)

日本航空が経営破綻後に設立した「調達本部」

さて、ここからパネルディスカッションに入りたいと思います。最初にお1人5分ずつ、どのような取り組みをしているかをプレゼンテーションしていただきます。

埋金洋介氏(以下、埋金):みなさんこんにちは。日本航空の調達本部の埋金と申します。

先ほど浜田さんのお話の中にも出てきましたが、日本航空の調達部では、調達の改革とともにワークスタイルの変革を社内で先行トライアル部門というかたちで進めてきたということで、今日はお招きいただきました。

我々もまだまだ変革途上であり、みなさまの前でお話させていただく立場ではないのですが、そんな中、働き方改革をどのように進めてきたのか。具体的にお話したいと思っております。

私は日本航空、調達本部というところにおります。調達本部は、2010年1月19日の経営破綻後にできた本部であり、ここがワークスタイル変革の発端にもなっています。我々、調達本部は現在約130名おり、航空機から文房具まですべての物品、役務の調達を担っています。

実は、経営破綻前は調達本部というものはありませんでした。

航空会社ですので、航空機や原油を購買する部門はあったのですが、その他の経費については、すべてビジネスユニットがそれぞれの判断で、購入できるシステムになっていました。

日本航空社長の、変革への強い意思表明

我々の調達本部は、経営破綻以降、会社全体のガバナンスやプロセス変革、社員の意識改革を引っ張っていくために作られた組織です。

調達本部では、人件費と公租公課を除いたおよそ6,000億から7,000億の経費を約130名ですべてカバーしています。私は調達本部の中では組織のストラクチャーを構築したり、ビジネスプロセスを変えたり、タレントマネジメントということで組織の人財管理を担当していました。

調達本部では、そのカバレッジを広げるために、より多くの人財が必要でした。しかし、経営破綻したこともあり、人財は非常に枯渇していました。やらなければならないことはあるけれど、人を増やさなければいけないことを課題として抱えていました。

2014年、経営トップである社長の植木(義晴)から全社員に「ワークスタイル変革をやっていくぞ」という強い意思表明がありました。

実際には、この少ない人員の中で「働き方を変えていかないと我々は生き残れない」というメッセージはあったのですが、具体的に、なかなか進まなかったのです。

そこで調達本部は、まずはトライアル部門として、このワークスタイル変革をやってみようということで立候補し、進めることになりました。具体的には2014年の夏頃に制度を設計して進めました。

「どうしても会社に長居してしまう要因」を排除

調達本部は調達という仕事上、無駄なお金を使わないという自負もあったので、失敗も成功もすべてトライしてみようと思い、改革を推し進めました。

最初にやり始めたのは「どうしても会社に長居してしまう」「なぜか知らないけれどオフィスに来てしまう」といった我々をオフィスに縛り付けているものを解消することから考え始めました。

まずはペーパーレスに着目しました。紙がある、資料があるからそこに来る。もう1つは、パソコンです。Wi-Fiにして、ノートパソコンを貸し出しました。

そしてもう1つは電話。いろんな会社さん……例えばカルビーさんなど進んでいる会社の方にお話をお聞きしたところ「フリーアドレスと電話は切っても切り離せない」とアドバイスいただきました。固定電話をスマートフォン化し、そして最終的にはフリーアドレスを導入しました。

フリーアドレスに関しては、我々、調達本部ができて間もないということもあり、タレントマネジメントや人材育成の観点から、縦割りの組織に滞留しがちになっていた情報やナレッジを組織横断的に横に展開していくという目的でも導入を決定しました。

旧来の「がんばってなんぼ文化」をどう改革するか

また、環境改善や働きやすくするだけでなく、最終的にこれらをすべて実現すると同時に、勤務管理をやっていくことを目的にしました。

最終的なゴールは、実際に帰宅する時間とパソコンのログオフ時間をゼロにすること。そして1日8時間勤務の中でしっかりと成果を出していく。そういったことをやり始めました。

さらに在宅勤務についても制度を整えて実施しました。オフィスでなくても、どこでもしっかりとパフォーマンスを出せるように、また、オフィスで働く以上のアウトプットを出していくことを目標にやってきました。

実際にやってみるといろんな声がありました。そもそも我々は経営破綻したこともあり、這いつくばってでもやらなければならない気持ちでやっていた部分はあります。

また、昔ながらの日本の会社にあるような「がんばってなんぼ」と思っている文化が残っていたのも事実です。そんな意識改革をどうしていくか。

あとは、会社にいるのは居心地がいいということもあり、家に帰ると家族から「なんで帰ってきたの?」と言われた社員もいるという話も出ました。また、伸び盛りの世代や、仕事で成果を出して自信をつけていきたい世代など、こういった人たちをどう動機づけしていくのかという課題もありました。

最後に、評価制度の面でも、今までは、量と質の掛け算の面積で評価をしてしまいがちでした。

やはり、それではこれからの会社として成り立ちません。今働いてくれている若い人たちが残ってくれないという危機感もあり「同じ時間で高い質を出せる人をしっかり評価していきましょう」と、組織として求めていく課題も認識しました。

