2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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藤岡清高氏(以下、藤岡):ゆきさんの社会人デビューはどうでしたか?
高橋ゆき氏(以下、高橋):営業をしたいと言ったものの未経験。しかもITの意味もわからない。ソフトウェアのパッケージを売ってる会社で、私のテリトリーは秋葉原と渋谷で大手量販店にパッケージソフトを売りに行く仕事でした。
朝オフィスに行くと男性ばかりで、営業マンが出払ってしまうと『マガジン』とか『サンデー』とか『モーニング』などの漫画がオフィスに雑然と転がっていました。最初のころは時間があったので、そういう雑誌を全部綺麗に並べて、社内ライブラリを作ったりしていました(笑)。
男性社会に紅一点だったから、とてもかわいがってもらえたし、お昼代を払ったことがないんです。全員がお昼をごちそうしてくれました。
そして営業でもノルマをすぐ達成することもできて……。ある日課長に呼ばれて、「お前さ、泣くなよ」と言われたので、「はい、何ですか?」と言ったら、「お前まさか体とか使って営業してないよな」と言われて、大きな勘違いで心配されてました。
課長が言うには、「達成数字が行き過ぎていておかしいだろう」「かつてうちの新人でこんなに数字を達成した人を見たことない、何やってんだ?」と言われて、「何もしてないです」と言ったら「おかしいだろ」と。「その手法を教えろ」と言われました。
藤岡:完全なセクハラですね(笑)。でもどうやって数字を上げていたんですか?
高橋:先輩たちが売りに行くところに同行させてもらいました。そしたら一生懸命お願いをして商品を置かせてもらっているんですけど、休みの日に店に見に行ったら、お客さんが棚からうちの商品取って見てくれるんだけど、また戻して買わないことがわかったんです。
おかしいなと思って見ていたら、昔は富士通とNECのパソコンのファンクションキーの使い方がソフトによって全部違ったんですよ。だから富士通のハードとNECのハードの2つのユーザー向け勉強会を開かせてほしいと売り場の人に頼んでみました。
「そんなこと今までやったことない」と言われたけど、「やってみましょう」と。「売り場にご迷惑かけませんから、1テーブルだけ貸してください」と言って、秋葉原でアンナミラーズみたいな格好して勉強会をやりました(笑)。
それで商品を手に取る人に勝手にお声を掛けて、「すみません、NECですか? 富士通ですか?」と聞いて、「富士通だよ」という人に「これはコマンドがここにあって、ファンクションキーはリターンキーを押してこれですよ」などと教えると、確実に買ってくれるんです。
次の人には「NECですか? じゃあNECはこうですよ」とやって、その売り場で着々と在庫がなくなっていきました。帰る頃になると「ゆきちゃん、あと30本ね」とか言われて、また商品を仕入れてもらえて。気がついたらNECと富士通の人たちが私の後ろでパソコン教室みたいに全部並べてくれて、30人に声かければ30人に売れる状況でした。
なんとも生意気なことに、楽しさはあってもなんだかやりがいがなくなってしまって……。そして人生を学ぶあの母の会社に入社したわけです。
藤岡:お母様の会社では何をされていたんですか?
高橋:母の会社はジュエリー業界向けの雑誌を作っていたのですが、私はそこでジュエリー業界向けのシンクタンクを作ろうとしていました。総合研究所のハシリですね。
新規事業も手がけました。クリッピングサービスというもので、北海道新聞から沖縄民報まで、全国の地方新聞を全部毎日購読をして、それをクリッピングして、忙しい経営者にニュース&ニューズ、『NN』という冊子を作って情報をまとめて届けるサービスも提供していました。
当時はiPadとかスマホもない。新聞を取り寄せて読む時間がないと経営者が嘆いてたから、クリッピングサービスで、流通新聞とか、琉球新聞、産経新聞、産業新聞、もう全部ワン・バイ・ワンのオーダーで、「じゃあ○○社長は人についてのニュース情報が全部欲しいんですね」「北海道から九州までどこの地区を選びますか? 関西中心ですね」などと言って、それを日々ワン・バイ・ワンで作っていました。
あとはブームを作って、トレンドを先に創るということが楽しくて夢中でした。
