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みんなを幸せにする ~幸せケチの大家業~(全2記事)

大家の心得は「ブス・ブス・美人」 カリスマ大家・鈴木ゆり子氏の賃貸経営論

賃貸物件をはじめとする不動産のオーナーを対象に、賃貸経営に関する情報提供をテーマとしたエイブル主催のイベント「全国賃貸オーナーズフェスタ 」。カリスマ大家として知られる、有限会社スズヨシの代表取締役社長・鈴木ゆり子氏が登壇し、大家としての心構えを説きました。

なぜ割烹着と麦わら帽子なのか?

鈴木ゆり子氏:みなさんこんにちは。おばちゃん大家の鈴木ゆり子です。

(会場拍手)

割烹着だけは新しいのを着てきました。この帽子は昨日も草取りのときに使ってました。いつもこんな格好で、大家としてアパートを回っています。

もっときれいな格好をして、指輪もしていたいんですけど、入居者さんとあまり差がつきすぎると……。

よく思うんですね、大家業って確かにお金がいっぱい入ってくる方もいるし、うちのほうの羽生(埼玉県羽生市)みたいに、2DKでいちばん安いところで2万9,000円ですよ。そういうものですと、あまり儲けは出ないです。だから自分で体を動かして、それでなんとかやりくりしているっていう感じなんです。入居者さんとあまりかけ離れた格好をしない。

それで、入居者さんに「大家っていいな、すごい儲かって」って、必ず言われます。でも、あまりいい格好をしていると、「あっ、俺の家賃があそこのダイヤモンドになったのか」とか、すごくいい車に乗っていると、「俺の家賃があの車になった」とか思われるんです。

そうすると、トラブルが起きた時、うまくいく話でもうまくいかなくなるんです。だからそれなりの、入居者さんと同じよりちょっと下ぐらいの格好をしているんです。それを私はいつも心がけています。

そして、これから新しく建てて10年ぐらい経てば、だんだん家賃も下がっていくんですね。新築から10年間っていうのは、あまり心配しなくてもほとんど入居者さんが入ってくれます。でも、10年経ったところからが勝負なんですよ。

だんだん空室もできてくる、人口も減ってきてますよね。羽生なんて、ひどいところなんかは半分、10室あれば5室入っていればいいほうというところがいっぱいあります。とくに、バス・トイレ一緒のワンルーム、けっこう入居していただくのが大変です。

そしてそこをなんとか1部屋、満室にできるようなことをなんとか考えて、「ああしようかな、こうしようかな」と思って、毎日ちょっといろいろ考えながらやっているんですけど、そんな話をみなさんにさせていただけたらと思います。

商売は手をかけるか、お金をかけるか、どちらか

「みんなを幸せにする、幸せケチの大家業」。みなさん、羽生市ってご存知の方どのくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

うれしいですね。本当に今、品川の駅降りて、人が多いのにびっくりしました。だってお部屋を貸すっていうことは、人間がいないことにはお部屋を貸せない。品川で私に賃貸業をやらせたら、絶対満室ですよ、古くなっても。

羽生は、本当に知ってる方はもうわかると思うんですけど、人間の数より、カエルちゃんの数のほうが多いです。それぐらい、街の中心から車で10分走るともう田んぼと畑ばっかりです。そんなところでやっています。

そしてもう人口が、私が越してきた30年前は7万近くあったんですけど、今は5万5,000ぐらいに減っています。羽生は埼玉県のいちばん端のどん詰まりなんですね。

平成19年に駅が新しくなりまして、この駅のロータリーに面してるところでスズヨシっていう不動産業をやらせていただいてます。街の中、本当にシャッター通りです。

イオンモールができたんですけど、できた当時は北関東一、入店してる店舗が200店舗ぐらいあるんですね。それで、「200店舗もあったら、1店舗に1人っていうことはないですから、最低2人、400人が入ってくる。じゃあ部屋が埋まるだろう」と思ったら、ほとんど関係なかったですね。

大きいところの会社さんはけっこう入っていただいたようですけど、私たち個人のところはあまりなくて。本当に今でもけっこう空室は多いんです。

イオンモールでこの青いところはほとんど、もうお店が建ってますけど、私のやっている仕事は、こういうボロを買ってきて……(スライドを指して)中がこんな感じなんですね。

これは戸建てなんですけど、すごいです。

これを全部自分で片付けるんです。お金がなければ手をかける。時間がある人は、手をかけて一生懸命自分でやる。それで、時間がない人はしょうがないからお金をかけてきれいにする。どちらかですよね。