以上になります。

正社員男女の8割が「働き方改革は推進されていない」と回答

山本裕介 氏(以下、山本):みなさんこんにちは。Googleの山本と申します。よろしくお願いします。

私は人事ではなくてマーケティングという部署にいます。ブランドマーケティングということで、Googleという会社全体の日本におけるブランディングやマーケティングなどとかを担当している人間です。

その中で「Women Will」というプロジェクトを2014年の10月からやっております。

こちらはGoogle1社ではなく、さまざまな企業様にからお声掛けをさせていただいて、一緒になって、調査やったり、テクノロジーの導入実験をやったり、それからキャンペーンやったりしています。現時点で1,100社ぐらいの、主旨にご賛同いただいているサポーター企業様と一緒に活動しています。

その中で特に力を入れているのが、この「未来の働き方をトライアル」です。実際に働き方を変えてみたい企業さんに参加していただいて、その中で数ヶ月間、働き方を変えるトライアルをやってみて、その成果を一緒に測るというのをやっていました。

合計31社の方にご参加いただき、参加社員の数は延べ合計2,000名です。浜田さんからもお話があった通り、働き方改革をメディアで目にしない日って本当にないと思うんです。一方で、いわゆるインターネットで、一般の働いている方、が20代から50代の男女問わず正社員の方に聞くと、働き方改革は「世間で言われているほど推進されてないと思っている方が8割」「働き方を変えたいと思っているけど具体的な方法がわからないという方が7割」。なんとなくみなさんも肌感覚としては近いんじゃないかなと思うんです。やっぱり、ここのギャップですね。

みんなが言葉として働き方改革を叫んでいますが、実際にどうやったらいいかわからないところをクリアにしていくことが、僕らが取り組んできたことです。

Googleが他企業と行った3つの取り組み

昨年、主に3つ、企業様と取り組んだものがあります。「Work Anywhere(在宅勤務)」「Work Simply(業務の効率化)」「Work Shorter(勤務時間の短縮)」とです。

まず最初の「Work Anywhere」、在宅勤務です。実際に在宅勤務をやったら「やはり在宅でできる仕事は限られるでしょ」と思っている人が事前の調査だと半数ぐらいいるんです。しかし、実際にやってみると、それが大きく減少して、事後の調査では11.8パーセントしかいない。

「在宅勤務によって業務に支障が出るんじゃないか」「お客さんとの対応や、同僚や上司との連絡に支障が出るんじゃないか」と、在宅勤務を始める前は3人に1人ぐらいの方が思っているんですが、実際にやってみると2.9パーセントぐらいしかいない。

トライアルの実際の進め方としては、一定期間、例えばこの1ヶ月の間に、全員が在宅勤務を1回はやりましょうというのをみんなで決めて、その時に事前と事後でアンケートを採とって、実際に業務に支障があったのか、効果があったのか、という点を検証します。

次は「Work Simply」、業務の効率化です。業務の効率化というと、話題が多岐にわたってしまうのですが、今回はさまざまな業務の中でも特に業務時間を圧迫する会議に特化して、テクノロジーを使ってスケジューラーに会議のアジェンダを入れておく、クラウド上のドキュメントで、その場で議事録を書いて完成させる。こういったことで、ターゲットとした会議のうち65.9パーセント会議の時間が短縮しました。

また、会議に参加している人数と役職、職位とかに応じて、推定でいいので会社ごとの時給を入れていただく。そして、実際に人件費が減るかをシュミレーションしていただく。実際にやってみると人件費が減っている結果が出てました。これも、非常にいい結果かなと思ってます。

実際にやってみると、予想していたよりも問題がない

最後はWork Shorter、勤務時間の短縮、退社時間の計画です。こちらは、いわゆるノー残業デーのように、みんなで帰る時間を一律で決めるのではなく、社員一人ひとりが自分で時間を決めて、スケジューラーに帰る時間を入れてそれをチームで共有する。その時間から必ず時間を前倒しして、自分で業務をマネージメントするというトライアルになっています。

これも実際に勤務の時間が1時間ぐらい減った上で、「締め切りとか納期内に業務が終わらない不安がある」という項目が事前の不安より圧倒的に事後で大きく減っている。

やはり、やる前ってみんな不安なんですけど、実際やってみると事前に予想していたよりも問題がない、というケースが多いです。

我々は、「まず取り組んでみたらどうですか」という話をよくしています。そして、今お話ししたような結果をもとに、いわゆる経営層や人事の方向けの「働き方改革推進ガイド」と、社員の方にスマホで気軽に受けていただけるeラーニング「働き方改革実践トレーニング」を提供していますので、ぜひ見ていただければなと思います。

Googleとしては、こういったかたちで実際に効果があることを、きちんと情報整理してみなさんにお届けするのが働き方改革に関して貢献できるところと考えています。いろいろな企業様がトライした成果をまとめて、実際に、みなさんにコンテンツとしてお届けしているということをやっております。以上になります。

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