母が手掛けていたジュエリー雑誌は、その世界では実は世界一の規模でした。世界9ヶ所ぐらいに支社・支局を持って、特派員を置いて、アントワープとかタイとかグローバルに雑誌を販売していました。私が言うのもなんですが、母は本当にすごかったんです。
そんな母がいたんですが、グローバルでやっていたから、シンクタンクもグローバルに創っていこうと。日本のジュエリー業界で何か流行らせなきゃということで、パール(真珠)に着眼して、パールフェスティバルを開いたり、その事務局をやったり、パールコンテストをやったり、パールが似合う人の……いわゆるベストジーニスト賞というもののハシリですよね。
神戸ポートピアランドとかで、宝飾業界の中のパール業者を連携させて、「事務局は出版社であるわが社がやりますよ」と。
中立の立場でやるとスムーズでしたし、世界からも注目されて、日本のパールが評判になり世界に出ていこうというとき、ちょうど(小和田)雅子様が皇室に嫁ぐわけですね。
ふつう王室はダイアモンドを使うのだけども、そのティアラになんとかパールをつけさせようということでミキモトさんとか田崎真珠さんと画策をして、遂に雅子妃がパールのティアラで馬車に乗ってパレードするわけですよ。
そうすると日本国中は一斉に「パールをつけろ」となりまして、みんな20代の子にも一粒パールが流行ったり、パールのピアスが流行ったり。パールブームに携われたことを20代前半で体感して、一歩先を行く提案型トレンド創りという発想が私の1つの型になっていくわけです。
そして母が倒産したときに、香港からそんな働きぶりを過大評価してくれたある社長さんが、うちの会社で働かないかと声を掛けてくれたんですね。「でも今は倒産の最後の始末をしているからちょっと待ってください」と言って、半年待っていただいて香港に渡ることになりました。
藤岡:その後のベアーズ立志伝は、カンブリア宮殿(2012年7月5日放送)にも取り上げられたりと有名ですね。
高橋:主人(株式会社ベアーズ社長・高橋健志氏)が香港行きに理解を示して、むしろ「滅多にないチャンスだ」と、勤めていたホテルを辞めて一緒に香港に行くことになりました。
就労ビザが降りるか降りないかの最中に、第一子の妊娠が発覚しました。せっかく声をかけてくれた社長に申し訳なく、また私自身まだ心が未熟だったために、妊娠を隠して6ヶ月まで仕事をしていたのですが、そろそろ隠し切れなくなったころに、意を決して社長に伝えたところ、社長は喜んで「素晴らしい! 君は安心して産んで、みんなで育てよう」「そして君は2倍働いて、4倍の成果を出しなさい」と言ってくれたんです。
どういうことか意味がわかりませんでしたが、社長の意図は「香港は共働き夫婦が多く、東南アジアから来ているメイドが香港の若い共働き夫婦を支えている。君も彼女たちに助けてもらうといい」ということでした。
香港では20代の共働き夫婦が活用するほどメイドサービスが一般的で、私たち夫妻も香港の習慣に習うことにしました。
そしてフィリピン人女性のメイド、スーザンと出会い、育児や家事を手伝ってもらうことになりました。経験豊富なスーザンのおかげで、第一子誕生後も無事家庭と仕事を両立させることができ、妻として、母として、社会人として、自分らしさを保つことができました。
4年後、主人はアメリカに短期留学し、私は日本に帰国、東京で第二子を出産しますが、香港のようなメイドサービスが見つからない。ハウスクリーニングの会社に頼んでも専門的にピカピカにお掃除はしてくれるけど、洗濯物や食器の洗い物はしてもらえない。
家政婦さんを頼んでも、香港で体験したスーザンのような人はおらず、担当を代えるたびに私自身で1から家事を教え込まなければならない。そんな不自由な生活を送る最中に主人が帰国。
久しぶりの再会の第一声で「お前、ブスになったな」と言われたんです(笑)。自分ではぜんぜん気づいていなかったのですが、その理由はスーザンがいないことでした。
これからの日本社会は、女性が結婚して、出産後も輝いて働く時代。そんな頑張る女性を応援する新しい産業を作りたいと決意した主人は、1999年に家事代行サービスの会社ベアーズを起業しました。
主人は最初に清掃業社で修業を積みました。自宅をオフィスに、夫婦二人三脚でハウスクリーニング業からスタートしました。そして紆余曲折を経ながら創業15年、今に至ります。
藤岡:とくに若い起業志望者へゆきさんの経験からアドバイスをいただけますか?