手をかけるか、お金をかけるか、どちらかです。みんな商売ってそうですよね、大家業じゃなくても、手をかけるか、お金をかけるか、どちらかです。

で、これがさっきの一番最初の(画像)。きれいにして、今は満室になっています。

中は、こういうふうになってます。私はだいたい最低限のものしかつけないんです。あれもこれもってつけないんです。

「みなさんのお部屋は美人になってますか?」

ちょっと話が横にそれますけど、アパートに入る入居者さんって、「なにかサービスしてくれますか?」というような雰囲気を出すんです。そして、私、羽生駅前で不動産屋さんやってますよね。お客さんがいらっしゃる。そうすると、そのお客さんを見ると、だいたいこのぐらいの……。

「お家賃はおいくらぐらいがご希望ですか?」って聞くんですよ。「どれぐらいのお部屋ですか? 羽生の駅から歩ってどのくらいですか?」って聞くと、「だいたい歩いて10分ぐらい」って言いますと、「あのお部屋がいいな」っていうのがすぐわかるんです。

そして、その時に、みなさんのアパート、「美人」になってますか? たくさんお部屋があるなかで、10分以内のアパートを全部出すんじゃないんですよ。5つぐらい出すんです。20あっても5つぐらい。だって出したら迷うだけです。そしたらその5つの中から、3つぐらい選ぶんです。私は実際そうしてますから。

その3つの中で、「あぁ、このお客さんはこのお部屋で決めるだろうな」っていうのがだいたいわかるんです。

だから、「みなさんのお部屋は美人になってますか?」。美人っていうのは、きれいに……。私はブスですから、お化粧1つもしてません。きれいにして、一番きれいなところを見せなくちゃいけないんです。

その時、よく言うんです。うちの管理してる大家さんに、「ブス、ブス、美人」だよって。

3軒のうち、一番最初に案内するのは、「ちょっと違う」っていうところにお連れするんです。で、その次、「あ、いいね。だけどなんかちょっとアレなんだよなぁ」って。そして、3軒目、「うん、ここだよ!」って。

みなさんのお部屋が、いくら家賃を安くしてもなにしても、いつもブスになってたんじゃ借りていただけないんですよ。だからいつもお部屋を美人にしておいてください。

きちんとお化粧して。窓は開けっ放しじゃダメなんですよ、ガラス戸1枚じゃ。最低でも、レースのカーテンを下げておく。お部屋の玄関を開けた時に、「わぁ、きれいですね」っていうお部屋を作らなくちゃダメなんです。ちょっと横にそれちゃいました(笑)。

(スライドを指して)これが、戸建てのきれいな。あのすごいゴミの部屋がこういうふうになります。これはちょっと話をします。

自分のアパートに台風の日に行ってみる

所有のアパマンのことをどのぐらいわかっていますか? みなさんはいつアパマンを見に行きますか? 夜見に行かれたことはありますか? 都合の悪い時に行ってみてください。

自分のアパートを、一度も新築の時から行ったことがないっていう人はいないと思うんです。いつ行きます? (会場を指して)じゃあ、一番前にいる女性の方。はい。

日中ね。大概みなさん、自分の都合のいい時に行くと思うんですよ。夕方だとか。夜でも早い夜。そうじゃないですよ。(行くべきは)自分の一番都合の悪い時。草木も眠る丑三つ時、行ったことあります?

で、もう1つ。台風が来てる時。行ったことありますか? 雨って、上からばかり降らないんですよ。下からも降るんです。

そういう時、大事なお客様、入居者さんってね……。アパート業を、家賃で部屋を貸してるんだと思っちゃダメ。ホテルだと思ってください。そうすれば、毎日、ホテルだったら1日1日が勝負でしょ? (大家の)みなさんは1ヵ月借りてもらえる。こんな楽な商売ないじゃないですか。そしてお客様にいつも声をかける。

こういうことがありました。最近、私はもう息子に全部やらせてるんですけど、「行ってこい」って言って。「なんでこんな雨の中行かなくちゃいけないんだ」ってブツブツ言うんですよ。「いいから行ってこい」ってケンカしながら行かせるんです。

そして、こう回っていると、アパートの入居者さん、見てないと思うんですよ。台風が来てますから、カーテンは閉まってて、みんなカギも玄関も閉まってて、誰も見てないと思う。

でも、変な人が夜中にウロウロしてれば必ず見てるんです。で、次の時に、掃除に行ったときに、「大家さん、息子さんこないだ来てたよね? なんで? なにかあったの?」って。「いや、みんなのところが心配だから」って言うとね、「ありがとね~!」って。それが、次の更新の時につながるんですよ。

なにも、お部屋を満室にするのは、新しい人を入れるだけじゃないんです。今いる人を大事にして、次にまた更新してもらえる、それが一番なんです。

そして、自分のアパートに泊まってみてください。古くなれば古くなるほど、です。私が買うのはもう古い物件ばかりですから、いつも最初に買う時、泊まります。こないだも35年ぐらい経った鉄筋コンクリートのを買いましたけど、もうね、臭いです。畳はへなっちゃってて、臭いです。

でも、そこに入居している人のために、私もこの間泊まりました。これはもう畳の臭いが、30年使うと臭いんですよ。布団を敷いて寝てると。「あぁ、これはダメだな」と思うから全部剥がして、全部フローリングにして。ちゃんと断熱材を入れて、そしてやってます。

そして、更新するときに、5階の一番上は2万9,000円なんです。そうすると更新するときに、入居者さんに「2,000円ぐらい上げて、新しいところに移らない?」って。余裕がある人は移ってくれます。2,000円ぐらいで。更新料もなにもいただかないです。ぜひ、自分のアパートに泊まって、入居者さんの気持ちを理解してください。

立ち話ができる入居者を見つける

所有のアパマンにはどんな人が入居していますか? 入居者さんがどんな生活しているかわかりますか? 入居者さんの中に冗談が言えるような人がいますか?

私が草取りしてると、朝、早く行くときには(入居者が)通る。で、「行ってらっしゃい」「風邪引かない?」とか、声をかけます。そして帰ってくると、「おかえり」。なるべく名前で呼ぶんです。

最近スマホから普通の携帯に変えたんですけど、ここへ300件ぐらい入ってます。そうするとね、いつも言うんです。「なにかあったら電話ちょうだいね」って。若い子でも、どなたにも言います。

そして草取りして「おかえり」「風邪引かない?」っていう話を何回もして、月に1回行って、それが5ヵ月、半年経つと、立ち話ができるようになる。そのアパートのみんなと仲良くしようなんて思わなくたっていいんですよ。私だって「こんちくしょう」と思う人だっているんですから(笑)。

でも、そのアパートで、1人か2人、立ち話ができる人を見つけてください。なぜかと言うと、その人からアパートの情報をもらうんです。「あそこの部屋でこの間夫婦ゲンカしてたよ」とか、「新しい車を買ったよ」とか。「あの人はいつも帰りが遅い」とか、いろいろ情報をもらえるんです。

できればね、もっと仲良くなって、「大家さん、暑いから、冷たいもの入れたから飲む?」って部屋の中に入れれば一番いい。それにはね、おばちゃんが一番(笑)。

だって、けっこう周りも見ててね、殿方じゃ「あれ?」って変な噂が立つから。おばちゃんだったら、若い子のところに私が入っていってもね、噂ひとつ立たないんです。あっはっは(笑)。だからね、おばちゃんが一番いいです。

で、その方から情報をもらう。そしてその方に、なにか教えてもらったら少し余計にあげて。こないだ、うちで管理してるところがあって、(部屋の中で)亡くなっちゃったんですよ。これから増えてきますよ、とくに男性のひとり暮らし。多いです。

それを誰が教えてくれたって、やっぱりいつも立ち話してる人が教えてくれたんです。「大家さん、なんか新聞が溜まってるよ」って。そして、近くに保証人さんが住んでるから一緒に行って、やっぱり亡くなってました。そうやってすぐ教えてもらえる。そういう人を探すんです。

そしてその人には、お金じゃなくて商品券を、少しなにかあったときには渡すの。「ありがとね」「また教えてね」って。もうそれがすごく一番役に立ちます。

大きな菓子折り持っていっちゃいけないんですよ。その菓子折りをアパートの方が見て、「あ、大家さん、あそこの人のところへいつもなにか持っていく。俺には1つもくれない」ってなるんですから。商品券だったらポッケに入れて、ドアポストにサッと入れて、その中に「こないだはありがとね」って書いておけばいいでしょ? そうすればまた教えてくれる。いつもそうしてます。

そういう人を必ず入居者さんの中に1人2人見つけてください。気の合う方を。それには、おばちゃんが一番だと私は思ってます。

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