高橋:原体験が大事です。原体験というのは、言い換えると生活体験。大人がよく、生活のありとあらゆる経験はすべて無駄にはならないと言うのは、こういうことだと思います。
勉強ばかりしていると、生活体験のチャンスが少なくなってしまいます。仕事のことばかり考えて会社の中の生活だけやっていると、世界観が会社だけになってしまうでしょ。ですから遊びなさいとよく大人が言うじゃないですか。
それはただ“遊ぶ”ということではなくて、生活全般の中から、あったらいいなとか、ないなら作ろうなどというのが、実は起業に対する大きな原動力になるのです。
ですから人生はいろんなことにチャレンジをして、いろんな思いをしたほうが良いと思います。そうすれば起業家という道に、うるおいも弾力性もつくと思います。
私は小学生からゲーテを読んでいて、“人とは”とか、“宇宙”とか、そのころから考えていました。よく社会人や経営陣になってから倫理とか宇宙の法則とかみんな言い始めますけど、私は小学校のときから体感してきていると思います。
苦労したり、悲しい思いやつらい思いや悔しい思いをした人ほど起業家に向いていると思います。だから今あなたが「私なんて……」とか思う背景に、例えば「貧乏だし」とか、「華もないし」とか思ってる人ほど成功する伸びしろがいっぱいあると、逆に前向きに希望を持ったほうがいいと思います。
藤岡:こんなにキラキラと輝いているゆきさんですが、イキイキとしたワーキングウーマンでいるためにどんな心がけをしているか、ワーキングウーマンのみなさまにメッセージをお願いします。
高橋:基本、女性は大変ですよ。だって毎月月経が訪れるなかで働いているわけでしょ(笑)。
藤岡:男にはわからないです(笑)。
高橋:それって大変なことですよね。やっぱり女性は多かれ少なかれ自律神経とホルモンに支配されてる生き物ですから、それとどうやって自分が付き合ったり向き合って、仕事を構築して立体的にしていくかがとてもチャレンジというか、課題だと思います。
女性社会が発展するなかで、「だから女は嫌だよね」と言われることってあるじゃないですか。例えば数字に弱いとか、すごくアバウトだとか、すぐに泣くとか、すぐに感情的になるとか、アップダウンが激しいとか、そういうふうに言われることって実は誰にでもあって、きっと私にもあるんだと思うんですけど、まずは自分のことをよく知ることが大事です。
それで、自分がどういうときにそういうふうになりやすいのかということをちゃんと知りながら、キャリアも構築する、自分をアピールする、自分と社会の接点を持つということが一番大切だと思います。
「いつもゆき姉は元気でパワフルで」と言われますけど、そういうふうに自分もトレーニングしているんです。
例えばベアーズの女性たちを集めて専務塾というのをやっているのですけど、スケジュール帳を持って集まってきてもらいます。
たいていの子が仕事のアポイントとか美容院の予約とか彼とのデートなどが書いてあるんですけど、それももちろん大事。
でももっと大事なことは、自分の顔が今日イケてるかイケてないかを○×△ぐらいの三段階で毎日書きなさいと伝えています。
同じ目鼻立ちの同じ顔なのに、自分の顔が気にいる日・気に入らない日があるんですよ。本当です。それを3ヶ月つけると自分のバイオリズムが見えてくるんです。
そこで、「ちょっとイケてないときは私は月の中のココなんだ」というのがわかったときは、ここでは大きい仕事を引き受けないとか。
絶好調な自分がココにいるなら、ココにはもう何でもかんでも突っ込んじゃうというふうにうまくやっていく。人が見たら、「○○さんっていつもチャーミングで、いつも冷静で、いつもエネルギッシュで輝いてるよね」と見られる自分が、己を知ることで誰でも創れるわけです。
そういうことがわからなかった私は、これに気がついたのは32歳のとき。そのとき何が起こったかというと、それまでは超完璧主義者で、負けない、常にかっこよくありたい、だから上司から「ゆきさんってすごいね」と言われることがすごく心地よくて。
ここまでデキるということがわかると、次は上司はさらに求めてきます。だんだん自分のレベルを自分で上げていくから苦しいわけですよ。結局32歳のときに、ある日突然倒れて過労で入院することになってしまって(笑)。
そのときに、働き方を変えるだけじゃなくて考え方を変えないと、40代で天国も夢じゃないと主治医に言われたから、本当に死んでしまうかもと思いまして。
また第2の成長期です。26歳のときにまず母の会社が倒産してくれたおかげで一文無しになり、家も赤紙を張られちゃうような状態。本当にそれまであったものがすべてなくなって、親を面倒見なきゃいけなくなってしまった。
その後結婚して、子供に恵まれ、香港に住み、帰国して、ベアーズが誕生して2年目のことなんです、体調を崩して入院したのは。
そこからはいかに自分に無理をさせないで、気張らないで、自己流だけど「あの人いつもポジティブでエネルギッシュで」と言われる自分を生み出す方法論を持っていることで、今ではとてもラクです。
藤岡:ゆきさんのポジティブさエネルギッシュさは自己流なんですね。世にある自己啓発的な手法は活用されていないんですか?
高橋:いろんな自己啓発手法・セミナーがあると思いますけど、私はそういったセミナーにあまり行きません。
全部自分の経験から。その経験というのは成功体験じゃなくて、どちらかというと失敗体験。ですから若いみなさん、学生のみなさん、もっといろんなことを失敗して、つらい思いも、悲しい思いもして、恋愛もたくさんして、心を豊かにする経験をぜひ、若いうちに積み重ねてほしいですね。
藤岡:素敵なお話、ありがとうございました!
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